
ヴァイキングメタル
ヴァイキングメタルはこんな人にオススメですよ
→ジャーマンメタルがお好きな人
→ROYAL HUNTやARTENTIONなどの様式美系は好きだけど、もっと力強い音楽が聞きたいと思ってる人
→MANOWARが好きな人(これは絶対おすすめ)
ヴァイキングメタルとは一体何なのか?という問いに対して、まだ僕は明確な答を持つことができない。
まだ、このジャンルは発展途上とも言えるし、純粋にこいつらがヴァイキングメタルバンドだ!と言えるものは、
ENSLAVED、EINHERJER、MITHOTYNぐらいだからです。 (BAL-SAGOTHはむしろウォーメタルに属する。
ウォーメタルとは、民族的素養に関係なく、ただ雄々しい音楽を演奏しているバンドを指します)
しかしこれら3つのバンドや、他にも共通項を持つFORLORN、FOLKENBACH、IN BATTLE、MORNINGSTAR
といったバンドは、ブラックメタル特有のブラストビート
(注) をあまり用いず、スローパートに民族音楽風のメロ
ディ(ケルト音階やフォーク調のメロディ、またはアイリッシュ系のメロディ)を積極的に取り入れています。また、
ヴォーカルは暴力性をアピールするよりむしろ、雄雄しく叫び士気を鼓舞するかのような野太いコーラスを用い
たりすることも共通していることですね。
(注)ブラストビート・・・ツーバス (ベースドラムの両足叩き)
連打を究極まで突き詰めて異常なスピードで疾走
するビートのこと
また、いわゆるノルウェーのMAYHEM、BURZUM、EMPEROR(初期)、DARK FUNERAL、SATYRICONといった
真性ブラックメタルバンドのように悪魔主義的/反宗教的/体制打破的な性質を、ヴァイキングメタルバンドは
持ち合わせていないというのも特徴です。むしろ彼らは故国の歴史を愛し、民族を愛するという点で愛国心に溢
れた音楽をやっているといえます。これはヴァイキングという民族の歴史を考えると簡単な結論に行き着きます。
ヴァイキング(正確にはノルマン人)は北欧のスカンジナヴィアやユトラント半島を原住地とするゲルマン人のこ
とです。彼らは10世紀ごろにロロに率いられ北フランスにノルマンディー公国を建てたり、シチリア半島と南イタリ
アを侵略し両シチリア王国を建てたり、11世紀にはイギリスにノルマン朝を建てるなど隆盛を誇っていました。しか
し彼らはしだいに定住し、キリスト教を受け入れていきました。
現代のヴァイキングメタルバンドは全て、スカンジナヴィアで活動をしていることから考えると、彼らはその愛国
精神から過去の文化を礼賛することで、逆にキリスト教圏の文化に対して反対を行っている節があります。民族意
識の高まりは常に、新しい宗教(キリスト教はたった2000年の歴史しかない)を否定し、土着の信仰に対する崇拝
となって顕れます。表立ってアンチ・キリストを謳っているわけではないですが、反骨精神とも言うべき部分におい
て、ブラックメタルバンド群とは共通しているといえるでしょう。
さて、ここまでは文化的な背景から語っていっきましたが、音楽性の面で大きく扱われているトラッドフォークやア
イリッシュのメロディというと・・・実は今、こんなデスメタルとは関係のなさそうな一般層でもブームになってます。
まずアイリッシュ系といえばエンヤですね。それにアイリッシュ・ダンスのROAD OF THE DANCE (音楽も素
晴らしい!!このサントラはアイリッシュ好きは必聴です)
が来日するなど、一過性のブームに留まらない潮流が
生まれています。プログレ方面では英国シンフォロック(今アンドリューはアメリカ在住ですが)のCAMELが
「HARBOUR OF TEARS」でアイルランドからアメリカに移民した人々をテーマしていますし、来日を果たしたIONA、
元SAMLA MAMMAS MANNAのラーシュ・ホルメルなどがいます。
あと、BAL-SAGOTHはコテコテのプログレッシヴロック雑誌「ユーロ・ロック・プレス」で常に好評価を得ています。
3rd「BATTLE MAGIC」は10点中の10点満点、4th「POWER COSMIC」は10点中の9点。ちょっと4thのレビューから
一部を引用してみると「万華鏡のごとき転調、分厚いキーボード、英国のバンドらしい哀愁」が好評価の元のようです。
ふと、考えてみるとこれらの要素は、メタルファンにもアピールすると同時にシンフォニック系プログレファンに強くアピ
ールする要素なのですね。BAL-SAGOTHはトラッドというよりはENID(70年代から活動しているイギリスのシンフォニ
ックロックバンド)やCAMELのようなシンフォに近い部分が多いのですが、ヴァイキングメタルを受け入れる土壌は、プ
ログレファンにも強いのではないかとさえ思えます。
さて、ではそんなヴァイキングメタル/ウォーメタルバンドの名盤を紹介していこうと思います。まず、ヴァイキングメタ
ルというジャンルが強く意識されるようになったのは、ノルウェーのENSLAVEDが3nd「ELD」において強くヴァイキング
色を出した頃からだといえるでしょう。このアルバムが出てから数々のフォロワーが生まれることとなりました。
ENSLAVED / MARDRAUM −BEYOND THE WITHIN

「ELDに続く4th。」2分近く続くギターの嗚咽を切り裂くように始まる入り組んだリフ、そしてまたアコースティックパート
に切り込むという複雑な曲展開を持つ1曲目(10分を超える大作!)が圧巻。録音環境も素晴らしく凡百のブラックメタル
バンドが到達し得ない地平に彼らは達しています。今回紹介する中では一番最もテクニカルでかつブラックメタル色が濃
く、ケルト系メロディが薄くなっていますが、それでも雄々しさを前面に出して戦意を昂揚させるかのような作風は健在です。
名作。
EINHERJER / DRAGON OF THE NORTH

ミッドテンポの曲調主体で男臭い世界観を追求しつづけるノルウェーのヴァイキングメタル界のもうひとつの雄。ENSLAVED
とはまったく正反対の方向性でヴァイキング道を極めようとしています。なんといっても特徴的なのは吐き捨てだけに収まらない
深みのあるヴォーカル。ダミ声ですがしっかりメロディを作って歌い上げています。そこに巧みにデス声を混ぜて展開を設けるな
ど、ヴァリエーション豊かです。音造りも丁寧でブラックメタル特有のシャリシャリとした薄っぺらな音ではないので、普通のメタル
ファンにもおすすめです。
ミニアルバム「far far north」(タイトル曲はヴァイキング・メタル史に残る名曲!!)に至ってはデス声を用いず歌い上げています。
こちらも傑作なのでチェックされたし。
MITHOTYN / GATHERD AROUND THE OAKEN TABLE

ENSLAVEDの突進ブラックメタル路線とEINHERJERのミッドテンポのトラッドメロディ併せ持った感じ。3rdにして日本デビュ
ー作。2ndからは録音環境がぐっと向上しより音の分離が良くなりました。ヴォーカルは強烈な吐き捨てと、普通声を使い分け
ています。
2ndと比べると男らしい野太いコーラスをガンガン加えて盛り上げていく展開が主になり、突進力は弱まりました。むしろ今の
彼らはENSLAVEDと比べるよりもドイツのメタルバンド−特にBLIND GURDIAN−と並べて批評すべきものですね (ジャケットも
いかにもブラガしてますしねぇ) 。ギターのメロディの臭さはここで挙げた作品中最高です。ひとことで言うなら"ダサかっこいい"
って感じ。
BAL-SAGOTH / BATTLE MAGIC

まったく違った方向性でドラマを追求し続けるイギリスの5人組。トラッド色は薄いがまるでなにかヒロイックストーリーの映画
のような大仰な曲調で、ヴォーカルもオーソン・ウェルズのような演劇調の語りであります。ギターのメロディという点では
MITHOTYNに軍配が上がりますが、そのかわり正式な音楽教育を受けたと思われるテクニカルなキーボードが大きな武器で
す。キーボードとギターがソロの応酬で火花を散らす様は、まるで狂ったENIDか、ブラックメタルに興味を示したROYAL HUNT
かというほど。とにかくメタルのカッコイイと思えるキメの部分ばかりを抽出したかのような豪華さが特徴。
この他にもFORLORN「THE CRYSTAL PARACE」やヴァイキングとは言い切れませんがBORKNAGAR「THE ARCHIC COURSE」など
が上質の作品といえるでしょう。また、ジャケット付で紹介したバンドのアルバムは、気に入ったら追いかけることをお勧めします。
それでは、勇壮な男の世界やそれにともなう哀愁・・・男は背中で語るんだ、と言った世界観が好きならば、存分に堪能してください(笑)
