| ドゥーム/ストーナーロック |
ストーナー・ロックの“ストーン”とは、マリファナなどダウナー系ドラッグ(マリファナは草ですが)で頭がブッとんだ状態
を指す隠語であります。
基本的にドゥームメタルやストーナーロックとは「演奏者がキメて録音し、聞き手もキメて聞く」ことを前提とした音楽なの
です(汗)。
ストーナーロックとは、重く、歪んだ音でギターを掻き鳴らし、ひたすら同じようなフレーズを反復して、聴き手にドープ
(マリファナ)を吸引した時のような気分を追体験させてくれるものを指していました。しかし現在、ヨーロッパではストーナ
ー・ロックはブームなので、本当にストーンしてないような連中もストーナーロックに括られたりしています。今では70年代
風の古き良きロックンロールにパンクの要素が混じったような埃っぽいロックをストーナー・ロックと言うことが多いようです。
アメリカでもNIRVANA以降、グランジ/オルタナティヴ・ロックの流行でアメリカ人が"真のパンクに目覚め"(それまで、ア
メリカには一度たりともパンク・ムーブメントは起きていませんでした)、ストーナー・ロックを受け入れる土壌ができあがった
ようです。そういえば、NIRVANAも広義のストーナー・ロックに括ることが出来るかもしれませんね。カート・コバーン(NIRV
ANAのリーダー)は明らかにオーヴァー・ドーズ(過剰摂取)の末の鬱状態での自殺ですから。
ドゥーム(陰気とかそういう意味)系の音楽はストーナーロックがひたすら"快"に突き進むのに対し、どちらかというと"鬱"
方面に突っ走るものを指しています。ドゥームメタルとストーナーロックの違いは、どちらかというとドゥームメタルの方が暗く
てパンクの要素が薄くより純正のメタルっぽいっていう感じです。ドゥームメタルのバンドは必ずBLACK SABBATHの影響下
にあるという点では一致しています。
さて、ドラッグと音楽の関係についてちょっと書いていきたいと思います。
ミュージシャンとドラッグの関係は切っても切れない関係って奴のようでして、ビートルズだってジミ・ヘンドリックス
だってレッド・ツェッペリンだって、ジャニス・ジョップリンだって、ローリング・ストーンズだって一時期はみんなドラッグ
漬けでした。芸術家って連中は才能の限界を引き出すために、時にこういったものに手を出してまで作品を作り上げよ
うとします。芸術家、特にミュージシャンは聞き手であるお客に芸術を提供するサービス業に属する人達だと僕は思って
いますが、結局のところ、麻薬なんて自己の破滅につながるにきまってるんで、そういった自己を犠牲にしてまでも作品を
作り上げてきた先人達に対して、文句など言えるはずもないって僕は思います。
もちろん日本ではマリファナは禁止されているのでそんな楽しみ方はしてはいけません!!でも、音楽的に質が高いバンド
はそういったものに頼らずとも聞き手に心地よい思いをさせてくれますから、安心してお楽しみください。
まぁ定義云々はとにかくとして、音楽的には70年代の古き良きロックンロールだと思ってもらえばいいんじゃないでしょうか。
ストーナー・ロック系
KYUSS / ...And The Circus Leaves Town

カルフォルニアの砂漠地帯パーム・ストリングスから突如現れた伝説的ストーナー・ロックバンド。
日本では2nd「Blues For The れd Sun」(これも名作)しか紹介されなかったので馴染みが薄いようですが、本国アメリカ
では"キング・オブ・ストーナー"と言われて熱狂的なファンを一杯抱えていたバンドでした。8年間活動し、このアルバムを
もって95年に解散。彼らの出身地パーム・ストリングスにはKYUSSと似たような音楽性のバンドがいくつか存在し、それを
俗に"デザート・ロック(砂漠ロック)"シーンというそうです。今でも年に1回そういったバンドを集めたデザート・ロック・セッ
ションというフェスティバルが開かれているそうですし。
KYUSSのメンバーはその後、ヴォーカルのジョン・ガルシアはUNIDAに、そしてギターのジョシュア・オムはQUEEN OF
STONE AGE(後述)に、ドラムのブラント・ビヨークはFU MANCHUに加入して活躍しています。現在のストーナー・ロック
シーンの中軸で全員が頑張っているところからも、いかにKYUSSが偉大だったかがわかっていただけると思います。
ズッシリと重くてそれでいて乾いた音質のプリミティヴなギターノイズを四方八方に撒き散らしながら、どうしようもなくダウ
ナーで熱に浮かされたようなジョン・ガルシアのヴォーカル(しかも上手い!)が乗る彼らの作品はどれも名作ですが、わ
かりやすいメロディが多くポップとも言えるこの作品を一番初めにこれを勧めておきます。
NIRVANA以降の世代ならわかるであろう、乾いたポップさというものを高い次元で体現していますので、勿論NIRVANAの
「NEVERMIND」が好きな人なら絶対に気に入るでしょう。
NEBULA / ・・・To The Center

FU MANCHUに所属していたエディー・グラスがヴォーカルとギターを兼ねるトリオ。
パンクっぽいストーナーロックとしか言いようのない保守本流サウンド。インド系の音階とやる気のないヴォーカル(でも
歌いまわしが巧みなので上手いヴォーカルともいえるかも)とのバランスが絶妙ですね。音の薄くなったKYUSSっていう
のが一番しっくりくる表現ですが、スリー・ピースという制約を逆に利用した、聞き手をスウィングするようなかん急のつ
け方が非常にレベルが高いです。
QUEENS OF STONE AGE / RATED R

「旧石器時代のオカマ」という名前のバンド。中心人物はKYUSSのギターだったジョシュア・オムで、このバンドでは
ヴォーカルも兼任しています。この作品はメジャーレーベルからのデビュー作で2ndアルバム。
バンドのサウンドはギター、ベース、ピアノ、ドラムスとシンプルですが、メンバーはジョシュアを中心として曲ごとに
友人連中をてきと〜に集めて録音しています。そのためか非常に自由な作風になっています。特に多くの曲でフィー
チュアされているビブラフォン(木琴)が奏でる覚醒感は効果抜群です。ジャーマンロックのEMBRYOとか、ピエール
・ムーラン時代のGONGとか、もちろん大御所のGRATEFUL DEADまで、サイケでハッパ臭いバンド達は昔からビブ
ラフォンをうまく使って覚醒感を作ってますので、それに倣ったのでしょうか。ここらへんが、実にベテランらしい懐の深
さですね。
ジョシュアのギターはKYUSS時代よりもファズ具合が少なくなってノイズっぽさは消えましたが、独特の官能的なフ
レージングは相変わらず。KYUSS時代よりもわかりやすく、ポップにかっこよくいい意味でメジャーな音造りといえますね。
アルバムタイトルの「RATED R」とは「R指定」の意味ですが、その名の通りの大人向けストーナーロック。野外のスタ
ジアムとかで寝転がって観たら最高でしょう。
2002年には3rd「SONGS FOR THE DEAF」を発表。こちらの作品にはナント元NIRVANA〜現FOO FIGHTERSのデイヴ
・グンロールがドラムスでフルに参加しており、よりアッパーでキメキメでロックンロールです(笑)。どうもデイヴの方から
「参加させてくれ!」と頼んだようなのですが、全世界で1000万枚以上売り上げているFOO
FIGHTERSのリーダーが、
バンドの一ドラムスとしてでも参加したい!と思わせるほど、QUEENS
OF STONE AGEは素晴らしいということの証明です。
輸入盤は2枚組みでDVDが付いてきます。これには3rdの曲を含めたライブやオフステージでの様子が収録されており、
デイヴの熱いドラムスやジョシュアのギタープレイが見られます。買うのでしたら絶対に輸入盤でっ!
ドゥーム+正統派ハードロック/ヘヴィメタル 折衷型
TROUBLE / MANIC FRUSTRATION

初期はBLACK SABBATH直系の重いメタルを志向していたバンドでしたが、この作品あたりから徐々にバラエティを
豊かにしてメタルっぽさを残しつつも聴きやすいHRになりました。単純に言っちゃうとファンキーな感じになっていてより
LED ZEPPELINEっぽくなったというところです。
元々、ヴォーカルのエリク・ワグナーの歌唱ははLED ZEPPELINEのロバート・プラント(もちろん若い頃ね)似の高音
のシャウト・ヴォーカルでしたので、この音楽性のシフトは自然であるといえます。エリックの歌唱力・歌いまわしなどの
個性はメタル界広しといえども彼に並ぶ実力の持ち主はほとんどいないであろう超実力者。
しかもメロディアスなハモリを聴かせるツインギター・ソロをきちんと曲ごとに挿入した典型的なピュア・メタルスタイルと、
BLACK SABBATH直系の伝統である個性的なリフ・・・というヘヴィメタル・ハードロックのおいしいところを両方とってさら
にヴォーカルまで上手いというまさに理想のバンド。こんなバンドが解散してしまったなんて悲しい限りです。
SPIRITUAL BEGGERS / MANTRA III

スウェーデンが輩出した新世代のギター・ヒーロー、マイク・アモットが率いるバンドの第3作。
マイク・アモットはメロディアス・デスメタルの創始であるCARCASSの元ギタリストで、現在はこのSPIRITUAL BEGGERS
と平行して自らもメロデスバンドのARCH ENEMYもやっています。SPIRITUAL BEGGERSとARCH
ENEMYではかなり音
楽性は違いますが、そのどちらも非常に高品質。特に日本におけるARCH
ENEMYの人気は凄まじいものがあります。
SPIRITUAL BEGGERSでは初めてこの作品から専任のキーボーディストであるペル・ウィベルィを加入させ、音楽性
をグレードアップさせました。ペル・ウィベルィはATOMIC ROOSTERのヴィンセント・クレインに強い影響を受けたキー
ボーディストであり、ハモンドオルガンやメロトロンの扱いに長けた現代では珍しいタイプのプレイヤーですね。
彼の加入とヴォーカルのスパイクの熱いシャウト・ヴォーカルにより、「DEEP PURPPLEがメタル風になってサイケにも
足を踏み入れたらなったらこうなってただろう」というサウンドになっています。ギターも北欧人らしく(?)ソロ・パ−トで
はかなりメランコリックですし、日本人好みのバンドでしょう。
この作品を発表後、『AD ASTRA』、ヴォーカルとベースがチェンジしての『ON
FIRE』といった作品を発表しています。
どちらも『MANTRA III』に比肩しうる高品質な作品なのですが、『MANTRA
III』までに漂っていたインドっぽさというか異
教風の特異性は薄くなっています。段々DEEP
PURPPLEのような普遍的なロックにシフトしていっています。
個人的に、90年代に発売された音楽作品の中で、DREAM THEATERの『IMAGES AND WORDS』に並び頂点に君臨
するほどのクオリティを持った名盤であると思います。全ロックファン必携。
LID / IN THE MUSHUROOM

TROUBLE解散後、ヴォーカルのエリク・ワグナーが英国ゴシックメタルバンドANATHEMAのギタリスト、ダニー・キャ
ヴァナーと結成したバンド。DOORSのようなソフティケイトされた耳触りの心地よいロックをやっています。TROUBLEで
のエリックの歌唱が気に入った人なら楽しめるでしょう。この一作以降コラボレートは行われていないようです。
ドゥーム系
CATHEDRAL / THE CARNIVAL BIZARRE

元NAPALM DEATHで世界最速のグラインド・コアを追求していたリー・ドリアンが、逆にスローでディープなメタル
を追求したのがこのCATHEDRAL。1stアルバムなどは、人に聞かれることを意識していないかのようなヘヴィさの
追求が誰にも理解されていませんでしたが、2ndの『ETERNAL
MIRROR』からファンク/ソウル/ロックンロールの
要素も徐々に取り入れはじめ、この3rdアルバム『CARNIVAL
BIZARRE』で完全に脱皮しました。
TROUBLEへの憧憬も感じさせる正統派HM調のリフ、もちろんBLACK
SABBATHの影響も感じさせます。
それにファンキーにうねるサイケデリックでアッパーなメロディが絡みます。他のドゥームメタルと比べて明るい感じ
がするので正統派のメタルファンでも楽に入っていけるでしょう。
ACRIMONY / TUMULI SHROOMAROOM

こちらはちょっぴり上級編。CATHEDRALと比べるとファンキーさはなく、ズッシリと腹に堪るヘヴィネスとそれに相
反するやる気のないなげやりなヴォーカルが特徴です。
曲によってはストーンしまくってていつまでも同じフレーズを延々繰り返して終わらないのとかあったりして、ヤバさ
は抜群です。でもリフがいちいちかっこよくて飽きが来ない作品です。ドゥームメタルはなんといってもリフが命です
から、その点ではACRIMONYは合格点。でも、この作品を最後に解散してしまったそうです。非常に残念であります。
