[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」
一貫性とコミットメント
一貫性とコミットメント
人間、特に大人にはいったん自らが決定し態度表明した事について、一貫した行動をとろうとする
圧力が、周りの人からだけでなく自分の心の中からかかります。この時問題になる態度表明は、決意
を意識的に「周囲へ宣言」するだけでなく、「ある行動をとること」「何かを認めること」など、ご
く些細なことまで含まれます。この問題を扱うとき、「態度表明」や「宣言」というと誤解を招くの
で、社会心理学では「コミットメント」という言葉が使われます。コミットメントと一貫性に関して
は次のような面白い実験があります。
ある日、一人の「交通安全協会」のボランティアが高級住宅地のある家庭を訪ねます。もちろん、
「交通安全協会」のボランティアというのはウソで、実際は心理学実験を行う目的で、身分を偽って
家庭を訪問しています。彼は、「交通安全意識の高揚のためお宅の前庭に看板を立てさせて下さい」
と言い、一枚の絵を見せます。その絵には、派手で巨大な看板が、その家のこぎれいな前庭のど真ん
中に突っ立っている様子が描かれています。普通の人にはとても受け入れがたい光景です。ただ
単にお願いしただけでは、もちろん100%の人がこの看板を立てることを拒否しました。ところが、
事前にあることをしておいた家庭の何割かは、この醜い看板を立てることに同意してしまったのです。
その事前に行われたこととは、別の「交通安全協会」のボランティアが1週間ほど前にその家を訪
ね、「交通安全の運動にご賛同いただけるなら、小さなステッカーを玄関にはっていただけませんか」
と依頼することでした。この申し出は、ほぼ100%の家庭で承諾されました。これは、「我が家は
交通安全意識の高い一家である」というコミットメント(態度表明)に他なりません。そして、その
コミットメントをした家庭の何割かが、それに一貫した行動、すなわち、普通ならとても承諾できな
い醜い巨大な看板を「交通安全意識の高揚のため」自分の家に立てることに同意するという行動をとっ
たのです。あくまで自分の意志と思いこんで・・・。
さらに面白いことに、有効な事前のコミットメントは「交通安全ステッカー」に限りませんでした。
「子供達を飢餓から救うステッカー」でも「環境破壊防止ステッカー」でも、「意識の高い市民」と
いうコミットメントをするものなら、何でも効果がありました。また、報酬が与えられない場合の方
が行動の一貫性が強くなるという結果が、同種の別の実験の結果からわかっています。報酬をもらう
と、「結果が出たから、もうやめ」という気持ちになりますが、報酬がない場合「これは私自身の考
えでやっているのだ」と一種の”意地”で「一貫性」の自縄自縛になるのです。いずれにせよ、どの
場合も「私は○○だから、こうしている」と、あくまで自分の意志で行動を選び取ったと信じています。
ケーススタディの項目の中で、「先に有料治療の承諾を得てから、(高い)料金を提示することが
有効」と申しましたが、これは「一貫性」の原理を応用したものです。「治療に同意する」とコミッ
トメントした以上、「高いからやめた」とは言い出しにくくなるのです。また、その気持ちは自分の
内側からわいてくるので、よもや相手に操作されて起きた気持ちだとは、普通は考えないでしょう。
また、今回の全般的な状況に当てはめて考えると、無料であれ匿名であれ「ある治療者に電話をか
ける」「メールを送る」という行為が、「相手を治療者として認める」「自分はその治療者から治療
を受ける」というコミットメントに他なりません。ですから、いったんその行動を起こしてしまうと、
治療がうまくいかなくても、あるいは治療自体が疑惑に満ちた変なものであっても、あなたはコミッ
トメントに一貫する行動をとり続けることになりかねないということなのです。そして、これまで挙
げてきた心理操作と同様、ご本人からは、なぜ相手に行動を支配されるのか見えにくくなっています。
あくまで、ご本人は自分の意志で行動を選び取っているつもりなのですから。さらに、相手の土俵に
登れば、他の心理操作の影響を受ける可能性も高まります。
掲示板に書き込む方が一時的に症状が軽快する理由もこれで説明できます。
嗜癖疾患には「否認」(自分を病気と認めたくない)という問題があり、摂食障害の場合、特に「拒
食症」で強く認められます。「病気についての情報を集める」「何らかの治療施設にコンタクトを取
る」ということは、「自分の病気を認める」「自分の病気を何とかしたいと考える」ということに他
ならず、「否認」という症状が弱まった状態です。否認が弱まっているということは症状の一部が落
ち着いているという意味ですし、そのような状態では「自分の問題を何とかする」すなわち食行動の
異常を自分の力でコントロールしようと患者さんは頑張ることでしょう。
当然、このような時期には全般的に症状が弱まる波がやってきます。あとは、「コミットメントと
一貫性」の原理を応用し、その心理状態に励ましと報酬を与えれば、治療者が症状を弱めたように見
える可能性が高まります。別項のように「好意」を演出して相乗効果を得ることもできます。
もちろんまともな治療者も経験的にこのような原理を用いますが、「自分を優秀な治療者と認めさ
せる」ためにこの技法を用いることはありません。一歩離れて、「クライアント自身の回復する力を
支えている」という態度をとることが普通です。
メール相談も電話相談も匿名でできるから大丈夫と考えている方はおられませんか?以上のことか
ら出る結論はただひとつです。
「たとえ『匿名』であっても、危ないところに近づいてはいけません」
手慣れた悪徳業者の手にかかると、段階的に「コミットメント」を引き出され、いつの間にか相手
の意のままに「一貫した行動」をとり続けることになります。あくまで、自分の意志と思いながら・・・。
なにせ、相手はそれで「食べている」プロフェッショナルです。
一貫性と認知不協和
これまでの説明で、「無料電話相談は匿名で出来るから大丈夫」「フリーメールを使えば匿名が守
れるからメールで相談するのは大丈夫」という考えが危険をはらむということは、おわかりいただけ
たのではないかと思います。自分の判断に自信が持てないとき、「一度試してみてから・・・」と考
えがちですが、手慣れた悪徳商法家にかかると、コミットメントを細かい段階にも分けて何度も引き
出され、いつの間にか相手のペースになっていきます。
さらに、人間は、「思想」「感情」「行動」の間に一定の食い違いしか許容できないため、ある行
動を起こしているときは他の二つはそれとの不協和音を少なくする方向に動きます(これを認知不協
和理論といいます)。そのため、情報の取り入れにも取捨選択が起き、食い違いの少ない情報を優先
的に取り込むようになります。
その情報が、誰かをだまそうとしている相手にとって都合の良いものだったら・・・あとはおわか
りになりますね。自分の意志で考えているようでも、判断の元になる情報の源泉を相手にコントロー
ルされることになります。