千葉リーヒルズ廃墟の根拠

 東京駅から約一時間半。千葉市緑区にあるJR外房線土気駅前に広がる「あすみが 丘」。並木道を二十五分ほど歩くと、その一角に豪邸街「ワンハンドレッドヒルズ」 が出現する。東急不動産が開発した、あの「チバリーヒルズ」である。だが、空気が 妙に違う。閑静ではあるのだが、なぜか寂しいのだ。

 主のいない豪邸の前で門番が所在なさげに立っている。たまに見学者が訪れるのか、 「家の見学はお断りします」の看板が目立つ。売却の予定が立たずに、さら地には雑 草が生い茂っている。「買い替えを望んでいる人もいるが、取引は一件も成立しませ ん」と東急リバブル住宅営業本部はいう。
 売り出されたのは、バブル期だった平成元年。一軒五億〜十五億円もする超高級の 土地付き一戸建て住宅が四十九戸(土地が五百〜一千坪、延べ床面積百三十〜百五十 坪)。しかし、売れたのは二十五戸のみ。都心に遠過ぎること、そして、いかにバブ ルとはいえ、あまりに価格が高過ぎたことが、その理由といわれる。最近までは「F or Sale」の看板が立ち並んでいたが、売却のめどが立たないためか、今では その看板も取り外された。
 さらに悲惨なのは、千葉市内の不動産業者が「価値ははっきりしないが、一億円で も買う人がいるかどうか」というほど実勢価格が下落しているのに、価格を下げたく ても下げられないのだという。「すでにご購入いただいたお客さまへの影響を考える と…」と同社は言葉を濁す。つまり、資産価値を守るため、バブル期の販売価格を維 持せざるを得ない状況に置かれている。だから、また売れない。完全な悪循環だ。

 こんな現象は公団住宅にもみられる。東京ディズニーランドのそばに林立する高級 公団住宅「浦安マリナイースト21」では、主婦数人が空き家をふき掃除する姿が目 立つ。バブル崩壊後の平成五年度から五百十六戸が分譲されたが、それ以前に土地な どを手当てしたため、中心価格帯が六千万円と高くなり六十戸以上が売れ残った。そ の空き家の維持管理のため、公団が主婦を月に一度、臨時に雇い入れているのだとい う。

 全国規模でみても住宅・都市整備公団は五、六年度に一万戸以上を分譲したが、二 年間で売れ残りは七百五戸。分譲倍率も、平成元年が八十二倍だったのが五年に一一 ・六倍、七年六月末には四倍程度に落ち込んでいる。  公団の入居率の低下に歯止めがかからない一方で、供給計画の大幅変更もできない。 今下期の計画では東京近郊の多摩ニュータウンの一角に二百戸を新たに分譲する。二 年前に建設をスタートしたものだが、景気情勢に関係なく住宅供給を続ける“計画経 済”の姿がある。それがまた、供給過剰をあおりマンション価格の下落を呼ぶ。  まさに、底が見えない泥沼状態。これは個人の生活設計にも重くのしかかる。東京 都内の住宅販売会社に勤めるある男性(四七)は、平成二年に大阪で四千三百万円 (頭金九百万円)のマンションを購入し、東京への転勤を機に売却をしたものの、三 千三百万円でしか売れなかった。「百万円の売買仲介手数料を含めると一千百万円の 損」とガックリ肩を落とす。

 とどまることを知らない資産デフレの進行は、「売るに売れない」「価格下落の不 安から買うに買えない」という不動産市場の閉そく状況を生み出している。



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