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与太話六 私的ノベル本編

●終焉 − Ver.1 「撤退」  ページ2●

 

赤い彗星  白い悪魔

 

 戦いが始まってから1時間が経過していた。ジオン公国軍の防御線には綻びが幾つも出来、そこから連邦軍側のモビル・スーツ(MS)がア・バオア・クー表面に

取り付き始めていた。連邦軍艦船も絶対阻止臨界線に迫ってきていた。この阻止線内への4個艦隊以上の敵艦隊の進入を許すと、もはや負け戦は必至である。

それはそれらの敵戦力を撃破するだけの力が無い証しなのだ。もっとも、超兵器や戦術核兵器でも存在するなら話は別だが。

 

 戦いの趨勢は連邦軍に傾きつつあったが、ジオン軍は超弩級航宙母艦「ドロス」を基とし、二番艦「ドロワ」四番艦改「フェルゼン」からなる三つの防空艦隊を中心として

防御線を展開、奮闘していた。30年間も苦汁を舐め耐え忍んできたのである、ここで負ける訳にはいかなかった。

 

 第1204突撃MS大隊第1小隊の小隊長ユウコ・ナカザワ大尉は、第3小隊のケイ・ヤスダ中尉と連絡を取り合っていた。

 「何処におんの?今。」

 「今はですねぇ〜。Mか?Mです。M。さっきまで補給してたんだけど、こっちの方に行ってくれって言われてさー。この下のSに敵が集中しててね、人手が足んないらしいよ。

  上から狙い撃ちですよ、ホントに。で、ゴッチンとヨッスィ〜が凄いのよ! ”木馬 ”みたいの沈めたのよ!あ、でも違うかも。双胴艦だったなぁ、あれ。」

 

”木馬 ”とはペガサス級揚陸艦のことである。だが撃沈されたのは双胴戦艦ケルベロス級の四番艦だった。マゼラン級戦艦2隻を並列に舷側艦橋部分で結合させたものだった。

 

 ユウコは質問以上の応えが返ってきたので面食らった。良い事かもしれないが、訊きたいのはそんな事ではないのだ。

 「ちょ、ちょ、ちょっとケイボウ。それはわかったから。 ね、こっちには来られへんの?駄目なん?」

 「あれ?ユウちゃん、命令、確認してないの?」

 「え?何それ?ちょい待ちぃ。」

慌ててミッションテーブルを見る。

  ---- :モルゲン・フラウ:中隊は小隊ごとに行動せよ・各戦区の隊に協力せよ  ----  大隊長命令・師団長命令・勅令  ----

 「何やこれ?勅令って・・・。 総帥の命令?」

ユウコは唖然とするが、ケイは余裕の表情でサバサバとしている。

 「そういう事らしいね。原隊復帰命令は無効じゃないみたいだけど。」

ケイの方の通信リンクを介して別の声が割り込んできた。

 「ユウちゃーん!ケイちゃん返してぇー!敵に気付かれたっ!こっち来るこっち来るぅぅぅぅ!!」

 「ヤーボだよヤーボッ! (ヤーボ:敵の戦闘爆撃機) Gアーマーって奴!20はいるよぉー!!」

 マキとヒトミだ。随分焦っている。ケイも敵の増援を確認したようだ。

 「あちゃー、やばいわ。さっきより増えてる。じゃ、またねユウちゃん!」

ケイとの通信が切れた。ユウコは、ア・バオア・クーの表面でまるで岩陰に隠れている甲殻類のように、じっとしているノゾミのディアブロを見下ろした。

 「ツジ!カオリ達捉まった?」

 ノゾミは気落ちした声で応える。

 「駄目ですぅ。ミニョフスキー粒子の濃さがすんごく濃くてぇ・・・・・。」

ケイとの通信は、ディアブロの大出力の通信機器を介して行っていたのだ。ユウコがメインで通信中、ノゾミは副回線でもう一つの小隊「レーヴェン・ツァーン(タンポポ)」を探していた。

周囲を警戒していたナツミが笑い出した。この辺りはまだ敵の数は少ない。

 「くっくっくっ。ツジちゃ〜ん。ミニョフスキーじゃなくてミノフスキーね。うふふふ。」

 「あ〜い。テヘヘ。」

 「でさー。有線で試してみた?中に居るかもよー。」

農耕コロニー出身者独特の発音でナツミが提案してきた。

 「あ・・・・・・。」

その手があったか、という顔をしたノゾミを見て、ユウコはがっくりと肩を落とした。

 

 レーヴェン・ツァーン小隊は補給をしていた。4人は機体の補給作業と点検整備をドックのクルー達に任せて、ドックの奥のエアロックの向こうにある休息ブースで

軽い食事をとっていた。

 マリがアイを叱っている。

 「カゴォー!お前食べ過ぎぃー!何個目それ?あとでトイレ行きたくなってもしらないよ!カオリも何か言ってやってよ!」

マリに支援を要請されたが、カオリはチューブの飲み口を咥えたまま空間の一点を見つめて応えない。 ” こうしんちゅう ” だ。更新中か交信中かは定かではないが。

 「あ・・・駄目だこりゃ。」

 「良いんじゃない?」

 「聞こえてんじゃんっ!」

 「食べられるうちに食べとけって事だよ。」

それを聞いたアイの目が悪戯っぽくキラリとする。

 「さすがイイダさん!話しがわかるぅ。誰かさんとは違いますねぇ〜。」

アイは勝ち誇ったようにそう言うとマリの顔を覗き込んだ。マリがむっとする。

 「む・か・つ・くぅぅぅぅ!!それよこせ!オートミール、それが最後なんだぞっ!」

オートミール風味の戦闘食を挟んでじゃれ合う二人をカオリは無視した。戦闘食の入ったチューブの幾つかが宙を漂い始める。

 「イシカワもちゃんと食べときなよ。お腹が空いてはなんとやらだからね。」

やや暗い表情をしていたリカは笑顔をカオリに向けた。

 「はい!食べてます!・・・イイダさん、今のわざと間違えたんですか?」

 「ん?そうだよ。イシカワだったら ”お腹が空いては ”って言うだろうと思ってさ。」

リカ・イシカワ准尉は財閥の令嬢だった。いわゆる ”お嬢様 ”であり上品な物言いをする。カオリはそれを真似したのだ。

 だがリカは、今度は真剣な表情になった。

 「イイダさん・・・この戦い、私達勝てますか? ジオンは戦争に勝てますか?」

リカの問いかけが休息ブースの壁や天井に静かに吸い込まれていく。何処かで何かが爆発しているのか、振動が低く断続的に響いている。

じゃれ合っていた二人も動きが止まり、カオリとリカの顔を交互にみる。

ほんの一寸、間があった。カオリはまずリカを見た。

 「勝とうよ。」

次にマリとアイを見た。

 「勝つんだよ。勝たなきゃいけないんだよ。」

 壁に埋め込まれたコンソールのモニターに、補給ブースの士官が映った。

 「作業終了致しました! 第134・135MS大隊と共にSフィールドへ向かえとのことです!」

 カオリはモニター内の士官に、すぐ戻る旨を告げると三人を見つめた。

 「よし!行こう!」

 

 ユウコ達はまだ、カオリ達を探していた。

 「まだ見つからへんかな?」

 「まだですねぇ。見つからないんですよぉ。 あ・・・いた・・・。 Sフィ・・・」

ノゾミの言葉をナツミの声が遮る。

 「敵MS中隊!正面!後続も確認、支援機多数!ツジちゃん!ナッチとユウちゃんで援護するから落ち着いてね!」

 「は・はいぃ!頑張りまっす!」

ノゾミは一気に緊張するが、搭乗しているディアブロはゆらりと浮き上がる。

 ユウコとナツミはビームライフルを連射しだす。たちまち敵機の何機かが爆散する。

 「よっしゃー!来るなら来いっ!!」

 「ふわー、凄いなぁやっぱり。よーし・・・。」

 ノゾミは二人に感心するが、ノゾミ自身も今までの戦闘や参加した作戦で活躍してきたのである、のんびりと眺めている場合ではない。下方より回り込もうとしている航宙機群に

拡散メガ粒子砲を放つ。討ち損じた敵機には4門のメガ粒子砲で対処した。奥の手である無人随伴攻撃機「ビット」は、8基中3基を半自律モードで1000M圏内に配置していた。

完全自律ではないので命令を与えてお終いとはいかない。ディアブロ本体とビットは常に交信しているのだが、ノゾミも頻繁にビットの面倒を看なくてはいけなかった。

 敵のビームや砲弾を回避機動で避ける。ディアブロ後方のア・バオア・クー表面で爆炎が幾つも上がった。メガ粒子砲を連射しながら3基のビットにも攻撃をさせる。

 「やっちゃえぇぇぇ!!」

3基のビットはほぼ定位置のまま、敵上方よりメガ粒子砲を連射する。敵直接支援機「ボール」中隊24機の半数が、瞬く間に射貫かれ爆発していった。

二方向からの砲撃とユウコとナツミの射撃を加えた十字砲火を、突出した敵MS中隊に浴びせ掛ける。敵機は必死に回避しようとするが叶わず、次々に火球へと変換されていった。

 連邦軍のパイロット達も赤子ではない。今次大戦初期からの生き残りのベテラン連中をはじめ、新兵達も時間の許す限りの訓練を積んできたのだ。兵器も真新しい物が多い。

特に量産型MSの「ジム」は数でジオン側を圧倒していた。今回の作戦では派生型・改良型・強化型だけで500を数える。通常型は700機以上、直接支援機は1500機。

艦船類は戦艦・巡洋艦だけでも500隻にのぼり、これは大戦初期の艦艇数よりも多い。ミサイル艇等を含めれば1000隻に届く。これで負ければ末代までの恥じというものだろう。

 だが今し方、一個戦隊が2機のMSと1機のMAにより、ものの2分で壊滅させられた。兵器の性能差もあるが、戦闘技能が桁違いなのだ。

それと背負っているものが違いすぎた。

 ディアブロのコクピットに、ビットの充電の為の交代時間を知らせるアラームが鳴った。まだ余裕があったが代わりの3基を機体後部のビットポッドから放出する。

その時、400M前上方の3基全てが警報を打ってきた、と同時にディアブロのモノアイと交代用の3基のビットが、ある一点を指向した。

コクピット内のノゾミも、前後左右上下の7割をカバーするスクリーンの一点を凝視していた。警報が発せられる3秒前から。

 「な・何? 誰・・・・? 誰か・・・来る・・・。」

 

 連邦軍の少年パイロットは呟いていた。

 「何だ? ララァ・・・・・? 違うな。ララァはもういない。シャア以外のニュータイプ・・・?」

 

 ナツミも ” 何か ” を感じていた。軽い頭痛がする。

 「何だこれ? 何? う・・・ん・・・。 何だろう・・・?」

 ユウコは索敵センサーの警報で気付いた。

 「脅威度SS?? な・何や? ひょっとして・・・。」

急にナツミが叫んだ。ノゾミは硬直して動かない。声も出せない。

 「ユウちゃんっ!!来るよっっ!!」

 白に限りなく近い灰色のMSが、巴戦を演じながらこちらへ迫って来る。幾筋かのメガ粒子の光条が、白い機体を襲うが弾道が見えるかのように避け切っている。

そして反撃、友軍機は撃墜された。

その白い機体をユウコ達は知っていた。

    RX-78 ガンダム。    白い悪魔。

 「ぬあっ! やっぱりぃー!!」

ナツミとユウコは身構えた。白い悪魔がこちらを見た。既に捕捉されていたのかもしれない。

 「ユウちゃん危ないっっ!!!!」

ユウコよりも速く、ナツミは自分のゲルググを敵の射線上に投げ出す。ガンダムより撃ち込まれたビームは、ゲルググが突き出したシールドに当る。ビーム・コーティングという

技術が使用されているシールドは、ビームの3割を弾いたが7割が貫通し左腕を破壊した。衝撃に歯を食い縛りながらもナツミは敵から目を逸らさない。ユウコはナツミがやられたと

思ってしまった。

 「んんっー!!」

 「ナッチィ!!」

左腕を吹き飛ばされたゲルググは、それでも敵の未来位置へビームを連射する。だが当らない、というより全弾避けられた。ガンダムがさらに2発撃つ。1発はナツミ、そしてユウコへ。

ユウコには全てが遅く感じられた。ゆっくりと自分に向かって来る桃白色の光の帯。

 「あかんなぁ・・・。ナッチは巧く避けてはんのになぁ。うち・・・避けられへんわぁ。死んでまうんかなぁ・・・。嫌やなぁ・・・ん?ちょー待て。まだ生きてるやん・・・。!!!!」

ユウコのゲルググは機体を横に開くようにして避けた、ライフルの砲口をガンダムに向けたまま。

 2機のゲルググは猛烈な射撃を開始した。ガンダムは先を急いでいるらしく、後退しながら避けているだけだった。

 

 連邦軍の少年パイロットは焦っていた。

 「くっ・・・くそ! まさか?! 驚いたな、3人もニュータイプがいるなんて。・・・あのMAの奴、何故何もしてこない? いや、今はあんなの相手にしていたら命が幾つあっても

  足りない! 倒すべき敵はこの中にいる!」

誰かの声が少年の内に入ってきた。

 「何であなたはぁ、” そっち ” にいるんですかっ! ” ニュウタイプ ” なのにどうしてぇ? あたしわかんないっ!!」

 「誰だ? 女の子? あのMA・・・。 君こそ何故っ? ” ララァ ” と同じになりたいのかっ! 何故奴らに組するっ? 利用されるだけだというのが解らないのかっ!」

 「利用されてるのはそっちじゃないですかぁ! あたしは仲間を助けたいだけですぅ! みんなと一緒に生きたいだけですぅ!! ほんとの敵は ” ここ ” にいるのにぃ!!」

少年の心の内に、青い惑星とその星の衛星の白い天体が、重なって一瞬だけ投影された。

少年には解っていた。その意味も。その真実も。だが・・・。

 ディアブロが戦闘態勢をとった。いつのまにか全て放出されていたビット8基が、ガンダムを取り囲む。

 

 「くそっ! やるしかないのかっ・・・。」

 

 ・・・・・・・・・・・・やめてアムロ。 その子は敵ではないわ。 貴方にも解っている筈よ。・・・・・・・・・・・・

 

大人びた少女の声だった。声が聞こえるとか響くというより、 ” 感じる ” と言う方が正しいかもしれない。

 「ララァ・・・?」

 

 ・・・・・・・・・・・・ノゾミちゃん。 そう呼んでも良いかしら? 貴方達は闘ってはいけないわ。 わかるでしょ?・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・だって悲しすぎるもの。 解り合えるのに。 だから彼を行かせてあげて。 ね?・・・・・・・・・・・・

 

 「え? え? え? ・・・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・はい。」

 

 ・・・・・・・・・・・・ありがとう、いい子ね。 じゃあね、ノノちゃん。・・・・・・・・・・・・

 

 「・・・・テヘヘ。 バイバイ、ララァさん。」

 

 ビットがディアブロの元へと集まってくる。白い悪魔の姿はもう見えない。声ももう聞こえない。

あの出来事は一瞬だった。最初の警報から30秒と経っていなかった。ノゾミはぼんやりと、ガンダムのいた空間を見ていた。

 「ツジィッッ!!! お前何で撃たへんかったぁっ? うちらみんな、やられてたかもしれへんのやぞっ!」

ユウコの怒号がノゾミのヘルメットの中に響く。ノゾミは恐る恐る口を開いた。

 「・・・だ・・・だって、味方だもん・・・・・。」

 「あああぁーー?!! 誰がっ? ガンダムが? 阿保ぉっ!! 敵やないかっ!! ツジお前頭おかしいんちゃうかっ?」

ノゾミの眼に涙が溢れてきた。ヘルメット内の湿度が設定よりも高いのをセンサーが感知し、首元の吸入口へ涙を排出していく。

ナツミがユウコをたしなめる。

 「やめてユウちゃん。ツジは何も悪くないよ。だってララァさんが言ってたもの。」

ノゾミはハッとする。

 「何なのナッチまで。ララァって誰なん?どゆこと?」

 「あれ?ユウちゃん、聞こえなかった?おっかしーなー。」

独特の口調で話すナツミの声を聞いていると、激昂していたユウコも落ち着いてきた。ナツミは続ける。

 「ツジちゃんなんかお話ししてたもんねぇ? ね?ツジちゃん。」

 「うん。 お話ししてました。」

さっきまで泣いていたノゾミはいつもの明るい顔に戻っていた。

  ・・・・・・アベさんにも聞こえてたんだ! すごい、すごい!・・・・・・

ユウコには聞こえていないらしかった。

 「はぁー?もっとわかるように話してくれへん。チンプンカンプンやわ。」

そこへコール音が鳴り、落ち着いた青年の声が通信モニターより聞こえた。

 「そこのゲルググとMA! お喋りは後にしろ。 敵をお茶会にでも招待するつもりか?」

ユウコは慌てて、返答しようとモニターを見る。

そこにはジオン軍人なら知らぬ者はいない、新兵達の憧れ、「ルウム戦役」では一度の出撃で5隻の戦艦を沈めたエース・パイロット、マスクに隠された素顔は美形だとの噂のひと、

赤く塗装されたMSに乗り「赤い彗星」と異名を取る、シャア・アズナブル大佐その人だった。

以前見かけた時は軽くウェーブのかかった金髪が美しかったが、今はトレードマークのヘルメットで隠れてしまって見えない。

ユウコは余計慌てた。

 「も・も・も・も・申し訳ありません、シャア大佐殿!! そっこうで任務に戻ります!!」

 「妙な言葉遣いをするんだな。 まあいい。 ”連邦の白い奴 ”がここを通らなかったか?」

 「ガンダムですね?通りました通りました! Eフィールドの方へ向かったと思われます!」

モニターの中の青年将校が微笑した。

 「ありがとう。では君達も頑張れよ。」

 「はっ!有り難う御座います!! 武運長久を!!」

黒く巨大なMSは、ユウコ達の前を物凄い速さで通り過ぎると、ア・バオア・クーの岩塊の向こうへと見えなくなった。

 「ぷぷぷぷぷっ。」

 「ナッチ笑うなっ!しゃーないやろ、えー男なんやからぁ!」

 「でも、ユウちゃんより5歳は年下だよぉ。年下は駄目なんじゃなかったっけぇ?」

 「歳の話しはすなっっ!!」

ビットを収容していたノゾミが割って入ってきた。

 「てゆーかぁ、直さなくていいんですかぁ?アベさんのゲルググゥ・・・。」

 「せや!せやせや!ナッチ大丈夫なんか?」

 「んー、そーねぇー。肩関節は無事だから腕取り換えるだけでだいじょぶかな。」

 「ほな、あそこに見えるごっつい空母で直して貰おか?」

 「えっー、だいじょぶかな?」

とナツミ。ユウコは構わず二人を促してゲルググを発進させた。

 「ほれ!行くよ!」

 「はいはい。」

 「あーい。待ってくださーい。」

 3機はドロス級航宙母艦二番艦「ドロワ」へと向かっていった。

 

 シャア・アズナブル大佐は連邦軍MS2個小隊を血祭りに挙げる。彼はまだガンダムを見つけられないでいた。

 「何処へ行った? ガンダム。 ・・・・先程の女性兵士達・・・・ニュータイプなのか? あのMA、まるで「エルメス」の生れ変わりのようだったな・・・・。」

彼は左の方に何かを感じた。

 「・・・ん? あれか・・・。 居たな、ガンダム!!」

「ジオング」を左へバンクさせると加速して宿敵へと向かっていった。彼らの闘いの終焉はまだ先のことなのだ。

 

15分後。ジオン公国軍ドロス級航宙母艦二番艦「ドロワ」内、第21番デッキ。

 

 ユウコはナツミのゲルググのコクピットハッチに掴まり、はしゃいでいた。年甲斐も無く。

 「あれ、あれ、あの人!「ソロモンの悪夢」のアナベル・ガトー少佐とちゃうん?やーん、かっこいぃー!」

開放されたハッチからうつ伏せに顔を出し、ナツミはそんなユウコに呆れている。

 「ユウちゃん、あのね・・・。」

 「ね、ナッチ。お近づきになれへんかなぁ?」

聞いちゃいない。

 「シン・マツナガ大尉もおられへんかな?「白狼」の。どうやろ?こことちゃうんかな?」

 「ユウちゃ〜ん。あーのーねー。みんなユウちゃんより年下だよ。わかってるぅ〜?」

ユウコは両手で耳を塞ぐ。

 「いやー、聞きたない聞きたない。」

そうこうしていると、「ソロモンの悪夢」の青いゲルググが補給を終え発進していく。配下のリック・ドムUも次々と戦場へと躍り出ていった。

それを見届ける為背中を向けていたユウコが、ナツミに向き直る。その顔は「仕事」をする時のユウコの顔になっていた。

 「うちらも急ごか。ツジ見てくるわ。」

そう言うと、するりとゲルググの後ろのディアブロの方に向かっていく。ナツミも首を回し、見える範囲の補給状況を確認してコクピットに滑り込む。シートに着くとステータスモニターで

機体の具合をチェックし始めた。左腕はもう大丈夫のようだった。インストールも済んでいる。最終調整もそうはかからないだろう。

ノゾミは居眠りをしていた。ユウコはディアブロの巨大なハッチの中へ潜り込むと、ノゾミのヘルメットを連続して小突く。

 「ノノ!ノノ!起きなさい!置いてっちゃうよ、ほんまに。もう、この子はー。」

 「ふぁ〜い・・・。起きましたぁ〜。ふぁぁぁ・・・。」

 「きついやろけど頑張ろな。ハッチ閉めてから水飲み。 な。」

デッキは開放されている、つまり宇宙空間と直接繋がっているのだ。ここでヘルメットのバイザーを開ける事は死を意味する。

ユウコがディアブロを離れるのを待ってから、ノゾミはコクピットハッチを閉じて気密を確認してヘルメットのバイザーを開け、シート脇のアイテムボックスから水のチューブを取り出し

吸い口を含んだ。冷たい液体が喉を潤し流れ込んでいく。ほっとした。

 「けぷっ! ・・・お腹も空いたな。食べちゃおっかな・・・・。」

 「あかんよ。もう出かけるよ。」

いつの間にか通信モニターの中からユウコが見ている。もう自分の機体に戻っていた。「仕事」をする時のユウコは素早い。率先して部下達に見本を示すのだ。

 「へ 、へい!!」

驚いたノゾミの声は裏返った。

 ユウコが管制ブースの管制官に発進を告げる。補給要員達には既に礼は言ってある。

 「お世話になりました!それでは行きます!」

 「お世話になりましたぁー!!」

 「ありがとうございましたぁ!」

ナツミとノゾミも続く。デッキクルー達は、気持ちの良い娘達の無事を祈りながら敬礼を送った。

 

 30分後、「ドロワ」は沈んだ。

 

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