もくじ2

与太話六 私的ノベル本編

●終焉 − Ver.1 「撤退」  ページ1●

 

終焉の始まり

 

 ラグランジュポイント。太陽と月と地球の引力が微妙な均衡で釣り合っている引力安定点。地球の周りを日々巡って行く月の軌道周辺と月軌道内に、合計5宙域存在する。

それらの安定点に人類は新たなる生活の場を構築した。増え過ぎた地球人口を移住させる為に。

 

 その一大事業は不安定要素や様々な諸問題を内包してはいたものの、今まで真に「理解し合う」ということを得られなかった人類世界を一つにまとめ上げ、表面的ではあるが

世界統一を成し遂げる要因となった。

 むしろ、地球連邦政府が存在しなければ人類移民計画は一笑に伏されていたであろう。西暦1999年とはそんな時代であった。

 

 人々は目の前の欲望に心を奪われ心を失い、未来への展望や投資を忌み嫌った。心ある人々や崇高な夢を持ち続ける人々は、侮蔑され虐げられ迫害され叩き潰され

その全てを奪われた。彼らの有形無形の財産は、万人の為ではなく一部の人々を潤す為だけに利用され続けた。

 名ばかりの法と形だけの秩序とが世の中を支配していた。富は先進国に集中し限りある資源は浪費され、中間国は大国の真似をし、地球人口の殆どを占める貧しい国々の

人々に必要な物の殆どが、たった2割の先進国の人々の遊戯の為と政府の無策と役人の横領の為に塵と消えていった。

 戦争は常に存在し、紛争箇所を示す世界地図から赤い色が消える事はついに無かった。平和を貪る人々はそれを知ろうとも見ようともしなかった。人々にとってそれらは

テレビゲームであり、自分が心優しい人間なのだという自己満足の為の自慰行為の対象でしかなかった。

 また人々は「環境破壊」という言葉を呪文のように繰り返していた。だが地球が誕生してから46億年間、「環境破壊」は一度足りとも起きてはいない。

起きていたのは「環境の変化」である。ゆっくりと確実に変化するか、激しく確実に変化するかの違いはあるが、ただ変わっただけなのだ。

「環境破壊」とは人間側の主観と傲慢さからくる言葉なのだ。人間にとって住み良い環境が他の生物にとって住み良いとは限らないのである。

 そのような腐敗した時代、欲望と憎悪と偽善が連綿と連なる時代、人類の数は60億を超え食料問題・資源問題・環境の激変は深刻さを増した。

 大国群を中心とした国連は、西暦1999年12月25日、地球連邦政府樹立を宣言した。そして成った。

一部では武力による強制や強権の発動もあったが、人類社会は一つの政府下に置かれる事となったのだ。

 巨大で歪んだ歯車が軋みという産声を上げ回り始めていた。終焉の為の終焉は既に始まっていたのである。

 

 余談ではあるが、地球連邦政府が樹立され「人類移民計画」が公表されたこの年、アジアの一国に於いて女性だけで構成されたアーティスト集団が

そのエンターテイメント性を発揮して、一世を風靡していた。多くのエンターティナーがそうであるように、彼女達もまた未来の担い手だった。

 彼女達の歌で笑顔で、多くの人々が心を取り戻し勇気を与えられ、友情という絆と愛という慈しみを再確認した。その歌声は、老若男女健常者障害者を問わず

人々の心に響き渡った。人々の心の救世主、それが彼女達だったのかもしれない。

 試験用コロニー1号基が完成した時、彼女達の大半は中高年もしくはそれに準ずる年齢に達していたが、果たして彼女達はコロニーの内壁に立ち、

人類が後に「第二の故郷」と呼ぶようになる人工の宇宙島の景観を望む事が出来たのだろうか。失われたのか記録は残っていない。

 ただしデータバンクを検索すれば、彼女達の歌は視聴出来るし映像は閲覧出来る。宇宙世紀においても彼女達のファンはいるのだ。

 

 地球連邦政府樹立後数十年、本格的な移民用スペースコロニー第1号基が完成し、移民が開始されたのをもって年号が西暦から宇宙世紀(U.C.)へと移行した。

 スペースコロニーとは巨大な円筒形の人工の構築物である。直径6Km、全長30〜35Kmの大きさを持ち、回転により生じた遠心力で内側の内壁に地球の重力と同じ

1Gの重力が発生する。これにより人々は内壁に立つ事が出来る。1基あたりの許容人口はコロニーの大きさや形式により2500万〜6000万人である。

 人々の生活の場である大地があり、然程の深さは無いが海や湖や河川も用意されている。太陽光は巨大なミラーからの反射が河≠ニ呼ばれる部分より内部へと射し込む。

地上と然程違わない環境で生活出来るのだ。違う点といえば常に上空に雲があり空の色は薄青、地平は空へとせり上がっていき、気象現象が少なかった。

それともう一つ、閉じられた限られた空間だという事だ。

 数メートルの土砂、埋設されたライフライン、数センチの防壁、大規模ライフライン、数メートルの防壁、地下鉄≠ニ呼ばれる公共交通機関、数メートルの防壁、

そして無慈悲な宇宙空間。

 これらのコロニー2基が100キロメートル程の距離でペアになり、他のペアと数百キロメートルの間隔を保ち、リング状に配置されている。その規模は20個ペア

40基にも及び、人口10億人の生活経済圏を形成する。これらのコロニー群は「サイド」と呼称され、サイド1からサイド7まで存在する。サイド7は建設途中であり

1基目のコロニーが2/3程度完成しているに過ぎない。

 そうした場所で人々は子を産み育て、そして死んでいった。

 

 U.C.50年頃、人類の人口は100億を突破し90億人がスペースコロニーや月面都市群に住み、10億人程度が地球に残っていた。地球に残った人々は

地球連邦政府関係者と連邦軍の高官を始めとする支配者らと彼らの家族、それと様々な理由で宇宙(そら)へ上がれなかった人々であった。

 地球連邦政府は移民計画凍結を発表、事実上移民計画は中止された。計画の当初の目的は、地球環境再生事業団の地上スタッフのみを残し全ての人類が宇宙へ

移住するというものだった。だが人口の9割が地球の外へと出て行き、さらに重工業等のプラント地帯がそっくり宇宙へ移った今、自然環境は回復の兆しを見せている、

「もう移民の必要はない。」というのが地球連邦政府高官達の出した結論だった。結局のところ

 「邪魔な愚民共がやっと出て行った。これで住み易くなったのでは。」

という事なのだろう。

 以前よりあった、アースノイド(地球居住者)とスペースノイド(宇宙居住者)との軋轢がこの時より表面化した。それは様々な反地球連邦運動として現れた。

 地球連邦政府は各サイド駐留軍と連邦宇宙軍の艦隊を差し向け、弾圧と軍事的威圧を行い鎮圧していったがそれはスペースノイドの反連邦感情を増大させてゆく

大きな要因としかならなかった。反地球連邦運動は大きなうねりとなり地球圏全体に広まっていく。

 繰り返されるテロリズム。繰り返される弾圧。幾重にも圧し掛かる経済制裁。幾度となく押し寄せる軍事的威圧。

 そんな30年余りが過ぎた。

 

 人類は大人になることを拒んだのかもしれない。

 

天に戦を

 

 U.C.0079、1月3日。月の裏側の宙域に位置する地球から最も遠いサイド3は、地球連邦政府に対しジオン公国として独立を宣言、宣戦布告と同時に戦いの火蓋を切った。

 後に「一年戦争」と呼ばれる争いの始まりである。

 

 スペースノイドとアースノイドの戦争は50億人以上の人々の命を奪いなおも続いていた。

 一度は地球の三分の二を手中に収めたジオン公国軍も、今や宇宙(そら)へと押し戻され、絶対防衛圏の一端を担っていたソロモン要塞も陥落し月面のグラナダ基地と

ア・バオア・クー要塞を結ぶラインしか残されていなかった。

 そして今、ここ宇宙要塞ア・バオア・クーのソロモン側前面には、大艦隊が集結していた。2個の連合艦隊から成る地球連邦宇宙軍の「ア・バオア・クー攻略艦隊」である。

 

 その大艦隊の横数千キロ、月軌道面の上下数百キロの空間に、大小の岩石が浮遊していた。暗礁宙域と呼ばれるものの一つである。コロニーを造る際に生じた余剰材料や

廃棄された「宇宙ゴミ」がラグランジュポイントの所々に集って出来た空間だ。大きな岩石なら周囲数十キロの物まである。

 それらの岩石やゴミの陰に潜み、時を待っている影があった。公国軍第7海兵師団の機動巡洋艦群である。彼らは戦隊ごとにかたまり、艦と艦とを通信ケーブルで繋ぎ

さらに戦隊同士を長大なケーブルで結び通信リンクを形成した。船体に塗られた特殊塗料と光学迷彩は敵のセンサー類を騙す事に成功していた。

 ジオン公国軍海兵隊ザンジバル級機動巡洋艦「ブレーメンV」の、右舷側モビル・スーツ(MS)発進用リニアカタパルト上の愛機、MS−14Fsゲルググ・マリーネ(ゲルググM)

のコクピットの中で、前面スクリーンに最大望遠で映し出されている敵の大艦隊を見つめながらサヤカ・イチイ中尉は、ぼんやりと昔の仲間達の事を思い出していた。

 北欧神話に登場する戦乙女のパーソナルマークが描き込まれたヘルメットの中で独り言る。

 「ケイちゃん達どうしてんのかなぁ...。」

サヤカは小声で言ったつもりだったがマイクはちゃんと拾っていた。自機の後ろに控える2機のゲルググMの中の厳つい部下達の一人が答える。

 「モルゲン・フラウっすか?おそらく火消しとしてこき使われてんじゃないっすかねぇ。腕が立つと便利屋として言い様に扱われますからねぇ。」

 「俺達もだろうが。」

 「違ぇねぇ。」

小隊指揮官としてはこれが二度めのサヤカを、部下達は気遣ってくれているのだろう。有り難いと思った。厳つく屈強で不器用であったが心根の優しい漢(おとこ)達だった。

 「テゴン、ウェルナー、ありがとう。」

漢達に短い礼を送ったサヤカの表情は20歳の大人の女性のそれだった。通信モニターの中で漢達が照れるのが見て取れる。そのさまに苦笑しながらサヤカは深呼吸をした。

再度前方スクリーンに目を戻した彼女の顔は、一人の前線指揮官の顔だった。僚機の状態を示すステータスモニターを目で確認しながら、口頭で追確認する。

 「2番機、3番機、状態知らせ!」

即答が返ってくる。

 「2番機、異常無し!」

 「3番機、準備良し!」

サヤカは短く肯いた。

 「よろしい。」

 サヤカが「大丈夫。やれるさ。いや、やらなきゃね。」と思ったその時、上官から通信がくる。

 「12小隊、サヤカ・イチイ中尉。準備はどうか?」

女性の声であった。サヤカは緊張して応える。

 「はっ。準備は万全であります。」

 「ふむ。では、お前の方はどうなんだ?大丈夫か?」

 「はい、中佐殿。緊張はしていますが大丈夫です。いけます。」

 「ははは。正直だねぇ。正直な娘は好きだよ。でも、ビビったら置き去りにするからね。わかったかい?」

 「はっ!肝に銘じておきます!」

 「ふふふ。では、お手並み拝見といこうかねぇ。これより艦隊内有線通信封鎖。発進準備。5分後に発進。」

 「12小隊、了解。」

通信モニターの中の女性将校は「よしっ!」といった体で、サヤカを一瞬見つめると通信をOFFにした。

 ジオン公国軍海兵隊中佐シーマ・ガラハウ、それがサヤカの所属する大隊の大隊長であった。年齢は30代後半と思われる。

彫りの深い顔立ちに長い黒髪、鋭い眼光、荒くれ男達を黙らせる威勢の良い啖呵、それでいて部下思いの一面を時折覗かせる秘められた優しさを併せ持ち

「ソロモンの女豹」と異名を取る超一流の武人である。

彼女と初めて対面した時、「ユウちゃんに似てるけど、ユウちゃんよりおっかね。」とサヤカは思ったものだ。

 第7海兵師団の機動巡洋艦群は通信ケーブルを各々が巻き戻して静かに収納し始めた。同時に両舷のMS発進用デッキのハッチが開放されていく。

 刻(とき)が来たのだ。

 

 ア・バオア・クーから一条のメガ粒子の光が連邦軍艦隊に向け放たれた。そして爆発の光。それが始まりだった。

連邦軍艦隊から無数の大型ミサイルが発射された。津波の様に押し寄せるミサイル群は、ア・バオア・クーの至る所に美しい光球を発生させた。

 サヤカのゲルググはようやく直に敵艦隊をそのセンサーに捉えた。今までの映像は母艦からの有線通信で送られてくるものだった。

 サヤカの視界の中で発進シークエンスの表示が流れて行く。赤から黄、そして青へ。

 「ワルキューレ34、いきます。」

無表情で発進を告げる。

 リニアカタパルトがゲルググを宇宙(そら)へ放り投げた。背中のシュツルム・ブースターはまだ点火させない。先に発進した他の隊が前方に見える。同時に射出された

僚機は両脇にいる。サヤカ達の遥か下方をメガ粒子ビームが追い抜いて行く。各母艦達からの砲撃が開始されたのだ。

 ゲルググの全てがほぼ同時にブースターを点火させた。一気に増速する。敵艦隊からはまだ対空砲火は上がってこない。突如現れた海兵隊艦隊に気を取られている

のかもしれない。

 「みんなの分は残しといてあげないよ。」

 サヤカは茶目っ気たっぷりに心の中で囁いた。

 

 モルゲン・フラウ中隊のゲルググと2機のモビル・アーマーはミサイルの雨の真っ只中にいた。

 自機の全高と然程違わない大きさのミサイルの群れが、全ての物を押し潰すかの様に押し寄せる。前方に布陣していた他の大隊の半数は既にミサイルの餌食となっていた。

対艦・対要塞ミサイルの直撃を受ければMSなど造作も無く木っ端微塵となる。戦艦でさえただでは済まない。

 モルゲン・フラウ中隊全機はミサイルを避けようとすれば避けられたが、全員避けてはいなかった。前方より迫るミサイルを撃ち落としていたのだ。

射貫いたミサイルの爆発の中から、さらに後続のミサイル群が現れる。ビームライフルを連射させながらユウコは苛立ちを隠せなかった。

 「ぬあああああ!!むかつくー!!きりねぇーー!!」

それは独り言だったのだが、ナツミとケイとカオリは同時に返答した。

 「右に同じぃ!!」

 3人は一瞬で30発ほどのミサイルを射落とし、前に出ながら叫ぶ。

 「ユウちゃん!前に出ないとやばいよ!」

 「ここじゃ射角が狭すぎるもん!」

 「味方を巻き込んじゃう!」

ユウコは手元のディスプレイのミッションテーブルを見て、中隊の所属する大隊の受け持ち戦区が以外と広大なのを再確認する。

 「わかった!おいツジ!アホミサイルを薙ぎ払え!!」

ノゾミは嬉しそうに応える。

 「あ〜い!ナカザワさん、アベさん、射線上から退いてくださ〜い。撃ちますよぉ。」

ノゾミの乗るモビル・アーマー(MA)は

 「ルン」

と震えると2門の大型拡散メガ粒子砲を最大拡散率で連射しだした。瞬く間にミサイル群が消滅していく。

 その様子や周囲の状況を各種スクリーンで確認したユウコは命令を発した。

 「よぉーーしっ!!モルゲン・フラウ中隊全機、前へ出るぞぉっ!!続けぇぇぇぇ!!」

 「第2小隊りょうかーい!」

 「第3小隊、了解!」

 全員一致で大決定。

 8機のゲルググ・シュツルム・イェーガーとザンメル、そしてディアブロが敵艦隊前面へと前進して行く。

 敵艦隊のあちらこちらで大きな爆発が起きた。するとミサイルの数も減り始めた。

ケイは、ほくそ笑む。

 「海兵隊・・・。サヤカ達おっぱじめたな。」

 

 大型ミサイルを満載した敵艦の爆圧が、サヤカのゲルググの機体を揺さぶる。それを物ともせず部下達に叫ぶ。

 「爆発に巻き込まれんな!次行くぞ!」

 既に巡洋艦3隻・特設ミサイル艦3隻を沈めたサヤカの小隊は、更なる獲物を求め急旋回。敵艦からの対空砲火の回廊の中を舞う様に駆け抜ける。

前方スクリーンに映し出された戦艦や巡洋艦群に混じり、10隻のミサイル艦の艦影を捉えた。加速して急接近し、今まさにミサイルを発射せんと開かれたハッチの中の

ミサイルベイにバズーカを1発撃ち込む。それでお終い。ミサイル全てが誘爆し大爆発を起こして敵艦は消し飛んだ。小隊の僚機と協力し更に7隻のミサイル艦を撃沈。

 部下の一人が告げる。

 「小隊長!まだまだいやがりますぜぇ!2時+40度方向・6隻確認!」

 サヤカ達第7海兵師団及び第5・第6海兵師団のこの戦いにおいての当面の任務は、敵艦隊内のミサイル艦を可能な限り撃破する事だった。

その任務を完遂すべく、戦闘機動で敵艦に迫り照準を合わせる。と、警告音がコクピットに鳴り響き、スクリーンに赤い文字が浮かび上がった。

  ” 警告  非攻撃対象  攻撃禁止 ”

四角い船体の上下左右の面の甲板には大きな赤十字が二つずつ見えた。6隻全てに描かれている。描いたか貼ったかは知らないが。

 「病院船かよ!何で後方にいない?何でここにいんだよ!ったく、死ぬぞお前ら!」

サヤカは、非戦闘艦を後方に下げず戦闘陣形の中に組み込んでいる連邦軍の考え・意図が、理解出来なかったし理解したいとも思わなかった。

連邦宇宙軍のミサイル艦と病院船及び軽空母は、1種類の補給艦を元にして建造されているので形は酷似している。流れ弾に当らない確率はここでは3割以下だ。

 「2番機・3番機!撃つなよ!条約違反になっぞ!」

 病院船や民間人などの非戦闘艦(補給艦・輸送艦は除く)・非戦闘員、降服した敵将兵などの戦時捕虜への故意の攻撃、暴行・拷問などの虐待は国際法で禁止されているのだ。

 「了解!!」 「了解っす!」

部下達も攻撃を中止し、サヤカの小隊の右側に展開している10・11小隊の6機のゲルググも、回避機動に入り病院船の間をパスしていく。

 突然、十字砲火が開始された。

病院船だったものは今や別の代物に変わっていた。船体中から対空火器を棘の様に突き出し、まるで電飾の点いたクリスマストゥリーの如く発射光をちらつかせている。

まったくの不意打ちだった。11小隊は全機撃墜され、10小隊も2機になってしまった。

 サヤカ達12小隊は寸でのところで無事だった。

 「偽装病院船?!騙しやがったな、クソッタレッ!! テゴン!ウェルナー!艦隊に連絡、攻撃の許可を取る!」

 「中尉!無理だ間に合わねえ!こっちもやられちまう!」

回避機動のGストレスの中で、10小隊の生き残り2機が突撃していくのが見えた。2機のゲルググの機体表面が一瞬泡立った様に見え、直後爆発した。

おそらく、近接防空用のロケットランチャーから打ち出されたボールベアリング120000発が作り上げた破砕空間に突入してしまったのだろう。

 サヤカは怒鳴った。

 「あったまきたぁ!! あいつらを沈めるっ!! ついて来い!!」

部下達も同意する。

 「了解了解!!」

 「そーこなくっちゃな!!」

 3機のゲルググは怒りに燃えていたが冷静だった。なにも機体正面の敵を攻撃目標にしなくても構わないのだ。直上から下方から左から右から、パスすると見せかけて

騙まし討ちをした連中にお返しをしていく。奥にまた2隻発見した。船体にはやはり赤十字の印し。奥の1隻から僅かばかりの対空砲火が上がる。

先程の連中とは随分違う。

 「何だこいつ?うざってぇな。病院船は武装しちゃいけないんだよ、わかってる?」

サヤカはバズーカの残弾を射ち込んだ。抵抗してきたのは1隻だけだったが2隻共撃沈した。

 10・11小隊の仇を討ったサヤカ達の3機のゲルググMは次なる獲物に襲いかかっていった。

 

 ア・バオア・クー前面は、連邦軍がモビル・スーツを投入してからは乱戦の様相を呈していた。

双方の戦闘航宙機・突撃艇・ミサイル艇なども加わり更なる乱戦となった。

 ケイ・ヤスダ中尉は連邦軍のセイバーフィッシュ戦闘航宙機の二個小隊を血祭りに挙げながら、自分の小隊の2機の僚機の状況を確認した。

 「ゴッチン!1時上方80度、ジム一個小隊!逆落としで来るよ!」

マキ・ゴトウ少尉は呑気に応答する。

 「了解!見えてるよ〜。」

 「ヨッスィー!左下、ミサイル艇!やっちゃって!」

ヒトミ・ヨシザワ准尉ものんびりと応える。

 「は〜い!ヨシザワやっちゃいまーす。」

ケイはそんな二人のスローペースには馴れているので気にせず、点滅しているディスプレイの一角をちらと見る。敵は偽装病院船を使用しているとの注意だった。

発信元は公国軍海兵隊。海兵隊にはサヤカがいる。

 「連邦め、何考えてんだ? サヤカ・・・。ま、あいつなら大丈夫か。うわっと!!」

ケイのゲルググの側をメガ粒子が透過していった。連邦軍のサラミス級巡洋艦が加速して突っ込んで来る。加速用のロケットブースターを装備し、それを最大出力で

噴射していた。だが自殺行為だ。ケイは溜め息をつく。

 「まっ・・・たく。連邦の考えることはわからん!」

ケイ達からやや離れた所にいる第1小隊のユウコ・ナカザワ大尉も同じ気持ちらしかった。

 「ケイボウ!そんなのちゃっちゃっとやっちゃってちょ!」

 「言われるまでもなく!」

ケイはリニアカノンを5発発射した。5発とも弾かれる。

 「あれ?弾かれた? どわーー!!あぶねー!!」

真っ直ぐ突っ込んできたサラミスを寸でで避け衝突を回避する。通常のサラミスではなかった。分厚い装甲板が増設されていた。そのかわり火砲類は減っている。

艦橋も小さく縮小されていた。

 手の空いたヒトミが声をかけてきた。マキは最後の敵機を撃破するところだった。

 「ケイちゃ〜ん!だいじょうぶ〜?手ぇ貸そうか〜?」

 「や〜ん!ヨッスィー!ケイちゃんって呼んでくれるのー?嬉しーー!! あいつ、ビームライフルで撃って。あ、ブースター撃てばいいのか。えい。」

一人で喜び、一人で納得したケイは、サラミスの後部に装着されたロケットブースターを撃った。燃料が空になりつつあったブースターは然程の爆発はしなかったが

それでも、サラミスの向きを変えるのには十分だった。ケイ達から見て下の方へ流れていく。そして大爆発を起こした。物凄い光が発生する。

 ユウコはディスプレイ上の表示に目を見張った。

 「超電磁シャワー?核爆発?阿保かっ! 核や!気ぃつけぇ!ヤバイしろもんやって!」

正確には核ではない。燃料気化爆弾の一種である。

 モルゲン・フラウ中隊のいる戦区に第二波のサラミス型ミサイルが3隻突入してきた。ユウコはあからさまに嫌な顔をした。

 「いやーーもうぅーー!こっちくんなぁーーーー!!」

マリとカオリも叫ぶ。

 「うあーーー!!いやぁーーー!!」

 「やだって!!くんなってーー!!」

ナツミとケイは起爆させずに破壊する方法を模索している。その時、誰かが放ったメガ粒子が船体を貫通した。

 「阿保・・・。」

 「げっ!」

 「あれま。」

 「あちゃー。」

 「嘘、マジ?」

 「やばっ!」

 「うわー!」

 「ひぃ!」

 「のぉー!」

 「あれ?」

最初の1隻、続いて後の2隻も誘爆していった。辺り一面が白い光に包まれていく。

物凄い振動が襲い掛かる機体の中でユウコは叫んでいた。

 「カゴの阿保ぉぉぉぉぉ!!!! おお?      うわっ!         舌噛んだ!!」

                           おあ!       いでっっ!!

 

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