| ●版画とG師匠 |
プリントルームにいって、プリントテクニシャンのGNに相談する。体格のいい、いかにも職人って感じの人だ。「兄貴」って感じがぴったりかもしれない。 「これを版画でしてみたいけど、どの版画でしたらいいの?」 「うーん、ドローイングの感じをそのまま版画にするならリトグラフだ!」 これがわしが師匠と呼んでいる(心の中で)GNとの出会いだった。 GNはパートタイムのテクニシャンだ。水・木・金と学校にくる。最初に彼がわしに念を押したのは彼のアクセントについてだった。 「外国人、特に日本人の生徒は俺のアクセントがわかりにくいらしい。だけど、俺はこの話し方しかできねぇんだぁ!わからねぇときは遠慮なく聞いてくれぇ。いいなぁ?」 彼のアクセントは思いっきりコックニーだった。(コックニーとはイーストロンドンに見られる下町のアクセント。映画「マイ・フェア・レディ」の主人公イライザがこのアクセント) リトグラフの基礎をつきっきりで教えてくれる。版画は危険な薬品を扱うことが多く、工程を覚えるまでは注意が必要だ。「いいなぁ。必ずグラブ(手袋)をはめるんだぁ。そしてそのグラブに“オウル”がないか必ずたしかめろ!オウルがあるとてぃへんなことになるからなぁ!」 オウル・・・・? owl・・・? ふくろうじゃないよね。んーとんーと・・・ ひょっとして「ホウル」?「Hole(穴)」か! そう、コックニーは単語の頭の“h”が落ちるのだ… 「アンマーがいる!アンマーすぐとってこいぃ!!」とゆわれて反射的に走って捜しにいったが走りながら「アンマ―、アンマ―ってなんだろー??」って事もあった。 <正解:ハンマー(hammerとんかち)> 酔うともっとアクセントがきつくなる。パブで「エィアー・ギャラリーで今やってるショーはおまえは見ておいたほーがいいぞぉー!」 エイアー・ギャラリー?新しくできたっけ?そんなの。 <正解:ヘイワード・ギャラリー(Hayward Gallery)> 話はそれてしまったが、このリトグラフをきっかけに、版画にどっぷりつかるとこになる。ずっと捜しているものにやっと巡り合えた気分だった。即効でペインティングはやめ!版画しかせんぞと決めた。ペインティングってわし才能無いし… ドローイングは好きだけど、色を筆で塗るのがへたくそできらいということに気付いた。<←はよ気づけよ…> なによりジッとキャンパスの前ですわってられない(爆)。集中力がつづかないのだ。落ち着きがないのだ。そんなことは子供のときからわかってたことなのにねぇ・・・ 版画は、たくさんの工程を踏まないといけないので作業自体になんか動いてます・進んでますって(体も作品も)実感がもてる。 それから3年間、GNに版画の1から10まで全部教えてもらった。BAファインアートのチューターにはプリント出身はひとりもいず、全員ペインターだったこともあるが、作品のことは全部彼に相談した。彼はイギリス人とは思えないくらい働き者だ。一生懸命にがんばっている生徒には、プライベートの時間も割くこともある。わしは自宅のPCを借りてその上ごはんをごちそうになったりもした。わしのつたない英語、単語を並べただけのよーなしゃべり方でも何をしたいかわかってくれて、適格なアドバイスをくれた。 アーティスト活動をつづける上でワークショップはとても重要であるが、個人でそれを利用したり、ましてや設備を整えるのはとても費用がかかる。生徒に教えるのはそこそこに自分の作品のための私用にせいをだすテクニシャンは多い。GNは大学にいる間は、ほんとうにずーーっと生徒と大学のために走りまわっている。 彼は世界一のプリントテクニシャンだ。彼に出会ったから版画というものに出会えた。 そう思う。 |