小学校5年の頃だったか、学校から帰る途中、小犬の秋田犬がうろうろしているのを見た。「捨て犬だ。かわいそうだけど、家にはロジィがいるもんね。」私は、犬と目を合わせないように帰った。数時間後、高校生の兄が帰ってきた。なんと、その犬が一緒だった。父はその犬を見て、「これは本当の秋田犬だ。」と言い、何故か我が家で飼う事になった。雌犬で、父からキャッシーと名づけられた。キャッシーは足にけがをしていた。姉と私はアロエを傷口につけ、包帯をぐるぐる巻いてあげた。
キャッシーは優しい犬だった。私たちはよく、拾われた恩を感じているのだ、と言っていた。秋田犬で、当時の私からすれば大きいので、よくキャッシーの背中に乗っていた。しかし、キャッシーは怒らなかった。レンゲ畑でキャッシーと思いっきり走った事がある。走った後、キャッシーと寝転がった。私の顔のすぐ横にキャッシーの顔があった。その時のキャッシーの表情は今でも忘れられない。楽しそうな顔だった。その時、私は「犬も笑うんだ。」と感じていた。
兄の友達で高津君という人がいた。キャッシーに似ている。高津君が遊びに来ると、私はキャッシーのご飯を持って行き、「キャッシー、ご飯よ。」とからかっていた。
キャッシーは交配することになった。父の知り合いの秋田犬の雄とだ。
キャッシーのお産は昼頃から始まり、夜遅くまで続いた。12匹も子供を産んだ。父は7匹の雌をすぐに処分した。他の犬が育ちにくい事と、雌はもらい手がないからだ。私と弟には、「小犬を飼育してくれる所に連れて行く。」と説明された。私たちは、そんな所があるのか、とただ納得していた。真実を知るのは、それから2年後だった。
キャッシーの子供、ヨン
生まれたての小犬はまた可愛い。我が家では1匹だけを残し、後はもらい手が決まっていた。その1匹は“ヨン”と名づけられた。
しかし、キャッシーはジステンパーにかかった。ヨンも感染していた。もらわれていった子犬たちにも感染した後だった。全員死んだ。唯一、早くもらわれていった1匹だけは無事だった。