希少性


 手に入りにくいものは貴重に思えると言うことです。「数量限定」商品には性能が量産品と同等で あってもプレミアがつき高くなることがあります。「遊戯王」の限定カードがらみの東京ドームでの 大騒ぎを思い起こせばわかりやすいでしょう。  「今しかない」「ここしかない」と強調される、購入を迷っている商品にほかの顧客が購入を考え ていることを匂わされる、何となくつきあっていた交際相手にライバルが現れる・・・物事の価値を 誤解しがちな瞬間です。これらの心理状態は厳密な「実験」でも証明されています。  某氏のウエッブサイトの記述は、トップページで指摘したように、摂食障害の治療について一般向 けの書物のの引き写し程度の内容しかありません。その一方で「たくさんの精神科医が寄ってたかっ て治せない」と他の治療の機会を否定し、自分の治療施設のみに救いがあると強調しています。多く の摂食障害の患者さんは自分で食行動を何とか正常なものにしようと努力をしながら何ヶ月も何年も 失敗を重ねています。そこで、このように「希少性」を強調されると「それが欲しい」と考え、他の 可能性を否定する人が出てきてもおかしくありません。

 また、ウエッブ上の情報は自分で検索して初めてたどり着くものです。手を離してしまうとウエッ
ブの海の中で見失ってしまうかもしれません。自分が探し当てた情報が貴重で価値があるものと思い
こみたくなる心理もあわせて、巡り会った機会の希少性を自然に過大評価する可能性も高くなります。

  ここで一つ大事なことは、摂食障害が「治らない難病」と言うのは「デマ」だということです。
アメリカの1999年の医学専門誌に載った大規模な調査では『過食症』の患者さんの7割に改善が
認められています。私はアメリカで生活した経験がありますが、摂食障害の患者さんが特別日本と違っ
た治療を医療機関で受けているということはありません。下の URL から論文の要約がダウンロード
できるので読んでみて下さい。Long-term Outcome of Bulimia Nervosa (神経性過食症の長期予後)
というタイトルです。全文を読まなくても冒頭の要約 (abstruct) を読めば、必要な情報は得られる
でしょう。英文はごく平易なものです。アメリカにしかない特別な治療が有効であるというわけでは
ないこともお分かりいただけると思います。

Long-term Outcome of Bulimia Nervosa  思春期に発症した過食嘔吐のエピソードを伴わない「拒食症」は予後がかなり良いことがわかっ ていますし、逆に「薬物乱用」などのエピソードを伴った「過食症」は予後が悪いこともわかってい ます。某氏の記述はあまりに粗雑で、この複雑な病気のことを十分理解して書かれたとは思えません。 そこら辺にある書物から恣意的に引用した文章を、自分の都合の良いように適当に組み合わせている ようです。「専門家」を自称する人が意図的にこのようなことをすれば、「まともな人」ではなく「詐 欺師まがい」と呼ばれても仕方がありません。(意図的というのは、私が何度かこのような批判をし ても、恣意的な引用を止めようとせずまともな反論をしないからです)  某氏の流すような希少性を強調する意図的な「デマ」は目的があるときに出てくるものです。ここ がマインドコントロールの定義にある「特定の人物の利益」というところに絡んできます。


希少性 = 「秘密」の情報の魅力

 某氏のサイトは他からリンクされておらず、治療施設の住所も実際に面接して行う治療の内容も秘
密のままです。人は情報を得ることを禁じられると、禁じられる以前よりもその情報を求めるように
なり、好ましく思うようになります。情報が希少なものであるという事実が断片的な情報の価値を高
め、内容に不相応な説得力を持つことになります。ましてや、それを求める人にとって切実な問題に
絡む情報ならその傾向は強まるでしょう。(情報のあいまいさ)X(重要性)が人を引きつけるとい
う心理学の理論があります。あの治療施設に「他の施設にはない可能性」を感じる人が出てくる理由
や、詐欺まがいの民間療法が人々を引きつける理由はそこにもあると思います。


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