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アジアで燃える男といえば、李小龍を外すことなど許されないでしょう。
あなたが許しても私は許しません。
李小龍って?そうです、もちろんブルース・リーです。
「ドラゴンへの道」は、ブルース・リーが企画・脚本・監督・音楽・武術指導・主演を担当し、
と言うかほとんど一人で作っちゃったような映画です。
つまり、ブルース・リーのすべてがここに詰まっています。
ストーリーは特にびっくりする程のことも無いんですが、格闘シーンは泣くほどカッコイイです。
特にコロシアムでのチャック・ノリスとの決闘など、もう既に芸術の域に達しています。
その前の「オムァエゥワー、タン・ロンガー?」の日本人空手家(役)黄仁植との対決も、
無条件に良い。
また、この映画で見られるミケランジェロの彫刻のようなブルース・リーの筋肉は、
アジア映画史上最も美しい筋肉だと思います。
ではストーリーです。
ローマでレストランを経営する陳小姐(ノラ・ミャオ)のもとに、
香港からの用心棒タン・ロン(ブルース・リー)がやってきました。
最近レストランがチンピラどもの地上げ行為をうけて困っていたので、
香港の叔父さんがタン・ロンを派遣してきたのです。
いきなりゲリで便所に行きまくるタン・ロンに、なんか頼りなーい印象を受けた陳小姐と従業員達。 ここの従業員達はみんなで空手を練習しているので、
タン・ロンが中国拳法の達人だと聞いても半分バカにしてます。
そこへチンピラどもが嫌がらせにやって来ます。
キレた従業員達はチンピラどもを店の裏の路地に連れて行きました。
そして空手黒帯のジミーがチンピラに殴りかかったものの、
ヒゲのデブのパンチ一発で失神してしまいます。
そこでついにタン・ロンの登場です。
さすがタン・ロンとでも申しましょうか、
一歩あるくごとに太鼓の効果音がドーンデーンドーンデーンと鳴ります。
そしてヒゲに「アチャー!」と金龍拳第四式「小龍問路」をお見舞いします。
それだけでヒゲは「うぅへぇー」とスタンディングダウン状態です。
そこへもう一発「大龍擺尾」をかまして、ヒゲをあっさりKOしてしまいます。
タン・ロンの顔も急に引き締まってかっこよくなります。
そしてもう、いとも簡単に残りのチンピラどもをやっつけてしまいます。
もちろん今までタン・ロンを小馬鹿にしていた従業員達も大喜びです。
「真行!」(イケてるよ!)「太好了!」(スゴすぎ!)「真棒!」(やるじゃねえか!)「了不起!」
(大したもんだ!)などと、手のひらを返したようにタン・ロンをほめちぎります。
陳小姐なんか「あなた結婚はしてるの?」とか聞いています。
ここでみなさまに誤解しないで頂きたいのは、
空手黒帯のジミーが一発でやられちゃったからといって、空手が弱い!
というわけでは決してないということです。
なぜかと申しますと、中国では黒帯の管理は非常に甘く、
黒帯を締めている=有段者ではないのです。
そして舞台はイタリアですが、従業員達は中国(香港)人です。
これは日本の武道界では絶対やってはならないことのひとつですが、
中国では自分で黒帯を買ってきて、
それを締めて練習してても先生に怒られません。
実際、私が中国でテコンドー教室に行ったとき、笑っちゃうほど弱っちい黒帯がいました。
あまりに弱すぎるので、不審に思った私が黒帯の試験はどんな内容なのかとそいつに聞くと、
「知らないよ。この黒帯は道着を買ったときオマケとしてもらったんだ。」
なーんて非常識なことを言ってくれるので、てっきり冗談の上手いヤツだと思っていたんですが、
私が道着を買っても黒帯がついてきたので冗談じゃないことが分かりました。
しかも高い方の道着には黒帯、安い方の道着には青帯がオマケとしてついていました。
先生も全く気にするどころか
「黒帯の方がカッコイイから高い方を買いなさい。」
なーんておっしゃってました。
ちなみに私も学生時代に中国拳法を習っていましたが、
このテコンドー道場に初めて行ったとき、そのことを話しても
「ふーん、中国拳法ね・・・」
程度の反応でした。しかし私がキックミットをバスバス蹴っているとみんな集まってきて、
「真行!」(イケてるよ!)「太好了!」(スゴすぎ!)「真棒!」(やるじゃねえか!)「了不起!」
(大したもんだ!)などとほめちぎられました。
ほとんど「ドラゴンへの道」状態です。
実際に、そこにいる生徒の中では私の実力はダントツでトップでした。しかも都合のいいことに、そのテコンドー道場が入っているジムが倒産しそうだと言うではありませんか。
「これはもしかして、リアル・タン・ロンになるチャンスでは・・・債権者に雇われたチンピラとか3〜4人ぐらい来ないかなー」
と密かに期待していたんですが、私が私用で二週間ほど日本に帰っている間に、
そのジムは倒産していました。
話を戻します。
その後もしつこく嫌がらせを続けていたチンピラ達ですが、
手裏剣、棒、ダブルヌンチャク等を臨機応変に使い分けるタン・ロンにことごとくブッ飛ばされていきます。
そこでチンピラのボスが三人の助っ人を呼びます。日本とヨーロッパとアメリカの空手チャンピョンです。
この中で、アメリカチャンピョンだけ格が違います。飛行機のタラップを降りるとき、
一歩ごとに太鼓の効果音がドーンデーンドーンデーンと鳴ります。
その後の超大物アクションスター、チャック・ノリスのデビューです。
タン・ロン達がオカマのチンピラに騙されて山の上に来てみると、
日本とヨーロッパのチャンピョンが待っています。
「オムァエゥワー、タン・ロンガー?」
「ユー!タン・ロン?」
と言いながら、何故かドーンデーンドーンデーンと迫ってきますが、
タン・ロンはあっさり二人とも片付けちゃいます。
倒された日本チャンピョンの「アイ・・・タ、アイタ・・・」といううめき声が、とても印象的です。
そして、タン・ロンが逃げたオカマのチンピラを追いかけてコロシアムに行くと、チャック・ノリスがいます。
ここで、歴史に残る決闘が行われます。
さすがはタン・ロン、そしてスーパーアクションスターのチャック・ノリスです
(一応役名はコルトなんですけど)。
いきなり45スーパーマグナム弾をブチ込むようなマネはしません。
それぞれ体中の骨をポキポキ鳴らしたりシャドーをやったりして準備体操です。
そして軽く汗をかいたところで、広いところに移動して試合開始です。
そうです。これはお互い超一流の格闘家同士による試合なのです。
超一流と超一流の間には言葉などいりません。
いちいち「オムァエゥワー、タン・ロンガー?」などと聞いたりする必要は無いし、
相手の隙を狙ってバズーカ砲で吹っ飛ばすようなこともしません。
子猫の鳴き声とともに、タン・ロンが仕掛けます。
キックの応酬の末、先にタン・ロンがクリーンヒットをもらってダウンします。
その後も一本背負いで投げられたり、いいパンチをもらったりして追い込まれます。
しかし実は、タン・ロンはまだ本気を出していませんでした。
チャック・ノリスの戦い方に付き合って様子を見ていただけなのです。
ドンゴドンゴドンゴパッパッパラーパラーというテーマ曲とともに、
タン・ロンがフットワークを使い始めると、チャック・ノリスの攻撃は全く当たらなくなります。
スピードとパワー、そして自由な変化と独特のリズムの融合こそが、
本来のタン・ロンの強さなのです。
パワーではチャック・ノリスにかなわなかったものの、
総合力で勝っているタン・ロンは、徐々にチャック・ノリスを追い詰めます。
そしてチャック・ノリスが弱ってきたところに左右のロングフック四連発で、
ほぼ勝負を決めます。
それでも向かってくるチャック・ノリスに、タン・ロンはロングフック五連発から間接技と膝への蹴りを連続で食らわせ、
チャック・ノリスの右手と右足をへし折ります。
しかしそれでも向かってくるチャック・ノリス。
そしてタン・ロンは、フロントネックロックでチャック・ノリスの首をへし折ります。
勝負の後、タン・ロンはチャック・ノリスの死体に道着をかけ、手を合わせます。
あんたが殺しといて今さら・・・ではありません。
超一流の格闘家に対しては、最後まで全力で戦うのが礼儀なのです。
そしてタン・ロンは最後まで礼儀を尽くしただけなのです。
これで、この映画は終わりです。
本当はあと数分ありますが、べつに重要でもありません。
この映画でブルース・リーが描きたかったのは、
おそらくこの決闘だったのだろうと私は思うからです。
タン・ロンが倒すのは、「オムァエゥワー・・・」以外全て白人と黒人です。
ブルース・リーは今でこそ世界中で評価されていますが、
アメリカで俳優をやっていた頃は中国人というだけで不当な扱いを受けていました。
「グリーンホーネット」では完全に主役より目立っていたのに、脇役。
しかも日本人の空手家という設定です
(「オムァエゥワー・・・」の黄仁植も同じ扱いのような気がしますが、この際置いときましょう)。
そこに欧米諸国にいいように食い物にされてきたアジアの歴史も重なったのでしょう。
だから映画の中では「強い中国」そして「中国の勝利」を描きたかったのです
(日本は一度「ドラゴン怒りの鉄拳」でボコボコにしているので、もういいんでしょう)。
つまり、これは単なるアクション映画ではありません。
ブルース・リーが強大な欧米諸国を正面から正々堂々と倒していくことにより、
中国人民はやれば出来る、と中国人に訴えるための啓発映画なのです。
いけませんね、またまた話が堅くなってきました。
この映画はあんまり軟らかい話を知らないので、
とりあえずタン・ロンのファッションについて書きましょう。
映画の冒頭、いきなりローマの空港でカンフー着のブルース・リーは、
白人のおばあさんにジローッと睨まれて困っています。
よく考えたらタン・ロンのファッションと言っても、
いつも同じカンフー着とその下にランニングシャツしか着ていませんでした。
こんな人実際にいたら、ヘンです。
空手の道着で飛行機に乗ってイタリア旅行する人なんか、滅多にいないはずです。
そのせいもあって、始めはとんでもないカッペとして扱われるタン・ロンですが、
さあ、ケンカだーという段になるとその服を脱ぎ捨てます。
するとその下から、ものごっつい戦闘用筋肉が現れるわけです。
これこそ私の「服がダサイかどうかなんか、どーでもよろし。大事なのは中身」
説を体現する最高の例でしょう。
本当に実力のある人間は、
その実力を存分に発揮しさえすればそれで充分カッコイイんです。
わざわざ無理にカッコつける必要など無いのです。
まあ実際のブルース・リーのファッションセンスは、私が見ても分かるほどイケてるんですけど。
あと私、数年前までずっとブルー・スリーだと勘違いしておりました。
本当にすいませんでした。
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