Chapter2 Lost in Athens/シティ・アローン
朝まだ早い5時35分。飛行機は無事アテネの空港に着陸した。
今度は恐れていた頭痛もなく、スムーズな着陸だった。
シンガポールで感じたあの頭痛はいったいなんだったんだろう…
町はまだ薄暗く、飛行機を降りた人のほかに動く気配はない。
タクシーにのってホテルまで行くが、チェックインの時間が11時だったので、
しばらくロビーで時間をつぶすと換金するためにギリシア国立銀行(National
Bank of Greece)へと向かった。
朝8時。銀行の前にあるシンタグマ広場では、衛兵の交代式がおこなわれていた。
1821年から1829年におこなわれたギリシア独立戦争で命を失った人々のために作られた
「無名戦死の記念碑」の前で、交代後微動だにしない衛兵の姿はなんとも異様なものがある。
いつもそわそわして回りに諌められている私には、到底できない芸当であろう。
銀行で6万円換金すると、12万ドラクマもの大金が手に入った。
アテネの地図をもらった後、みんなで昼飯を食べに行く。
スブラキ(焼き鳥みたいなもの)をはじめて口にする。店に近づくとぷーんとオレガノのいい匂いが漂ってくる。
スブラキ一本とパンが一個ついて100ドラクマ(だったかな?)、とにかく安いのなんの。

昼食後は解散となったので、私はその足でアテネの考古学博物館に向かった。
中に入ると、あちこちにすばらしい彫像の数々が、あからさまに展示してあった。
ガラス張りの展示ケースの中の展示になれた私には、新鮮な喜びであった。
論より証拠、ここではそのいくつかを写真で紹介しますね。




博物館からケラメイコスに向かう途中、ちょっと小腹のすいた私はギロピタを食べることにした。
これは日本ではケバブという名前のほうが一般的でしょうか。
鉄の棒に突き刺して重ね焼きした肉を切ったものとトマトなどの野菜をピタパンでくるんで食べるもの。
これがまたおいしくて、ついつい食べるのに夢中になってると、
気がついたときにはアテネの街中で迷子になっていた…
完全な方向音痴ではないけれども、方向感覚がいいとも言えない私。
気がついてから地図を広げても、雑多な町並みのどこの道に自分がいるのか皆目見当もつかない。
仕方なくあちこちで道を聞きながらようやくたどり着いたケラメイコスの遺跡は…
なんと午後2時30分で遺跡の開放時間が終了!
日本人の感覚で歩き回っていた私は、この店じまいの早さに不満を覚えながらも、
どうしようもないのでやむなくアクロポリスのほうへ登っていくことにした。
思えば入れもしないケラメイコスに行くために、非常な大回りをしていたわけで、
恐ろしくて交通機関を使い切らない私はひとり地図を片手に歩いて山道を登っていく。

暑さは厳しいが、湿度がないため風が吹くと心地よいギリシアの気候。
とはいえ、ひなたにいるだけで確実に水分を消耗しているため、ミネラル・ウォーターは必携だ。
一本100ドラクマ(当時約50円)のペットボトルを片手に歩く。
途中いたずら好きな現地の子供たちに水をかけられ、それが縁で一緒になって水遊びしたのもいい経験である
(決して遊ばれたわけではない!童心に帰ってみただけです。写真撮影は拒否されましたが)。
アクロポリスに登る途中、立ち入り禁止の策らしきものを発見。
好奇心からその中に進入してみる。草ぼうぼうになってはいるが遺跡らしい。
あちこちに小さな土器のかけらが落ちている。
しかし大した物は見つからず、結局シンタグマ広場まで戻ってきてマクドナルドで一服することにした。
すると、見知らぬ男が私のほうに近づいてきた。
私の横に来るなりいきなり、
「アナタニッポンジン?Do
you like girls?」
面食らった私は流されるように、
「…Yes.」
そのとたんおじさんは私に「かわいい女の子を紹介してやる」と言って、
なんか不信なところに連れ込もうとした。必死で抵抗すると、
「君は女の子が好きなんだろう?だったらこっちにこい。」
といって聞かない。
何とかこの場を振り切った私ではあったが、その後も街のいたるところでこのおじさんとは再開した。
そして、そのたびにこの話を持ち込まれることになった。
私のこの誠実そうな顔のどこにそんな面影を見出したのか、まったく失礼なおじさんだ。
不快感をあらわにしながらどっと疲れが出た私は、ホテルへと帰ったのであった。
夜、まだ明るい午後8時。みんなで食事をしようとホテルのロビーに集合する。
ところが、時間になってもTさんが現れない。
心配になってみんなで探しに行くと、何とTさんはホテルのトイレに閉じ込められ、出られなくなっていた。
フロントから人を呼んできてもカギは開かず、必死に笑いをこらえる私。
かくいう私も実はその前にホテルのトイレで20分ほど足止めを食ったひとりであった。
(みんなには内緒にしていましたが)
ここのトイレは内側のカギも、キーをさしこんでカギをするもので、
簡単に閉まるくせに、いざ開けようとすると引っかかりが悪く回しても回してもカギは開かない。
Tさんも私と同じわなにはまっていたのだった。
これは誰がどうアドバイスしようと、自分で開け方をマスターしない限り克服できない試練なのだ。
みなさんもヘルメスホテルのトイレにはご注意を!
閉じ込められたら冷静にカギをまわして見ましょうね。
1時間ほどトイレの前で格闘したあと、ようやく開放されたTさんを迎え、私たちは食事に出かけた。
アクロポリスを望む風の塔のすぐ横にあるοι αερηδεs(風)というタベルナにて食事。
どの料理もはじめて目にするものばかりだったが、とにかくおいしかった。
本日のメニュー
・ムサカ(なす・ジャガイモ・ひき肉などを層状に重ねてオーブンで焼いた料理)
・ゲミステス(トマトの中にごはんを詰めてオーブンで焼いたもの)
・ ギリシアサラダ(野菜とオリーブオイル。その上にヤギのチーズ・フェタがのる)
・ カラマリア(イカフライ)
・ ホルタ(アザミの葉っぱをゆでたもの。オリーブオイルとビネガーで食べる)
・
ブリゾーラ・ヒリノ(ポーク・ステーキ)
食後にはグリークコーヒー(トルココーヒー)を飲むはずだったが腹具合が許さず断念。
これは、豆を2回挽いて細かくし、アルミや銅でできたコーヒー沸かしに1杯あたりティースプーン1さじの豆、
少な目の水、好みの量の砂糖を入れ、弱火で熱し、沸騰する直前で火を止めて
デミタス・カップのような小さなコップに移して飲むもの。
表面が泡立ち、どろっとした粉が底に残るのが特徴。
たらふく食事をした私たちは、ライトアップされたパルテノン神殿を横目に店を後にし、
ホテルに帰って眠るのであった。