- 原文
- Ice Guys Finish First
- 著者
- Mark Rosewater
- 訳者
- NPCさん
- 投稿日
- 2004-12-18
- 更新
- 2004-12-20
アイスエイジ・ウィークへようこそ!今週はマジックの6番目のエキスパンションについてくまなく掘り下げていくことになる。(恐ろしいことに、今や32個ものエキスパンションがあるんだ――こいつはその中でもトーナメントで使えるうちの一つでしかない!)Skaff Eliasによる今週のFeature Articleはアイスエイジのデザインに関するものなので、私はそれとは違った観点から記事を書くことにした。本日のコラムは、マジックの歴史的観点から見たこのセットについて、現在のマジックのデザイナーである私の見解を示したいと思う。要するに、時間の経過によって、アイスエイジのデザインに関して明らかになったのは何なのかということだ。
さらにちょっとした趣向として、お気に入りカードのトップ10リストを利用させていただく。私のリストはそれほどユニークなものではないけどね。これ以上のごたごたは抜きにして(私のコラムは他のどのコラムよりも『ごたごた』が多いようだし)、さっさとリストに移ろう。
長い間、私はこのカードのファンだった。このカードで気に入っているのが、こいつが極めて陰険なジョニー・カードだってところだ。こいつは方向性のないパワーを備えている。何が言いたいのかっていうと、強力なジョニー・カードのほとんどは使用時の方向性が定まってしまっているんだ。《ズアーの運命支配》は違う。
《ズアーの運命支配》はプレイヤーに非常に奇妙な反応をもたらすような、何とも表現しがたい性質を持っている。それが何なのか正確にはわからないが、他のカードでは起こりえないような状況を引き起こす。そのことを示す最高の例が、ガンスリンガー用に作った《ズアーの運命支配》デッキについて私が常々語っているエピソードだ。(君がこの単語を聞いたことがないなら)『ガンスリンガー』とは、ユーザーと気軽にマジックをプレイすることをいう(たいていはイベントのときだ)。負けた場合、通常であればブースターパックをプレゼントしている。時はさかのぼり、私がフリーランスとしてウィザーズで働いていた頃のことだ。当時は折に触れてコンベンションに駆り出されたものだった。そしてマジックのインチキセレブとして(当時の私は『パズルを出題するやつ』だった)、来場者とガンスリンガーするようちょくちょく頼まれた。
ある夏のこと、私は参加したすべてのイベントでのガンスリンガーに《ズアーの運命支配》デッキを持っていった。私がこのデッキでロックを決めたとしても(毎ターン2ライフを得られるようなパーマネントが場にあるなら、対戦相手は二度とドローできない。さらに相手の手札に対処法がないのを確認すれば、それは完全なロックとなる)、対戦相手は決して投了したがらなかった。そのときの会話は以下のような具合だ:
(彼はライブラリーのトップをめくる。)
(私はライブラリーのトップをめくる。)
(彼はライブラリーのトップをめくる。)
(私はライブラリーのトップをめくる。)
(彼はライブラリーのトップをめくる。)
(私はライブラリーのトップをめくる。)
今日に至るまで、どうしてこのような現象が起こるのかわからなかった。私の仮説では、《ズアーの運命支配》はロックがソフトに見え過ぎるために、プレイヤーに常に何か抜け道があると思わせてしまうのだろう。とにもかくにも、ポイントはこのカードが私を魅了するような不思議な性質を持っているってことだ。それが何なのか言い当てることはできないが、そのことがデザイナーとしての私をよりいっそう夢中にさせている。
《ズアーの運命支配/Zur's Weirding》はデザイン要素の見事な融合だ。その動きに緻密さがあるにもかかわらず、単純でわかりやすい。これを軸にしたデッキを作ってみたいと思わせるが、デッキの形を決定づけてしまうわけでもない。そして場に出たとき、どういうわけかいつも軽視される。基本セットに再版されるのを見るたびに、私はついほくそえんでしまうんだ。(基本セットと言えば、今週の「9版を選ぼう!」のラフスケッチ投票に《ズアーの運命支配》が登場しているよ!)
そしてひょっとしたら、いつの日か、誰かが、すぐに投了してくれるかもしれない。
デザインをしていると時々、おそらく過去に登場しているだろうと想像がつくようなシンプルで有用なアイデアに行き当たることがある。そしてほとんどの場合、そのアイデアは実際に使われているんだ。でもときにはそうでないこともある。そうすりゃ君、その日は一日中ハッピーってわけさ。マジックには7000種類以上のカードがある。デザイン空間に眠る細い鉱脈のような気の利いたアイデアが、どういうわけか開拓されていなかったりすると、デザイナーに恍惚をもたらすことになる。
アイスエイジのデザイナーが《紅蓮地獄》を作ったときも、そのような恍惚を味わったに違いない。このカードはそれほど完璧でそれほどシンプルだ。赤に喉から手が出るほど欲しがっていた道具を与えたにもかかわらず、フレイバーにおいてもすばらしい。ああ、その通り、赤には《地震/Earthquake》があったけど、赤にとってフライヤーは頭痛の種だったんだ。さらに赤は対フライヤーにおいて2番目の色のはずだった。さらに《地震》はタフネス2のクリーチャーを破壊するのに3マナが必要だった。さらに《地震》は術者自身も傷つけたんだ。
赤は《紅蓮地獄》を必要としていた。そしてアイスエイジの中にそれを見つけたんだ。
プロプレイヤーDave Priceによる有名な台詞にこんなのがある。なぜアグレッシブですみやかに止めを刺すようなデッキをプレイするのを好むのかと尋ねられて、彼はこう答えたんだ。「不適切な解答はよくある。不適切な脅威はありえない。」
マジックには攻撃的なカードと守備的なカードがあるという事実に彼は言及している。攻撃的なカードはほぼ常にデザインされたとおりのことを行う。だが守備的なカードは対処すべき脅威が現れないと、しばしば手札で腐ってしまう。
プレイに値する守備的なカードを作るためには、デザイナーは『解答』をもう少しだけ柔軟なものにしなければならない。一つの『解答』で複数の脅威に対処できるなら、手札で死んでしまうことも少なくなるだろう。《道化の帽子》に話を移そう。これはほぼすべての脅威に対処できる『解答』だ。
おまけに《道化の帽子》はデザイナーが真に好む2つのことをやってのける。これはより強いプレイヤーの手札にあるときにより強力になるカードだ。おそらく初心者では、何が対戦相手を骨抜きにするかわからないだろう。上級者はデッキ中のそれぞれのカードがもたらす影響を正確に把握している。
最後に、このカードは非常に革新的だ。当時は本当に衝撃的だったんだ。これと《Jester's Mask(IA)》はそれ以前には決してできなかったことを可能にした――対戦相手のデッキを覗き込むことだ。今となってはたいしたことないように思えるかもしれないけれど、当時はかなりの議論を呼んだんだ。
だから私は《帽子》に敬意を表する。(※1)
よくできたカードの指標の一つが、カルト的な崇拝者が出てくることだ。そしてどうやらアイスエイジでカルト的な人気を得たのは《悪疫》ということになるだろう。私はこれまでこのカードを特徴づけているものの検証に多くの時間を費やしてきた。以下は私がこれまで突き止めた限りのことだ
第一に、このカードは非常にパワフルだ。プレイヤーはパワーを愛する。第二に、こいつは私が《ズアーの運命支配》において好んでいる性質を同様に備えている。デッキ構築の意欲を掻き立てるが、その方向性を限定してはいない。第三に、黒らしさがにじみ出ている。そして見てくれ、そのクールなフレイバーのために(※BBBというコストのことだろうか?)、誰も黒をタッチできない。第四に、これは厳密には私の仮説だけど、こいつには「やったぜ(gotcha)」感がある。
はあ? 「やったぜ」感って何かって? ゲームデザインの原則の一つが、プレイヤーがお互いに相手への妨害を楽しむことだ。彼らは他のプレイヤーを蹴落として、自分の利益を拡大するようなことが大好きだ。そんなときプレイヤーは「やったぜ!」と叫ぶ。
私が思うに、《悪疫》は数多くの「やったぜ!」な瞬間を体現している。彼の損失があなたの利益だ。それらが混ぜ合わさって、このカードは非常に独特でエモーショナルな反応を生み出す。疫病がテーマというカードの風変わりさが、これだけ多くの気持ちよさを生み出したのかもしれない。
このカードはカードデザインのハットトリックを達成している――フレイバーに満ち、有用で、そして楽しい。カードが印刷されるには、3つの特質のうち少なくとも1つにおいて輝いていなければならない。スターになるには、少なくとも2つにおいて輝いている必要がある。3つ星はデザイナーの前に星が直列した瞬間だ。私たちは時にそのようなことが起こるのをデザインの神に感謝するだけだ。
このカードの唯一の問題はパワーレベルにある(そうさ、これは開発の問題だよ)。当時は高速マナが黒の分野だったために、このカードには少々のフレイバー上の問題もあった。しかし、R&Dがメカニックをその色の哲学に適合するようにカラーパイを再分配したとき、赤が高速マナを得ることになったんだ。うーん、ひょっとするとアイスエイジのデザイナーは本当に時代の先を行っていたのかもしれないね。
このカードがリストの6位にいるに過ぎない唯一の理由は、より上位にいるカードほどには後のデザインに影響を与えなかったということにある。とはいえ、私はこいつが大好きだ。これで、このカードが再版するには強すぎるものじゃないと開発の連中に納得させることさえできれば最高なんだけどね。
デザイナーとしての経験を積むにつれて、私がシンプルなカードをより高く評価するようになったのは興味深いことだ。《渦まく知識》もそんなカードのひとつだ。《渦まく知識》はデッキの主役になることはない。にもかかわらず、コントローラーの利益になるように確率を数パーセント引き上げる手助けをする。これは熟練したプレイヤーに報いる技巧的なカードだ(もうわかったと思うけど、デザイナーは本当にそういったものを好むんだ)。《渦まく知識》のようなカードをデザインするのは非常に難しいから、デザインの過程でめぐり逢ったときには、いつも小躍りして喜ぶね。
そんなわけで、こいつはシンプルでエレガントだ。《紅蓮地獄》も同様だ。だったらどうして《渦まく知識》の方が5位なのか? なぜならこいつはすべてのことを……1マナでやってのけるからだ。クリーチャーカードでなくても変わりはしない。君たちのほとんどがマジックのカードをデザインなんてすることもないだろうし、大して重要なことではないんだろうけど、ここでハリウッドのメタファーを使わせてもらおう。ハリウッドには美人の女優はたくさんいる(それが私にとってのLAに住むメリットのひとつだけど、それはまあいいか)。コメディのできる女優も大勢いる。じゃあコメディのできる美人の女優は? めったにいないね。キャスティングディレクターが新しく誰かを探すときには、そういった事実がつきまとってくる。
このことがマジックの1マナ呪文とどう関係があるんだろうか。私が思うに、バランスの取れていて面白い1マナ呪文はマジックデザインにおけるジェニファー・アニストン(※2)だ。いま君たちの多くが、「おい、良質の1マナ呪文なんていっぱいあるじゃないか」と言っていることだろうね。私が話そうとしているのはその類のことじゃない。いいかい、私はR&Dを悪酔いさせるような1マナ呪文を数え上げようとしてるわけじゃないんだ。1マナ以上の価値があると私たちがみなしているそれらのカード。《極楽鳥/Birds of Paradise(8ED)》、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves(7E)》、《強迫/Duress(UZ)》などなど、これらはどれもよいカードだけど、R&Dはこれらを世に出すたびに、厳重に監視しなければならない。
私が話している『1マナ呪文(one-drop)』というカテゴリーは、ゲームで見かけることにはなるが、R&Dがそのことで頭を抱えることのないもののことだ。率直に言ってしまえば、マナに見合うだけのパワーを持つカードってことだ。ゲームの総体的なパワーレベルを引き上げてしまうことがないおかげで、私たちがいつでも再版できるようなカード群。この種のカードのシンボルが《巨大化/Giant Growth(8ED)》、そして《渦まく知識》だ。
さらに、《渦まく知識》は現実に軽いデッキ操作を一般的なものにした。多くのカードやメカニック(占術とか……ゴホゴホ)は《渦まく知識》がゲームに登場したおかげで生まれたんだ。
そしてすべてがたった1マナなんだ。
この呪文は赤を集約するようなすばらしい仕事をやってのける。結局のところ、赤は世界を吹き飛ばすのをためらわないけれど、そのときでさえすべてを完全に排除できるわけではないんだ。私は赤についてのコラム(「Seeing Red」)で、いかに赤が近視眼的かについて話した。赤はいつでも短期的な利益のために長期的なアドバンテージを放棄する。そのためゲームの中盤、赤の魔術師に何のリソースも残っていないようなことがよくある。赤の魔術師はどうするべきなのか?
幸運にもアイスエイジは非常にエレガントで、フレーバーにもぴったりな解決策に至った――ただすべてを吹き飛ばし、白紙に戻すんだ!(それは私たちR&Dが『リセット』ボタンと呼んでいるものだ)《ジョークルホープス》は最初のリセットボタンではないが(アルファに《天秤/Balance(4E)》や《ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk(5E)》などのカードがあったからね)、私はこれがその決定版だと考えている。
この呪文は場にエンチャントを残すって? 天才的なアイデアだ。それによってプレイヤーに赤の弱点を知らしめるのみならず、世界中のジョニーにその弱点を長所に変えるチャンスを与えることになる。
このカードは赤にまったく新しい深みを与えた。もう一度言うよ、フレイバー、性能、そして楽しさだ。(ああ、赤らしい楽しさだよ)
1995年のアメリカ選手権では、Derek Rankという名のプレイヤーがこのカードをデッキに入れてトップ8に入った。そのときは、ほとんどのプレイヤーが彼は正気じゃないと考えた。私も含めてね。そのカードはハイリスクすぎると考えられていたから、大多数のトーナメントプレイヤーが使用を避けていた。当時の私はコインフリップカードの仲間だと考えていた。私たちが間違っていたのは、勝利をもたらしたり、97パーセントの確率で表が出るのであれば、コインフリップカードはプレイされうるということなんだ。
私がこのカードをそれほど高く評価しているのは以下の4つの理由からだ。第一に、一見役立たずに見えて最終的には優れたものだと認められるカードを私が溺愛しているのに、どうして歴史上もっとも大きな昇格を果たしたカードを愛さないわけがあるだろうか? こいつは「使うやつは頭がおかしい」からタイプ1の制限カードにまでなったんだ!
第二に、このカードはデザイン領域のとても興味深い分野を切り開いた。私が「調子に乗るな」カードと呼んでいる分野だ。いよいよ状況が苦しくなったときに、プレイヤーにより多くの危険を冒すことを可能にするようなカード群だ(もしくは、引き起こす効果がプレイヤーにもはっきりしないために、そのパワーが定まらないカード群)。この能力は黒との関係が深く、赤やアーティファクトにも頻繁に見られる。
第三に、このカードによってチューターの価値が真に認められるようになった。プレイヤーはチューターのためにゲーム全体を危険にさらすだろうか? イエス。これ以上言うべきことはないね。
最後に、このカードはデザイナーにスリルの重要性を教えてくれた。つまりプレイヤーはアドレナリンが噴き出す瞬間、そのゲームが好きになるんだ。
一応言っておくと、これは1マナの《渦まく知識》カテゴリーに分類されるわけではないよ。
R&Dは数多くの特殊地形を作っている。とりわけ2色地形をだ。そしてこれまでのところ、(Richard Garfieldによるオリジナルのデュアルランドを唯一の例外とするならば)アイスエイジのペインランドほど優れたデザインは存在しない。インベイジョンのタップインランド(《沿岸の塔/Coastal Tower(IN)》、《エルフェイムの宮殿/Elfhame Palace(IN)》、《塩の湿地/Salt Marsh(IN)》、《シヴのオアシス/Shivan Oasis(IN)》、《アーボーグの火山/Urborg Volcano(IN)》)はエレガンスではかなり近いものがあるものの、パワーレベルにおいて若干劣っている。
とは言うものの、まったく変更の余地はないんだろうか? いや、あるね。2番目の能力は「(T):あなたのマナ・プールに(C)か(D)を加える。〜はあなたに1点のダメージを与える。」から「1点のライフを支払う、(T):あなたのマナ・プールに(C)か(D)を加える。」に変えた方がいいだろう。メカニック的にはわずかな違いだとはいえ(現在のバージョンではダメージを軽減できる)、より短く、より明快なテンプレートの方がいいだろう。さらに、回避するのがあまり簡単すぎないコストの方が望ましい。
でも、それは私が重箱の隅をつついているに過ぎない。ペインランドはデザインが到達すべき模範的なものだ。もちろん、それでも2位なんだけどね。
このカードは私のオールタイム・ベストデザインカードのトップ10リストにも入ってくる(ふむ、いつかはそれについての記事も書かないとね)。「でも、こいつはとんでもなくオーバーパワーじゃないか」と君たちは言うかも知れない。その通り、こいつはオールタイム・ベストデベロップカードのトップ10には入らないだろう。だが《ネクロポーテンス》はデザインの神髄だ。どうしてかって? まず第一に、こいつは簡潔なコンセプトに、驚くほど奥深い戦略性を併せ持ったカードだ。これはライフとカードを交換する最初のカードではない――(レジェンズの)《強欲/Greed(7E)》がその栄誉を授かるべきだろう――が、このパワフルなアイデアをゲームの行方を左右するようなカードに昇華させた最初のカードだ。
単に《ネクロポーテンス》が「驚くほど奥深い戦略性」を持っていると語るだけでは不適当だ。このエンチャントメントはごくわずかなカードにしかできないことをやってのける。こいつはくり返し使うほど使い方が複雑になっていくように思える。反対に、ほとんどのカードが時間の経過とともに決まった使い方に落ち着いていく。普通のカードは使えば使うほどプレイするのが容易になるんだ。《ネクロポーテンス》はほとんど正反対だ。君が優れたプレイヤーになればなるほど、使うのがより困難になっていく。なぜなら《ネクロポーテンス》のパワーがあまりに荒っぽいために、熟練したプレイヤーでさえ、最大限に活用するためには非常に慎重にならなければならないからだ。そして、それらの決定はゲーム中の他の無数の要因によって左右される。数え切れないほど多くの《ネクロ》デッキをプレイしてきたトッププロが、それでもなお、ターンの終了時にカードを何枚取り除くのが正しいのかを見極めようと苦慮しているのを見てきた。
だが、読者の中にはこのカードは長ったらしいと指摘する人がいるかも知れない。わずかでもエレガンスに欠ける部分があるのだから、ポイントを差し引くべきじゃないのか? いや、違う。それらのちょっとした機微はこのカードにとって必要不可欠なんだ。信じてほしい、私は直接の経験によって学んだんだ。ウルザズ・デスティニーにおいて、私は「エレガンスに欠ける部分」を修正しようと考えた。なぜターン終了時まで待たなきゃならないんだ? 単純にプレイヤーがすぐにドローできるようにしてしまおう。そうすれば長ったらしさもなくなる、そうだろう? 大間違いだ!
その遅延はいくつかの理由で欠かせないものだ。第一に、それによってプレイヤーは一連のより複雑な決断を強いられる。即座にカードを手に入れる場合、答えは単純で、単に望むカードを手に入れるか、それ以上引けなくなるまでドローすればいいだけだ。《ネクロポーテンス》では、何枚のカードが必要なのかを判断するチャンスはたった一度しかない。君は未来と未知に向き合わなければいけないんだ。どれだけ必要としていて、どれだけ危険を冒す余裕があるのか(あるいは冒さなければならないのか)を適切に判断するために、ゲームの形勢を把握しなければならない。
第二に、ターン終了時まで待たなければいけないことで、カードの使われ方も変化する。《ネクロポーテンス》はカードドローだ。《ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth's Bargain(UD)》は複雑な構造のチューター以上のものになることもできる。第三に、遅延はドラマを生み出す。ドラマは私がデザイナーとして経験を積むにつれて、よりいっそう重視するようになった特性だ。《ネクロポーテンス》が場に出ると、常に何かが起こるんだ。
R&Dが《ネクロ》を第5版に収録したとき、多くの批判があった。どうしてR&Dはこれほど強いカードを再版するのか? 私が思うに、答えはR&Dがカードデザインについて抱いている関心の中にある。いくつものデッキに入りうるカードはそう多くはないけれど、さまざまなアーキタイプがそれらのカードにちなんで名づけられることになる。「僕はネクロデッキをプレイしている」への返答はいつも「どれのことだ?」になるんだ。
《ネクロポーテンス》は私の考えるアイスエイジのベストデザインカードの中では頭一つ抜け出ている。難しい選択でさえなかった。与えられたわずかなスペースでは、正当に評価しきることは不可能だろう。《ネクロポーテンス》はマジックというゲームの中で(幾多の段階において――デザインからトーナメントプレイまでのどの段階においても)、君が考える他のほぼすべてのカードよりもよりも大きな影響を与えてきた、と言うにとどめておこう。このカードはまだ9歳になったばかりで、私はいまだにこれを用いた戦略をマスターしたとは思っていない。そして最後に、私のボストンにおける大学時代の言葉を借りれば、こいつはめっちゃイケてる。フレイバーに満ちている。パワフルだ。そしてなによりも楽しいんだ。
今日のコラムを通じて、君がアイスエイジとデザイン両方についての見識を少しでも深めてもらえたらと思っている。
それじゃまた来週、私が……気取ってみても仕方がないだろうね、誰もが来週はプロツアーコラムの後編だってわかっているだろうから。また来週お会いしよう。
そのときまで、君が古きをたずねて新しきを知ることを祈っているよ。
タイトルの「Ice Guys Finish First」は「nice guys finish last(いい奴は報われない)」のもじり。こんなもん訳せるか。最後の段落タイトル「Have an Ice Day」も同様に「Have a nice day」から。
アイスエイジ・ウィークの記事は他にも Mark Gottlieb のコラムとfeature article が訳されてる。