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平成15年5月14日判決言渡
平成14年(ネ)第3597号 保証債務履行請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成9年(ワ)第11614号)

主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、控訴人(Kさんのこと)の負担とする。

事実及び理由

第1 当事者の求める裁判
1 控訴人(Kさんの求める判決内容)
(1)原判決を取り消す。(東京地方裁判所の判決を取り消してほしい)
(2)被控訴人の請求を棄却する。(UFJ銀行の請求をしりぞけてほしい)
(3)訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。(訴訟費用は東京地裁、東京高裁の分ともUFJ銀行に負担させてほしい。)

2 被控訴人(UFJ銀行の求める判決内容)
 主文同旨(上記主文と同じ)

第2 事案の概要
 事案の概要は、次のとおり付け加えるほか、原判決(第1審の東京地裁の判決)「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1 原判決書2頁8行目末尾に「また、当審において、控訴人(Kさん)は、被控訴人(UFJ銀行)の意思表示を第三者(UFJ銀行から融資を受けたKさんの親戚のY)の詐欺を理由に取り消した旨の主張を追加した。」を、4頁7行目末尾の次に行を改め「(4)Yによる詐欺の存否及び被控訴人の悪意又は重過失の有無」を、11行目の「原告担当者」の次ぎに「OT(以下「O」という。)」をそれぞれ加え、9頁14行目の「OT」(以下「O」という。)」を「O」に改める。

2 当審における追加主張(控訴人)(以下はろうあ者Kさん弁護団が控訴審で主張したこと)
 仮に、本件各契約の不成立及び錯誤無効の主張が認められないとしても、本件各契約における控訴人の被控訴人に対する意思表示は、次に述べるとおり、Yの詐欺によるものであり、被控訴人(UFJ銀行)はこのことを知っていたか、又は知らなかったとしても重過失があった。よって、控訴人(Kさん)は、平成15年1月28日付けの準備書面をもって、本件各契約締結の意思表示を取り消す。
 すなわち、(1)T工機は、本件各契約締結の際、約9600万円もの多額の負債を抱えていた一方、同社所有の不動産はなく、代表者であるY所有の土地建物についても、既に金融機関の借入に対する担保として提供されていて、剰余価値は全くなく、また、当時債務超過の状態に陥っていたため、T工機があらたな借入をしても、返済の見通しはなかった上、(2)Yは、控訴人に聴覚障害があり、社会生活上の取引経験が乏しく、銀行取引についての知識もなく、文章力も十分でないことを承知していたのであるから、このような場合、信義則上、控訴人が十分な情報に基づき正しく判断できるようにするため、控訴人に対し、銀行から借入金額、T工機の資産内容及び収支状況と返済の見通し、T工機が主債務の返済ができない場合には控訴人が保証人又は担保提供者として銀行に対する返済の責任を負う旨を告知すべき義務があったにもかかわらず、あえて告知しなかったため、控訴人は、本件各契約に関し、被控訴人の提出する書類に署名押印しても何の責任も生じない旨誤信し、その署名押印に応じた。他方、被控訴人は、手話通訳者によって控訴人の保証意思を確認すれば控訴人が詐欺を受けた状況が瞬時に明らかとなり、Yの詐欺の事実を知り得た。よって、被控訴人は詐欺について悪意であるか、仮にそうでないとしても重過失がある。

(被控訴人)(UFJ銀行が控訴審で主張したこと)
 控訴人の当審における追加主張(Yの詐欺による取消し)は、控訴審の弁論終結予定日である平成15年2月10日を目前としてされたものであり、明らかに時機に後れた攻撃防御方法であるから、却下を求める。
 また、同主張事実はすべて否認し、意思表示の取消しの主張は争う。

第3 証拠関係
 証拠関係は、本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第4 争点に対する判断(これ以下が、東京高等裁判所の判断)
 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと考えるが、その理由は、次のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。(東京高等裁判所も、東京地裁の判決と同じようにろうあ者Kさんの主張は筋が通らないと考えるが、その理由としては次に述べること以外は、東京地方裁判所の判決に書いたのとまったく同じである。)

1 Yの詐欺について
 Yの詐欺についての控訴人(Kさん)の主張が、当審(東京高裁)において口頭弁論終結間際にされたものであることは明らかであるから、時機に後れた防御方法であるといわざるを得ないが、これにより格別訴訟の完結を遅延せしめるとまでは認め難いから、同主張を民事訴訟法297条、157条1項により却下することを求める被控訴人(UFJ銀行)の主張は採用しない。(UFJ銀行は、Kさん側が控訴審の終わり頃になって「第三者の詐欺による取り消し」の主張を始めたのだから、そのような主張は審理する必要がないと言うが、確かに主張を出すのは遅かったが、それによって訴訟進行が遅れるというほどのことではなかったから、これについては一応審理の対象とします。)
2 控訴人は、Yの不作為による詐欺を主張し、告知義務の基礎事実として、(1)T工機は本件各契約当時債務超過の状態にあって、新たな借入を受けても返済の見通しがなかったこと、(2)Yは、控訴人が聴覚障害により銀行取引等についての知識を欠いていることを認識していたこと、を掲げる。しかしながら、(1)については、これを裏付けるに足りる証拠を欠き(本件各契約締結時に直近するT工機の決算報告書{乙18の(2)及び(3)}によっても債務超過の事実は認めることができないのみならず、同社が本件において金融機関から融資を受けていること、本件借入は東京信用保証協会の保証に基づくものである{甲B2}こと、T工機が本件借入について銀行取引停止処分による期限の利益を喪失した時期は、同借入から約2年経過後であることに照らせば、本件借入当時、新たな借入による返済の見通しがなかったとまではいえないというべきである。)、また(2)については、前記判示のとおり、控訴人(Yさん)の聴覚障害にもかかわらず、控訴人(Yさん)が本件各契約書の内容を理解しないまま、これらに署名押印したとまでは認められないことからすれば、結局いずれも認めるには足りないといわざるを得ない。そうすると、Yの告知義務を認めることはできないから、同人による欺罔行為を認定することはできない。のみならず、被控訴人(UFJ銀行)がYによる詐欺の事実について悪意であったとか重過失によりこれを知らなかったとする点については、これを認めるに足りる証拠はない(本件においては、既に述べたとおり、手話通訳者を付けることが望ましかったとはいえるものの、これを付けなかったことに過失を認めることはできない。)。
 そうすると、控訴人(Kさん)のこの点に関する主張は失当であるといわざるを得ない。

第5 結論
 よって、被控訴人(UFJ銀行)の本件請求を認容した原判決(東京地裁判決)は相当であり、本件控訴は理由がないからこれをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条1項、61条を適用して、主文のとおり判決する。

(平成15年4月14日口頭弁論終結)

東京高等裁判所第17民事部
裁判長裁判官 秋山壽延
裁判官 堀内 明
裁判官 志田 博文


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