
長篇小説の書き方
神崎 玄
今回は、初心者が長篇小説を書くにはどうしたらよいのか、ということを書きたい
と思います。
短篇小説は、アイディアさえまとまればすぐに書けますが、長篇の場合はそうはい
きません。よく、同人の初心者に、「未完の大作」をたくさん抱えている人がいます。
が、未完の大作では誰も評価してはくれません。とりあえず完結させる、人に見せら
れる形にする、というのが、長篇を書く第一歩なのです。
長篇を完成させるには、書き続けなくてはなりません。人間ですから、飽きること
もあるでしょう。展開につまったり、本業が忙しくなって、書けなくなることもあり
ます。長篇は、確固たる意志と、たゆまぬ努力によって仕上げるものです。飽きても
他の企画に手をつけない、展開につまったらとことん悩む、忙しくなったら無理矢理
暇をこしらえて書く、といった根性がなくては書けないのです。
長篇の連載を受けつけてくれる同人誌に参加する、というのは一つの手です。市販
されない、会内の同人誌にのせても、既発表作品とはみなされません。できるだけ定
期的に刊行されているところを選ぶといいでしょう。発行の周期が、休養と執筆のリ
ズムを作ってくれます。原稿を落とすと会費がむだになるので、毎回頑張って書くよ
うになります。感想欄の反応を見つつ筋やアイディアを変える、といったこともでき
ます。その方が、誰にも見せずにこつこつ書くよりは、いい作品に仕上がるでしょう。
インターネットで連載をするのは、あまり感心しません。目的意識のない読者を対
象にしても、どの程度熱心に読んでもらえるかわからないからです。反応が帰ってく
る保証もありません。出版社によっては、既発表作品として取り扱われる場合もあり
ます。インターネットで連載をする場合には、あくまでも趣味の楽しみとして割り切
る覚悟が必要です。
とにかく、書きはじめてください。書き進まなくては、長篇は完成しません。
小説の書き方は、人によってそれぞれです。かっちりとした構成表を作って書く人、
思いつくままに書き進めていく人、要所要所から並行処理で書いていく人、普段は何
もせず、突然、神懸りのようになって書き上げる人、などがあります。神懸りタイプ
はさておき、長篇に悩むのは地道に書くタイプの人でしょう。悩んでいては先に進め
ません。わずかでもいいですから、毎日、書くようにしてください。
では、展開や伏線を考えずに長篇を書いてもいいのでしょうか。
いいのです。
小説に定型はありません。「ただ書きたいままに書いた」、それでいいのです。
展開や伏線は、長篇を何本か書いていれば、次第に盛り込めるようになってきます。
最初から枚数制限を考える必要もありません。
枚数と構成をきっちり作っても、初心者にそれが守れるはずはないのです。
そもそも、「ここで一エピソード入れたら何枚ふえるから……」なんて計算は、初
心者にできるものではありません。書きあがってから、うんうんうなりながら内容を
増やしたり減らしたりするものなのです。
最近はワープロが普及したため、エピソードの挿入や削除が非常に楽になりました。
枚数調整も、原稿用紙の時代に比べたら格段に楽なのです。まずは、どんどん書いて
いきましょう。伏線がほしければ、後から追加してください。設定やセリフの都合が
悪くなれば、あとで書き替えましょう。同人誌に連載で発表している場合、多少変な
部分が出るでしょうが、完成前の避けられない犠牲、くらいに思ってください。
書きあがったら、一度、通読しましょう。とくに、ワープロの上だけで書いたもの
は、印刷してから読むと思わぬミスがあるものです。誤字、矛盾、説明不足など、必
ず赤ペンでチェックして修正しましょう。
長篇が完成したら、小説の賞に応募してみましょう。世の中には、ダメ元という言
葉もあります。応募するほどの出来でない、というのなら、友達に読んでもらいましょ
う。
え? 他人に見せるのが恥ずかしい?
なら、何のために苦労して小説を書いていたのですか。
よく、書いた小説を見せてほしいと言うと、「恥ずかしくて人には見せられない」
という人がいます。なのに、ちゃっかり応募していたりします。胸をはって人に見せ
られない物なら、応募する事自体が間違いです。そういう失礼な人は、たとえまぐれ
でデビューしても、一作限りでしょう。
小説にあらわれた別の自分を知己に知られるのが恐いのかもしれません。が、世の
中、人はそんなに物を考えているわけではありません。さらりと読み流されてしまう
のがオチです。恥ずかしがっていては、アドバイスも得られません。
他人のアドバイスは、大抵は自分が「そうではないか」と思っていたことが多いも
のです。しっかりと受けとめて、対処しましょう。
まれに思いもかけない事を指摘される場合があります。その場合、それが本当に重
要なことなのか、多数の読者がそう思うだろうか、をきっちりと考えて、些細なこと
なら無視しましょう。逆に、複数の人から同じ指摘を受けた場合は、真剣に受けとめ
るべきです。物書きの中には意固地になって反発する人がいますが、これは得策では
ありません。
(平成12年2月18日、識)