酒は飲んでも飲まれるな
 
一口に料飲店といってもバーや割烹、小料理店、居酒屋、スナック、クラブ、ファーストフード、ファミリーレストランなど規模も形態も用途も様々です。そして、その多くは料理と共に酒も提供されます。もちろん、提供する料理にあった酒を店が吟味して…、という訳でもないのが現状のようです。
ビール
多くの料飲店で、どこにでもあるだろうと思われるのがビールです。(鮨屋でビールは置かないという店があったようにも思いますが)店によっては生ビールを提供することもできるでしょう。では何故、ビールなのでしょう。答えは後回しにして次に進みます。
清酒
次は日本酒、ここでは清酒です。面白いのはメニューに「酒 (燗)一合」と書かれていれば、それがどの銘柄であるかは問わず、清酒である(九州の一部では違うかもしれませんが)ことの共通認識の元に注文が成立してしまいます。居酒屋や旅館などは特にそういう表記が多いように思います。そして、それ以外の純米酒や吟醸酒は「地酒」と呼び、メニューも別になっていたりもします。日本で酒といえば清酒を指すに決まっているだろう、と若干、乱暴な決めつけもあるかもしれませんが、日本の酒といえば清酒を指すものだという共通認識があるようです。では酒と地酒の違いは何でしょう。ここでも答えは後回しにして次に進みます。 
酎ハイ
酎ハイもなかなかの人気メニューです。大部分は甲類と区分される焼酎をソーダで割って味付けをしたものです。レモンやメロン、カルピスにピーチ、要するに焼酎を入れていなければフルーツスカッシュ(こんな言い方、今時しないか)ですから、幼い時から炭酸清涼飲料水に飲みなれた昭和40年代生まれ以降の人にはほとんど抵抗無く受け入れられています。おまけに甲類の焼酎が入っているので手っ取り早く酔う事も出来ます。でもメロンソーダで焼き鳥は食べられないのに酎ハイのメロンでは食べられるのは不思議なことです。
ワイン
最近の出色はワインです。ブームといわれた時期こそ去りましたが、逆にタフな愛飲家を増やしているようです。これも大手の居酒屋などへ行くと「ハウスワイン デキャンタ」とだけメニューに書かれていて銘柄がわからないケースや、ワインリストが用意されていて(実はこれが正当らしい)、銘柄を選べるケースもあり、どこか酒と地酒の関係に似ている気もします。しかし、ワインには赤や白やロゼとあり、スパークリングという発泡酒もあります。肉は赤、魚は白というのが一般に言われる相性(これも日本人の勝手な決め付けらしい)であり、最近は赤が好まれるようです。(恐らく素人でも評価しやすいからであろうと思いますが)某グルメ漫画でも、「ワインは日本料理とは合わない」と明言しつつ、「日本の家庭料理とワインの組み合わせはこれからの楽しみ」などと書かれているぐらいですからワインが本当に日本に根付くかはこれからの課題のようです。
ウイスキー
ウイスキーもあります。これが厄介です。ウイスキーと一口に言っても国産ウイスキー、スコッチウイスキー、バーボンなどがあり、材料やブレンドしているかいないか、など種類も異なります。にも関らず、メニューには「ウイスキー(水割り)」と書かれているだけで、どんなウイスキーなのかは書かれていません。居酒屋で単にウイスキーと書いている場合、その多くは国産ウイスキーのことです。国産ウイスキーが悪いという訳ではありません。これも「酒」に通じるかもしれません。閉口するのは結婚式やパーティーの席でもウイスキーが出てきます。しかも、水割りで。ウイスキーを水で割るのは日本が編み出した飲み方だそうです。ウイスキーの好きな方が水で割って飲まれるのは勝手ですが、政治家のパーティーなどで水割りグラス片手に談笑しているのを見ると、この国の政治家が世界からなめられてもしょうがないなとも思います。少なくとも日本のトップクラスのホテルが会場であればあのような飲み方をさせるのはおかしいと思うのは私だけでしょうか。そのウイスキーのメーカーから多額の献金がある以上、そういう場所で飲んでいないと面目が立たない政治家の配慮なのかと勘ぐってしまいます。 
ブランデー
ブランデー、これとウイスキーの違いがわからない人が多いのではないでしょうか。何を馬鹿な、と思われる方もいるでしょうが、実際、スナックやクラブなどでブランデーの水割りが出されている事を考えると、「ブランデーはウイスキーより高級品」といった程度の認識しか無いままに店の言いなりにブランデーを飲んでいるに過ぎないのでしょう。これも某ウイスキーメーカーのCMの影響が大きいと思います。「ブランデー、水で割ったらアメリカン」意味が全くわかりませんが、このフレーズでブランデーも水で割るものと誤解された方も多いでしょう。
焼酎
焼酎もややこしい。麦、芋、米とある上に飲み方も水割り、ロック、お湯割りとある。これらも清酒同様、「焼酎(麦)一合」と書かれている事が多いように思います。ところが、「梅干、カットレモンあります」と併記されていて、がっかりさせられる事があります。どういう訳か焼酎には「梅干、カットレモン」が付き物だと思っている店が多いようです。恐らく20年ほど前の第一次焼酎革命といわれた頃の甲類の焼酎を飲むための味付けとして編み出されたものが、その後の大量生産、イオン交換式濾過の麦焼酎ブームでも一役買って、「焼酎 with 梅干 or カットレモン」が定説になってしまったようです。焼酎に柑橘系の果汁を入れたり、砂糖を入れたりする文化もありますので、基本的に何を入れようが構わないのですが、何でもかんでも「梅干、レモン」を入れるのはこれまた間違った思いこみなのです。
その他
これら以外にもウォッカ、ジン、ラムなどいろいろな酒があり、店のスタイルや用途などによって実に様々な酒が提供されます。
飲まれている
こうして考えると、料飲店でだされる酒が必ずしも客に喜んでもらえることを基準に選ばれている訳ではないことがおわかりいただけると思います。酒の売上自体が料飲店にとっては魅力でもあります。市価で3,000円もしない洋酒が「キープして20,000円」でまかり通るくらいです。さらに、ビールメーカーにしろ清酒メーカーにしろ、そのシェア争いは熾烈なものであの手この手で自社製品の売りこみ、他社製品の蹴落としに躍起になっています。一方、規模の大小に関らず、料飲店も自店もしくは自社の発展、あるいは維持の為には仕入れコストの軽減を図る事は命題とされています。そのため、本当に提供したい味と酒販店、あるいはメーカーから提供される好条件とを引き換えにしてでも、より安く仕入れられる商品を仕入れる事に邁進せざるを得ません。ですから、所帯が大きければ大きいほど、客の好みよりメーカーの好条件が重要視されます。料飲店でもビアジョッキや徳利などでメーカー名の入ったものは料飲店向けの販促グッズです。生ビールを置いてくれるならサーバーもお貸ししましょう、ジョッキも差し上げましょう、その代わり店の前にのぼりを立てて頂戴となります。また、客も料飲店で提供されるなら間違い無いものと信じ、味覚そのものは二の次になります。その上、TVや雑誌などのメディアでのCMや販促プロモーションなどにより、名前が先に売られ、名前が売れている事こそが旨いものであるという構図になっています。最近ならビアサーバーなどの販促グッズのプレゼントがいい例でしょう。要するに飲む側は飲む前に刷り込まれた情報を元に飲まれているだけなのです。 
ブーム
時々起こるブーム、例えば地酒ブーム、ワインブーム、酎ハイブームなどは、ナショナルブランドメーカーに飲まされているという状態への反発であったり、アンチテーゼであったのかも知れません。ところが、ブームが起こるたび、マスコミによって過剰に煽られ、そして終息させられます。これもマスコミと深く結びついたナショナルブランドメーカーの戦略ではないかとさえ疑いたくなります。それが証拠にナショナルブランドメーカーからすぐに類似商品が出てきて、居酒屋などのメニューを占拠してしまいます。そしてブームの元になった銘柄などは忘れ去られていきます。「とりあえずビール」「熱燗1本」などと注文しても何ら支障無く提供されるのは、酔っぱらいは何も考えてくれるなということかも知れません。 
真実
美味しいから売れる、それは真実でありながら、事実ではないようです。でも、美味しいものしか売らない、提供しないという信念の店も実在します。できればそういう店を見つけて飲みたいものです。一生に飲める酒の量は知れているのですから。 
 
 
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