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バターカップスの活動


 現在、バターカップスの幾つかの支部では親睦と情報交換のために読書会 やお食事会などを企画しております。
 今回は関東地区で行われた第2回関東読書会の模様をご紹介します。
 
 報告者:東京・齊藤実
 Buttercups通信第143号(発行日:2000年8月26日)より転載


第2回関東読書会のご報告東京・齊藤実  
 

 みなさん、こんにちは。
 6月25日、第2回関東読書会が開催されました。場所は前回と同様、文京区のシ
ビックセンター。後楽園のすぐ横で、高山さんが前回と同様、会議室を確保して
くださいました。今回の参加者は、飯野恵子さん、深山幸子さん、小峰祐子さん
とお母様、●麻子さん、高山良子さん、安藤仁美さん(今回も名古屋から泊まり
込みで!)、田崎三和子さん、小森恵子さん、田丸有子さん、片岡絢子さん、小
松輝美さん(甲府からようこそ!)、氏家真純さん、そして私の合計14名でした。
時間は1時〜4時まででした(話をしていた正味は2時間15分くらいです)。
 さて、今回のお題は『炉辺荘のアン(イングルサイドのアン)』。書かれた順
序としては最後のアンシリーズです。
 いつものように、飯野さんの司会のお陰で今日もたいへん盛り上がった読書会
だったのですが、私、ずっとメモを取りながら参加していました。皆さんに、少
しでも読書会の内容をお伝えしたいと思ったものですから。ただ流れていってし
まって残らないのではちょっともったいないですからね。書きとどめておけば、
参加できなかった方々でもいろいろと読書の楽しみの材料になるかもしれません
し。
 と、いうことで、以下、メモ的にですが、読書会にて話題になりましたことを
お伝えしたいと思います。ただ、テープ起こしではなく、その場で手書きのメモ
を取っていたものですから、抜けてしまっている話題や、発言者が誰か分からな
いものや、もしかしたら、発言者や発言内容を間違えてしまっているものもある
かもしれませんが、そこのところは、ご勘弁下さい、というかその程度のものと
思ってお付き合いいただければ幸いです。(なお、★:は発言者不明、若しくは、
全員の総体的な意見ということでご理解下さい。また、このご報告書で「再現」
されている発言は、私が適当に要約・省略・補足(参照事項など)したり、その
場の雰囲気を出来るだけお伝えできるように脚色したものですので、実際の発言
そのものではないこともご了承下さい。)

 それでは、始まり始まり……。


========================================

(1)まずは数字のお話

齊藤:
 ダイアナの体重が155ポンドになってしまったってありますが、1ポンドは453.
6グラムですので、70.8kgですね。うーん、やっぱり太めですよねぇ。

★:
 アンはそのとき50kgくらいなのかな〜?
 でも、欧米人は日本人にくらべてがっしりしているから、もっとある?

※読書会後の補足:
 ちなみに、原書や完全訳には出てくるのですが、リンド夫人は200ポンド=約 
90.7kg。バターカップス・メーリングリストでの梶原由佳さんのご指摘によれば、
「モンゴメリは、主婦として完璧ともいえるリンド夫人をかなり意識的に「太  
め」にしているような気がします。夫人は、多くの子供も生んで育てて円熟した
女性という感じでしょうか。それに比べ、子供を生んだこともないマリラには中
年女性の穏やかな膨らみがまったく見られませんよね。結婚後のダイアナも太っ
ていくものね。アンは完璧な主婦でいながら、ほっそりとしていて、なんともう
らやましい限り。こういったキャラクターの外見の対比は見事なもんですね。」
とのこと。なるほど!

齊藤:
 また、イングルサイドの敷地は、12エーカーとありますから、1エーカー=約 
40アール=4000平方メートルなので、12エーカーは480アール(4.8ヘクタール)、
つまり、48000平方メートル、200m×240m四方の敷地になりますね。私の住んで 
いる杉並区の辺りで言えば、8〜10ブロック分くらいに当たります。ものすごい 
広さですよね! (※実は『イングルサイドのアン』ではなく、『アンの夢の  
家』の最終章でギルバートがイングルサイドを買う話をするシーンでこの広さが
出てきます。)

飯野:
 あ、ちょうど(埼玉の)小学校の広さくらい!

氏家:
 その敷地には虹の谷も含まれるの?

齊藤・安藤:
 はっきりとは書いていないけど、たぶんそうでしょうね。

齊藤:
 むこうは敷地と言っても特に壁とかないことが多いですからね。


(2)持っている版(『炉辺荘のアン』村岡花子訳・新潮文庫)について

深山:昭和33年版(これ、ちょっと誤植が多いのよね)
安藤:昭和50年版
齊藤:平成元年版

安藤:
 版(刷)が変わるにつれ、訳の著作権者も変わっていくんですよね。みどりさ
んがまず引き継がれて、それからみどりさんの夫と二人の娘さんへと。


(3)子供の発想について

深山:
 子供のときのちょっとしたことってあるけど(子供の素直な疑問など)、そう
いったことをよくモードは覚えていて、うまくエピソード化しているものよね。
なかなかいろいろと可愛いエピソードが多いわよね。
 私の場合、石臼(いしうす)が雷だと思っていて(ゴロゴロと音がするから)、
それが空から落ちてくるものだと思っていたのよ。

安藤:
 寡婦(かふ)についてのエピソードが面白いですよね。
 一度は結婚して夫が死んでしまったら気が楽? モードの気持ち?


(4)子供の時間、大人の時間

安藤・飯野:
 子供のときって、時間がなかなかたたないですよねぇ。リラもそう言っていま
すよね。
 でも、モードも作品中で書いているけど、逆に大人から見ると子供の成長は実
に速いものなんですよねぇ。


(5)リラの「でしゅ」言葉

安藤:
 英語で言えば、「イエス」が「イエシュ」になっていたり、「スーザン」が  
「シュージャン(Thuthan)」になっていたりしますよね。


(6)見出しについて

田崎・安藤:
 『炉辺荘のアン』についている見出し(章のタイトル)は、原書には付いてい
ないんです。数字だけ。村岡さんが自分で付けられたんですよね。
 ちなみに、掛川さん(書籍のタイトルの訳は『アンの愛の家庭』となっていま
す)も付けられていますが、独自に考えられていて、村岡さんのとは違いますね。


(7)マリアおばさん!?

★:
 掛川さんの訳だと、「マライアおばさん」が「マリアおばさん」になっていま
すが、「マリア」だと優しそうで、なんだかイメージにあわないよね〜。
 「マリア」とも読めるんだろうけど、「マライア」でも「マライア・キャリ  
ー」なんかを知っているから違和感ないし、「マライア」の方がなんだか「マラ
リア」とかに似てそうで、意地悪そうでいいよね〜。
 でも、こういう名前に関する訳の違いってよくありますよね。
 日本語読みするときはなかなか難しいから、本当の発音聞いてみたいね〜。
 例えば、Danieleさんは「ダニエレ」?「ダニエラ」?「ダニエール」?、と 
かね。


(8)突如として出てくるマライアおばさん

★:
 怖いよね〜、マライアおばさん。
 ダイアナのおばさんのアトッサおばさん(ダイアナがアンとお菓子を届けに行
った)に似てるよね。
 でも、この二人は分かりやすい。
 例えば、『丘の家のジェーン』のアイリーンおばさんみたいのはたちがもっと
悪いし、困るよね〜。
 でも、アイリーンは、ほんとよく描けている。


(9)マライアおばさんは悪人?

小峰:
 マライアおばさんっていい人? 単なる悪人?

安藤:
 いい人、悪い人、というより、「いるよね〜、こんな人〜」というキャラクタ
ーですよね。モードの描き出す人物って、そういうキャラクターが多いですよね。

齊藤:
 マライアおばさんはスパイス。
 彼女がいないと、単なるお気楽有閑マダム?的、というか、のほほん的なお話
になってしまうかも。
 マライアおばさんを通じて、アンへの(ちょっとした)批判も加えていますよ
ね。マライアおばさんの気持ち(目)は、モードの気持ち(目)でもあったので
はないかな?


(10)アンの現実味

安藤:
 最後の章の方で、アンに少し現実味が出てきますよね。
 家事の不平とか言っているのはそれまでにないこと。


(11)当時の女性の経済的地位

★:
 当時、社会保障とかあったの? 保険とかは?
 追悼文の中で「生命保険が下りたので……」という話があったりするけど。

齊藤:
 当時、女性の社会的身分は著しく低く、まだ財産に関する権利(財産管理権や
配偶者相続権など)は極めて小さかったですね。

★:
 じゃあ、夫が亡くなって子供がいなかった場合、資力がなかったら終わり?
 再婚するか、親戚に面倒見てもらうか、女中になるとか……。


(12)当時の貨幣価値

★:
 1ドルでジェムがアンに偽物のパール(真珠)を買っているけど、今の感覚だ 
といくらくらい?
 2〜3千円くらいかな〜? それとも1万円?

齊藤:
 モンゴメリがアンを書いた頃、収入が500ドルくらいで平均よりよかったとい 
うような話があったと思いますが、そうすると、500ドルで今の感覚で2〜400万 
円くらいか、もっと?
 モードが晩年、世界大恐慌で株に投資していた1万4千ドルを800ドルくらいに 
減らしているけど、それは、今で言うと、1億4千万円が800万円くらいに減るの 
と同じような感覚かなぁ。どんなにつらかったかが分かりますよね。この本はそ
ういった苦しい時期に書かれたんですよね。


(13)「家(いえ)」の概念

★:
 結構、「家」(制度としての)の概念が強いですよね。
 大おばさんを引き取ったりね。
 当時は社会保障がなかった(弱かった)から?
 欧州の封建制の名残もあるかもしれませんね。


(14)寂しがり屋のマライアおばさん!?

★:
 マライアおばさんっていうのは、やっぱ、寂しがり屋なんでしょうねぇ。
 金はあるのに、ずっとイングルサイドに居続けたのはそうだからじゃないかな
ぁ?
 だから、あんなことで怒って出て行っちゃった。


(15)子供の幻滅体験

高山:
 この本、子供の、なんというか、幻滅体験がよく描かれていますよね。友達に
裏切られたり、とか……。
 そうやって、まあ、大人になっていくんでしょうね。

小峰:
 私もそういう経験ある……。


(16)短編集との共通的ネタ

安藤:
 この本は、短編から拾っている題材とか、逆も結構多いですよね。


(17)アン・シリーズのさらなる続編

安藤:
 モードは『イングルサイドのアン』を書いた後、次なるアン・シリーズも考え
て書いていたみたいで、『アンの娘リラ』の後に続くものを全部ではないものの
書いています。
 それを息子さんに残し、それらがまとめられて、1974年に短編集“The Road  
to Yesterday”(『アンの村の日々』)として出版されたんですね。
 この“The Road to Yesterday”では、アンはおばあさんみたいになっていて、
息子や娘達のその後の話なども出てくるんですよ。アンだけ、ブライス家だけの
話ではありませんが。


(18)潜むモードの影

田崎:
 読んでいてどきっとしたところがあって、12章の一番最後に、アンが友達もな
く寂しいマライアおばさんに憐憫の情を感じているところがあるんですが、これ
(マライアおばさんの寂しさ)ってモード自身のことだ〜、モードもそうだった
んだろうな、って思いました。
 あと、マライアおばさんは身なりはしかっりしている、という記述があるんで
すが、これもモード自身の老人観(モード自身も身なりにはたいへん気を遣っ  
た)っぽいですよね。
 ただ、モード=マライアおばさんではなくて、スーザンの言葉なんかにも、モ
ードが現れているような気がします。


(19)ドラマ化したい『イングルサイドのアン』

★:
 『イングルサイドのアン』って、ホームドラマみたいだよね〜。
 ほんと、由佳さんもおっしゃっていますけど、これ、映像化して欲しいな〜。
 いくらでもネタとれそうだよね〜。
 実際、モードがファンに対して「これを映像化して欲しいと映画会社などに頼
んで欲しい」と頼んでいるところ(梶原さんのご本185ページ参照)をみても、 
やっぱり、モードは映像化を念頭に置いて書いているよね。

齊藤:
 モードは今生きていた方が幸せだったでしょうね。
 放送作家とか、シナリオライター、脚本家として、橋田壽賀子みたいに人気が
出ていたと思いますね。
 モードは写真とかの映像関係も大好きだったわけですしね。


(20)過ぎ去りし思い出に生きるモード

安藤:
 『イングルサイドのアン』の献辞を見ても、あれって、実はローラ・プリッチ
ャード(モードの友人)のお兄さんのウィルに宛てているんですよね。ウィルは
もう死んじゃってたんですけど。
 モードは過去の楽しい思い出に生きていたんですよね、やっぱり。
 ウィルのことも好きだったんでしょうかね〜……。
 モードの作品は、過去に過去に向いているのは確かですよね。
 過ぎ去ったものに捧げています。
 『イングルサイドのアン』は、英語で読むと、ほんと、“old”という言葉が 
多いんですよ。
 それに、「月明かりの下」のシーンがとても多いです。
 この本の最初もそうだし、最後もそうです。
 モードは月明かりが好きだったわけですが。
 そう言えば、「ダイアナ」だって「月の女神」ですもんね。


(21)所属しているという安心感

高山:
 確かにモードは、ビロンギング(belonging)、つまり、何かに所属していた 
い、付随していたいという観念が強いですよね。

安藤:
 人間って最初にどこかに所属しているという安心感がないと、やっぱり精神的
に安定しないですからね。


(22)多い月夜のシーン

小峰:
 ほんと、夜の話がアンには多いですよね。
 アンが夜、明かりもつけずに部屋に一人でいて、差し込んでくる月の光を楽し
み、遠くの方から聞こえてくる声や音、歌などを、なつかしいと言って聞いてい
ますが、印象的です。

安藤:
 においもアンにはいっぱい出てきますよね。

深山:
 私は、電気をつけないで、月の光で過ごすのって結構好き。

飯野:
 幸せなときは、月の光って楽しいですけど、そうでないときって結構不安にな
りますよね。

安藤:
 ウォルターも、父さんと一緒にいたときは月の光が楽しかったのに、ひとりぼ
っちだと怖いよ〜って、イングルサイドに(アンのリラ出産のとき)ひとり帰っ
てくるとき言っていますよね。


(23)羊の脚を食べるアン!

飯野:
 第28章の最初の方で、「スーザンの詰め物をした羊の脚」って出てくるんです
が、どんな料理なんでしょう?
 豚足(とんそく、あるいはコション)みたいなものかな〜?
 もも肉のあたりなんでしょうかねぇ?
 何を詰めたんだろう?
 しかも、アンが昼食に食べているんですけど……。


(24)働き者のスーザン

飯野:
 スーザンって、ほんと、働き者ですよねぇ。
 どのくらいお金もらっていたんでしょうね?
 老後とかどうなるの〜?(大丈夫?)


(25)過労のギルバート!?

齊藤:
 やっぱ、一番働いているのはギルバートでしょうかねぇ?
 ほとんど産婆さんですよね〜。
 週に8人とか、1日に3人とか赤ん坊をとりあげていますからねぇ。
 看護婦さんとかいるんでしょうか?

安藤:
 アンが最初に子供を産むときのシーンには看護婦が出てきますけどね。

齊藤:
 ギルバートをアンが看護婦みたいに手伝っているようでもないですしね……。
 ギルバートが死んだらどうなるんだろう?

★:
 生命保険にでも入っているんでしょうかねぇ?
 子供達はてんでちりじりになってしまうんでしょうかねぇ……。


(26)アンの書いた追悼文

飯野:
 ミッチェルさんの死に際して、アンが書いたという追悼文(追悼の詩)(23  
章)がありますよねぇ(これが唯一、アンがものを書いている具体的な証拠?)

安藤:
 これは、実は、モードのお葬式のときに実際に読まれた追悼詩なんですよね。

★:
 へぇ〜……、じゃあ、この詩ってモードが自分のために書いたんでしょうかね
ぇ……。亡くなる3年前ですし……。なんだか凄いというか、悲しいというか… 
…。


(27)アンという母親像

安藤:
 モードは幼くして母親を亡くして、ほとんど母のことは知らないわけですね。
 モードはアンのような母がほしかったんでしょうかねぇ?
 それとも、アンのような母になりたかったというのもあるかもしれませんね。
 もちろん、読者へのサービスということでアンをあのような母親像に描いてい
るということもあるでしょうけど。


(28)ジェムの告白

飯野:
 ジェムが真珠をお母さんのアンにあげて、実はそれが偽物だと分かって告白す
るお話がありますが、すごく(描写に)力が入っていると思います。


(29)母親業の精算

田崎:
 モードは「母親業の精算」という意味でこの『イングルサイドのアン』を書い
たのでは、と思います。
 自分の子供も大きくなってしまっていたし……。


(30)クリスチンとアン

安藤:
 41〜43章のクリスチンとアンの話、これって、アンは家庭に入ってしまったけ
ど、そうでない人との対決でしょうかねぇ?
 でも、彼女(クリスチン)、職業なに?
 ブリーダー? 社交界の華(はな)? 歌手?

飯野:
 すごく二人に対抗意識みたいなものがありますよね。

安藤:
 アンも「かわいそうな子持たずのクリスチン……」と思ったり、「『なんとい
う大家族だろう!』と、アンは勝ち誇った調子で繰返した。」とありますよねぇ。
 すごいね〜……。結構、アンってキツイよねぇ。
 こういうキツサって、最初の『赤毛のアン』(アン・シリーズ第1巻)の頃に 
はあまり見られなかったものですよね……。

※読書会後の補足:
 安藤さんの最後の「アンってキツイ」という発言に関してバターカップス・メ
ーリングリストで梶原由佳さんは、

 私もアンのことばの棘を感じていたので同感です。アンのような生き方を選ば
ない女性もいるわけですし。モンゴメリ同様、アンも「同類」かどうかではっき
り人を分類していましたね。もし、彼女たちが今存在していたとしたら、私なん
て目もかけてもらえないだろうな、なーんて考えたりします。皆さんは、アンが
もし実在したら「心の友」になれそうと思いますか?

と感想を書かれるとともに、問いかけられました。
 それに対し、藤本篤子さんが、次のようなお返事を書かれました。

 子どもの頃には「オールド・ミスになるかも」と言っていたアンは、どこに行
ったのやら。アンは、子ども時代に自分が満たされなかった「家庭」を、自らの
手で作ろうと考えたのですね。モンゴメリ自身も、いろんな意味で家庭には恵ま
れなかったわけで、「頼りになるお父さんと、優しいお母さんと、子どもたち」
という「健全な家庭」が、一種の強迫観念だったのではないかという気がします。
 でも、理想的に書きすぎているせいか、どことなく現実味に乏しいように思え
ます。きっとそれは、本人も承知の上だったのでしょう。そんなこんなで「書き
たくなかった」のでしょうね。
 学生時代までのアンだったら、(「心の友」に)なれるかも。
 その頃までのアンの言動には、共感できるところが多いですから。孤児だった
頃の体験が、まだしっかり残っていて、「人間、どこかに属すのはとても安心だ
けれど、基本的にはひとりだから、『属す』ことの安心感が増す」というのを、
ちゃんと心得ているという感じですからね。でも、子持ちになってからのアンに
は、それが感じられなくて、私のほうが引いてしまいそう。新婚時代は、まだそ
うでもなかったけれど、子持ちになってからは「普通の田舎のおばさん」的にな
ってしまったものね。
 もし子ども時代から友達だったとしたら、子どもが生まれたのを境に、共通の
話題もなくなり、私の人生からフェードアウトしていっただろうな、という気が
します。

 さらに、この藤本さんのお返事に対し、

 「もし子ども時代から[アンの]友達だったとしたら、子どもが生まれたのを境
に、共通の話題もなくなり、私の人生からフェードアウトしていっただろうな、
という気がします。」と篤子さんが書かれていたけれど、なんだかわかるなあ。
だって、アンって平凡ながらも、あんまりにもさとりすぎているものね。
 そうはいっても、モンゴメリ自身は出産後かなり太っちゃったんだから、私と
しては親近感湧きます。晩年のモンゴメリは、主婦としても完璧にちかくって、
もしかしてリンド夫人に似ていたかもしれませんね。

と、梶原さんは書いておられます。
 皆さんも、アンの「変貌」につき、どうお感じになられますでしょうか?
 私(齊藤)は、アンが大人になってから、かつての自分のような存在の恵まれ
ない子供たちに対してほとんど考えを巡らせることも、援助することもなく、  
(客観的には)ハイソなぬくぬくとした世界に遊んでしまっているのを非常に残
念に思います。それどころか、『アンの夢の家』においては、夢の家を手放すに
際してアンは、「こんなに引っ込んで不便な家だから、貧乏な、働きのない、渡
り者の家族が借りるかもしれないわ。──そしてさんざん荒らして、──ああ、
冒涜よ。あたしは我慢ならないわ」「夢の国の地理なぞ知らない、この家の魂や
生命の歴史も知らない渡り者に荒されるよりはまだましだわ。そんな人たちに来
られたらひとたまりもないもの」(中村佐喜子訳・角川文庫)などと強く抗議し
ています。気持ちは分かりますが、かつての自分に他ならない「渡り者」(原文
では“wandering family”、“horde”、“such a tribe”などと、侮蔑の意味 
も込められて書かれています)という人々に対して、あまりにも心ない発言かも
しれません(最初はそうやってアン自身社会に受け入れられなくて苦労したはず
なのに!)。もともと孤児なんだから分をわきまえよ、などと言うつもりは毛頭
ないのですが、一度ぬくぬくとした世界に来てしまった後のアンは、実に傲慢で
不遜でキツイところもあります。そこらへんは、『あしながおじさん』のその後
のお話(続編)と対比してみるとずいぶん違うなと思うのですが(そのせいか、
「あしなが学生基金」や「あしなが育英会」は存在しても、「アン学生基金」や
「アン育英会」といったものは、少なくとも日本では存在しませんね)、いかが
でしょうか?


(31)ギルバートの専門

小峰:
 ギルバートって何科の医者なんでしょう?

齊藤:
 たぶん、産婦人科+小児科+内科+たまに外科+その他……?

安藤:
 というか、僻地の医者なので、特に区別はないんでしょうね。


(32)地元開業しなかったギル

飯野:
 なんでギルバートはアボンリーで開業しなかったんでしょうねぇ?

安藤:
 おじさんから受け継ぐためにグレン村に来たわけですから、地盤とか、そうい
ったものがあるんだと思いますけど。
 でも、アボンリーも医者がいなくて困っていたんですけどねぇ……。

齊藤:
 マリラにリンド夫人に、双子の兄妹の家庭に、ダイアナの家庭に、舅に……と、
話が大変になりすぎるからアボンリーから別のところに話を移したんじゃないで
しょうか。

★:
 なるほど。確かに大変ですよね〜、それじゃ。


(33)登場人物の名前に隠されたもの

高山:
 モードの作る話の中には、やっぱりモードが過去に関わった人々の名前(の変
形)がいっぱい出てきますよね〜。


(34)二卵性双生児

小峰:
 ナンって本当はアンという名前ですよね。
 アン・ブライスが二人になっちゃう?

安藤:
 だからナンと発音したんでしょうね。
 ミドルネームもあるしね。

齊藤:
 ナンとダイって、二卵性双生児なんですよね。

安藤:
 ナンはアンなのに、赤毛じゃなくて黒毛なんですよねぇ……。

飯野:
 二卵性双生児の場合は、双子でも大きく差が出ちゃうことがあるから、わりと
片方がひねちゃったり暗くなっちゃうことがありますね……。
 そういう双子を(小学校で先生をしているので)受け持ったことありますけど、
やっぱり、そうだとちょっとかわいそうなんですよね……。

片岡:
 ナンの方が美人みたいだけど、ギルバートはダイの方がアンに似ていて好きみ
たいですね。

安藤:
 エミリーやモードやアンの分身が、ウォルターとかナンに反映されているよう
な気がしますね。


(35)大忙しの婦人会

高山:
 婦人会、たった2枚のキルト作りに何人来たか、クイズです!
 〔高山さん全員のフルネームを読み上げて、〕答えは、なんと29人!
 しかも、名前が出ていて分かるだけで!

深山:
 だから、アンとスーザンはキルトはしないで、もっぱら接待に専念しているの
よね。


(36)多彩な登場人物

深山:
 モードは人物の描き分けが本当にうまいわよね〜。
 婦人会のシーンなんて、モードじゃないと描けないわよね。

小峰:
 アンが学校で教えているときも、生徒もたくさん出して、それでいてひとりひ
とりきちんと描き分けていますよねぇ。


(37)知るということ

田丸:
 何も知らずに『イングルサイドのアン』を読むと、ほのぼのとした話なんだけ
ど、やっぱり由佳さんの本を読んでから読み返すと、複雑な気持ちになって、か
えって分からなくなってしまい、子供のときに読んだようには読めなくなってし
まうので、ある意味では残念ですし、またある意味ではより深く読めるようにな
ったと思いますねぇ。
 でも、モードは、あの状態でよくこれを書けましたよねぇ。
 最後までモードの想像力はあったんだろうし、それがあったからこそ生きてい
られたんだと思います。

安藤:
 モードはこのあと、最後の2年は日記も書けなくなっていたんですよね。
 モードにとって、『イングルサイドのアン』のようなものを書けなくなるとい
うことは、死ぬことですからね……。

★:
 そうですよねぇ……。


(38)子供のときの気持ち

深山:
 子供のときに感じた、子供の持つ恐怖感というのは、大人になったら忘れちゃ
うものなのに、モードはよく描いていると思いますよね。

安藤:
 自分の子供とかもよく観察していたんでしょうね。
 モードは子供のときの日記は焼いてしまっていますので、持っていなかったは
ずなんですが、よく覚えていますよね。


(39)「聖書うかがい教」

田丸:
 「聖書うかがい教」なんてものが、冗談で出てくるけど、よく牧師の奥さんだ
ったのに書きましたよねぇ。
 あ、もう『イングルサイドのアン』を書いたときは、牧師は辞していましたっ
けね。
 アンの本をばっと開けて、「アンのお告げ」をうかがうなんていう「アンうか
がい教」なんてのも、面白いかもね〜!?


(40)さくら

深山:
 『イングルサイドのアン』にも桜が出てくるのよね。

安藤:
 うんうん、出てきますよね。
 あの辺(カナダ)の人にとっては、りんごはありふれたものでも、桜って珍し
いものだったんですよね。
 モードには桜に対する思い入れがあったんでしょうねぇ。

深山:
 このあいだ、土崎麻里子ちゃんと電車に乗っていたとき、「モードの前世って、
日本人だったんじゃないかしら?」っていう話が出たんだけど、ほんと、そう考
えるとつじつまが合うのよねぇ。
 桜好きだし、日本人に人気があるし!


(41)モードと日本

小峰:
 『イングルサイドのアン』にも日本が結構出てきますよね。

安藤:
 そうそう!

飯野:
 エミリーでは「日本の王子」まで出て来ちゃうしね〜。

安藤:
 ジャポニズムがはやっていたのも確かですからねぇ。

齊藤:
 赤松佳子さんの論文(会報第21号収録)でモンゴメリ作品における日本を論じ
られていて、なかなか面白かったですよね。
 日本で最近はやったアジアブームみたい?

●:
 アルセーヌ・ルパンとかでも、「日本のカラテ、知ってるか?」なんていう話
が出てきますよね〜。
 オリエンタルなものへの憧れもあるんでしょうね。

安藤:
 アンか誰かが、キモノを着ているというシーンもありますよね。
 ただ、バスローブみたいな感じで羽織っていたみたいですけどね。

深山:
 昔、日本では白木屋(日本橋のつい最近閉店してしまった東急デパートの前  
身)が火災になったとき、着物の下に何もはいていなかったので、恥ずかしくて
飛び降りられなかったという悲劇がありますよね。

齊藤:
 そう言えば、『イングルサイドのアン』にも、「ペニー家はパンツで、ブライ
ス家はズロース」なんて言うシーンがありましたね〜(30章)。

安藤:
 マライアおばさんが赤いフランネルのペチコートをスーザンに贈った(13章)、
とかもありましたね〜。


(42)アニリン赤

★:
 村岡さんの訳の13章に出てくる「アニリン赤の毛糸で手袋を」ってあるんです
が、これ、どんな色なんだろう?
 原文ではマゼンダとなっているんですよねぇ。
 掛川さんの訳には「アニリン赤」とはありませんね。
 どうも赤黒い色?
 あと、手袋といっても普通の手袋ではないみたいですね。
 ロシアのマフみたいなものなんでしょうか?

※この件に関して、読書会後、●麻子さんからメールをいただきましたのでご紹
  介させていただきます。

 さて、読書会後、家に帰ってやっぱり辞書を調べてみたくなってしまいました。
 アニリン赤の毛糸の手袋のアニリンとは?
 辞書によるとやはり染料のことのようです。
 コールタールに含まれている、染料や医薬品の原料と書かれており、コールタ
ールを調べると、石炭を蒸し焼きにして、コークスを作るときに出る黒茶色の粘
りけのある液。防腐用の塗料にしたり……と書かれてあります。
 私が想像する色はペンキを塗る前に使う錆止めの、あの赤茶げた色を思い浮か
べますが、みなさんはどうですか? 村岡さんが訳された時、アニリンという言
葉が日常でも頻繁に使われいたのかしらね???


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 以上、読書会で話題になったことの概略を長々とご紹介いたしましたが、なん
となく、雰囲気をお伝えできましたでしょうか?
 実際には、喧々囂々(けんけんごうごう)の議論をしているわけでも、しかめ
面をしていかにもマニアぁ〜って感じで話しているわけでもなく(う〜ん、はた
からみたらどうかな?)、お菓子とお茶をいただきながら、ぴーちくぱーちく、
わりと軽いノリでもって楽しげにやっているわけです。
 現在、読書会は、関東と中部で年に数回のペースでおこなわれていますが、こ
れ、なかなか楽しく、そんなに構えなければ出席できないようなものでもありま
せん。お近くで読書会が開催される場合、いえ、よろしければお近くでなくとも、
ぜひ一度、ご参加いただければ、と思います。
 それでは、また、第3回の関東読書会が開かれる日を楽しみにして待っていた 
いと思います。




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