貴庁平成9年(ワ)第11614号 保証債務履行等請求事件
原 告  株式会社ユーエフジェイ銀行
被 告  K・Y

準 備 書 面

 平成14年3月4日

東京地方裁判所民事第33部 御 中

         被告訴訟代理人弁護士     田 口 哲 朗

             同           山 田 裕 明

             同           守 屋 典 子

             同           田 門   浩

第1 本件訴訟の争点

1 本件訴訟は,原告の訴外T工機株式会社(以下T工機という)に対する平成6年3月25日付金500万円の貸付について,被告が連帯保証するとともに,被告所有の不動産について極度額500万円の根抵当権を設定したとして,原告が被告に対し,貸付金残金363万4789円及びこれに対する遅延損害金の支払請求と根抵当権の存在の確認を求めたものである(以下,本件連帯保証契約及び根抵当権設定契約を本件契約という)。
 しかしながら,被告は先天的に聴覚に障害のある人であって,十分な学校教育を受けておらず,多くの先天的に聴覚に障害のある人がそうであるように,被告の文章の理解力や抽象的な漢字文字の理解力は低かった。また,聴覚の障害に影響されて,言語にも障害を持ち,音声で自己の意思を他人に伝達する場合も,他人の意思を認識する場合にも専ら手話をコミュニケーションの手段として用いてきた。
 したがって,本件契約の際にも,当然のことながら,原告行員によって,本件契約内容について,手話通訳者を介した十分な説明がなされ,被告が契約内容について十分な理解をした上で,本件契約が締結されるべきであった。
 ところが,原告行員は本件契約の際に,手話通訳者を付けず,被告に対し,金銭消費貸借契約証書(甲B第2号証),根抵当権設定契約証書(甲B第3号証),保証書(甲B第6号証)(以下これらの契約書をまとめて本件契約書という)を示して,保証人欄及び根抵当権設定者欄に被告の署名・押印を求めた。
 被告は,本件契約の内容について手話通訳者を介した十分な説明を受けていなかったため,本件契約書の「保証」,「根抵当権」,「担保」等の法律用語の意味内容について,全く理解しないまま,原告行員に指示されるままに本件契約書に署名・押印してしまった。

2 従って,本件契約書作成にあたって,被告には「連帯保証」の意思も自己所有の不動産について「根抵当権」設定の意思も全くなかったものであり,原告と被告間の本件契約は不成立である。

3 仮に,百歩譲って,被告による本件契約の表示上の効果意思があったものと認められるとしても,被告には,表示上の効果意思に対応した内心的効果意思を欠いていたものであるから,本件契約は錯誤により無効である。

4 尚,被告の錯誤無効の主張に対して,原告は被告に重過失があったと主張するが,原告には本件契約締結にあたって,聴覚言語に障害のある被告に対し,手話通訳者を付して契約内容を十分に説明する義務があり,原告行員がこれを怠り,手話通訳者を付した説明を行わなかった以上,被告に重過失があったとは言えないことは明らかである。


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