
翻訳とは、原文の主張を変換しただけであるのに二次的な著作権が発生するものであり、翻訳物の掲載は単なる転載よりも厳しい制限が付くものだと思います。ただ多くの方はTimの英語を理解するに苦労されるでしょうから、日本語訳があると何かと便利だと思います。そこで、当該文書に対し批評・批判を行なうために原文を引用し、対訳を載せると言う形を取ることにしました。たまたまそれが全文訳となってしまいましたが、これは明らかに公正な慣行に基づく正当な引用および翻訳であり、米国著作権法は知りませんがすくなくとも日本の著作権法に関しては完全に合法だと思います。
さて、でははじめましょう。
Tim Berners-Lee
まずこのティムと言う人間について簡単に触れておくと、ようするに現在のWebの発明者で、W3Cを設立した人間である。興味がある人は、伝記が翻訳されているので読んでみると良いだろう。俺は読んでいないので、それ以上詳しいことは知らない。一応断っておくと、よく同一のものだと思っている初心者も多いが、インターネットとWebは別物である。インターネットはもっと古くからあるハードウェア的な構造物を指し、Webはインターネットを便利に使うためにその上に構築された一種のソフトウェア的な仕組みである。彼が発明したのは、インターネット上でHTTPと言うプロトコルを使って画像や文書を含んだ情報をやりとりしビジュアルに表示する仕組みである、と言う説明でだいたいあっているんじゃないかと思う。
Links and Law: Myths
文献の題名である。直訳すると『リンクと法律:神話』。あるいは単に『リンクの神話』と略される事も多い。これはこの文書の名前が[LinkMyths]であり、W3Cのサイトから"link myths"と言う形で参照されている事に由来する。またこの文と対をなす、単に『Links and Law』と言う文書があり、この『Myths』の方はその補足として書かれたもので、そこからは"Some dangerous Myths about Links"と言う名前で参照されている。
なお、この場合の『神話』とは、「科学的根拠のないホラ話」としての神話であり、信仰の対象としての『神話』と混同してはいけない。そう言う時はアッチの人は「Bible」と言う単語を使う。もっとも、聖書もまったく「科学的根拠のないホラ話」である事に違いはないのだが。あと、この文献自体が、一部のW3C信者によって神格化されて「Bible」として扱われている事は、非常に嘆かわしい事実である。
Myth: "A normal link is an incitement to copy the linked document in a way which infringes copyright".
『神話: リンクは元の文書のコピーと言う著作権に反する行為を誘発する』
This is a serious misunderstanding. The ability to refer to a document (or a person or any thing else) is in general a fundamental right of free speech to the same extent that speech is free. Making the reference with a hypertext link is more efficient but changes nothing else.
『それはヒドイ誤認識である。一般的に言って、文書(あるいは人やその他の物)を参照する事は、自由に物を話す事ができるのと同じ様に、言論の自由の基本的な権利である。ハイパーテキストによる参照(つまりリンクを張る事)はそれをより簡単にやる事ができると言うだけで、その事には変わりない』
When the "speech" itself is illegal, whether or not it contains hypertext links, then its illegality should not be affected by the fact that it is in electronic form.
『もしスピーチの内容が違法であるなら、リンクの有無に関係なく、その違法性はそれが電子的な形を取っている事のせいにすべきではない』
Users and information providers and lawyers have to share this convention. If they do not, people will be frightened to make links for fear of legal implications.
『Webの使用者、プロバイダ業者、そして法律家はこの認識を共有しなければならない。もしそうでないならば、人々は法的責任を怖れるあまり、リンクを張る事をためらうようになるだろう』
I received a mail message asking for "permission" to link to our site. I refused as I insisted that permission was not needed. There is no reason to have to ask before making a link to another site
『私は我々のサイトにリンクを張る許可を求めるメールを受け取った事がある。私は許可を求める必要は無いと主張して、断った。他のサイトにリンクを張る前に尋ねなければならない理由などないのである』
But by the same token,
You are responsible for what you say about other people, and their sites, etc., on the web as anywhere
『しかし同時に、Web上でも他の場所と同様に、あなたが他の人や彼らのサイトなどに付いて言った事には責任をもたねばならない』
このティムと言う人は議論が下手くそではないかと読んでいて思った。あるいは、はぐらかすのが上手いと言うことか。前半部分については、言っていることは完全に同意できる。Web上だろうがドコだろうが違法行為は問題なく悪いことで、それにリンクが関っているか否かは関係ない。リンクは便利な道具だから違法行為をする人間にとっても便利に使う事ができるだろうが、それを以ってリンクを否定するのは暴論だろう。たとえ話としては、リンクは刃物の様なもので、日常的に便利に使えるが、人を傷つける事もできる。しかしその場合悪いのは人であって、人を傷つける可能性を以って刃物の使用を禁止する事は間違っている、と言う理屈である。
ところが日本ではFlashMask裁判と言うのがあって(著作権法違反ではなく猥褻物陳列罪だったと思うが)、実はリンクを張った側が一審で有罪判決を受けている。現在控訴審をやっている所だと思うが、今のところ、日本の法律家の間では、Timの認識は共有されていないようだ。是非この件に関するTimのコメントを見てみたいものだ。
ところで、この文の問題はその後で、いきなり、リンクを張るのに許可が必要か、と言う議論が始まる。そして全く根拠を示さずに、『他のサイトにリンクを張る前に尋ねなければならない理由などない』と断言している。まことに非論理的である。おそらくは彼の脳内での論理的考察の結果としての結論なのかもしれないが、その過程を是非とも提示して欲しいものである。そうでなければ、信者は別として、他人を説得することはできないだろう。
俺的にはこの節で一番重要なのは、最後の一文である。言い換えると『リンクを張る事自体は問題が無いが、それに関するコメントには責任を負え』と言う事ではないかと思う。張ったリンクに対してまったく何のコメントも付けないと言う事は普通考えられないので、実質的に、リンクを張る時には違法性について考慮しなさい、と言う事で、違いは対象がリンクなのか、そのコメントなのかと言うだけである。どちらにしろ、リンクする時に、人々は法的責任を怖れるあまり、リンクを張る事をためらうようになるのではないだろうか。逆に言えば、FlashMask裁判の様にリンクを張る事が罪に問われるような結果となっても現状とあまり変わりはなく、要するに彼の心配は杞憂、あるいは意識的にやっていれば誘導、と言う事になる。
Myth: Making a link to a document makes your document more valuable and therefore is a right you should pay".
『神話: 他の文書にリンクを張る事であなたの文書はより価値が高まる。だから(リンクを張られた側は)あなたに何らかの代価を要求する権利が存在する』
This is another dangerous one. It is of course true that your document is made more valuable by links to high quality relevant other documents.
『これもまた危険な誤認識である。もちろん、他の信頼性のある文書にリンクを張る事であなたの文書の利用価値が高まるのは事実である』
A review in a consumer magazine has added value because of the quality of the products to which it refers the reader.
『一般雑誌のレビューなどは、読者に紹介する製品の価値が、そのまま記事の価値となる』
I may be more valuable to you as a person if I refer you to other people by name, phone number or URL. This doesn't mean I owe those people something.
『もし私があなたに他の人々の名前や電話番号やURLを教えてやったならば、あなたにとって私は便利な人と言えるかもしれない。しかし、だからと言って、私はそれらの人に対して責任を負うわけではない』
We cannot regard anyone as having the "right not to be referred to" without completely pulling the rug out from under free speech.
『「言論の自由」を根底からひっくり返さない限り、「参照されない権利」などはまったく認めることはできない』
結論には完全に同意する。だがそこに至る過程には論理の飛躍が見られる。まあ前段落にしてもそうだが、これは論文などではなく、単なる私的文書に過ぎないので、その辺は大目に見なければならないのかもしれない。そうすると、引用・参照する価値もまったく無くなってしまうのだが。
訳す上で気になったのは命題の部分で、thereforeの後に入るべき主語が省略されている様に見えることである。文法的には前の文節の主語であるMaking a link以外の言葉が入る余地はまったくないのだが、そうすると『だからリンクを張る事はあなたにとって当然の権利なのである』となって、本文の意味が通じなくなってしまう。色々考えた結果、上記の様に倒置であると考えて、ようやく意味の通じる文章になった。日本人がネイティブに対して言う言葉ではないかもしれないが、こういう誤解される余地のある文章は、論旨を正確に伝える事を目的とする論文には非常に不適切だと思う。
本文中で気になる事は2つ。例文では引いていないが、もし他人のプライベートな住所や電話番号を勝手に教えるとしたら、法的にはともかく、道義的に責任が発生する状況は確実に存在する。あなたが職場の同僚の女の子の住所や携帯の番号を第三者に気軽に教えた事が原因で、その子が犯罪に巻き込まれても責任を感じない人間もいるだろうし、Timもそう言った人間なのかもしれないが。要するに言いたいことはわからなくもないが、あまり適切な比喩ではないと言うことだ。まあ実際問題としては、URLからそう言った事件に発展するとは考えにくいのだが。
もう一つは、参照先に対しては置いておくとしても、あなたに尋ねた相手に対しては責任が生じると言うこと。あなたが間違った情報を教えたとしたら、やはり何らかの責任を負わされる事だろう。まあ、あいつは信用できないから相手にするな、と言う評判が立つ程度の事で、結果、less valuableになると言う事。要するにリンク先がリンク切れになっていないか、読者の利便性云々を主張するのならば、きちんと確認しておきなさい、と言うことだ。リンク切れの状態を放置している輩に『無断リンク禁止』はWebの利便性を妨げるから云々と言われても、まったく説得力が無い。リンクを許可制にする事でもし許可した側にリンクを維持する義務を発生させられれば、リンク切れがなくなるのでWebの利便性はむしろ向上する、筈である。
Myth: Making a link to someone's publicly readable document is an infringement of privacy.
『神話: 公開されている文書にリンクする事はプライバシーの侵害である』
The "security by obscurity" method of hiding things behind secret URLs has the property that anyone knowing the URL (like a password) can pass it on.
『隠しURLのような、どこからもリンクされない事で秘密を守ろうと言ったセキュリティの手法は、(パスワードと同様に)URLを知ってしまった相手を防ぐことはできない』
This is only a breach of confidentiality of there is some confidentiality agreement which as been made.
『これは単に(パスワードや隠しURLを誰かに教えた時の)機密保持の約束が破られたと言う事にすぎない』
捕捉すると、『だから、隠しURLにリンクされた事が問題なのではなく、信頼すべきでない相手を信用してしまった事、あるいはもっときちんとしたセキュリティを築かなかった事が本質的な問題なのである』と言いたいのだろうと思う。きちんと結論まで書いてほしいと思う。
また命題と本論の間に一見しただけだとまったく繋がりが見えないように見えるかもしれない。おそらくは、隠しURLを使うことによって私的な情報を公開している人間のみを念頭に置いているからこのような話になるのだろう。サイト(ホームページ)を家にたとえて、隠しURLでも何でもないページに対してリンクを張られる事(とくにディープリンク)に対してもプライバシーの侵害であると主張する人々の存在に、彼は気が付かなかったのだろう。まあ、そう言う人達には、そもそもプライバシーのなんたるか、から説明しないといけないので、それはそれで面倒くさい事なのだが。
ところで、後の文は意味がなんとなくわかったから別に良いのだが、この文は文法的にはあっているのだろうか?
Hall of Flame
『議論の殿堂』
Famous cases in which people tried to prevent others linking to their web pages include, if I recall correctly, Ticketmaster trying to stop the Seattle Sidewalk site linking into its pages, so that those looking through the site about the town could follow a link and buy tickets to the events.
『私の記憶が確かならば、自分たちのウェブサイトに他人がリンクを張る事を妨げようとした代表的な例として、"Ticketmaster"がシアトルサイドウォークと言うサイトに対して、(シアトルの)街についての情報を得ようと閲覧に来た人がリンクを辿って行事のチケットを買える様に(買わせるために)、そのページに対するリンクを止めさせようと試みた事例がある』
This was widely perceived not only as philosophically wrong by falling for the myths above, but also crazy, as it was a protest against Seattle Sidewalk bring traffic and hence business to the Ticketmaster site.
『これは上記『神話』で書いた様に道徳的にも間違っているだけでなく、気が触れているとしか思えないことである。なぜなら、シアトルサイドウォークがチケットマスターのサイトに客を、つまり利益を運んでくれているのに、わざわざそれを拒絶する事になるからである』
In 2002, A Danish court made an injunction preventing a Danish news filtering service (effectively a sort of search engine) from linking to pages of a Danish newspaper. See the slashdot article.
『別の例では、2002年にデンマークの法廷は、"Danish news filtering service(デンマークニュース配送サービス)"という要するに一種のサーチエンジンの運営会社に対し、デンマークの新聞のオンライン記事のページにリンクする事を禁止する判決を下した』
I assume that the appeals process will clear up this after this time of writing (2002/07). If such decisions are accepted, the whole working of the web would break down.
『この文を書いている2002年7月現在では結論はでていないが、今後、控訴審において、この問題は決着がつくだろうと思う。もしこのような判決が受け入れられたら、Webの機能は完全にマヒしてしまうだろう』
前半のシアトルサイドウォーク(直訳すると散歩道。街のガイドブックみたいなものか?地球の歩き方シアトル編といった感じで)に関する件は詳細を知らないのでコメントできない。最初、アダルトサイトの様にトップページに広告や有料コーナーへの案内が並べてあり、それを無視してコンテンツの一部に直リンされたのかとも思ったが、TimにCrazyとまで言わしめている事からすると違うようだ。どうも宣伝のためにWebページを作って公開している企業サイトが単に無断リンク禁止と言ってリンクを制限しようとしたと言う事の様に読める。このケースは良くわからないが、企業イメージを考慮して変なサイトからはリンクされたくはない(例えば総会屋や暴力団(がサイトを持っているかどうかは知らないが)からリンクされて良くない噂が立てられる事を警戒する)企業の気持ちは理解できなくもない。
後半は、某掲示板に翻訳を載せた時は日本の別の裁判とごっちゃになって頓珍漢な見解を書いてしまった。題名の『Hall of flame』(直訳すると炎の館)を『Hole of Frame』(フレームの落とし穴)と勘違いして、フレームの中で新聞記事を表示させてあたかも自社の記事のように見せかけて違法判決が出たケースの事を言っているのかと思ったのだが、違った様だ。ちなみに『Hall of flame』とは『Hall of fame』(名誉の殿堂)のもじりである訳だが、flameに対する適当な訳が見つからなかった。flamは白熱した議論を指しているようにも取れるし、何か(本来あるべき原則)が焼け落ちつつある事を嘆いている様にも取れる。多分前者だとは思うのだが、あちらの駄洒落交じりの言葉をうまく訳すのは、本当に難しい。
で、改めてこの部分に関しては、Danish news filtering serviceのサービスがどう言うものか、あるいはどの部分を違法と認められたのか見てみないと、やはりコメントする事はできない。リンクされた事で新聞社側に実害があったのであれば、Timにはともかく、一般的には受け入れられる判決であるかも知れない。一方、特定の語句を新聞社のサイト上の記事から検索してリンクを張って公開しているだけならば、有料記事ならプロテクトが甘い事が問題なのだし、そうでなければ、検索されたくなければ公開するな、でTim的には終わりだから彼が不当判決だと考えても不思議ではない。
Conclusions about links
『リンクについてのまとめ』
There are some fundamental principles about links on which the Web is based. These are principles allow the world of distributed hypertext to work. Lawyers, users and technology and content providers must all agree to respect these principles which have been outlined.
『Webの根ざしているリンクというモノについて、いくつかの基本的な原則が存在する。それらは世界中に広まったハイパーテキストの世界(=World Wide Web)が機能するために必要な原則である。法律家も利用者も、技術や情報の提供者も、提示されているこれらの原則を尊重することに同意しなければならない』
It is difficult to emphasize how important these issues are for society. The first amendment to the Constitution of the United States, for example, addresses the right to speak. The right to make reference to something is inherent in that right.
『こういった事が社会にとって如何に重要であるかと言うことは強調してもし過ぎる事はない。たとえば、合衆国憲法修正第一条は言論の自由を保障している。何かを参照する権利は、この(言論の自由と言う)権利に既に内在している権利なのである』
On the web, to make reference without making a link is possible but ineffective - like speaking but with a paper bag over your head.
『ウェブの世界において、リンクを使わずに何かを参照する(アドレスを地の文に書く事)は確かに可能であるが、効果的ではない。ちょうど頭に紙袋を被って話しているようなものだ』
最後のたとえは非常に意図が掴みにくい。イメージはわからなくもないのだが、現実世界で、プライバシー保護のために顔を隠して行ったインタビューが放映される事もあるわけで、あまり適切な例では無い様な気がする。それとも何かの成語だったのだろうか?
二段目はまったく否定しようもない。日本なら、日本国憲法第二十一条『集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する』が該当するし、いわゆる自由主義諸国と言われている国ではそれぞれの基本法によって言論の自由が保障されている。世界人権宣言や国連憲章にも該当する箇所があった様に思う。
さて一段目であるが、『同意しなければならない』と言うのは言い過ぎだろう。もちろんWebの考案者であるTimをよびその標準化を進めるW3Cの示すアウトライン(規範)を尊重することはやぶさかではないが、強制される覚えはないし、彼らにそれを強制する法的な根拠は全くない。強制したければ特許でも取って、同意したものにのみ許可を与えるライセンス制にすべきであった。もちろんそれでは普及は妨げられ、本来の目的が果たせなくなる事を計算済みで公開したと言うことは百も承知で言っているのだが。
リンクに関して言えば、たとえば無断リンク禁止、原則として許可が必要、となったとしても、Webは現在と同じように機能するであろう。いちいち連絡されたくない人はリンクフリーと書いておけばいいだけの事だ。2段目の様に言論の自由を持ちだして自由に参照する権利を正当化する論法は全く正しいのだが、ここで言っている様なWebを機能させるためと言う理由では、それを正当化することはできないし、それを強制することもできない。
A reminder this this is personal opinion, not related to W3C or MIT policy. I reserve the right to rephrase this if misunderstandings occur, as its always difficult to express this sort of thing to a mixed and varied audience.
『付記:これらは私の個人的意見であり、W3CやMITの方針とは関係がない。多種多様な人々を相手にこのような事を的確に表現するのは常に困難なことであるので、もし何か誤解が生じるような事があれば、(適当な表現に)改める権利を私は保留する』
さて、この最初の一文はどう解釈すれば良いのだろうか。Tim自身はこの文書が私的なものでありW3Cとは関係無いことを認めている一方で、W3Cはそのサイト内でこの文書を参照している。まあTimの個人的意見をW3Cも公式に支持している、と解釈すれば良いのだろうか?
結局のところ、この文書から得られたことは、『言論の自由に含まれる一権利として、自由にリンクを張る権利が存在し、何人もこれを妨げる事はできない』と言う事であろうか。他の部分も大筋は妥当だが、ツッコミどころが多く、論理が飛躍あるいは自己撞着している箇所もある。「リンクを制限するとウェブが不便になるから」と言う理屈は、「速度制限すると移動が不便になるからすべての道路は速度無制限にすべきである」と言っている様なもので、現実的ではない。
従って、『リンクは原則として自由である』と言う事を主張する人間は、この文書を参照すべきではないし、する必要はない。日本人なら日本国憲法第二十一条や、場合によっては著作権法を持ち出してリンクが引用や転載で無いことを示せば良い。あえてTimの名前やW3Cの権威を借りたいのであれば、参照や全文引用ではなく、Myth2かConclusionの部分引用に留めるべきである。
逆に言うと、この文書を持ちだして『リンクは原則として自由である』と言う事を主張する人間は、本文を理解する能力が無いか、いわゆる『信者』である(W3Cも、その成立の経緯から、一種の信者の集団であると言えるかもしれないが、それはまったく別の問題である)。はっきり言って、信者はウザイ。誰も信者を相手にしたがらない。結果、『リンクは原則として自由である』と言う正しい事が闇に埋もれ、『リンクを張られる事を禁止する事ができる』と言う間違った認識が世に広まってしまうのだとしたら、実に嘆かわしい事ではある。