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Chapter3 The Scene of Parthenon/パルテノンの眺め



 ホテルで朝食をとったあと、みんなでアクロポリスへ向かった。
観光客だらけで少し興ざめではあったが、
それでもすばらしい大理石の石柱を目の前にすると圧巻されるものがある。


外からパルテノン神殿を見たときに見える石柱の残骸は、
昔ペルシア人に破壊された「最初」のパルテノンであり、
ギリシア人はそのときの恨みを忘れないために残してその上に新しいパルテノンを建設したのだとか。

ちなみに、なぜかアクロポリスにはあちこちに黒曜石のかけらが落ちている。
ギリシア周辺で黒曜石が取れるのは、エーゲ海のミロス島(ミロのビーナスの出土地)しかなく、
これもここから運ばれたものに違いない。黒陶のかけらとともに面白がって拾っていると、
近づいてきた係員のおねいさんにすべて
没収されてしまった。


それ以来アクロポリスのどこにいても、なぜか私には
監視の目が常に付きまとった。
いきなり
危険人物とみなされてしまったのか?
少なくとも、ここでこれ以上不始末をやらかすわけにはいかないので、
お行儀よく振舞うことにした(実際行儀はいいはずなんだけど)。

パルテノン神殿の柱神殿内部の様子(普通は見れない!)


その後、ギリシア建築を研究されている先生のお蔭で、
通常観光客は入ることのできない神殿内の復元現場にいれてもらうことができた。
パルテノン神殿の中では壊れた柱の復元をやっており、石膏で型を作ったあと、
それを精密に計測してそっくりの形に大理石を削っていく。
合鍵を作るときの作業が大型化したようなものではあるが、
細かいところはかなづちとのみを用いた人の手に委ねられた職人芸である。
大変な仕事には頭が下がります。

アクロポリスの下はみなさんご存知古代アゴラの遺跡であり、
途中の道にはその昔キリスト教布教にやってきたパウロが、
最初にギリシア人を説教したと伝えられる「アレイオス・パゴスの丘」がある。
ここからリカビトスを望む風景は絶品である。

しかし、この丘の意思は非常に滑りやすく、おっちょこちょいな私は上る途中でいきなり滑ってしまい、
これ以上滑って転がり落ちるのを防ぐためすぐに降りてきてしまった。

丘からリカビトスを望む


アクロポリスを後に、昨日は入れなかったケラメイコス(現代語ではケラミコス)に向かう。
ケラメイコスは古代の「陶工区」のことで、英語の「ceramic」の語源である。
遺跡の右側、小さな川を越えたところがその陶工区であり、
遺跡の左側、つまり川を下ったところが墓域となる。
その意味で、ケラメイコスは英語の「cemetery」の語源でもあった。


ケラメイコスで解散した後、軽い昼食を取ると私は一路ホテルへと急いだ。
こちらに来てまだメールが使えず、何とかして日本の誰かとコンタクトを取りたいという一心からであった。
しかし、どうしてもモデムが反応してくれず、ネットに接続できない。


意を決した私は、IBMのギリシア支社を探すことにした。
しかし、あるべき住所に会社は存在せず、うろうろ町を歩き回るだけ。
するとあるギリシア人が私に声をかけてきた。


私が「IBMを探している」というと、IBMは遠くに移転してしまったことを教えてくれた。
あきらめかけたそのとき、彼は車でそこまでつれていってくれるという。


もしかしたら誘拐されるんじゃ」と思いながらも、
メールを使いたい気持ちが勝った私はそのまま彼の車に乗り込んだ。

彼は世間話をしながらまっすぐに私をIBMのギリシア支社まで運んでくれた。
ギリシア人の優しさに、人間の温かさに、涙2の瞬間です。
一瞬でも「
誘拐」という2文字が頭に浮かんだ自分が恥ずかしかった。
とはいえ、これは稀な例でしょう。
知らないおじさんについていくのはやはりよしたほうがいいでしょうね。


さて、やっとのことでついたIBMで、つたない英語を駆使して何とか用件を伝えた。
係の人に来てもらって接続を試みると、簡単につながるじゃありませんか!
ここで新しいメールを受信し、新たにメールも送信し、一応安心してIBMを後にしたのでありました。

帰りはタクシーでシンタグマ広場まで帰り、再びホテルで接続を試みるがやっぱりうまくいかない。
これはホテルの電話がおかしいのでしょう。まあ、いいや。明日からのメッセネの電話に期待します。


日が翳るまでホテルでゆっくりした後、夕暮れのパルテノンを写真に収めるため再びアクロポリスへ。
真っ青な空が次第にワイン色に変わる中、廃墟のパルテノンを見つめるだけで、
何か満たされた気持ちになるのは私だけだろうか。

廃墟だからこそ出せるその美しさ。
当時の人工の極致を施した建築史上に残る名建築を今、目の前にしているのだ。
それは夕晴れの空に悠々と輝いて、無言の私を見下ろしていた。


さて、お待ちかねの食事の時間がやってきました。
今日は場所を変えて、プラタナスの葉に覆われた趣深いタベルナへ。


本日のメニュー
ホルタ
ムサカ
ムスハリ(牛肉を柔らかく煮たもの。これがまたおいしい!)
スブラキ
ギリシアサラダ
タラモサラタ(たらことジャガイモをペースト状にしたもの。パンにつけて食べる。)


今日もまたたらふく食べた私は、体重を気にしながらもぐっすり眠りにつくのでありました。

 


©Mega Production, 2000


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