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なさん、ハムスターという動物をご存知でしょうか? 「知ってるよ。ペットショップにいる、しっぽの短いネズミの仲間だろ」とおっしゃる人がいるかもしれません。もう少しよくハムスターを知る人(たとえば家でハムスターを飼っている人など)なら、「ハムスターはもともと野生動物でしょ。シリアとかシベリアとか、気候の厳しい地方が原産なんだよね」と答えてくださるかも。
どれも一面の真実で、けっして間違いではありません。
ただここでひとつ、あなたの知識に加えていただきたい事実があります。まだこの国にペットショップの無かったつい100年くらい前まで、ハムスターは日本じゅうの森や原っぱに暮らす、ごく普通のネズミの一種だったことを。


「ウソでしょう? 日本にハムスターがいたの!?」と驚かれる人のために補足しましょう。ご存知のように“ハムスター”という言葉はイヌやネコと同じ一般名詞で、正式な学名ではありません。そして実際、ハムスターという呼称はごく最近、それも人に飼われるようになってから急速に(それも世界的に)普及していった呼び名です。そうなる前、野生でしか棲息せず、またその強い警戒心ゆえ人間たちが容易には生け捕りできないでいた頃、ハムスターは限られた生物学者たちからキヌゲネズミ(※和名)と呼ばれるだけのマイナーな存在でした。
ころがこのキヌゲネズミは、祖先をたどれば実におよそ3000万年前から隆盛する原始ハムスターの黄金期に直結し、かつて地球上の大陸がひとつにつながっていた時代から世界中に散らばっていった種族なのです。
って、当然のように原始日本列島にもハムスターは暮らしていました。「暮らしていた」という過去形ではなく、今もハタネズミを筆頭とする幾種類ものハムスターの末裔たちが肥沃な農場や牧草地、山深い森などに棲息し続けています。ただ後述するように、これらの多くのネズミたちが、人間社会の身勝手と、真正ネズミ(いわゆるドブネズミに代表される、爆発的な繁殖力を持つ、大型で獰猛なしっぽの長いネズミたち)との自然淘汰の戦いに敗れ、絶滅の危機に瀕している……それが大きな問題なのです。
っともハタネズミ、ご年配の農業経営者の目には悪魔の手先としか映らないかもしれません。名前からして“畑ネズミ”です。英名「Japanese field vole」……そのまんまです!(Voleは尾の短いハムスター型のネズミのこと) 広く本州一帯の農作地に出没し、とても絶滅を危惧される兆候など無いように見えます(むしろ最近は山間部で、大量増殖騒ぎさえ起こすようになりました)。しかし元をただせば、彼らが先に暮らしていた地盤を(人があとから)耕したのです。開墾による『異種文明の衝突』。はたまた温暖化と森林開発で平地の棲み家を追われたための『逆絶滅状況』だとわたしは考えています。もしハタネズミを今後とも『森林や畑を枯らす有害動物』としか捉えないならば、四半世紀先には彼らをあっけなく絶滅させてしまうでしょう──それで森や野菜が未来永劫スクスク育つようになるという甘過ぎる目論見と共に。


ページを掲げる意味はここにあります。このままでは自然研究家たちの調査も満足にゆき届かないまま、1000万年を生き抜いてきた日本土着のハムスターたちは滅びてしまいます。これを何とかしたい。手段が無くとも、失われる小さな命を憂う心を大切にしたい──そこで考えたのです。どうして、彼らハタネズミやスミスネズミを救おうという運動は起きないのだろうか、と。
由は大きくふたつあると考えられます。ひとつは、江戸から昭和初頭にかけて、農村部を中心として彼らに「作物の根や葉を食い荒らす野蛮な害獣」というレッテルが貼られたこと。彼らハムスターは用心深い反面、悪意のある人間の罠には簡単にひっかかり、次々と「処分」されました。今では多くの科学的報告が、当時の農作物被害の“主犯格”は罠にもかからない真正ネズミだった可能性がある、と結論づけています。とはいえ、(前述のように)今は山岳部に逃れたハタネズミが、数年に一度“異常繁殖”して樹木の皮や根を食い荒らすという被害が起きているのも事実。1000万年も森といい関係を保ってきたはずの彼らが、ナゼここにきて狂ったように絶滅寸前と異常繁殖を繰り返し、母なる森にさえ牙を剥かねばならないのか?──その悲劇的なメカニズムについては早急に解明する必要があるでしょう。
二に、ネズミという総称でハタネズミたちをくくること自体に、偏見の混じる余地があるということです。たとえばハタネズミは、現在ペットショップで見かけるジャンガリアン・ハムスターに比べ尾が長く、土中に隠れて過ごす時間が長いため眼や耳が小さくなっています。しかしハタネズミだって立派なハムスターの仲間。夜行性の小型種で、頭でっかちのクセに動きが俊敏。短く滑らかな体毛。餌を手で抱える、立ち上がって周りの様子をうかがう、巣穴に食物を貯め込む…等々の習性に違いはありません。ナニより、(不定期周期的な異常繁殖さえ起こさなければ)一族の生活ぶりは温厚にして質素。草食オンリーで森を必要以上に汚さず、排尿や遺体はそのまま樹木の肥料となります。
んな理由から、当ページでは日本固有のハムスターの親戚たちを、これまでのように十把一絡げで“ネズミ”呼ばわりせず、『ニホンハムスター』と総称しようと考えました! このところわが国のペット市場でも、急速にハタネズミ=“ハムスター”じゃなくて“レミング”という英国流の分類が普及し始めており、いずれは「それを言うなら、ニホンレミングでしょ?」とツッコまれる場面が増える可能性もなくはない。けれどまあ、レミングという名前がハムスターと肩を並べるほどに広く普及するまでは、『ニホンハムスター』のネーミングを掲げたいと思うのです……ハタネズミやスミスネズミに『日本土着のハムスター亜種』としての市民権を得させ、その知名度を少しでも上げるためにも。


の目に止まらないほど素早く動き回り、物音ひとつたてない影のような生態は、古(いにしえ)の頃より森の奥に暮らすニホンハムスターを神秘的な存在に準(なぞら)えさせました。原始人類社会では彼らの果たす生態学的位置づけなど知る由もありませんが、自然と共生する古代人ゆえ、現代にない優れた目線も持ち合わせていたのでしょう。ニホンハムスターと古代人との“遭遇”こそ、アイヌのコロボックル(小人)伝説のルーツだとする説もあります。
く、『森の番人』『森と土の精』……何千年も大昔の、そのまた昔の月の輝く夜、森深く分け入った人々が樹木の間に何かの気配を感じ、そこに立つ“小さな誰か”を見たように思ったときから、ハムスターの謎めいた社会は妖怪や妖精たちの伝説を生み育てていったのかもしれません。ちょうど、ジュゴンと人魚姫伝説との関係にも似ています。そう言えば、小型のハムスターを総称する外来語に『ドワーフ』というのがありますが、この単語もまさに『小人』とか『妖精』という意味でしたよね。


て、そんなに絶滅が心配なら、シベリアのハムスターのように人間が餌付けして飼いならしてしまえばいいじゃないか、という意見もあるでしょう。ペットにするのが本当の意味での『種の保全』になるか難しいところですが、ユーラシア系のレミングなど、既にちゃっかりと?ペットショップにお目見えしたハタネズミもいますね。ひょっとしたらカラスやドブネズミよりも飼うのは難しくないかも。実際に畑でハムを捕えて飼った経験のある人は教えてください。人になつくかどうかは(個人的には)大いに疑問の湧くところです。
そらく、ハムスターのような繁殖力の強い動物が(野生の種族として)長く生きながらえる一番の方法は、猛禽類や中型哺乳類などの天敵が常にたくさんいる環境で、生まれると同じくらい食われるという本来のバランスが大切なのだと思います。猛禽類といえばオオタカやフクロウといった種族もまた、絶滅に瀕しているではないですか。治水事業で川が汚れ、あるいは干上がり、これまでヒナを育てるのに最適だった小魚にありつけなくなったことも要因のひとつでしょう。そんな彼らにとって野生のハムスターは、魚にかわる一番のベビーフードでもあるのです……。何世代に渡ってペット化されようと、頭上にいきなり手をかざせばハムスターは巣に疾走しますよね──実に何千万年もかけて彼らの遺伝子には、それが“鳥に食われる合図”だと刻み込まれているのかも。
うした途方もない歳月もかけて精巧に配置された生態系のドミノを、愚かな現代人たちが瞬時に倒し尽したのです。加速する経済発展至上主義の裏で、まだ里山なら生き長らえる道のあった動物すら、多くはこの四半世紀で森の奥へ追いやってしまいました。自然を軽んじる身勝手な振る舞いが遺したツケは重く、悲惨です。あるハムスターはなす術もなく急速に個体数を減らし、あるハムスターは猛然と繁殖してまた大量死するというフラクタルな循環を高山という『閉じた世界』の中まで持ち込み、それを怒った現代人が恥かしげもなく『食害だ。環境の敵だ!』と因縁をつけ駆除に乗り出す……自然界のルールを踏みにじるこんなにも不毛で哀しい連鎖は、どこかで誰かが断ち切るべきです。ニホンハムスターは他の多くの生き物たちと同様、あとから土足で庭の中に踏み込んできた人間たちに、ワケも判らず平穏な日々を奪われた被害者なのですから。

沃なる土と静かなる森の国の精霊、ニホンハムスターにあなたの愛を!!

森林保全と環境問題に関するリンク

森と人いきいき(全国森林組合連合会)
林野庁
WWFジャパン
オイスカ・インターナショナル

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