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[ JIMI HENDRIX ]

 激しく降り続いた雨も朝方にはすっかりやんでしまっていた。
残ったのはゴミの山、雨によってぬかるんだ一面の泥、 そしてつい昨日までそこにいた40万人から2万5千人までに減ってしまった新たな時代を叫ぶヒッピー達のみ。
伝説が始まる朝は奇妙にも静まり「その人」の登場を朝日と共に待っていた。
 1969年8月18日9:00AM・・・ニューヨークの朝を切り裂くかのような演奏が開始された。
 それは「ウッドストック」と呼ばれる伝説の最後を飾るステージであり、 激動の60年代をしめくくり、新たなムーヴメントが生まれてきたような「産声」でもあった。
 『星条旗よ永遠に』をああいう形で演奏するとは・・・・

 聞く者全ての度肝を抜いてきた彼は意外にもデビューは遅かった。
遅かっただけに爆発も激しく、その爆発の勢いは今もなお続いていることは周知の事実。
 決して裕福でない幼年時代から、 自分を押さえながらのバックバンド下積み時代、 ようやくデビューし自分を解き放ったが、 ああいう形で終焉を迎えようとは誰が予想できただろうか。

 彼のギタープレイ、パフォーマンスには目を見張るものがあった。
フェンダーストラトをあんなに激しく弾きこなす・・・いや、何と表現しよう・・・
弾くというわけでも使うというわけでもない。彼の魔術儀式によって魂を降ろしているのだ。 『ウッドストック』『モンタレー』『ウインターランド』・・・・・ 彼のライヴ盤が多いのは、そのパフォーマンスの高さからだった。
一度ライヴが始まればそこはもう魔術儀式の会場と化してしまう。
その魔術の虜になっている世界中の人は何人いるだろうか?
 あれだけの魔術師がこれまでにいただろうか?「VOODOO MAGIC」そう呼ぶのが最もしっくりくる。


 その日、彼はホテルの一室で決して強くはないアルコールを楽しんだ。14%のワイン2本。
そしてミュージシャンなら誰もが通るドラッグも愉しんだ。
 「もし」は禁句だが、そこでワインとドラッグが体内で化学反応など起こさなかったら 今頃彼はどういうことをしていただろう?
 27年で人生に別れを告げるには余りにも寂しい「別れの酒」となってしまった。

 JIMI HENDRIX。
 1942年11月27日から1970年9月18日まで彼はこの世界に降り立ち数々の人間達を魅了していった。
水辺に投げた小石からは波紋が広がる。 その波紋は消えることなく延々と続いていく。  投げた石が大きければ波も大きく波紋も永い。
 そういう公式が成り立つなら、JIMI HENDRIXとはどこまで大きな石だったのだろうか?


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