
尋問中に示された証拠番号(甲号証は原告提出書証、乙号証は被告提出書証)にリンクがはってあります。クリックをして、ウィンドウの大きさを適当に調整して、対照して読むと理解しやすいです。また、ところどころに、本ホームページ作成者のコメントが入っていますので、併せてお読みください。
平成11年6月7日午後1時30分 本人尋問: Kさん
裁判長は、宣誓の趣旨を説明し、本人が偽証の陳述をした場合の制裁を告げ、別紙宣誓書を読み上げさせてその誓いをさせた。
実は、この時もKさんは「宣誓書」に書かれていることの意味がわからないまま、廷吏に指示されるまま、自分の名前と住所を書いていたのだ! なんと本事件と全く同じ状況が法廷で繰り返されていたのである!!
*Kさんはろうあ者である。
質問に対しては手話通訳者の通訳する手話を見て、手話で答えた。
手話通訳者はKさんの手話を見て、日本語に換えて音声通訳した。
本人尋問調書は手話通訳者の日本語音声通訳にしたがって記載されている。
以下は、その抜粋である。
被告代理人 (山田)
生まれてから学校を出るまでのことからお聞きします。先程の話では、大正14年生まれということですね。
はい。
生まれつき耳が聞こえなかったんですか。
はい。
耳はどのくらい悪いのでしょうか。(注:聴力レベル、身体障害者手帳について)
105です。
身体障害者手帳をお持ちですね。
はい、持っています。
その等級は何級ですか。
1種1級です。
初めからその等級だったのですか。
一番初めは2級でした。変わって1級になりました。
どの程度の音なら聞くことができるでしょうか。
全く聞こえません。
例えば太鼓の音ぐらいは聞こえますか。
響きは分かります。音は聞こえません。
また、あなたは口でしゃべることができますか。
できません。
そうすると、聞くことも話すこともできないわけですね。
聞こえません。自分が発している声も聞こえません。
それは生まれてから現在までずっとそうですね。
そうです。
学校は日本ろう話学校に入ったのですか。
はい、そうです。
そしてずっと行って、高等部を出たんですね。
そうです。
日本ろう話学校に入ったのは、年いくつのときでしたか。
11才のときです。
それまでは学校へは行っていなかったのですか。
行っていません。
被告代理人 (山田)
あなたは今、コミュニケーションの方法として手話を使っているのでしょうか。それとも筆談でしょうか。
手話です。
手話はいつごろ覚えましたか。
学校に入ってから、友達との話の中で自然に覚えたんだと思います。
学校での授業方法についてお聞きします。日本ろう話学校では、授業のコミュニケーション方法としてどういう方法をとっていましたか。
発音、口話で勉強しました。
学校での授業は、つまり口話、すなわち口の動きを読みとらせていたんですね。
そうです。そういう訓練です。
あなたは口話で十分なコミュニケーションができますか。
難しいですね。
学校の授業以外で、ほかの人たち、例えば友達とかそういった人たちとのコミュニケーションはどうしていましたか。
手話を使います。
学校では、コミュニケーションの方法は口話でやれと教えているわけですか。
「手真似をしないで、口で話してください。」と厳しくされていました。
学校の授業では本は使うのですか。
使いません。
文章は使わなかったですか。
使ったかどうか忘れました。覚えていません。
本とか文章とか使ったかどうか、あんまりよく覚えていないということですか。
もう昔のことですので。
学校で、銀行とのお付き合いの仕方なんて教わりましたか。
いえ、教わっていません。
学校で学科は何が得意でしたか。
洋裁ですね。
国語や社会、また算数といったものはどうですか。得意ですか、それとも苦手でしたか。
数学は苦手でした。
国語や社会はどうですか。
程度は低かったと思います。
学校を出て、新聞なんか読めますか。
読めません。難しいです。
例えば、お金を借りるときの住宅ローンの金利の新聞記事など、読んで分かりますか。
分かりません。
被告代理人(山田)
あなたに洋裁の直しの仕事を持ってきてくるお客さんは健聴者ですか。それとも聾唖者ですか。
健聴者です。
その健聴者とはどういうふうにしてコミュニケーションをしますか。
手話はできるんです。
その洋裁の仕事はどのぐらいでしたか。
波がかなり激しくあります。
生活はできましたか。
障害年金をもらっていますので、それを合わせていますから大丈夫です。
洋裁以外の仕事はしたことはないのですか。
ありません。
あなたの親戚とか付き合っている人に健聴者がいますね。
はい。
例えば妹のY・Y子さんとか、奥さんの妹のA・K子さんとか、この人たちは健聴者ですね。
はい。
その人たちと話をするときは、どういう方法ですか。
手話もできますし、表情身振りなどもできますので、小さきときから付き合っていますから慣れています。
さっき口話ではよく分からなかったとおっしゃいましたけど、Y・Y子さんとか
A・K子さんとか分かるわけですか。
片言の言葉なら分かります。文章になったような言葉はわかりません。単語程度です。
Y・Y子さんから難しいことを口話で言われて分かりますか。
分かりません。
病院へ行ったりすることあるでしょう。
あります。
そういうときは手話通訳は行きますか。
はい。
大きな買い物したりするようなとき、一人で高い買物したりそういうようなときに、一人で買い物できますか。
できません。通訳を連れていかなければなりません。
その通訳はどこに頼むのですか。
三鷹市の通訳を頼みます。
あなたは銀行に預金口座を持っていますか。
あります。
自分で作りましたか。
ありません。妻に頼んで、妻は通訳を伴って行きました。
奥さんが通訳と一緒に行ったということなんですね。
はい。またはAさんが一緒にいきました。
要するに、あなたもあなたの奥さんも自分だけでは銀行と取引はできないんですね。
できません。
銀行にキャッシュカードというもの持っていますか。
持っています。持っていても使いません。難しいんです。
そうすると、銀行にお金を預けたり下ろしてたりすること、それはあなた一人でできますか。
しません。
今、裁判で問題となっている契約についてお聞きします。平成3年3月ごろ、Y・Tさんが第一勧業銀行の行員さんを連れてきたことありましたか。
あります。庭から入ってきました。
Y・Tさんと一緒ですね。
はい。
そのとき、だれかいましたか。
妻がいたんですが、忙しくてすぐにその場を去りました。
甲A第2号証(当座勘定貸越約定書)を示す
こういうような書類を見た記憶はありますか。
覚えてないんですけど、名前は書いたということは覚えていますけども、ほかは覚えてません。こういうものだったのかなあ。
金額は書き込まれていたでしょうか。
ありませんでした。
甲A第6号証(債務承認並びに弁済契約証書)を示す
こういうようなものを示された記憶はありますか。
住所名前は覚えありますけれども、この上の住所とY・Tさんのところはなかったと思います。
裁判長
上の住所と今おっしゃったんですか。上のT工機とY・Tさんの分かな。
被告代理人(山田)
甲A第6号証でどこか空欄のところはありましたか。
T工機のところははんこでありました。次の囲いのY・Tさんのところについてはなかったと思います。ただ、よくははっきりは覚えてませんけれども。T工機株式会社のY・Tさんというはんこのところについてははっきりと覚えてます。あったということです。
それから1000万円という金額。
そこはありません。
甲A第7号証(根抵当権設定契約証書)を示す
このようなものを示された記憶はありますか。
名前は書いて、そして名前の右側にあるはんこについては押しました。左側にあるはんこについては銀行員の人が押しました。押すところ知りませんので、銀行員がそれを押しました。
7000万という数字は書いてありましたか。
7000万という数字は書いていませんでした。
あなたがYさんや銀行の人たちと会っていた時間はどのくらいでしたか。
10分、名前を書くだけだし、10分前後で帰られたんだと思います。
そのときに山口さんから何か説明がありましたか。
ありませんでした。
また、銀行の人からは説明がありましたか。
ありません。
YさんかT工機が第一勧業銀行からお金を借りているんですけれども、その借りたお金を返さないとあなたが土地を取られるということを知っていましたか。
分かりません。
別紙@ (「根抵当」と記載された書面)を示す
この言葉、意味分かりますか。
分かりません。
別紙A (「保証」と記載された書面)を示す
これは。
分かりません。
別紙B (「担保」と記載された書面)を示す
担保
分かりません。
別紙C (「当座貸越」と記載された書面)を示す
当座貸越、これは難しいんですけど、意味分かりますか。
難しいです、分かりません。
今お示ししたような言葉、意味分からなかったんですね。
そうです。
あなたはこれらの書類に何のために署名させられるんだと思いましたか。
何も考えてません。意味が分かりませんでした。
全く分からなかったんですか。
はい。
三和銀行との契約のことについてお聞きします。平成6年にはYさんが三和銀行の人を連れてきましたか。
あったと思います。
三和銀行の人かどうか、はっきり記憶していないんですか。
はい、そうです。
甲B第2号証(金銭消費貸借契約証書)を示す
これには見覚えがありますか。
私は名前を書きました。銀行の人がはんこを押しました。私は自分の名前の横の印鑑については自分が押しました。どこに押していいのか分からないので、銀行員の方が押しました。
金額500万円というところ、書き込んであったでしょうか。
あったのかなかったのか、覚えていません。なかったのではないかと思います。
甲B第3号証(根抵当権設定契約証書)を示す
これは記憶ありますか。
名前は書きました。T工機のYさんのスタンプの部分はあったと思います。2段目のY・Tさんの名前のところについては、あったのかどうなのかは覚えていません。
Kの判が2つありますけれども、これはだれが押したんですか。
銀行員が押しました。
金500万円というのは書いてあったのでしょうか。
ありませんでした。
このときも、Yさんや銀行員から説明ありましたか。
ありませんでした。
このときはYさんと銀行員と会っていた時間は、どのくらいでしたか。
名前を書いてそしてはんこを押しただけですから、大体10分少々だったと思います。
平成3年3月の第一勧業銀行の人が来たときと同じぐらいの時間でしたか。
同じぐらいだったと思います。とにかく名前を書いてはんこを押して、そして自分の顔を見て、それでもう帰っていきましたから。
第一勧業銀行のときも、三和銀行のときも、だれからも契約の詳しい説明はなかったんですね。
ありません。ないのは同じです。
「名前を書いてくれ。」と言ったのはだれですか。
Yさんです。
どんなふうにして「名前を書いてくれ。」と言いましたか。
銀行員と一緒に来まして、それで書類を見せて、名前住所と、まるがしてあったところに書きました。判は妻に頼んで持ってきてもらって押しました。自分が押す以外のところについては、銀行員が押しました。
まるのあったところに名前を書いたとおっしゃいましたけれども、まるのなかったところもありましたか。
銀行のほうから提出された紙にはまるが書いてあります
まるのある場合もありまるのない場合もあったのか、それともすべてにまるがあったか。
第一、三和銀行、どちらか、とにかくまるはありました。
「判を持ってこい。」と奥さんに指示したのはだれでしたか。
私が「持ってきて。」と。私が妻に言って、持ってきてもらいました。
だからその前にYさんから判を持ってくるように言われてませんか。
銀行員が言って、Yさんがそれを聞いて私に伝えて、私が妻に言って、持ってこさせて、そして判を押しました。