|
声について。 邦楽(新内、端唄・俗曲)を始めて今年で十三年目だが、最近やっとそこそこ声が出せるようになってきたと感じている。まだまだ安定しないし、少しサボっていたりするとすぐに出なくなってしまうけれど。 自分は声では苦労しているほうだと思う。もともと声が小さい、細い、高い。中学生くらいの頃はよく、頭のてっぺんから声が出てるんじゃない?とか、蚊の鳴くような声だとか、からかわれた。こんな声の人間がどうやってあのような邦楽の声が出せるだろうか。自分には絶対出来そうもない、と思った。たぶん出来ないだろうけど、やったら出来るようになったりすることもあるのだろうか?とりあえずやってみよう、と思ったのが最初だ。 きちんとした芸を持つ方の邦楽の声をちゃんと聴くと、とても複雑だ。聞いてるだけではどうやって出しているのかわからない。やってみてもますますわからない。正しい邦楽の声を出そうとするとこれが非常に難しい。ポップスや歌謡曲など、普通みんなが歌うような曲は、歌手でなくともカラオケなどで最近は皆すごく上手に歌える。それなのになぜ、邦楽の声は出ないのか。よく邦楽なのに勘違いして演歌のような発声になっている人がいるけれど、たとえ本人は気持良くても、確実にそれは間違いであって、あれでは、本来の邦楽の良さは到底表現できないとおもう。 まず不思議なのは、自分の師匠の紫朝師匠のお声でした。お稽古場で目の前で唄ってくださるのを毎週聞きながらいつの間にか十年以上が過ぎていました。毎回が新鮮。同じ曲を何度聞いても飽きることはない。それどころか聴く度に良くて、聴き込めば聴き込むほど良さが増していく。その師匠の芸を聴きたさに、私は今まで続けてきたようなものだ。やめたくなったことが何度あってもお稽古に行って師匠の声を聴くとやっぱりやめないで良かったと思うのであった。その声は聴いても聴いてもどこから出ているのかわからないような不思議な発声なのだ。それに七色ヴォイスというのか、たいへん変化に富んでいる。加えて気持ちや風景など唄の世界の表現がすばらしいのである。 ではまず、そのお師匠さんが最初に発声の仕方について弟子の私に教えてくれたことは何であるか。それはたったひとつだった。氷枕(水枕)に空気をいっぱい入れて入り口を手ですぼめ、フッ、フッ、と空気を送り出すみたいにしてお腹から声を出す。ただそれだけ。それ以上のことはなにも言わず、弟子の発声についてそれで良いとも違うとも教えてはくれないのだった。ふぇ〜、それだけじゃわかりません〜(泣)ここから声との戦いが始まった。私にとっては三味線を弾くことよりも声の出し方のほうが何十倍も大変でそれは今でも続いている。(2003.6.1) (つづく) |