
≪アンティゴーヌ≫
「アンティゴーヌ」創刊準備号ホーム・ページ

読者の皆様、こんにちわ。
このメイル・マガジンはジャン・アヌーイユJean
Anouilhの戯曲「アンティゴーヌ(Antigone)」を通して、別途筆者が出しているMM≪週刊フランスのWEB≫とは異なって、フランスの文化、ヨーロッパの文化の理解に寄与する企図もありますが、フランス語そのものを十二分に理解し学習することを目的としています。大学の教養部またはNHKなどのフランス語入門編を一応終えたことがあることが望ましいのですが、専門過程の大学学部/大学院レベル以上に、実際のフランス社会で通用するフランス語を視野にいれたプログラムとして作成されるものです。
フランス語特有のアクセント記号を省略するわけには行きませんので、HTML方式を採用しました。従来の学校では学べない、もっと身近だけれども深い内容をもったマガジンにしていきます。「アンティゴーヌ」は正に劇ですから、会話です。アヌーイユの劇は、そのまま日常会話として使用しても特に芝居がかった台詞まわしになっているわけではありません。格調高い現代フランス語です。正しいフランス語を勉強するためにまたとない材料なのです。
写真はアヌーイユが若い頃のものですね。77歳で亡くなられた作家ですから、晩年の写真もありますが、それは別の機会に譲ります。「アンティゴーヌ」は1944年が初演です。まだ、戦争中でした。もっともフランスはドイツに降伏してしまって、ペタン将軍が親ナチのヴィシー政権にあった頃のことです。詳しいことはおいおいお話します。大切なのはアヌーイユが、「アンティゴーヌ」(劇の主人公である王妃です)の言葉を借りて意図したことが何であったかを想像してみることです。ギリシャ神話を現代に持ち込んで何を訴えようとしかです。
翻訳は筆者のオリジナルです。既に様々な翻訳書が市販されています。しかし、フランス語のテキストはインターネットで公開されていますから、無料でダウンロードすることが出来ます。お申し出があれば全文添付メイルで送付いたします。 なおフランス原文には著作権の問題は発生しません。翻訳文及び当メイリング・マガジン「アンティゴーヌ」の著作権は筆者に属します。
次のサイトで全文が公開されています。
http://www.alyon.org/litterature/livres/XX/monades/antigone_de_jean_anouilh.html
http://www.geocities.com/CollegePark/5489/antig.htm
http://sweet.ua.pt/~fmart/index.html?antig
このMMの目的にはフランス語の学習があります。仏和・和仏の翻訳テストも実施されます。回答は義務ではありませんが、採点いたしますので、解答をメイルで送ってください。文法、訳語その他ご質問もご遠慮なくメイルしてください。できるだけ速やかに回答いたします。
さて早速、イントロのところをみてみましょう。劇はこんな台詞から始まります。
LA
NOURRICE
D'où viens-tu ?
ANTIGONE
De me promener, nourrice. C'était beau. Tout était
gris. Maintenant, tu ne peux pas savoir, tout est déjà
rose, jaune, vert. C'est devenu une carte postale. Il faut te
lever plus tôt, nourrice, si tu veux voir un monde sans
couleurs. Elle va passer.
LA NOURRICE
Je me lève quand il fait encore noir, je vais à ta
chambre, pour voir si tu ne t'es pas découverte en dormant
et je ne te trouve plus dans ton lit!
ANTIGONE
Le jardin dormait encore. Je l'ai surpris, nourrice. Je l'ai vu
sans qu'il s'en doute. C'est beau un jardin qui ne pense pas
encore aux hommes.
単語の説明
venir=動詞「来る」ですが、ここでの話者の心情では「行く」という意味になります。
nourrice=乳母、この乳母が王妃であるAntigoneに「tu」で話し掛けています。フランス語の「tu」は上下関係をあらわすこともありますが、概して話者と相手との距離をいいますから、乳母が王妃に「君、お前」でもいいわけです。ただ、日本語にはならないので、訳は敬語をもちいました。
découverte=動詞découvrirの過去分詞。性の一致で女性形になっています。「発見する」という意味の本来の姿、つまりcouvrir(覆う)に「de」がついて反対の言葉になったのですから、寝相が悪くて毛布や布団を蹴飛ばして、開(はだ)けて寝ている様子をいったものです。
文法説明 (現在 省略)
翻訳
乳母
どこにいらっしてたの?
アンティゴーヌ
散歩していたの。素敵だわ。なにもかも灰色だった。ほら、今はっていうと、わからないでしょうけど、全てがかわってしまって、ばら色、黄色、緑色。まるで絵葉書みたいになってしまった。あなた、もっと早起きしなくっちゃ。色のない世界が見たかったら。 (イタリック部分がト書きです。舞台を横切る)
乳母
わたくし、まだ暗いうちにおきて、お部屋に伺ったんですよ。寝相がお悪いから、布団をなおそうと思って。そうしたらもうベッドにいらっしゃらないんですもの!
アンティゴーヌ
お庭はまだ眠っていたわ。庭を驚かしてしまったのはわたしなのね。気づかれないように庭を見たの、素敵だわ、まだ人間のことを考えていない庭って。
鑑賞
アンティゴーヌは「庭」をまるで生き物のように語っていますね。これは西欧の常識ではないことです。ありえないことです。ここがアンティゴーヌの特別な感性の現れです。こうした文法では正しいけれども、コンピュータでは排除されるような構文がこの戯曲にはこの後も随処に出てきます。「うん、変な女だな、アンティゴーヌって」と皆さんもおもわれた以上に、フランスの観客は不思議なアンティゴーヌの言葉に引き込まれてしまうわけです。多くの観客は、アヌーイユの戯曲の前にギリシャのソフォクレスが書いた悲劇「アンティゴーヌ」を常識として知っているとしてもです。
テスト (回答は次週です)
1)次の文章を仏訳してください(友達に話すような会話を想像してください。今日のテキストからの応用です)。
学校のテストのように答えは一つではありません。自由に作文してください。
朝の散歩は素晴らしいなぁ。空気が澄んでいる。早起きは三文の得って本当だ。
2)仏文和訳をし、さらに私見を述べよ。
La Grèce antique, par l'intermédiaire
de ses poètes et de ses dramaturges, nous a transmis un
grand nombre de légendes. Enseignées dans les
écoles, reprises par les écrivains, elle ont fini
par se fondre dans le patrimoine national, et faire partie intégrante
de notre culture. Les malheurs d'Andromaque, les amours
incestueuses de Phèdre, le sacrifice d'Iphigénie,
autant d'histoires familières aux lecteurs de Racine.
Gageons que la Guerre de Troie ou la devinette que le Sphinx pose
à Aedipe sont mieux connues de beaucoup d'étudiants
que la lutte de Lancelot du Lac contre le roi Artus ou le chant
de guerre des Francs : nous sommes beaucoup plus nourris des légendes
grecques que des fables qui nous sont propres. Qu'on prenne garde
cependant que, jusqu'à nos jours, elles n'ont été
utilisées qu'à titre d'histoires, de récits,
certes fabuleux, mais sans portée spéciale, morale
ou philosophique. Racine raconte les amours contrariées
d'Hermione, de Pirrhus et d'Oreste comme il le ferait pour des
intrigues à la cour de Versailles, et, s'il entend faire
profiter sa nièce du crédit de la « vénérable
antiquité », il n'en retire ni dogme, ni leçons.
ちょっと難しいかもしれませんが、文法的に問題となるような構文ではありません。ギリシャ時代の固有名詞がたくさん出てきて戸惑われた方もいらっしゃるでしょう。 しかし、この文章の中にもありますが、ヨーロッパ人にとっては、かっての日本人にとっての中国の故事のように、ギリシャは親しいものであり、かつ常識でもあります。たったこれだけの短い文章ですが、調査しなければならない事項がたくさんあるはずです。がんばってやってみてください。
Nota: このメイルは一週に一度の配布です。翌週に一般的な解説をおこない、質問者にはレベルに合わせて詳細を述べます。興味さえあれば、楽しい授業になります。なにしろアンティゴーヌは魅力あふれた女性です。またこの一冊を終えることで、フランス語の文章の読解力だけでなく、会話でも相当の自信を持つことが出来るようになります。
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