メロディック・デスメタル

  メロディック・デスメタル(以下、メロデス)とは、メロディを排することで逆にスピードの方に力の比重を置いていた
 デスメタルに、"美醜の対比でメロディを際立たせる"アプローチをとったらどうなるのか?という命題を突き詰める音楽
 です。ヘヴィメタルの本質は"はったり・かまし"です。ヘヴィメタルにおいて美も醜も極端にデフォルメ化されるのは、聞
 き手に強烈な印象を与えるためです。メロディアス・デスメタルはそのメタルの特徴である音楽のベクトルの振幅を、最
 大限に広く取ったものであるといえるでしょう。

  こちらを読む前にデスメタルを読んでおくと、もっとよくわかると思いますよ。

  メロデスはその音楽性から真性のデスメタルよりもとっつき易いので、普通のメタルしか聴いてなかった人が、デスメ
 タル方面へ足を踏み出すときの第一歩として適当です。ここに紹介している作品は初心者にもオススメで聴きやすいも
 のばかりですから、ぜひこれをとっかかりにして奥深いデスメタルの世界へ足を踏み入れてください(笑)。

 さて、最初にメロデスを始めたのはイタリアの
SADISTと言われていますが、 知名度・作品の質ともにCARCASS
 
『HEARTWORK』が上でしょうから、真にモニュメンタルなメロデス作品は『HEARTWORK』だ、として話を進めます。

CARCASS / HEARTWORK

       

  まずこれを取り挙げなければ始まらないでしょう。もともとハードコア・パンクシーンとデスメタルシーンの中間で独特
 の存在感を発していたCARCASS。しかしこの作品のひとつ前の
『NECROTICISM - DESCANTING THE INSA-
 LUBRIOUS』
より加入した北欧人ギタリストのマイク・アモットにより、音楽性が激変します。
  ヴォーカルと邪悪で不穏なリフ、そして疾走部分にはデスメタルを残しつつも、ツイン・リードギターのメロディを端々に
 加えることで正統的なメタルに急激に近づいたのです。それを前面に押し出したのがこの
『HEARTWORK』です。

  ジャケットは『エイリアン』シリーズで有名な
H.R.ギーガーの手によるもので、その奇怪な美の世界観とCARCASSの
 音楽性の恐ろしいまでの一致を見せています。ジャケットでCARCASSは自分達の音楽性を標榜しきっています。

  それまでのCARCASSはなにがなんだかわからないほど猥雑な音造りとパンク的なノリのスピード感で圧していたので
 すが、この作品はごく普通のメタルファンが聴いても「美しい」と感じられるほどの普遍的なメタルの要素があります。殺人
 的なスピード感のある曲は1曲もないのが特徴的で、マイク・アモットとビル・スティアのという、タイプの違ったギタリストに
 よるツイン・リードを基本にした美しいアルバムになっています。そのプレイを聞いてここはどちらが弾いているというのがわ
 かるほど個性の違いがあったということも、この作品を名作に位置付ける一因となっています。

 #マイク・アモットは北欧人らしく美しいメロディを重視したタイプ。ビル・スティアはジャズやブルースに影響を受けた70年代
  風のプレイをする。

  マイク・アモットはこのあと弟の
クリストファー・アモットARCH ENEMYを結成し頑張っていますが、彼の音楽人生で
 の最高のギターソロはこのアルバムに収録されている"BURIED DREAMS"でありましょう。重くスローなメインリフに、まず
 ビルのスピーディなギターソロが絡みます。それが終わるとマイク・アモットがチョーキングしながらソロを切り込んで来るので
 すが、そのチョーキングを使った入り方・・・思えば簡単なソロなのですがタイミング・音選びともにこれしかない!というくらいの
 完璧なメロディーであり、ビルの活きのいいソロとの対比で最大限に魅力をアピールする"退廃的な"ソロであります。
  僕は何度聴いても鳥肌が立つ気分です。美しすぎる!といえるでしょう。

  その他にも
IRON MADEN的なソロが炸裂する"CARNAL FORGE"。イントロのツインリードが美しい"HEARTWORK"と名曲が
 目白押しの文句なしの名盤です!正統派メタルファンでも文句なしにおすすめ!!


IN FLAMES / WHORACLE

       

  IN FLAMESはスウェーデンはイエテボリ出身のバンド。初期からヘタしたらジャーマンメタルにも足を突っ込み兼ねないほど
 のメロディ重視のデスメタルをやっていましたが、近作でようやくプロダクションと曲ごとの起承転結がハッキリしてより音楽と
 して高いレベルで語れるバンドになりました。この作品からいきなり質は爆発的に良くなってますのでこれが彼らの金字塔的作品
 と言えるでしょう。

  彼らは非デスメタル的な3拍子のワルツのリズムを使った叙情的なナンバーを得意とします。今作でいうところの"GYROSC-
 OPE"という曲がそれですが、彼らは元々スピード自体、早くてもパワーメタル程度なので3拍子のリズムも違和感なく溶け込
 んでいます。

  メロデスの中心はギターのフレーズだと思うのです。ヴォーカルに重点が置かれていない分、ギターの方で主張していかなく
 ては作品としてよいものはでき得ないのです。普通のメタルですとメロディを強調していくとどうしてもクサくなってしまって、その
 部分が鼻につく時もあるのですが、デスメタル的ではありますが表現力があるヴォーカルのせいでメロディも妙にベタベタするこ
 とはなく、慟哭のギターメロディを聞き手にダイレクトに届けることに成功していると思います。
 特に、バンドの中心人物
イェスパー・ストームブラードのギターフレーズはまさに"天から舞降りる"ような軽やかで美しいもの。ツ
 インギターのハモりも絶妙で、ギター好きには堪えられない作品でしょう。
 IN FLAMESは随所に80年代のニューウェーブミュージック系の爽やかさも感じますね。それが象徴的なのは最終曲に
DEPECHE
  MODE
のカヴァーをしていることからもわかるでしょう。このトライバルなドラムをメインにした最終曲はアルバム通したイメージを
 美しくまとめあげ、余韻を残して作品を終了させ完成度を上げるのに一役買っています。捨て曲も1曲もない、これも名盤。


ARCH ENEMY / BURNING BRIDGES

       

  CACASSを脱退したマイク・アモットが弟であるクリストファー・アモットと結成した、新時代のギターヒーローコンビの3rdアル
 バム。
EUROPEのようなメロディアスなメロディを重視するマイクと、イングウェイの影響を受けた速弾きをするクリストファーという
 違った個性を持つ兄弟のギターを十分に堪能できるバンドです。1st、2ndまでは曲の出来にバラつきがありそこがネックでした
 が、より正統的なメタルに近づいた近作では楽曲の質が総じて上昇し安心して聞ける作品になっています。
  マイナーキーを使ったソロだけではなく、デスメタル系にしては珍しいメジャーキーを使った明るくゴージャスな印象を与えるギ
 ターソロも違和感なく曲に挿入してしまう彼らのセンスには舌を巻くばかりです。若いギターキッズには良い見本になるんではな
 いでしょうか。激しくおすすめ


AMORPHIS / ELEGY

       

  彼らはクサいメロデスの筆頭家老のような連中です。中近東系の怪しいメロディを巧みに挿入したリフで疾走するこの作品は、
 ノーマルヴォーカルの積極的導入で、より普遍的なメタルに近づきました。
DEEP PURPULEの影響も大きなハモンド風キーボー
 ドやクラブ系のメロディまであり様々な要素を叩きこみつつも、それをすべて中近東系でしっかりまとめており、全体的に散漫な
 印象を与えるのを防いだ作風です。彼らは70年代のサイケデリック・ミュージックへの造詣を深く、HAWKWINDからの影響も強い
 ので、それらが好きな人には絶対におすすめです! ・・・僕がHAWKWIND好きだというのもありますが

  この後に発表したミニアルバム
「MY KANTELE」は70年代サイケ好きのおじさんにも必携のアルバムと言えるものです。
 HAWKWINDの"Levitation"の素晴らしいカヴァー、フィンランドの英雄
KINGSTON WALLのカヴァー。めっちゃ遠近感のありまくり
 のサイケな音の中をギターが浮遊する新曲など、もうサイケマニアにはたまりません!!!!!こんなに懐が広いデスメタルバ
 ンドは他にいないんで、プログレファンでも元デスメタルだからって毛嫌いしないで聞いて欲しいなぁ・・・。

AT THE GATES / SLAUGHTER OF THE SOULS

       

 メロデスとひとことに言いましても大きく分けて二つタイプがあって、ひとつはCARCASS/IN FLAMESのような正統派メタルにデスメタル
 を混ぜたもの。そしてもう一つはAT THE GATESに代表されるデスメタルのビートを基調としながら、そこに瞬間芸的にメロディを挿入して
 いくもの、です。

 AT THE GATESは尋常ではないスピード感のあるメロディアスなリフを基調としてガンガン押すタイプで、ギターソロの部分にはIRON
  MADENの影響も見え隠れしています。普通のデスメタルバンドではリフをメロディアスにすることは憚れてきましたが、メロデス時代に
 なってそういったタブー視もなくなったので初めてできた音楽だと言えるでしょう。イメージ的にはめちゃくちゃ速くなった
MEGADEATHかな。

  彼らはこの作品を最後に解散してしまいますが、ギターとベースプレイヤーが中心となって、新たなバンド
THE HAUNTEDを結成します。
 THE HAUNTEDもAT THE GATESの確かな血を感じさせながらも、現代的なスラッシュメタルを追及してて素晴らしいバンドです。彼らについて
 はこちらで紹介しています。THE HAUNTEDのライブでAT THE GATESの超名曲"Blinded By Fear"を演奏したりもしているようです。



最後に・・・

 あえて相反する要素であったブルータルさとメロディを融合させたメロディアス・デスメタルっていうのはやっぱり精神的にはプログレだと
思います。ゴシックもそうなんですが、現代のプログレってやっぱりデスメタルが根本なんじゃないかなって思うんですよ。日本でプログレ
系アーティストの発売を一手に引き受けているマーキー/ベル・アンティークというレコード会社のラインナップの中にこういったバンドが多い
ことからも、精神的には繋がってるということを確信させています。

 他にも、昔はよく聴いていた
EDGE OF SANITYなんかも取り挙げてみようかなと聴いてみたのですが、どうも音造りとかがイモ臭くてダメです
ね。"The Dark Day""The Masque"という超絶名曲があるので聴いても損はないとは思いますが・・・。上のをチェックしたら聴いてみてください。
僕は基本的にリフ重視なタイプなので、CARCASS/INFLAMES系の正統派メタル調よりも、ATTHE GATES系が好きです。ここらへん
のメロデスバンドの好き嫌いも趣味・嗜好でだいぶ変わるかと。自分の嗜好に合わせていろいろ聴いてみてください。



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