
| 30分の休憩、だったはずがなぜか40分を超えてようやく午後の部が再開。まずはFUN Futsal ClubのトレーナーチームとFIRE FOXという、オスカー監督の持つ2つのチームのエキシビションマッチ。午前中に解説された戦術を使いつつ、要所要所でゲームを止めて説明が入る。FIRE FOXという日本で一番のお手本を、間近で見ながらの説明は確かにわかりやすい。わかりやすいが、見ただけで出来るようになるんだったら苦労はしねぇ。それだけでいいなら明石屋さんまは今頃バロンドールだ。
日系ブラジル人のFUNトレーナーチームと全日本選手権の時と違いIpanema's抜きのFIRE FOX。軽く流す程度のエキシビションマッチであるということを差し引いても、FIRE FOXは#6難波田主将がゴールを決めるなどさすがはチャンピオンチームといった感じ。 そのエキシビションマッチの最中、例の眼光鋭い悪人ヅラの人がこちらにやってきて、塚ちゃんに何か言っている。ヤクを売りつけに来たわけではなさそうだったが、オレの位置からは何を言っているのか良く聞こえない。エキシビションマッチ観戦に夢中になっていたということもあってそれほど一生懸命聞き耳を立てようとも思わなかったのだが、「ゲームを…」といった感じのことが漏れ聞こえてくる。一瞬「我々もゲームやるのかな?」と思ったが、終了予定時刻の14時半から逆算してもゲームなんてやるとは思えない。前回は時間を延長してまでやってくれたらしいのだが、今回は他に3カ所でクリニックが行われ、明日は奈良でのクリニックが控えている。スタッフの移動の時間などを考えると、やはり時間の延長は期待できそうもない。何より今日は全然ボールを蹴れない日に違いないと捨て鉢にもなっていたので、全員がゲームをやるという期待はしないようにしていたのかも知れない。なので、ゲームをやるにはやるが、キーパーが足りなさそうなのでこれ以上ないというキーパーの格好をした塚ちゃんに声がかかったのだろうと勝手に思いこんでいた。 しかし、それで塚ちゃんが緊張するのはわかるがなぜかまっちもツマもえらく緊張している。特にツマのアガリっぷりは他の追随を許さぬ勢い。ここでもうおわかりだろうが、実際の話は、塚ちゃんだけでなく、我々もゲームをやるらしいのである。おそらくFIRE FOXと。当初は無駄にさえ思えた揃いのユニフォームが功を成したか仇となったか、マリオ安光氏は「人数揃ってるでしょ?」と言ってきたらしい。 しかしそんなことはつゆ知らぬオレは、他人事のようにツマに「なんでそんなに緊張してるのよ?」と問いかける。周りは周りで超余裕をかましているオレが不思議でしょうがなかったらしく、「だんなってこんなに肝っ玉座ってたっけ?」というような怪訝な表情で見つめる。知らぬは亭主ばかりなりという言葉はこの場合ちょっと違うような気もするが、「うちらもやるんだよ」という周りの人の言葉の意味をようやく理解したとき、オレは一気に緊張ランキング初登場1位に躍り出たのであった。 さてクリニックのほうはといえば、エキシビションマッチが終わった後は午前中のおさらいということで質問コーナーとなった。 この質問コーナーは午前中に説明された改正ルールや戦術などに関する疑問点を講師にぶつけるというまるでそのまんまのコーナーだったのだが、これが終わるといよいよFIRE FOXとの対戦コーナーが控えているため、緊張ランキングトップを守り続けているオレにとっては断頭台への待ち時間にも等しかったのだが、そんなオレの心境とは全く無関係に参加者からはいくつかの質問が出てくる。 ケーキ屋のおっさんは丁寧にそれらの質問に答えるのだが、ただ間に通訳が入るためにどうしてもニュアンスが伝わりにくい。結果、「GKのスライディングによるファウルの基準が緩和されたが(ペナルティエリア内のスライディングは、ボールに行っていれば足からスライディングしてもよくなった。現行はフィールドプレイヤーと同じくスライディングタックル自体がファウルだった)、どの程度までがファウルとなるか」という質問に対してフィールドでのスライディングを懇切丁寧に説明してくれたりなど、質問の意図とはちょっと違うことを一生懸命説明してくれるという微笑ましい場面もあったものの、質疑応答(?)は概ね順調に進む。オレの緊張ランキングは相変わらずルビーの指輪の如く長期間首位を守っていたものの、この頃にはようやく心の準備、というよりは覚悟を決め始めた。 そのうち質問コーナーも「じゃあ質問をあと一つくらいでゲームに移りましょう」という段階になったので、オレも「FIRE FOXという全国チャンピオンと試合を出来るなんて滅多にないチャンス。いい経験には間違いない。」と自分に言い聞かせ、オノレを奮い立たせ始める。話を聞いているとFIRE FOXとゲームをするのは我々だけではなさそうだったので、周りの参加者もそろそろ心の準備をしている風だった。何より参加者のほぼ全てがいい加減講義ばかりでややうんざりしており、どういった形にせよ早くこれを終わらせてボールを蹴りたいというような感じだっただろう。そんな中最後の質問をすべく名乗りを上げたのは、50過ぎくらいのやや頭の寂しいお父さんだった。お父さんがマイクを握る。 「すいません、3つほどあるんですけど…。」 世の中には場の空気を読めない人というのは案外多いものである。結婚披露宴の乾杯音頭で列席者全員を立たせたまま10分以上しゃべり続けたり、カラオケに行って1人メドレーをフルコーラス歌ったり。本人に悪気がないのは分かるのだが、それだけに周りの人間にとっては厄介なことこの上ない。会場全体(オヤジを除く)が一気にぴーんと張りつめた雰囲気に包まれる。 で、その質問の1つ目は「今までゴールスローが(ノーバウンドで)ハーフウェイラインを超えたとき、ゴールスローのやり直しと言うことで指導していたんですけど、そうじゃないんですか?」ということ。そして2つ目が「FKの時にはボールから5m離れることになっていますが、その時には(防御側)全員を5m後ろ(相手ゴール側)に下がらせていたんですけど、それでいいんですか?」ということであった。 懸命な読者はお気づきかもしれないが、二つとも2000年のルール改正に関する質問どころか現行ルールの独自解釈の同意を求めているだけである。 ちなみに言っておくと、ゴールスローがハーフウェイラインをノーバウンドで越えた場合は、ハーフウェイラインの任意の位置から相手ボールの間接FKが与えられる。FK時の防御側選手の位置は、5m離れるという記述があるだけである。もっともゴールスローの制限がなくなった2000年ルールでは、やり直しだろうが間接FKだろうがそんなことはもはやどうだっていいし、ルールブックにはFK時の防御側選手の位置なんてどこにも書かれていない。話ぶりや年齢からするとどこかのチームの指導者、それもおそらく子供のチームなのではないかと思うが、他人事ながら今までこの「オヤジルール」で教わってきた子供たちに同情してしまう。 それにしてもこのオヤジ、自分のチームに帰ったら今までのオノレの間違いを子供たちにどうやって説明するのだろう? まさか2000年の改正のドサクサに紛れて「今までとルールが変わったんだぞ」と言って、このオヤジルールを全てなかったことにするつもりではあるまいな。 会場席は既に1つ目の質問でイヤと言うほどゲンナリしていたのだが、スタッフのほうもいい加減ゲンナリしたらしく、「あと1つがですね…」とオヤジが始めたところで、通訳の人が「すいません、あまり時間もないのであとで個別にお願いできますか?」と打ち切った。オヤジは打ち切られたことが納得行かなさそうであったが、質問を完遂してオヤジ1人が納得したとしても、あとの全員は何があっても納得しないだろう。オヤジの3つ目の質問が何であったのかは結局謎に包まれたままとなってしまったが、それまでの2つの質問から考えると、3つ目の質問を出した瞬間に暴動さえ起こりかねなかったので、スタッフの判断は正しかったと思う。 というわけで、やっとこさっとこメインディッシュの対FIRE FOX戦。質問オヤジのせいでただでさえ少なかった残り時間がさらに絶望的な状況になってきてしまった上、どうやらFIRE FOXと対戦するのは我々だけではなく希望者全員となったために、とっとと行かなくては多分対戦できなくなる。出来るだけ急いだつもりだったが、我々の陣取ったところがスタンドの上の方だったために、順番は4番目となってしまった。 ところで他のチームはキーパーが来ているところがなく、しかも4人しかいないところがほとんどだった。そのため「FIRE FOXのシュートを受けられるなんて滅多にないんだから」と塚ちゃんをけしかけ、ずっとキーパーを勤めてもらうことにした。 いよいよ次は我々という待ち時間の間、ロベルトさんからディフェンスの戦術を一つだけ教えてもらう。基本的な動きは図解を見ていただくことにして、強いチームと戦うときの戦術ということだ。この戦術を携えてFIRE FOXに挑むことになる。 ところで、我々の前の試合でもGKを務めていた塚ちゃんは、ペナルティエリアの外まで出てきてクリアを試みたがここで痛恨のミスキック。ボールはFIRE FOXの選手に渡る。当然のようにループシュートを狙われた塚ちゃんは懸命に放たれたシュートに手を伸ばし、何とかシュートを弾く! もちろんペナルティエリア外で。 というわけで塚ちゃんレッドカード。まぁ公式戦ではないのでその後も塚ちゃんは赤紙を背負ったままプレイを続けていたが。 さて来るべき時が来て、我々の出番となった。のしん、まっち、オレ、ツマ(途中からたまちゃんと交代)がフィールドへ。FIRE FOXのメンバーはGK#17伊藤喜彰、#2小野大輔、#3原田健司、#8鵜飼孝、#12眞境名オスカー。Mr.フットサルこと#14上村信之介は出ていなかったが(というよりは結局最後まで出ようとしなかった)、それでも錚々たるメンバーだ。心の準備は出来ていたつもりでも、フィールドで実際に対峙したらやっぱり再びランキングトップに返り咲く緊張リバイバル。うわぁオスカーだよ本物だよオレ府中のフットサル大会でのあのものすんげえパスが今でも忘れられないっスよつーかオレユニフォーム交換してもらっちゃダメ? やっぱダメだよなああキックオフ? ボールはこっちでいいの? といった感じですっかり舞い上がってしまい、ついさっき教えてもらった戦術なんて全て吹っ飛ぶ。ゲームが始まっても単に右往左往しているだけのオレに、のしんから「ちゅうさん違うよ! そこじゃないよ!」と指示が飛ぶ。おお、そうだった。この場合オレが当たりに行って、今オレがいる場所にはのしんがいなきゃならないんだ、と思って当たりに行ったときには既にボールはそこになかった。 そこからもう何がなんだか分からなくなる。試合時間自体はおそらく3分くらいだったと思うが、何点決められたかとか誰に決められたかとかなんていっさい記憶にありゃしねぇ。唯一記憶に残っているのが小野選手にすっぱり股を抜かれたことくらいで、もう絵に描いたようなダメっぷり。 それにしてもやはりすごいFIRE FOX。本気でやってないどころか明らかに流しているのだが、それでもスピードが段違い。マークにつきながらボールを見て、もう一度相手に目を移したらもうその場にいないし、横パスなんかもカット出来るようなスピードじゃない。本気でやってないとはいえさすがに日本一のチームだ。これだけは非常にいい経験になった。 ちなみに我々がFIRE FOXとの対戦を終えると、いよいよもって時間がなくなってきたために我々より後のチームは参加者同士の対戦となった。あと少し遅れていたらFIRE FOXとの対戦を逃してたところ。危ないところだった。 最後にクリニックのトリを飾るイベントとして、参加者のうち女子だけによるエキシビションマッチが行われた。ツマとたまちゃんが同じチームとなり、塚ちゃんは相手チームのGK。ツマ&たまちゃんチームのGKはFIRE FOXの伊藤選手。ゲームはツマ&たまちゃんチームが押し気味に進めていたが、おそらく出場していたメンバーの中で最もフットサル(サッカー含む)歴の短いツマは、おろおろしながらフィールドを駆け回る。たぶんFIRE FOXと対戦しているときのオレも外から見ていたら同じような感じだったに違いないが、そんなことは棚に上げて子供の運動会を見守るお父さんのような心境で見守る。 ところが、それまでは緊張でミスを繰り返していたツマが左サイドでボールを受けると、ゴール近くの右サイドにいたたまちゃんへドンピシャのパス。たまちゃんこれをしっかりトラップして冷静にゴール右隅に蹴り込んで1点。さすがはGKとはいえ読売ベレーザユースに所属した経歴を持つプレイヤー、基本がしっかりしている。その後ツマ&たまちゃんチームで出てた選手が素晴らしいトゥキックシュートを放つもポストに嫌われたり、相手チームも再三ゴール前に攻め込みながらも伊藤選手の壁は割れずじまいで、結局1-0で試合終了。たまちゃん1得点、ツマ1アシスト、塚ちゃん1失点と、関係者全員が点に絡んだ試合内容にスタンド席の我々も大喝采。女子の即席チーム同士の対戦に他の参加者からも暖かい拍手が贈られ、会場は暖かい雰囲気に包まれた。 ただ、うまくごまかされたような気もしないでもない。 こうして波乱だらけの今回のJAL/TOPPERフットサルクリニックは終わりを告げた。 |