異能ジャンル列伝1 『ゴシックメタル』
で、第一弾は"ゴシック特集"です。
本当は、コミックマーケット57で出したHR/HM・プログレの言論文芸誌こと「炎群」の第壱号の下原稿でした。でも、
いざ書いてみると自分で満足の行くものが書き上げられなかったんですよ。それでもなんとかコミックマーケット59で
出した第参号では満足のいけるものが書けたので、ボツになったこちらの原稿も一部を書きなおし、ここに掲載するこ
とにしました。
どう書き換えたかと言うと、文章のバカさ加減が200%くらいアップしてるという点です。真面目な評論・解説は「炎群」
の方にお任せする(と、言ってもそっちも自分が書いてるんですが)として、 ここでは徹底的に簡潔に、お馬鹿なお話を
しましょう(笑)
ほんじゃゴシックとはなんぞや?たしか高校あたりの世界史の授業で出てきたよ〜な。なんてお思いの方もいらっしゃ
るのではないでしょうか。そうです。中世の建築様式の「ゴシック様式」が語源となった音楽ジャンルです。重厚かつ荘
厳な音像、内省的な歌詞が特徴。なぜかみんな黒を基調とした服を着込んでるのも特徴です。
ですがそんな表層的な定義なんぞど〜でもいい。僕なりにゴシックを定義しますと、ズバリ「聴いてるとドンドン無気力
になっていく音楽(笑)」であります。
世の音楽の歌詞なんかを読んでるとみんな、"夢"だの"希望"だの純粋一直線ちゃんばっかりで、「君達は本当にそん
なこと考えてるの?」って疑問に思ってしまいません?まぁ今から紹介するゴシックのバンドの人達も、どこまで本気であ
んなに暗い歌詞を書いてるのか正確に把握しきれない部分もあるんですけど(アンドリュー・エルドリッチは全て本気だと思
いますが)、たまにはこんな音楽でも聴いて「こんな世の中なんていやだぁ〜」なんてドップリと厭世観にひたってみるのも
いかがでしょうか?
と、いうことでゴシックの名盤たる作品の数々を紹介していきましょ〜!
入門編: SISTERS OF MERCY 「FIRST AND LAST AND ALWAYS」

まずゴシックといえばコレ。世に"ゴシック"なる音楽性を知らしめ、80年代初期からのイギリスのムーブメントに絶大な影響を与
えた不朽の名盤。っつ〜かコイツらこのアルバムだけで燃え尽きちゃったんだけど(^^;;
ぶっちゃけた話コイツが一般的にどんな音楽に近いのかってぇと、う〜んポップスですかね。ただし絶望的に暗いけど。音的には
聞きやすいはずなのに、コンセプトやメロディがあまりにもアンダーグラウンド臭を感じさせるため、日本人にはキツい。といったとこ
ろでしょうか。本国イギリスじゃシングルがチャートの2位に入ったりするくらいの人気を誇っていたんですが。いやぁこんな暗いバンド
が売れるイギリスってホント素晴らしい国です(笑)
簡単に彼らについて解説しましょう。結成は80年、中心人物はオックスフォード大学卒のエリート、ヴォーカルのアンドリュー・エルド
リッチ。まぁ有名大学に入学実績のあるミュージシャンなんて別に珍しくもないんですけど、だいたいは"道を踏み外して(笑)"卒業でき
ないもんです。この人の場合ちゃんと大学出てるワケで、そこらへんのミュージシャンとはちょっと違う(いい意味でも悪い意味でも)と
いうことを年頭において頂きたい。
この人下手に知識を身につけすぎたせいか、やたらニヒリスティックというかくっらぁ〜い性格にお育ちになられたようです。
で、大学を卒業するも「こんなくそったれな世の中でやってられっか」とばかりにバンドを結成します。おそらくエリート意識が高すぎ
て社会に溶け込めないタイプなんでしょう。それが悪いとはいわないけど。バンド結成後も次々とメンバーのクビを切っていくことにもそ
れは表れてます。
中でも一番笑えるのが、結成当初は在籍していたドラマーのクビを切った理由が「すべからくドラマーとはバカで無能である」という話。
そうしてドラマーの座は"ドクター・アヴァランチ"なるリズムボックスに取って代わられます。
いいですね〜、こういうてめ〜の偏見のほうがバカなんだよ、って突っ込まずにはいられないような話。やっぱり"ミュージシャンはエ
ゴイストにしてアホの集まりである”(誉め言葉です。だって本気でアホやれる人って凄いと思いますもん)"という僕の考えにピッタリ合
います。
結果的に無機質なリズムボックスに取って代わられたことで、彼らの無気力系の暗さに磨きがかかり、彼らを孤高の存在まで押し上
げたといっても過言ではないでしょう。
じゃ、音について解説。さっきも書いたとおり安っぽくて無機質なビートが彼らの特徴。それに『もしかして風呂場で録ってんじゃねぇ?』
ってくらいのボワァ〜ンとしたエコー・サウンド。この安っぽさがアングラな感じでグ〜(笑)。その上に被さるギターはやたら絶望的でメラン
コリックです。あ、そういえばヴォーカルについて今まで触れてなかった(^^;;。アンドリューのヴォーカルは・・・『心の中にふつふつと湧き
上がる怒りみたいなものを極力押さえている』といったところでしょうか。一見、抑揚がない感じなんですがたまにヴォーカルラインから感
情が漏れほとばしります。
それと彼の書く歌詞、厭世的で皮肉っぽい言葉が綿々と連なっています。短い曲でシングルオンリーの「FIX」の歌詞を挙げてみましょうか。
Love For The Party,Love For The Nation 愛党精神 愛国心
Love For The Fix And For The Fablication 袖の下にでっち上げが得意
Love For The Corpse,For The Corporation
死体とて企業のためなら歓迎
Love For The Death And For The Defecation
死と浄化と愛着心
Romance And Assassination ロマンスと暗殺
Give Me The Love For The Genocide 俺も集団虐殺を楽しみたい
Give Me Love 俺に愛をくれ
おおっぴらに"愛"を連呼しながら何でこんなに暗いんでしょう?ホント、頭のイイ人の考えることはわかりません(笑)。韻の踏み方も素晴ら
しいですね。特に"死体"の"Corpse"と"企業"の"Corporation"を掛けてるところなんて最高の皮肉じゃぁないですか。こういう精神、大好き
なんですけど。
例えば速い曲でもコイツラがやるとなぜか、普通感じられるロック特有の爽快感というものが全くなくなってしまい、ノレなくなってしまうの
が不思議です。なんていうか"速ければ速いほど加速的に哀しくなってしまう"んですな。いやぁ稀有な才能を持ったバンドでした。
ということで、こういった感性についてこれるヒネクレタ人にはおすすめです。ちなみにこのアルバム、僕は上野のディスクユニオンで480円
で手に入れました(笑)。
実践編:PARADISE LOST 「DRAGONIAN TIMES」

この人達はあまりヒネクレテません(笑)。ただただ人生が辛く、哀しいみたいです。音造りもかなりキッチリしてて、真面目そうな感じがプンプン
します。う〜む、おもしろく紹介できん(笑)。作品はゴシックメタルとしてより、HR/HM界に燦然と輝く名盤なんで、聞いても損はないはずです。
『メランコリックなリフ→キャッチーな歌メロ→最後にギターソロで荘厳なエンディング』 という黄金のパターンを3分少々で纏め上げてしまう
ところが彼らの特異な才能と言えそうです。
:TYPE O NEGATIVE「OCTOBER RUST」

ゴシックメタルとしては珍しいアメリカのバンドです。元CARNIVORE(肉食獣)というバンドのリーダーだったピーター・スティール(ベース/
ボーカル)を中心としたバンドです。ピーターは身長2メートルを越える筋肉マッチョですが、超美形で男の僕が見てもウットリとなってしまいます。
また、ピーターのヴォーカルは、その吐息さえふんだんに収録されていて非常にエロティックです(笑)。
彼らのビデオクリップなどを見ているとわかるんですが、ピーターは自ら社会の病巣を鋭く指摘することによって、逆にその社会から槍玉にあげ
られて自らを傷つけるように仕向けているふしがあります。なにしろ「CHRISTIAN
WOMAN」という曲の中で彼は「イエス・キリストは俺に似ている」と
声高に叫んでいますから。これはキリスト教社会であるアメリカではトンデモナイ発言で、その通り彼は盛大なバッシングに遭っております。果たして
彼らはただただ社会をあざ笑う愉快犯なのか、それとも真のナルちゃん集団なのか、ファンである僕にもわかりません。先述のビデオクリップ集など
にもひじょ〜にクダラナイ(っつ〜か下品)なギャグなどがちりばめられており、彼らのシリアスな音楽性とやたらギャップを感じましたです(笑)。
また、ピーターはアメリカの女性メタルファンからセックス・シンボル的な扱いを受け、ライブでは「あたしとFU○Kして〜」「あたしの血を吸って〜」と
いう黄色い声援が乱舞している模様です。そんな彼の人気に『PLAYGIRL』という女性向ポルノ雑誌が目をつけ、彼の全裸ヌードを掲載しました。しか
も、その写真はピーターがオールヌードで恍惚とした表情を浮かべベッドに寝そべっているものであるそうです。ちなみに、その写真の載った号は
『PLAYGIRL』史上、最も売れなかったというオチつきであります(笑)。
上級編:MY DYING BLIDE 「ANGEL AND THE DARK RIVER」

バンド名からして「死にかけ花嫁」です(笑)。
人間と宗教、集団自殺について歌った「CRY
FOR MANKIND」。そのものズバリ"人類への嘆き"ですか。タイトルになんのヒネリもあり
ませんね(笑)。この曲はバックに「ちゃ〜りら〜ちゃ〜りら〜」というチャルメラもビックリのヴァイオリンの単調な調べが浮遊し、そこに
ギターがズンガラガッシャ〜ンと重〜いリズムを刻み、さらにお経のようなヴォーカルが載る、という一種終末的な曲です。それが12分
も続きます。地獄です(笑)。僕が初めて聴いたゴシックアルバムがこれなんですが、「なんじゃこりゃ」体が拒否反応を示すような作品
でした。でも何回か聴いてるうちに「あ、いいかも…」と思い始め、今じゃ「うぅ、…最高!」になってしまったんだから世の中どうなるかわ
かりません(笑)。
:KORN 「LIFE IS PEACY」

厳密にはゴシックの範疇に入らないのですが、イヤんなるくらい暗いので取り上げちゃいます。
このバンドの核はあくまでもジョナサン・デイヴィスのヴォーカルです。自分の弱々しさを本当は知ってもらいたい、のにそれを攻撃衝
動に置き換えて表現するジョナサンの歌唱は、魂を揺さぶるものがあります。でも、いつまでもこんなこと続けてたら彼の精神が持たな
いような。個人的に"自殺しちゃいそうで心配なアーティスト"のナンバー1であります。彼は、幼少時代に父親から虐待を受けた過去が
あり、それを歌った「Dad」という曲では最初に「母さん、この歌を歌うことを許して欲しい…」と始まり、後半では感極まって泣き出してしま
うのですが、それをそのまま収録して出してしまいました。当然、この曲は彼に精神的ストレスを与える為、ライブで歌われることはありま
せん。
この2ndは、まず初めの「んがむ〜んがぷちゃ」という謎の叫びから始まりますんで、初めて聞いて「なんか俺はトンデモないものを聴
かされてるんじゃないか」と思わないでください(笑)。
それにしても、このバンドが全米1位に輝くなんて、まったくもって病んだ国だよ、アメリカってところは。
:MORTE MACABLE 「SYMPHONIC HOLOCAUST」

KING CRIMSONに強い影響を受けたスウェーデンのバンド、ANEKDOTENとLANDMARKのメンバーによる合体プロジェクト。
プログレバンドがホラー映画の曲のカヴァーをやったらゴシックになっちゃった、身も蓋もないのですが。まぁそう言うことです(笑)。
全曲インスト!ですがメロディが充実しているので飽きがきません。また、カヴァーしている曲が全体的にシンフォニックで悲しげな曲が多い
ので、ホラー映画の残虐な印象は感じられません。1曲目はルチオ・フルチ監督の「地獄の門(City
Of The Living Dead)」のテーマのアレンジ
ですが、この曲で聴かれるメロトロンの洪水は、僕のようなプログレ野郎にはたまらないっす。3曲目もルチオ・フルチ監督の「THE
BEYOND」
です。4曲目は「ローズマリーの赤ちゃん」のテーマ・・・と、17分に及ぶオリジナル曲「SYMPHONIC HOLOCAUST」以外は全部ホラー映画の
カヴァーです。
メロトロン・・・鍵盤を押すことで磁気テープが連動して音が出ると言う原始的な
シンセサイザーのようなもの。独特の枯れた音色が魅力的。
・・・あまり面白いことはいきなり書けないのだ(笑)
最上級:TIAMAT 「DEEPER KIND OF SLUMBER」

ついにここまで来てしまいましたね。"世界の果てへようこそ"といった感じでしょうか(笑)。まぁここまで来てしまったらもう人生裏街道
まっしぐらといった感じで後戻りはできませんので、諦めて楽しんじゃってくだされ(笑)。とりあえずこのアルバムの「KITE」〜「PHANTAS
-MA DE LUXE」というメドレーを聴いてみてください。途中、感動的な美しさを誇るギターソロで希望を取り戻しますが、そこで持ち上げ
ておいて最後にやっぱりドン底に落とすことで究極の孤独感を聞き手に植え付けることに成功しています。暗い、あまりにも暗すぎる名
曲であります。僕の葬式にはぜひこの曲を流して欲しいですね(笑)。
インタビューで「僕が声高に何か叫んでも、誰も聴いてくれないことに気づいたんだ。だから唸るのをやめたのさ」と語った、ヴォーカル
のヨハン・エドラウドの歌唱は、地の底を這うかのように低く、深いいい声をしています。聞く人によっては一本調子だと感じるらしいです
が、この音にはこのヴォーカル以外は合わないでしょう。
PINK FLOYDって知ってますか?今じゃ世界的に超メジャーバンドになっちゃってて、ライブやりゃぁ一度に7万人がスタジアムに押し
寄せる程なんですが、彼らの初期の音(だいたい1967〜69年頃)を思い起こさせます。鋭いナイフを頬に押し付けられているかのような
研ぎ澄まされた狂気、といったところでしょうか。TIAMATはそのPINK
FLOYDと並んで"音が視覚に訴える"ことができる世界でも数少な
いバンドといえるでしょう。
最後に…
異能ジャンル列伝、第1回ゴシックメタル特集はいかがだったでしょうか?
こういう感じで、今度は『異常バンド列伝』なるものも考えてます。第1回は多分、僕のサークル
『A級HM』の元ネタになったASH RA TEMPEL(アシュラテンペル)になると思います。ご期待あれ〜。
#でも、結局HAWKWINDやっちゃったんだよね(2001/2/18)