| THE HISTORY THERE MAY BE |
Historical If |
| Yak-141 | ![]() |
| USSR/Russia: VTOL Strike/Fighter | |
| 近年の冷戦研究によりますと、ソ連は「崩壊」したというよりは「解体」されたというほうが正しいとする意見があるようです。 つまり、もう臨界点に達して崩れ落ちたというよりは、人為的に適当なところで幕を下ろされたのだと。 この点で特に顕著であったのが軍事政策です。 国家の安全を保障するためのものであった筈の軍備が逆に危機を増幅するという、いわゆる「安全保障のジレンマ」に陥っていたのが当時のソ連であり、そこへ現われたのが「合理的十分性」を主張するゴルバチョフであったわけであります。 すなわち、相互確証破壊(MAD)が成立している現在の米ソ関係において、双方が合理的である限りは、全面戦争は起こりえない。従って、ハーマン・カーンが述べるような「起こりえないこと」を考えるのではなく、現実にありうる程度の小規模紛争レベルにまで軍事力を削減する、というのがその骨子でありました。 この結果、新冷戦下で計画されていた実に多くのプランが日の目を見ぬままに中断され、その後の経済混乱の中で埋もれていくのです(もちろん、それでよかったのでしょう)。 |
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Yak-141はYak-38に代わってキエフ級航空巡洋艦から運用できる迎撃機(副次的に地上・海上攻撃も可能)として1975年に開発が開始されました。 MiG-29と同様の”スロット・バック”レーダーによる火器管制システムを持ち、機体制御にはフライ・バイ・ワイヤを採用するなど先進的な技術を取り入れているのも注目すべき点ですが、何より際立つのは超音速飛行が可能であったことです。 アメリカのような正規空母を持たず、かといって唯一のV/STOL機であるYak-38の性能はヘボいという状況に陥っていたソ連海軍にとって、本機は死活的に重要な意味を持つ存在でありました。 |
| ■空母「バクー」艦上で垂直上昇するYak-141。リフトエンジンを搭載するのはYak-38と同様だが、性能は飛躍的に向上している。 |
| 左のスペック表をざっと見ても分かるとおり、M1,8の速度性能を発揮し、さらにはFCRを搭載していることによってレーダー誘導ミサイルも使用可。戦闘行動半径は兵装2tで690kmとやや短め(ソ連機は大抵そうですが)なものの、これまでのインチキなフォージャーに較べればまさに雲泥の差の性能でありました。 Yak-141の開発が開始されたのはデタントの只中にあった1975年ですが(当初はYak-41として開発を開始)、その4年後の1979年にはソ連のアフガン侵攻によって所謂「新冷戦」が始まっており、このまま冷戦が続いていたならばYak-141はまさにソ連海軍の翼として君臨した筈です。 しかし既に述べたとおり、時代はYak-141に対して冷淡でした。 Yak-141が初飛行した2年後の1989年、米ソ首脳は冷戦の終結を宣言したのであります(ちなみに同年はYak-141が最初のホヴァリングに成功した年でもあります)。 その後もすぐに計画が潰えたわけではなく、1991年には対地攻撃能力を強化して名称もYak-41Mと改めましたが、アドミラル・ゴルシコフ艦上での着艦実験失敗、V/STO空母の退役、そしてソ連邦そのものの崩壊など不運に見舞われ、この結果、Yak-141計画は完全に息の根を止められることとなりました。 |
SPEC ■span : 33ft 1 1/2in (10.105m);folded, 19ft 4 1/4in(5.9m) ■length overall : 60ft 2 3/4in (18.36m) ■height : 16ft 4 1/4in (5m) ■Weights : 25,684lb (11,650kg) Empty, equipped 34,833lb (15,800kg) VTO max take-off weight 42,990lb (19,500kg) STO max take-off weight ■Loads : 2,204lb (1,000kg) VTO max external load 5,732lb (2,600kg) STO max external load 3,858lb (1,750kg) max external fuel ■Armament : * 30 mm cannon * AA-10 Alamo radar-guided medium-range AAM * AA-11 Archer shortrange IR-guided missile * bombs * unguided rockets ■Power Plant * R-79-300 vectored-thrust lift/cruise turbofan ×1 (A/B : 34,170lb /15,500kg, dry : 23,148.5lb/10,500kg) * RD- 41 turbofan lift engines ×2 (each rated at a maximum 9,039lb /4,100kg) ■Maximum Speed 675 kts (1,250km/hr) Max level speed, sea level 971 kts (1,800km/hr) at 36,089ft (11,000m) M=1.8 max achievable Mach numbe ■vertical climb rate 49,213ft/min (250m/sec) |
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| ■側面より見たYak-141。こうしてみると普通の航空機と変わったところはなく、設計の先進性が覗える。 |
| こうなってくると、逆に不思議に思われてくるのがそれまでのソ連製VTOL機の性能の低さと垢抜けなさです。 最初の試作機であるYak-36(写真下)がアレな形状であるのは仕方ないとして、初の本格VTOL機であった筈のYak-38(写真右)の体たらくは何だったのでしょう。 『軍事研究』誌で江畑健介氏も指摘している通り、Yak-141もそれまでのソ連製VTOLと同様にリフト・エンジンを採用している点では変わりはないのですが、明らかに性能が飛躍的に向上しています。 MiG-23やSu-24のVTOL型も失敗していますし、やはりYak-141の開発が始まった1970年代半ばになるまでリフトエンジンを小型化する技術に目処が立たなかったのでしょうか。 そういえば『レッド・オクトーバーを追え』の中でもYak-38は散々コケにされてたしなぁ。 |
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★SOVIET's Early VTOLs |
| ところでYak-41の開発が始まった1970年代、ソ連軍はI-90計画と呼ばれる次世代戦闘機計画を立案していました。 I-90の「I」はロシア語で「戦闘機」を意味する「イストレビーチェリ(истребительь)」の頭文字ですから、「90年代の戦闘機」といった意味合いと考えてよいでしょう。 I-90計画はふたつの系統に分かれていました。 ひとつはSu-27の後継となるMFI (前線多用途戦闘機)、もうひとつはMiG-29の後継となるLFI (軽前線戦闘機)であります。 このうち、LFI計画案としてヤコブレフが提案したのがYak-43(写真右)でありました。 これは機体をよりステルス性の高い形状に改めた上、従来のソユーズR-79に換えてクズネツォフNK-321エンジンを搭載することでパワーアップを図ったものです。 |
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LFI計画は1992年に放棄され、それに続いて94年から開始されたLFS (前線軽航空機)計画もやはり中止されてしまいました。その後、PAK-FA
(前線航空軍向け将来航空機コンプレクス)計画にもヤコブレフは参加しますが、スホーイのT-50計画に敗れ、サブ契約者の地位に留まっています。 結局、Yak-141が残した唯一の具体的成果は、アメリカのJSF計画においてロッキードが提案したX-35 (現F-35)に可変式ノズル機構が採用されたという、皮肉な一事実のみとなったのであります。 前向きに解釈するならば、Yak-41/141計画がそれだけの先進性を備えていた証拠、とも言えるでしょう。 実際、実現していればYak-41/141計画は西側に15年は先んじる「東側のJSF」となっていた筈なのです。 |
| 当サイトは「死んだ子の歳を数える老婆の繰言」をコンセプトに、なるべく後ろ向きかつ非生産的であることを目指しておりますが、今回の「死んだ子」は末は博士か大臣かと期待された優秀な子であっただけに一層悔やまれます。 重航空巡洋艦の飛行甲板を埋め尽くすYak-141の群れなんて、激しく見てみたかったのですけれど。 でもまぁ、やっぱりこれでよかったのかもしれません。 |
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| 今回の稿を書くにあたって参考にさせていただいた書籍の紹介です。 最初はご存知ヤフィム・ゴードン氏の手になる知られざる戦闘機計画てんこもり本。表紙のよくわからないけれどセンス・オブ・ワンダーを無闇に刺戟するVTOL戦闘機(これもいるか紹介したいです)のイラストが素敵。 もうひとつは同じくゴードン氏によるYak-38およびYak-41M (Yak-141)の解説本。この人はせっせとよく書くなぁ。 他には「ヤコブレフの歴史」みたいな本もあったはずなんですが見つかりませんでした。 |
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