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プレリュード 螺旋を逃れて By JeanPaul Gagnon ---------------------------------------------------------------------- 眠りにつけば、おそらく夢を見るだろう そう、そこに問題がある。 この世の苦しい生の螺旋から逃れ、 長い眠りにつき、そこでどんな夢を見ると言うのだ? それがあるからためらうのだ。それを思うから、 苦痛に満ちたこの人生をいつまでも長引かせるのだ、 シェークスピア ハムレット Act3 Scene 1 ---------------------------------------------------------------------- 無音の張り出しの下に、雨に洗われる大理石の彫像の冷たい目。それは落日に照らされ、黒檀の色で生命の色を真似ていた。 花々はばらまかれた。その茎があまりに不注意だから奪われたのだ。新しい大地はそれを育もうとはしない。老いたシダレヤナギはひとりその齢をのばしていた。微風に音もなく揺られ、チェシャ猫の目の月の光それを、満身に浴びている。花崗岩に挟まれた黒いゲートが開きはじめる。夜は星たちを孕み、夕べの空気はつめたく厚い。命の音は死の場所であるここにもある。虫や鳥たちは、たそがれの用事をすませるために、柔らかい月光の中をノクターンで飛んでいる。土の下ではみみずが湿った土を掘りすすみ、這う道を豊かにしてい、塩分とミミズの食料を抽出しながら。 あなたはこれらを見ることはない。あなたはこれらを聴くことはない。あなたはあなたを取り囲むすべてを感じることはない。あなたはこれが何を意味するか知らない。あなたはただ闇のみを見ている、あなたは堅い黒いものに囲まれている。影はあなたを浸食し、あなたを上に、外側にかきみだす。暗黒の向こう側へと。あなたは腕を伸ばそうとする、しかしそれは硬直している。あなたはあなたをつかんでいるなにかを掻きむしろうとする、しかしそれに意味はない。ビロードに覆われた木材があなたの腕につきあたる。あなたは恐慌にみまわれ、それをつきあげる。木材の破片と泥があなたにふりかかってくる、あなたは木材を突き破り、土の中を泳ぎはじめる。あなたは息をすることができない、だがあなたはその必要も感じない。あなたは地面の中を泳ぐ、まるで海のなかのように、かつてあなたの墓であった穴があなたを吸い込むのに逆らいながら。あなたの記憶はあいまあいで、あなたの足はなぜだか不安定でぐらぐらしている。土くれが肩やら頭からふりおちる。陽はおちていた。夜は墓場の彫像や墓石をすりぬけてあなたを満たす。風のささやきが、ゲートの鉄棒の間をぬけて、あなたを街灯に振り向かせる。あなたの背後にはダイヤモンドののこぎりで整形された簡単な墓石がある。だが、あなたはそこに書かれていることを読むことはできない。あなたの名前は、あなたがもう二度と所属するこのできない世界の部分に属することがらである。あなたが覚えているのは、ある顔と、そして内からわきいでる欲望。あなたが経験するのは飢え。恐ろしいまでの飢え。 あなたの骨はゆっくりと足並みを思い出し、墓場のゲートを押すそれをぬけ、街の光に向けて歩き出していく。あなたは通りの真ん中を歩いていく。もし読むことが出来たなら、道標に「旧ホロー通り」という文字を読むことができただろう。夜はあなたに従っており、あなたがとおりすぎると街灯が暗くなるように感じる。忘れられた通りを歩くあなたに誰も気付くことはない。もし誰かがあなたを見たとしても、そのこを覚えている人間はいないだろう。 顔が心から離れない、あなたのよく見知ったあなたを引き寄せる顔。それをみつければあなたは答えを得て、飢えから解放されるはずだ。あなたの死んだ心に明瞭にその顔を思い浮かべることができる。高いほお骨に囲まれた、ふたつの緑色の深い色の目、すうっとのびた黒いストレートヘア。彼女の体も思い浮かべられる、新鮮にかおる肉体とそれをつつむデニムのジーンズとタンクトップ。彼女の肉体がどんな感触だったかも、それらはあなたを闇から押し戻そうとする、あなたを包み込む暖かさ。あなたはその暖かさが欲しい。あなたがいる場所からいかにも、ほどとおい、その暖かさをあなたは渇望している。 風が通りを吹き抜け、紙袋やら、ソーダーの缶やら、古新聞を下水管の方にあつめる。すべてがあなたからほど遠いように感じる。この通りは知っている…あなたにはまだ分からないが。あなたの足取りはひとつの方向に向いているが、どうしてかはわからない。あなたの衣服はぐちゃぐちゃで、土やどろが塗り付けられ、先ほどのとがった木箱の破片にところどころが切り裂かれている。あなたの顔は葬儀やのメークで青白く、髪の毛は乱れている。あなたは縁石をのぼると、歩道をあるきはじめた。あなたはコンクリートのひびにつまづかないよう注意して歩かなくてはならない。正面をじっと見据えつづけたままの姿勢で移動しながら。腕はあなたの脇につられたようにだらんとたれさがっている、あなたが動くとそれは動くが、それをあなたの筋力で動かすことはできそうにない。しかしこの腕は強力だ。あなたは強い。あなたは自分の墓を打ち負かし、それをなんといっていいのかあなたには言葉が思い付かないが、あなたは無限の痛みの連鎖から解放された。そしてあなたはあなたがどこに行けばいいか知っている。あなたはあの「顔」にむかってすすめばいいのだ。 記憶があれば、あなたは通りを懐かしく感じたろう。記憶があればあなたはあのビルを懐かしく感じただろう。あなたはここに以前住んだことがあるのだ。伴侶とともに。一度、あなたはおたがい腕をとってその「顔」とこの通りを歩いたことがある、どこまでも。だが、その「どこまでも」あるいた、その先がこの場所だったわけだ。あなたはビルの階段をのぼり、三階までのぼってきた。どうしてこんなことをしているのか、あなたには理解できない。どうしてあなたが夜のあいだとおして歩道をあるきつづけるのかわからないように。事実、あなたの腕がポケットをつらぬき、ズボンとその残りの布を切り裂きながら、そこにない何かをさがしているのにもあなたは注意をはらうことができないでいる。 あなたがドアを押すと、あなたの骨格からの力でそれはきしきしと音をたてた。ドアを引き裂くほどにあなたの指はさらにするどくなっていくようだ、大きな木材の破片が扉のフレームからとびちる。あなたの飢えはすでに押さえようがないほどだ。あなたの考えられることは、飢え、そして、あの顔。あなたは彼女がこの苦しみから救ってくれると知っている。あなたはアパートの玄関にいる。50年代風の建築物、あなたが目をおくると、上の階にのぼるため梯子段。それをとりつける。階段、階段、長い階段をのぼり、のぼり、梯子段をのぼり、手すりに手をかけてのぼっていく。ついにあなたは頂上に…そうここに来たのだ! そうここがあなたが目指していた扉だ。あなたの身の内から飢えがわきおこり、それを満たせと叫んでいる。あなたがアパートの玄関口にたち、そこにいると、まるでその扉はどろとろと溶け出すように感じる。不意に、かすかなジャスミンの香りが空気に満ちて、あなたは歩く速度をおとし、あなたを取り囲む周囲の状況を理解できた。だが、そんなことはいまはどうでもいい、飢えが呼んでいる。あなたは中に飛び込むと、破滅的なあなたの飢えを満たす準備をはじめた。あなたはかすかな花の芳香をおって、水槽の光をわきに、ベッドルームへとはいった。部屋にとびこむとあなたは不意におしだまり、ベッドで寝ているその姿とその顔をしげしげと見つめた。 彼女の寝る姿をみるとあなたの身のうちの飢えがほとんど消えかけた、月光がそのままの窓からその姿をてらしていた。いや、だがあなたの、狂熱はおさえきれない。あなたは次の瞬間、彼女に噛みつき切り裂きはじめている。その衝撃に彼女は目覚め、しかしほとんど叫ぶ暇もなく、何がおこったのかもわからずに、彼女自身の血の中に沈み、息絶えた。あなたは血糊に覆われ、この饗宴からあなたにさらなる力が身のうちからわきおこるのを感じていた。突然あなたは、あるイメージにおそわれた。あなたがいまその手で飢えをみたすために切り裂いた、いまは死んだ彼女と共有した生活のひととき。あなたはつまづくと壁にもたれかかった。あなたの腕が伸び、彼女の血でよごれた頭を拾いあげる。死者の瞳がじっとあなたを見据えている。あなたは彼女の名前を思い出した。サラ。忽然とあなたは思い出した、彼女がなたにとってどんな意味をもっていたのかを、そしておそらくあなたが彼女にどんな意味をもっていたのかも、だけれどなぜそんなことを思い出したのかあなたにはわからない。あなたは彼女の頭をあなたの自分の冷たい血まみれの両手に抱きかかえ、その目をみつめた。そのときあなたは理解した、あなたが何者になつたのかを、化け物。生きているけど、死んでいるもの。憎悪そのもの。夜をさまよう屍鬼(ゾンビ)。あなたは世の中から嫌悪され、そして狩られる危険性がある。あなたがそれ自身であるために、あなたが何ものかになりうるために、あなたは恐れられている。 どこにいけば自分と同じ種類の者がいる? どこにいけば仲間を見つけることができる? わたしはなぜ、今ここに存在するというのだ? あなたはおしよせる精神的な打撃に堪えながら、必死に心ベッドルームのドレッサーにもたれかかなりがらを心をおちつけ、逃げ道をさがそうとする。木製の壁を力任せにたたきつけていると、あなたの心は突然に静寂をとりもどした。見下ろすと、カーペットに水槽から飛び出したグッピーたちが散らばっている、あなたのズボンのきれはしに噛みついているものもいる。あなたはそれを拾いあげると、踵にそれをすりつけ、その場を立ち去った。「どうすればいいんだ?」 まず、あなたはアパートを離れるべきだと考えた。階段をとびおりると、あなたは路地に身を潜めることにした。あなたは自分自身をとりかこむ新しい方法について理解しはじめていた。そして、あなたは自分自身をもたもっている。 誕生日おめでとう。 ご意見、お問い合わせはparanodjpn@hotmail.comまで 翻訳およびサイトでの公開を、こころよく許可してくれたMike Lemmer氏に心から感謝いたします。 Thanks for Mr Lemmer.He gave me a permission of translate them,and put them on public. |