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たまご

原文
The Deck Clinic: Scrambled Eggs
著者
Alan Comer
訳者
高潮の翻訳者
投稿日
2002-05-17
更新
2003-06-29

今回の本題に入る前に、筆者がどのようにこの記事を書いているのかを少し明らかにしておきたい。これまでに何通か「私は既にいくつものデッキを送ってますが、いつになったらそれを見てもらえるんでしょうか?」という内容のメールが届いている。確かに、みなさんは全部が全部のデッキについてアドヴァイスが欲しいだろうが、単純に言ってそれは不可能だ。筆者の仕事の流れはこんな感じ:まず送られてきたデッキのリストにざっと目を通し、いい記事になってくれそうなデッキを選び出す。そのデッキの内容を見て、それを頭の中に詰めておいてから、実際にマジック・オンラインでデッキを組む。だいたいトレードで必要なカードは揃える。プレイテストには8時間から16時間、期間にすると3、4日かけて、少しずつ調整していく。それから実際に記事を書くが、これは2、3時間ってところで、誰かに校正してもらうのにだいたい1日。そしてサイドボードに原稿を送る。ここからは編集部の仕事になる(さらに編集を加えたり、HTML化したり……)。要するに、記事をひとつ書き上げるのにおよそ一週間かかるわけです。これまでに1000通ものメールが来てるから、全部やろうと思ったら20年かかる計算で。

では、どうすれば採用される確率が上がるのか?送信フォームの「コメント」欄に鍵はある。デッキがどういう風に動くのか、どんなところが問題なのか、どんなアドヴァイスが欲しいのか。そういう情報が多いほど、こちらは記事が書きやすい。大抵の場合、コメント欄が興味深いものを筆者は選んでいる。

ついでに禁止事項も書いておこう:筆者は差別が嫌いだ。人種差別的なコメントやデッキタイトルがついてたら、そのデッキはファイルからまるごと削除することにしている。どうかそのような行為は慎んでほしい。

ナントゥーコの祭殿に分け入る

さて、今回の記事に入ろう。今回のデッキは《ナントゥーコの祭殿》を中心に組まれている。これは面白いカードで、ぱっと見ちょっとは役に立つかも知れないと思わせるところがある。初めてこのカードを使ってデッキを組んでる人たちが居ると聞いたのは、PT大阪の一週間前だった。面白そうなコンセプトだと思ったが、その時は時間がなくて掘り下げられず、あとでじっくりやろうと考えていた。するとこの連載宛てに《祭殿》デッキが4つばかり送られてきたので、その中で一番面白い奴を取り上げてみることにした。

投稿者のコメント

このデッキは、基本的にはフランク・ヘルナンデスの「《ナントゥーコの祭殿》デッキ」(サイドボードの「OBC:第3週」に載っている)のスタンダード対応ヴァージョンです。折りしもスタンダード・シーズンが到来したので、それに向けてのお楽しみということで、この「スクランブル・エッグ」のスタンダード・ヴァージョンを作ってみようと考えました。

ごく大雑把にいうと、このデッキには軽いキャントリップ類のスペルが大量に詰め込まれていて、これでライブラリーを掘り進んで同時に墓地を肥やします。それが《ナントゥーコの祭殿》を起動して、危険なほどのトークンの大群をもたらします。

僕は以前このデッキに《リスのお喋り》と《獣群の呼び声》を加えてみたことがあります。これは結構上手く動きましたが、土地を引きすぎると動きがぴったり止まってしまうことがあるという問題が生じて(だからこそ土地が16枚しか入ってないのです)、結局フラッシュバック・スペルをキャントリップと入れ換えてしまいました。今回のデッキは非常にマナカーヴが低く、青のキャントリップが12枚入ってるので、マナベースに関しては問題がありません。

このデッキはテストしてみると悪くない動きを見せますが、どうにも対処できないスペルやクリーチャーも多いです。というわけで、このデッキを取り上げてほしいのですが……。このデッキを強くするにはどうしたらいいでしょう? サイドボードもちょっと疑問です。マングースはちょっとはやってくれますが、残りの大部分についてはどうかと思います。

デッキレシピ

分析

このデッキは確実にコンボデッキと言える。コンボデッキには伝統的に二種類の動きがある。一種類は、とにかく速い動き。1ターンから4ターン、遅くても5ターン目には勝ちを決める。このスピードで、相手に対応する隙を与えない。もう一種類は、コンボが決まるまでには時間がかかり、コンボが発動するまで生き残るための様々な防御手段を詰め込んである、ゆっくりした動きのものだ。

このデッキは一種類目には入りそうにない。《祭殿》を張れるのは早くて3ターン目で、4ターン目には最初のクリーチャーを送り出すのがせいぜいだ。このデッキは二種類目にも入りそうにない。ほとんどのカードはコンボ要素の一部で、防御手段はほとんどないし、《祭殿》を張るまでの時間の余裕は殆どない。単に一枚《祭殿》を手に入れただけでは、《強迫》されるか《対抗呪文》されるだけで、困ったことになるだろう。

これだけカードが一杯引ければなんとかなるのではないかと言う人も居るかも知れない。それは間違いとは言い切れないが、コンボデッキというのはコンボを決めるための手段として、カードドローの手段を持っているのは当たり前だ。こうして見てくると、このデッキに対して希望的にはなれそうにない。

プレイテスト

ひょっとすると筆者は世界中で一番このデッキをプレイテストしたかも知れない。オリジナルのデッキは緑単には勝てたが、他のデッキには勝てなかった。《対抗呪文》《強迫》に加えて《崇拝》に敗れ、バーンデッキに負け、《破滅的な行為》にやられ、サイド後のエンチャント除去に打ちのめされた。

最初に行った調整は、緑ベースにシフトして、「投稿者のコメント」の項で触れられていたカードを加えることだった。《獣群の呼び声》《獣の襲撃》を加えると、時間が稼げるようになってきた。土地が手札にあふれるのを防ぐために《入念な研究》も加えた。これらの変更の後では《祭殿》は勝ち手として信頼できなくなってきて、デッキは普通のクリーチャーデッキのようなゆっくりした回り方になり、それでも全体的には強くなっていた。

だがこの方向での発展はここで途絶えた。気が付くと、次は《ナントゥーコの祭殿》をデッキから抜こう、と考えていたからだ。《祭殿》を中心に据えたコンボこそがこのデッキのコンセプトで、これを忘れては元も子もない。

このプレイテスト中には大きな前進が二つあった。それらはいずれも最終的なデッキに採用されることにもなったのだが、どちらも筆者が考えついたものではなく、対戦相手が使ってきたカードだった。

ひとつは《時間の泉(AP)》。筆者は特に《泉》がお気に入りだというわけではないが、このカードはほとんどあらゆるパーマネントにとりあえず効果がある。これがあれば《崇拝》みたいなカードはもう怖くない。あと、バウンスしたパーマネントがライブラリーの頭に戻るので、《祭殿》とも相互作用がある。《泉》を引いてきて、キャストして、リスが出てきて、返しのターンのドローが相手に何体のリスをもたらすか――しばしばそれは0体だ――が正確にわかるわけだ。

そしてもうひとつは、テストプレイのその後の方向性を決定付けたカードだ。

《吠えたける鉱山》

デッキテストがあんまり上手く行かないんで落ち込んでた時、誰だかが《吠えたける鉱山》をプレイしてきた。そのゲームはもう、ほんとに楽しかった。というのは誇張なんだが、そんなことはどうでもよくて、とにかく《吠えたける鉱山》がこのデッキに絶対合うってことは瞬時にわかった。

これまでの調整の過程では、防御手段が必要になるたびに《卵》を切り捨てざるを得なくなっていたのだが、そうなるとデッキはドローエンジンが弱くなって遅くなり、それに伴って《祭殿》の稼働率も落ちていっていた。また、もともとのデッキでさえ、エンジンが回り始めると、プレイしきれない土地で手札があふれかえることはよくあった。《鉱山》を加えれば、プレイできるカードが増えることは保証される。土地を並べることも容易になり、もはやたくさんの《卵》によるカードドローも必要ない。

最大の疑問は、《鉱山》が対戦相手にもたらすカードが、このデッキにとって手に負えないものになってしまわないだろうか、ということだ。

プレイテスト・その2

《鉱山》導入後の新しいヴァージョンは、一から組み直した。まずは《祭殿》のためにキャントリップを詰め込む。選んだスペルは《選択》《手練》《彩色の宝球》。青いスペルで揃えたのは、新しいデッキは青ベースで、キャントリップと《鉱山》で《祭殿》のための緑マナソースを引っ張ってくる、という感じにしようと思ったからだ。

次に打ち消し呪文を入れていった。《祭殿》を脅かすスペルはカウンターしなければならないし、この対戦では《吠えたける鉱山》のおかげで対戦相手は絶対にそういうスペルを引くだろうから。選んだのは《対抗呪文》《記憶の欠落》《中略》。《対抗呪文》は明らかに強力だ。《中略》も悪くない。特に序盤は相手の墓地を肥やすことを防ぎ、それはとりもなおさず相手に《祭殿》を利用させないことにつながる。《記憶の欠落》もこの点では同様だ。もっとも、こちらには同じ呪文を相手がすぐ次にまたドローするといううっとうしい副作用がついているが、まあ毎ターン《鉱山》が追加ドローをプレゼントしている状況では、相手に普通に二枚引かせたらもっとたちの悪いスペルを引く可能性は高い、と考えることもできるだろう。それに、《対抗呪文》を打ち消して《ナントゥーコの祭殿》を通した、なんてシチュエーションなら、その《対抗呪文》をもう一度引かれても全然気にならない。さらに《記憶の欠落》を使ってクールなコンボもできる。ゲーム終盤、墓地に3枚落ちてるスペルをプレイして、リスを出し、《記憶の欠落》でカウンター、《選択》でそのスペルをドロー、もう一度そのスペルをプレイ――こうすればひとつのスペルで二回《祭殿》が起動できる。ずいぶんへんてこなシチュエーションが必要だが。

ドラマチックにキャントリップが減ってしまったため、流石にもう少し土地を足す必要が出てきた。これは最初のテストで土地が16枚に保たれつづけたのとは対照的だ。

最後に、エンド・カードを入れた。《祭殿》系デッキではよく使われているカードで、これに辿り着くのは簡単だった。即ち《踏み荒らし》。この呪文には緑マナが三つ必要だが、どのみちこれを打つ頃には必要なマナは揃ってるので問題ない。これで完成したヴァージョンはいじり始めてから一番上手く行ってると思えたものだ。《吠えたける鉱山》が時に対戦相手に利をもたらしすぎることがあるのは否めない。それでも、このカードの力は絶対にこのデッキに必要だと考えている。

サイドボード

メインに時間を喰いすぎて、サイドボード調整に残された時間はかなり厳しくなっていたが、幸いひとつの明確な路線が見えていた。つまり、《祭殿》を活かすために、4種類のスペルだけで構成すること(3種類を4枚+1種類3枚)。一番困った問題はカードの色だった。ともあれ、以下に顔触れと選んだ理由を示す。

《忍び寄るカビ》:
エンチャントを割れるカードが欲しかった。あと、《陰謀団の貴重品室》を壊せるカード。このカードの重さは気になるが、サイドボードのスロットは限られているので、両方の能力を併せ持つ(つまり《対立》にも対処できる)このカードを採用。
《堂々巡り》:
もっとカウンターが必要なときのために。16枚打ち消し呪文があれば、たとえその中のいくつかが微妙に質の落ちるものであっても、このデッキのカードドロー能力のおかげでカウンター・デッキともやりあえる。
《獣群の呼び声》:
汎用性が高い良質のスペル。《吠えたける鉱山》を抜きたくなった時にこれと入れ換える。どんなデッキ相手でも悪くない。
《たい肥》:
サイドボードのどれか1種類を3枚にするなら、《祭殿》とコンボらないこのカードだろう。

まとめ

このデッキは最初ほとんど勝てなかった。どうにかテーマに沿ったままここまで進化させることはできたが、書いてきた全ての調整の後でも、このデッキはせいぜい二線級だと言わざるを得ない。

元のデッキを送ってくれた人は、面白デッキとしてこれを組んだとコメントを添えていた。このヴァージョンも同じように面白いと感じてもらえて、プレイする時にちょっと気合を入れてもらえたら幸いだ。努力する意志さえあれば、デッキはそれに応えてもう少し高い勝率をあげてくれるだろう。もし面白いと感じてもらえなかったとしたら、せめて《吠えたける鉱山》を入れるというアイデアだけでも、採用してくれることを願いたい。

最終形デッキレシピ

当ページは、2ちゃんねる卓上ゲーム板「MTG Sideboard Online 日本語版」スレッドに投稿された記事を、426(braingeyser-lj@infoseek.jp)がまとめたものです。