
ゴルキチたちの集まる店
私の名前は沙羅。私の肩まで垂らした真直ぐな黒髪も、「サラッ」。そんなことはどうでもいいのだった、ごめん。
私がこれから話したいのは、2年くらい前から贔屓にしているゴルフショップ「パラダイス」とそこに集まる、ゴルキチ、こと、ゴルフキチガイたちについてであります。
今やホンコンはゴルフブームの真っ最中。ネコも杓子も、いや会社の社長さんはもちろん、ワンタンメンやのおやじサンまで、ゴルフなのであります。
なぜゴルフなのか?勝手な私の想像でありますが、多分当たっているでしょう。つまり、こう。
1.ホンコンやんは見栄っ張りである。
2.ホンコンやんはギャンブル好きである。
ねっ、この2つがかなうスポーツっていったら、アータ、ゴルフ、ゴルフしかないわけですよ。(ホンコンやんの手にかかると、健全なるジェントルマンのスポーツもジェントルマンでなくなるのです。)
「おれさー、最近ゴルフ始めちゃってさー。うふふ。」とか、「テニスだア。ダメダメ、ゴルフだよ。ゴ.ル.フ.」なんて会話が、会社のあちこちで聞こえてごらんなさい。「ゴルフってなんだろなー。ヤナセかな?(なんて、ふるーい。ここはホンコンだッ!)ぼ、ボクちゃんもやっちゃおうかなー。せ、先輩ボクも(なんだかわからないけど、)ゴルフー。」なんて、先輩もビギナーのくせして先輩づらしながら、ゴルフショップ「パラダイス」にやってきたりします。
そんなわけで、なんだかわからないうちに、いきなり、クラブセットから、シューズ、グローブ、帽子、ボール、ソックスまで揃えちゃう、ぼッちゃま風、もしくは大陸成り金風あれば、取りあえず、ハーフセットがあればまわれますから、と言う、店員さんの言葉どうりハーフだけを買う堅実派あり、金がないけどゴルフなのだ!という人は7番アイアン一本お買い上げ、まで、とにかくこの「パラダイス」には、何も知らないビギナーズ & 勘違いも甚だしいゴルファー達が、毎日ひしめきあっているのでした。
2年前の話だ。
私がまだ、ゴルフのゴの字も知らなくて、それでもゴルフブームを先取りしようと、グループレッスン用に7番アイロン一本とサンドウエッジ1本を買いに行った時のことだ。
グループレッスン、、。結局、レイジ−な私は、バンカーレッスンに入る前に挫折してしまったのであるが、スコットランドから来たスコットランド人による本格的レッスンだったのダ。今思えば、もっとちゃんとマジメに習うべきだったと悔やまれる。なんたって、香港のゴルフコーチと来たら、元テニスコーチなんて信じられないのがいますからね、もちろん資格はなし。テニスブームが去って、ゴルフブームが来たから、乗り換えただけ、と実にわかりやすい理由である。そう、ここはアバアウトな国、香港であったのだ。
それはさておき、私が、どれも同じに見える、バラ売りの7番アイロンとやらを吟味していると、隣のウッドコーナーで葉巻きをくわえた、一人のおっさんが目に入った。
ガッチリしていて、いかにも「ドラコンはおれのもの!」みたいな風貌のおっさんが、数本のドライバーを前に、うーんと唸ってはシャフトを左右に振ってしなりをみたり、またうーんと首を振ってはグリップのエッジを手のひらで押してシャフトの固さを調べたり、さっきから、その単純な動作を延々と繰り返しているのである。
このとき、この店には、マスター、ジャッキー(生っ粋のホンコンやん)と妻の綾乃(天然ぼけの日本人)、そしてアルバイトの男の子2人しかいなかったので、私は迷わず、綾乃に聞いてみた。
「そうよ。さっきからずーと、あーして、かれこれ2時間ぐらいになるかなあ。」
「けど、別に珍しいことじゃないよ。」綾乃はそう付け加えて他のお客さんのゴルフシューズを取りに行ってしまった。
珍しいことじゃないって、、。この店の人の感覚が麻痺してしまっているのか、はたまた、この綾乃がぼけているだけなのか、、、あの葉巻きのおっさん完全にイッちゃってるよ。2時間もドライバーの固さみてど−すんだよ。あのドライバー、シャフトがもうダメになっちゃったんじゃないの?説明書にも書いてあるじゃない、「固さを調べようと必要以上な力でシャフトを折り曲げないで下さい、」って。どーするんだろう、あの人が帰った後、また元に戻して、売るんだろうか。(この店の人ならやりかねないな、ゴメン!)
私が変な心配をしていると、そのおっさんはやっと腰をあげたようで、当時絶大なる支持を得ていた、キャロウエイのビゲストビッグバ−サ−(いまは、ちなみにホークアイとモデルが変わっている。)8度のファームシャフトに決めたようだった。
可哀想なシャフト達だった、よく耐えたよ。私は人事ながら、心からホッとしたのであった。
それにしてもゴルキチたちのクラブ選びの真剣なこと。この店の売り上げのことはわからないけれど、こういう客達が、常にいて、常に賑わっているのである。(店が狭いと言う理由も有るけどね。でもこれはホンコンだから仕方ないのです。)
ホンコンにゴルフブーム来たり。(2年前のことですが、今も続いています。飽きっぽいホンコンヤンにしては奇跡に近い?)
余談ですが、このハマキのおっさんはホンコンで指折りの金持ちの一人で、妻は女優さんで、車は何台かあるうちの一つフェラリーを愛車に持つという凄いお人でした。なぜ知ったかと言うと、のち、彼の愛車、フェラリーナントカをレストランのパーキングサービスの人に過って、壁に激突させられると言う記事が新聞に載ったからでした。
彼にとっては痛くも痒くもないことだったのでしょうけれど、そのパーキングサービスの人は一体どーなったのでしょうか?
南無阿弥陀仏。
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