【Wizぽん】Ro萌えスレ in LiveRo【騎士子たん】 の分岐C (分岐Bの途中より分岐)
ある日の事。Wizぽんと騎士子たんは野宿をすることに。 寒空の下二人そろって横になっていると、騎士子たんに鳥肌が。 Wizぽんはマントを脱いでそっと騎士子たんにかけてあげるのでした。 そして夜が明けると、騎士子たんはWizぽんのマントがかかってる事に気づきます。 まだ寝てるWizぽんに優しくお礼のキスをする騎士子たん。
別のある日、騎士子たんは自分の感情の事をプリさん(淫徒)に相談しました。 プリさんは淫徒型なので、自分の持っているスキルの一部を騎士子たんに教えてあげました。 その晩の宿で、一緒に御飯を食べて、お風呂に入って、寝る準備も出来た頃… 騎士子たんはこっそり、となりのWizぽんのベッドに移って待っていました。 その身にはバスタオル一枚。騎士子たん、一世一代の大仕事です。 息を潜めて、高鳴る鼓動を抑えながら散歩に行ったWizぽんを待つ騎士子たん… そのころ、Wizぽんは町の中で枝テロにあい、その晩の内は帰ってきませんでしたとさ。
そして騎士子たんは一人寂しくベットの上でまっていると 突然、淫乱プリが部屋にはいってきました そして獣のように騎士子たんに襲い掛かってきました そして、あんなことやこんなことをされてぐったりする騎士子たん… その頃Wizぽんは闇ポタに会いミニョル山脈の花の中。
枝テロにあい、闇ポタで飛ばされ、散々な目にあったWizぽん。 数日かけて宿に戻るとそこには泣き目の騎士子たんが。 Wizぽん「ただいま・・・」 騎士子たん「どこいってたの・・・?」 Wizぽん「ごめんね・・・僕運がなくて・・・」 騎士子たん「怪我してる・・・手当てしようね」 Wizぽんの怪我を丁寧に手当てする騎士子たん。 しかし騎士子たんにはやはり元気がありません。 元気の無さに心配するWizぽん。
いつも凛として元気溌剌な騎士子たんが妙に元気がない事が心配になったWizぽん。 気を利かせるなんて器用なことが出来ないWizぽんは騎士子たんにストレートに訊ねます。 「元気がないみたいだけどどうしたの?」 すると騎士子たんは突然涙を流しだし 「・・・ごめんなさい」 「わたし、汚れちゃった・・・」 といってWizぽんをおいて走り去ってしまったのでした。 何がなんだかさっぱりわからないWizぽん。 その様子を物陰から見ていた淫徒プリの横顔には 笑みがこぼれていました。
淫徒プリは暗い微笑をたたえながら、Wizぽんに囁きます。 「どうしたの?追いかけなきゃ」 Wizぽんはもう何がなんだかヨク分かりません。 「追いかけても、ボク、どうすればいいの?」 蛇が獲物を絡め取るように、 新聞の勧誘員が新しく下宿生活を始めた学生を決してあきらめない様に、 蜘蛛まで捕まえてしまうゴキブリホイホイのように、 淫徒プリはWizぽんの肩を抱きます。 「こうするんだよ・・・・」 「えっ、な、なにを・・・!?ふあぁっ・・・くっ・・・」 Wizぽんは2・3度細かく震えると、急に力を失い、淫徒プリに身を任せてしまいました。
その後Wizぽんはふと目を覚ましました。 Wizぽん「あれは夢だったのかな・・・」 しかし、塗れた下半身を見ると夢ではなさそうです。 騎士子たんが居なくなって早数日。 Wizぽんは毎日早朝から日が暮れるまで探し回りますが、手がかりすらつかめません。 困った時も悲しい時も、何時も支えになってくれた騎士子たん。 騎士子たんの笑顔を思い出すと、一層寂しくなるWizぽん。 ついに騎士子たん失踪から約1週間がたちました。 狩りに行かないと宿屋に泊まるお金も尽きてしまいます。 Wizぽんは仕方なく一人で狩りをしにいく事に・・・。 この日、Wizぽんはベッドの枕を涙で濡らしました。 Wizぽん「戻ってきて・・・」 Wizぽん「寂しいよぉ・・・」
Wizぽんが淫徒プリに弄ばれている頃、騎士子たんはふらふらと町の外に歩いて行きました… 気が付けばそこは砂漠の真ん中、強い日差しで喉もカラカラです。 「…それでも、帰る事なんて出来ないよ…」 周りは全て砂の海でしたが、どうやら日陰になっている穴らしき場所が見えました。 熱い直射日光を避ける為、騎士子たんはふらふらとその穴の中に吸い込まれていきました… その時、騎士子たんはすっかり忘れていました。 騎士団で近づいてはいけない場所にその穴が指定されていた事に… 通称「蟻の穴」 数多くの騎士がこの付近で行方不明になっている。 騎士団はこの事態に対し、緊急処置として該当エリアへの立ち入りを禁じている。
その頃Wizぽんは郷愁にかられ、昔の思い出の場所めぐりを。 プロンテラではノービス時代の、 あの頃から優しかった騎士子たんを思い出して泣いてしまったり マンドラゴラの森では自分をいつも守ってくれた、 今はいないアサシン先輩のことを懐かしく思い出したりしていました。 そして、色々旅をしているうちについに蟻の穴にたどりついてしまったのです。 そこでWizぽんは、心を失いたださまよい歩く騎士子たんを見つけてしまったのです…
反応のない騎士子たんを背負い、手近なアサシンギルドへと必死に運ぶWizぽん。 サンドマンをなんとかあしらいつつ、アサシンギルドに到着。 ひんやりとした床に自分のマントをしき、そこに騎士子たんをそっと寝かせる。 大好きな騎士子たんの変わり果てた姿にWizぽんの目には自然と涙が… Wizぽん「ねえ…」 Wizぽん「どうしてこんなことになっちゃったんだろう」 Wizぽん「僕達、何か悪いことしちゃったのかな?」 Wizぽん「ねぇ、答えてよぅ…」 Wizぽんの声は静けさに飲み込まれ、 ただ、響くのはWizぽんのすすり泣く声と騎士子たんの静かな呼吸だけだった。
泣きつかれて騎士子たんに抱きついたまま寝てしまったWizぽんだが 騎士子たんの動きで眠りの底から現実に引き戻された。 何がしたいのかよくわからないWizぽんだったが しゃがみこんだ時点でやっと気づき、赤面して背を向ける。 事が終わると騎士子たんはふらふらとどこかに歩き出そうとしたため Wizぽんは慌てて騎士子たんに抱きついて押し倒す。 そのときにやっと騎士子たんのひどい匂いにWizぽんは気がつくのであった。 Wizぽん「女の子だし、体洗ったほうがいいのかな…」 Wizぽん「ほっとくのは健康にもよくないよね…」 そう言ってWizぽんは騎士子たんを連れて泉へと歩いていくのであった…
泉についたWizぽんと騎士子たん。 Wizぽん「ごめんね」 Wizぽんは謝りながら騎士子たんの装備を一つずつ脱がしていく。 それにただ従う騎士子たん。 顔が赤くなるのを自覚しつつWizぽんは理性を総動員させて自制をする。 そして騎士子たんのしっかりと鍛えられた体についている、 昆虫の皮や体液、そして汗を丁寧に水で落としていく。 最初こそ冷たい水に驚いたものの、 騎士子たんはWizぽんのされるがままに体を動かす。 全身を洗った後乾いた布で体を拭き、服をきせてあげると 安心したのか再び眠りに落ちていく騎士子たん。 一方Wizぽんはアサシン先輩に連絡を取ることを考えていた…
その日からアサシンギルドの奥に住み着いて暮らすようになった二人。 騎士子たんは放っておくと勝手に移動してしまうため目を離すことができないWizぽん。 騎士子たんと手を繋いで離さないようにしながら ギルド前のサンドマンよりエルニュム原石や石炭を手に入れ、 それを売って食事を調達する生活。 夜にはお互いの禊をし、騎士子たんがいなくならないように抱きついて寝るように。 時々騎士子たんがいなくなった夢を見て真夜中に目を覚まし、 傍に騎士子たんがいる事を確認して冷や汗を拭うこともあった。 だけど、Wizぽんには希望があった。 少しずつだけど騎士子たんが自分を認識しはじめているみたいだからだ。 会話はできないもののこちらからの呼びかけには反応するようになってきたし、 食事の際には柔らかなやさしい笑顔を見せてくれるようになった。 何よりも戦闘で自分をかばってくれるようになったからだ。 それが無意識の反応だったとしてもWizぽんにとってはすがる事のできる希望だった。
アサシンギルドに住み着いてから12日目… Wizぽん「騎士子たん、そろそろご飯にする?」 僕の言葉に騎士子たんはこくっと頷く。 Wizぽん「今日はデザートウルフの肉とサラダの盛り合わせなんだよ」 たとえ返事がなくても会話を続ける。 いつ返事が返ってきてもいいように。 **「よ、元気か?」 いきなりだった。 後ろに振り向くとそこには黒づくめの、懐かしい先輩がいた。 騎士子たんはぽけーっとしたまま自分と先輩を見ていた。 先輩の姿を見て、僕はもう耐えられなかった。 Wizぽん「先輩…先輩、せんぱい〜〜〜」 アサシン「おいおい、いきなり泣く奴がいるかよ。しっかりしろよ」 一人で抱え込むには辛かった。 先輩はいつものように優しく、強く、僕を受け止めてくれた…
アサシン「まったく、お前はいつまで経っても泣き虫のままなんだな」 Wizぽん「だって、だって…」 アサシン「アサシンギルドに住み着いた変な二人組がいるって          アサシンの中で噂になってるぜ?」 Wizぽん「だって、先輩に会う方法なんてさっぱり分からないんだもん」 アサシン「あー、そりゃ悪かったなぁ」 鼻の頭を軽くかく、昔からの先輩の癖。 アサシン「だけど俺の耳に入らなかったら大変な事になってたかもしれないぜ?」 今思うと確かに危ない橋を渡っていたのかもしれない。 アサシン「で、彼女どうしたんだ?」 僕は騎士子たんがいなくなったこと、蟻の穴で見つけたこと、 アサシンギルドで二人で暮らしていたことを順番に先輩に話し、 騎士子たんを元に戻したいことを伝えた…
「なるほどなぁ」 「僕は、どうすればいいんですか…」 「うーん、俺にはどうすることもできないな」 「そんなぁ…」 一番頼りにしていたアサシン先輩にそう言われて、 Wizぽんはうなだれてしまいました。一番頼りにしている人がダメでは、 どうしたらいいのかWizぽんにはなおわかりません。 考えがぐちゃぐちゃになって、Wizぽんはまた泣き出してしまいました。 「泣くなって。俺はダメでも、その子にもっと近い人なら なんとかなるかもしれないだろ?」 「もっと近い人?」 元々騎士子たんをWizぽんに紹介したのはアサシン先輩。 そういえば騎士子たんの知合いや生い立ちをWizぽんは何も知りません。 誰なんですか、と藁にもすがる気持ちでまくしたてて来るWizぽんを 制しながらアサシン先輩は一枚の古い写真をWizぽんに見せました。 「この人だよ」 写真に写っているのはアサシン先輩と天使のヘアバンドを着けた騎士子たん。 知らないプリーストさんやハンターさんにブラックスミスさんもいます。 写真の中の7、8人は皆笑顔で、とても仲が良いのが見て取れます 「あれ?でも…」 Wizぽんが違和感を感じるのも無理はありません。 アサシン先輩がアサシンではないのです。 今よりずっと頼りない雰囲気の、ノービスの先輩がそこにはいました。 それに、騎士子たんは天使のヘアバンドなんてすごい物を持っていません。 「これはな、俺たちが出会ったばかりの頃の写真なんだよ」 先輩は照れながら、遠い目をして教えてくれました。 そこに写っているのは騎士子たんのお姉さん。 まだ右も左もわからないノービスだった頃のアサシン先輩に 色々と教えてくれたのは騎士子たんのお姉さんだったのです。 「その人はさ、強くて、優しくて…猛烈に憧れたんだ。 少しでもあの人に近づきたくて、役に立ちたくて、毎日狩りに明け暮れた」 懐かしく、少し寂しそうに写真の中の騎士子たんのお姉さんを眺める先輩。 Wizぽんは、きっと自分が騎士子たんに抱く想いと同じ気持ちを、 アサシン先輩は騎士子たんのお姉さんに持っているんだ、と思いました。
「おっとつまんねえ話しちまったな」 「いえ」 照れてるのを隠してアサシン先輩は話を戻します。 「今、その人はフェイヨンにいるらしい」 「らしい、なんですか?」 「もう悠々自適の隠居生活らしいからな」 フェイヨン。広大な森と険しい山の中にあるという、弓手達の村。 そこまで行くのは並大抵の苦労ではありません。 ましてや、心を失ってしまった騎士子たんを連れてなど。 「どうする?フェイヨンまで行くのは大変だぜ?行くのか?」 先輩もWizぽんを気遣い、そう聞きますが… 「行きます」 ほんの少しだけ悩んで、Wizぽんは答えました。 「ぼくが行かなきゃ」 「昔みたいに、また笑ってほしいから」 騎士子たんを抱き寄せて、ぼくが泣いてたらいけないんだなと、 Wizぽんは気が付いたのです。 「そうか」 「まあ…こっちでも少し調べてみるよ。淫徒プリの事とかな」 そう言ってアサシン先輩は戻って行きました。 Wizぽんは本当はアサシン先輩にもついて来て欲しかったのですが、 自分一人で行く事に意味があるともわかっていたので言いませんでした。 翌朝、Wizぽんはアサシンギルドの建物の外にいた人達から いくらかの物資を売ってもらい、旅の支度を整えました。 そして、笑顔が戻らないままの騎士子たんの手を引いて 陽射しが容赦なく照りつける砂漠へ歩き出したのです。
旅路は辛いものでした。 砂漠では方向を見失い、幾度も同じ所へ出たりしながら進みます。 石の巨人が闊歩する地域を抜け、ポリンたちの住処を通り、大森林へ。 森の中では何日も迷って、青いてんとう虫に追いかけられたりもしました。 強敵こそいなかったものの、道が判らない不安はWizぽんの精神を、 そしてそれにつながる肉体も激しく疲労させて行ったのです。 さらに数日。用意していた食料は尽き、ボロボロになりながらも フェイヨンの近くである証拠の竹林にたどりつきました。 「はぁ…もうすぐ着きそうだよ…」 手を引く騎士子たんもずいぶん薄汚れてしまいました。 もうすぐだからね、と騎士子たんをねぎらい竹林を歩きまわります。 すると、後ろの方から重い足音が響いてきました。 どうやら一匹ではないようですが、様子がおかしいです。 「あれ?熊?でも熊は襲っては来ないよね…うわわっ!」 こっちに気付いた熊たちが一斉にWizぽんたちに向かってきます。 よく見るとその中心には虎が。そう、竹林の主エドガー御一行だったのです! Wizぽんは気力をふりしぼり熊たちと戦います。 しかし、長旅で疲れたWizぽんにはとても歯が立ちません。 力尽きて地にひざを付いてしまうWizぽん。熊や虎たちの鋭い爪が迫ります。 「せっかく来たのにもう、だめなのかな」 そう思って目をつぶった時、熊たちをなぎ倒して虎を圧倒する影が! ペコペコに跨り、頭の白い羽飾りと騎士子たんにそっくりな出立は紛れもなく Wizぽんが捜し求めていた騎士子たんのお姉さんでした。 世に名は知られていなくとも、さすがは歴戦の勇士。 軽々と熊の集団を片付けあっという間に虎を倒してしまいました。 「大丈夫だった…ありゃ?」 一息ついてお姉さんが振り向くと騎士子たんとWizぽんがぐったりしています。 そしてその騎士が自分の妹だという事に気付き、Wizぽんと交互に見比べると、 「んー、とりあえずぅ、街まで行こっか?」 わけありだと気付いたお姉さんは2人を街まで連れて行きました。
お姉さんの部屋に着くと、騎士子たんはお姉さんに抱き付いて泣き続けました。 ひとしきり泣いて騎士子たんは泣き疲れて眠ってしまいます。 安心したのか、いつもより眠りが深いようです。 お姉さんは騎士子たんをベッドに寝かしつけ扉には厳重に鍵をかけて、 Wizぽんを宿まで連れて行くと話を聞き始めました。 闇ポタに遭いやっと戻ったら騎士子たんの様子がおかしくなっていた事。 思い切って何があったのか聞いてみたら突然走り去ってしまった事、 そして「汚れちゃった」と言ったあの言葉。 どうしたらいいのか判らなくなってしまった時、淫徒プリに されてしまった事も少し恥ずかしかったけれど包み隠さず話しました。 お姉さんは一連の話が終わっても少しの間黙っていましたが、 「なるほどねー」 「わたしの私見だとそのプリが一枚かんでると思うんだけどー」 「まあー今は妹もそうだけど、深く考えずにキミも休みなさいな」 あっけらかんと言いました。 騎士子たんが大変な事になってるのに、休んでなんかいられない、と Wizぽんは食い下がります。そんなWizぽんにお姉さんは、 「起こっちゃった事は仕方がないの。時間は戻らないんだから」 「そう急いちゃダメだよ。ゆっくり回復を待たないとね…」 と、こう説きました。 「それに妹が無くしたのはさ、キミにあげたかった一番大切なものだよ?」 「一番大切なもの…?」 何のことやらさっぱり解らないという表情をしているWizぽんに お姉さんはクスリと笑いかけると、 「それが判らないようじゃあ、わたしの事をお姉さんって 呼ぶのはまだまだ早いなあ」 と、何か含んだ笑みを浮かべながらWizぽんを残し、宿を後にしました。 Wizぽんはますますわからなくなってしまいましたが、 お姉さんの言う通りゆっくり騎士子たんの回復を待とうと、 そう決めて寝ることにしたのです。 ちょうどその頃、プロンテラにいた淫徒プリと淫乱プリの2人の元に Wizぽんと騎士子たんがフェイヨンにいるとの情報が入ったことは、 まだWizぽんの知らない所でありました。
うなされて寝苦しかった夜が終わり、Wizぽんは目を覚ましました。 見慣れない壁や床に調度品の数々。 穏やかな陽光がまぶしく目を貫き、意識のピントがようやく合わさります。 夢かと思ったけれど、まぎれも無くここはフェイヨンでした。 ふらつく頭を押さえて外に出ると人影はまばらで、早朝から街の北側にある洞窟に 向かう人たちと彼らに薬などを売る露店がちらほらと見かけられました。 朝霧は深く空気を濡らし、止まった大気の中を鳥たちのさえずりが時折飛び交う、 限りなく静かな朝。 足元の草々もまだ眠っているかのように朝露をたたえています。 それを見てようやく、今日は平穏な朝だとWizぽんは理解しました。 「もう一眠りしても平気だよね」
二度寝したWizぽんはお昼過ぎになってから目を覚ましました。 街からは朝の静けさは去り、冒険者達が行き交い露店が立ち並んでいます。 それでもプロンテラほどの混雑や騒がしさは無く、 時間がゆっくりと流れているように感じられました。 「どうしているかな?」 Wizぽんは騎士子たんを探してフェイヨンの街を歩き回ります。 ほどなくして街の南東の方にある小さな物見やぐらで一人たたずんている 騎士子たんを見つけました。 「ここにいたんだね」 「フェイヨンにはね、魔法士になるときに一度だけ来た事があるんだよ、ぼく」 「静かだし、空気もきれいだし、そこの川の水はそのまま飲めるんだってさ」 「街の北の洞窟、二人で行ってみたいね」 どこまでも広がる森々を眺めていた騎士子たんの隣に座り、 Wizぽんは色々と他愛ない事を騎士子たんに話し掛けてみます。 相変わらず騎士子たんはしゃべってはくれませんが、少しだけ表情を変えて Wizぽんの話に反応してくれるのが嬉しくて、たくさんの事を騎士子たんに 語りかけていました。 「それでね、それでね、あ…」 しばらくWizぽんが夢中でしゃべっていると、騎士子たんはそっと目を閉じて そのままWizぽんに寄りかかって眠ってしまいました。 「ああ…ごめんね、疲れちゃったよね」 「でも、また絶対、前みたいにお話できるよね」 安らかな寝息を立てる騎士子たんを横たえて、 「ぼくも寝ちゃおう…」 そっと騎士子たんの手を握り、騎士子たんの隣で横になると 木々のざわめきを子守唄に、まどろみの底へ落ちて行きました。 「どこ行ったのかしら…」 二人の姿を見かけず、心配したお姉さんが二人を見つけた時には 爽々としたそよ風の下でぐっすり眠ってしまっており、 あきれて苦笑いを思わずこぼしたものです。 次の日から、Wizぽんは騎士子たんを連れて色々な場所へ行くようになりました。 フェイヨン周辺の森を散策したり、ずっと昔からフェイヨンで赤ポを売り続ける ちょっと有名な商人さんと話をしたり。 お姉さんに連れられて3人でアルベルタの蚤の市へ買い物にも行きました。 Wizぽんやお姉さんが懸命に騎士子たんのために動いた甲斐あってか、 騎士子たんも次第に明るい表情を取り戻して行ったのです。
Wizぽんたちがつかの間の平穏に身をゆだねている頃、 アサシン先輩はとうとう淫徒プリの事をつきとめて モロクからプロンテラに向かって砂漠を越えていました。 その途中、プロンテラ南口ももうすぐ見えようかという辺りで 風のように走り去って行く男のプリーストを見かけましたが、 先輩の目的である淫徒プリではなかったので、特に気には止めませんでした。 プロンテラに着くと、淫徒プリがいるという場所へ直行したアサシン先輩。 幸い、淫徒プリも戻ってきているようです。 「そこのプリさん、ちょっといいか?アンタに用事がある」 「あら…ナンパならお断りですけど?」 アサシン先輩は人気の無い建物の裏手へ淫徒プリを連れて行きました。 「こんな所で襲い掛かるつもりかしら?」 「悪いが真面目な話なんだ」 先輩はWizぽんと騎士子たんの写った写真を取り出し、 「すでに裏は取ってあるんだ、知らないとは言わせない」 これだけ言うと淫徒プリを威嚇するかのように睨みを効かせました。 「…判ったわ、話してあげる」 少々の沈黙のあと淫徒プリは渋々、枝テロがあった日の夜の事を話しました。 「そう。心に隙ができたその子に近づいて食べちゃっただけの事よ。 だって、かわいいじゃない?そのウィザードの子」 悪びれもせずに言い放つ淫徒プリに憤りを感じながら、先輩は問いただしました。 「だが、それだけでこっちの騎士の子がしゃべる事もできなくなる程傷つきはしまい。 まだ何か隠しているだろう?なんならあの宿の主人を呼んで来てもいいんだぜ」
アサシン先輩が凄むと、淫徒プリもようやく観念したようです。 「判った、判ったわよ。わたしもよく知らないんだけど、そっちの騎士の子をどうにか したのはわたしじゃなくて別のプリよ。男ね。素性はよく知らないわ。これは本当」 「その、ウィザードの子がちょっと気になっててね、通りで見かけて眺めてたのよ。 そしたらあいつが声かけて来て。欲しくないかって」 「騎士の子と仲いいじゃない?初々しくてさ。それで…なんかちょっと魔が差して、 邪魔したくなっただけよ。全部奪おうなんて思ってないわよ」 なんて奴だ、とさらに怒りを感じながらも今怒りをぶつけるべき相手は この淫徒プリではない事を悟り、先輩は溜飲を下げました。 「で…そのもう一人のプリはどこにいるんだ」 「知らないわよ、さっきどこかへ行ってしまったわ。フェイヨンじゃない? その二人がいるって話、わたしも聞いてるし」 はたと気付くアサシン先輩。 プロンテラ南の砂漠を大森林方面へ向かって行ったあの男プリ。 限りなく悪い想像が限りなく真実に近い事に気付いてしまったのです。 「…わかった、話はそれだけだ、じゃあな!」 「えっ、ちょっとぉ!」 話もそこそこに先輩は大急ぎで砂漠方面へ走り出しました。 淫徒プリをほっぽり出して、そう、Wizぽんたちのいるフェイヨンに向かって。 「もう、何よ!ちょっと凛々しいから今晩どうかなって思ったのに…」
(場面は変わって) モロクの果てしなく続く砂漠を超え、 プロンテラ郊外の青い草原を横切り、 淫徒プリ(♂:推定25歳)はフェイヨンの深い森へと足を踏み入れた。 ―俺としたことが… 淫徒プリ(しつこいけど♂バージョン)は、自分の術の未熟さを呪った。 ―ひよっこWizにアレを盗られる訳にはいかないっ・・・! ちょっとした遊びで手を出した騎士子のあのまぶしすぎるフトモモを思い出しながら、 淫徒プリは「やさおとこ」とあだ名される白い顔を引きつらせた。 一度の遊びではもったいないと思い、かけておいた催眠術がこうもやすやすと破られるとは。 ―あのWizぽんとやら、間抜け面の割にはなかなかやるのかも知れん。 珍速詠唱の「速度増加」を自分にかけながら、淫徒プリは心に誓った。 今度こそ俺の全DEXを駆使して騎士子を俺のものにする、と。
今度こそ俺の全DEXを駆使して騎士子を俺のものにする だが、術が破られてしまい、 今はひよっこも騎士子の側に居る。 今度は少しばかり厄介だな・・・ 黙々と歩きながら一人考え込む淫徒プリを、 物陰から獲物を狙う獣の様に じーっと見つめる一人の男が居た。 手に弓を携え、その肩には その男と同じ位眼光の鋭い鷹が一匹止まって同じように淫徒プリを見つめていた。 彼はプロンテラ郊外の草原で淫徒プリを見かけて以来、 ずっと後をつけていたのだった。 その動きはしなやかで、完全に草木と一体となり、 例えオセシンであっても気付くのは容易ではなかった。 「なかなかの詠唱速度だな」 その男はにやりと口元に笑みを浮かベるとそうつぶやいた。 あのプリなら魔力を切らしたり支援にもたつくことも無いだろう -支援のもたつき- 昔のイヤな記憶を思い出し、彼は少しいらついたが、 今目の前にいる獲物を想像してまた口元に笑みを浮かべた。 ―俺はスピードスター。並のプリでは俺についてこれない だが、奴なら俺に付いてこれるだろう・・・・・・・・・―
淫徒プリは森の中を歩き続けた じめじめとした気候に周りを徘徊する獣や毒虫の気配。 だが、それらも淫徒プリの欲望を妨げることは出来なかった。 ―騎士子のあのまぶしすぎるフトモモ!! やがて熱帯特有のじめじめした空気がさわやかになり、 周囲の植物も樹木から竹林へと変化し始めた 「ようやく抜けたようだな」 淫徒プリはほっとため息をついて少し休むことにした。 やがて、長旅の疲れもあり 淫徒プリはうとうととし始めた しばらく眠っていたが、ふと尋常ではない気配に気がついて目を覚ました 何かが自分を見ている・・・。そんな気配を感じ取ったのだ ―警戒心を解きすぎたな― そんな後悔が頭をよぎった。 どうやらこっちを見ているのは一人ではないようだ 指の1本でも動かそうとすれば即座に襲われる。第六勘がそう告げていた。 ―ブレスも切れているのか― 冷静に現状を分析しつつ、いまさらながら 自分がまったく無防備であることに腹立たしかった。 ―あの茂みの向こうに何かが居る―
「そのまま動くな」 唐突に淫徒プリの背後から声がした。 突然のことに淫徒プリは驚いたが、 不思議なことに不安な感じではなかった。 「そのまま振り帰らずに、ゆっくりと後ろへ下がれ」 「いいか、おちついてゆっくりとだ。」 命令されるがままに動く淫徒プリ。 その声には冷静で有無を言わせぬ自信と力があった ゆっくりと後ずさりする淫徒プリ 異様な緊張で空間は支配されていた ふっと淫徒プリの脳裏に騎士子のフトモモがうかんだ ―そうだ、ここで死ぬわけにはいかないな― 冷や汗をかきながらニヤリと笑う淫徒プリ。 と、竹林の茂みから視線の主が姿を表した 巨大な虎と数匹の熊である。 「危なかったな。あれは竹林の主エドガ―だ」 ふと横を見ると、先刻の声の主が立っていた 三角形の物体を背中と両腕につけ、 半ズボンから露出している両足は引き締まっている そして何より、精悍な顔と、鷹のように鋭い目つきが印象的だった。 その頭上には大きな鷹が一羽舞っている。 その嘴と爪はまるでナイフの様に鋭かった
「あんた運がいいな。奴は手負いの様だ」 「手負いの獣程手におえないものは無いんだぞ?」 血とよだれを滴らせながら咆哮する巨大な虎の牙をみて、淫徒プリはぞっとした 「まあ、後は任せておけ」 とはんたぽんが淫徒プリの方を向いた瞬間に襲いかかるエドガ―達の群れ! しかし、数歩も歩かないうちに巨大な火柱と共に 地面が轟音を上げて吹き飛んだ。 「ブリッツビート!!」 はんたぽんが命令すると獣の群れに襲いかかるファルコン そしてそのすばやく滑らかな動きで、矢を次々とエドガ―に浴びせていった。 やがて、断末魔と共に人食い虎は倒れた その屍の上に腰掛けると、はんたぽんは淫徒プリに言った 「俺があんたの命を助けてやったようなもんだな」 「俺はとある事情で強い仲間を集めてるんだ」 「どうだ?俺と組まないか??」 とっさの出来事であっけに取られている淫徒プリであったが この一方的な申し出には、助けられているとはいえさすがに腹が立った ―ハンターって奴は人里離れた所で一人狩りばかりしていると聞く。   礼儀知らずなのも無理はないか― 体よく断ろうとした淫徒プリだが、ふとある計略を思いついた。 ―こいつは上手く使えば利用できる― 淫徒プリは哀れみを誘う様に、涙ぐんだ目ではんたぽんに話しかけた 「実は・・・」
(場面は変わりフェイヨンのおうち) 「なーにみてるのぉ?」 椅子の背後から、騎士子姉に手を回されて あたふたと手にしていたアルバムを落っことすWIZぽん。 奥の部屋では騎士子たんがすやすやと寝息を立てていた。 「ご、ごめんなさい。そこにあったアルバムを・・・・」 ふと、お姉さんと騎士子たんの髪の香りが同じ事に気付き なぜかどぎまぎするWIZぽん。 「勝手に人のものを見るのは良くないぞ」 「すいません・・・」 しゅんとするWIZぽんを見て お姉さんは腰に手を当てながらふぅっと溜め息をつき、 アルバムを拾い上げた。すると、一枚の写真がアルバムからはらりと落ちた。 「あ!」 その写真を見たWIZぽんは思わず声を上げた 前にアサシン先輩から見せてもらった写真と同じだったからである 「あ、昔の写真だ。歳はとりたくないねぇ」 ちょっと照れくさそうに写真を拾い上げるお姉さん。 「これがどうかしたの?」 「いえ、前にアサシン先輩から同じ物を見せてもらったんです」 WIZぽんはもう一度その写真を眺めて見た。
「アサ君かぁ。なつかしいなぁ」 お姉さんの先輩を思い出す時の表情を見て 嬉しいけれどもちょっと寂しい気もするWIZぽん。 写真の中のメンバーもみんな笑顔で微笑んでます 「この頃が一番楽しかったなぁ」 懐かしむ様にお姉さんが話しました 「みんなで上水道に怪物退治に行ったり、誰も戻らないという プロンテラ北の森に冒険しにいったりね」 「今よりも世界を広く感じてて、一つ一つの事にどきどきしてたんだよ」 ちょっと寂しそうになったお姉さんを見て、しんみりしてしまうWIZぽん 「ここに写っている皆さんは、今どうしているんでしょうか?」 ふと沸いた疑問にお姉さんに直に質問してみる直球小僧のWIZぽん お姉さんはその質問にふっと目をそらしこう答えた。 「色々あってね・・・今はみんなバラバラなんだ」 ちょっと重苦しくなった空気を察したお姉さんは 「あ、他の写真も見てみる?」 とWIZぽんにいった 「はい。ぜひ!」 お姉さんはアルバムをめくりながら、WIZぽんに昔の話をしていった
「これはみんなで沈没船に行った時の写真」 「これはアサ君の転職の時の写真」 色々なエピソードを交えた昔話は WIZぽんにとっても新鮮でかつ面白いものだった 「いつか僕も騎士子たんと一緒に世界を回りたいよ」 いつしか話を聞きながらWIZぽんは いつか騎士子たんとまた冒険する日のことを想像していた 昔の写真には、お姉さんとアサシン先輩、 そしていつも笑っているプリさんの3人が良く写っていた ―お姉さんは先輩と付き合っていたんですか?― とは、さすがに聞くのを思いとどまったWIZぽんだが、 替わりにプリさんのことを尋ねててみた。 「んーそうだね。私達は特に仲が良くって良く遊んでいたんだ」 お姉さんが答えました。 「今このプリさんはどこにすんでいるんですか?」 何の気なしにWIZぽんが聞くと、お姉さんは悲しげに 「もういないんだ」とだけ言って騎士子たんの部屋の方を見ました 「さあ、もう夜遅い。良い子は寝る時間だぞ」 最後にWIZぽんがもう一度アルバムに目をやると、 そこにはあのアサシン先輩から見せてもらった写真がありました ふと、WIZぽんはその写真が先輩の物と違うことに気がつきました 写真の中では7〜8人の人が仲良く笑っています。 のびすのアサシン先輩にお姉さん、仲の良かったというプリさんにBSの人。 同じに見えるがどこかが違う。どこが違うのだろうか? しかし、その疑問の答えを出す前に お姉さんがランプの火を消してしまい、 みんなの笑顔の写真は闇の中へと溶けて行きました。 「さあ、寝ようよ」 やがて静寂が小屋の中を満たしていきました。
「・・・・ほら、おきなよー」 誰かの呼ぶ声が、遠くからWIZぽんに聞えてきました。 ―この声はだれだろう?騎士子たん?― ふっと目を覚ますと、目の前にはお姉さんが立っていました お姉さんは、ちょっといたずらっぽく笑うと、 「おはよう、凄い髪型ね」とWIZぽんに言いました。 「おはようございます」 昨夜、夜遅くまでお姉さんと話していたWIZぽんはそう挨拶すると 窓から射し込むまぶしい光に目を細めて、騎士子たんのほうに目をやりました パジャマ姿でベットの上に座り、窓から外を眺めている騎士子たん 時折、風が騎士子たんの髪をかきあげると わずかに目を細め気持ち良さそうにしています。 ―このままずっとこうしていたいな― WIZぽんは自分の寝癖でくしゃくしゃの髪の毛に手をやりながら ぽーっと騎士子たんのほうを見ていました
「今日は私出かけるから、妹のことよろしくねー」 キッチンから話しかけるお姉さんの声で WIZぽんははっと我に返りました「あ・・あ、はい」 顔を洗い、くしゃくしゃの髪の毛を整えると WIZぽんは騎士子たんをつれて食卓に行きました。 騎士子たんの肩と腕は前と比べてとても細く感じ、 その感触にWIZぽんは胸を痛めました ―早く元気になってね。それまで僕が守ってあげるよ― やがてお姉さんが出かけてほどなく、今まで良かった天気が嘘の様に 雨に変わりました。 「今日はお散歩に行けないね」 残念そうに騎士子たんに話しかけるWIZぽん 騎士子たんも残念そうにうなずき、窓の外を見ました。
(一方その頃・・・) フェイヨンへの道を急ぐ途中に休憩していたアサシン先輩は、 降り出した雨に舌打ちをしました。 「これじゃあ、ますますつくのが遅くなるな」 ―先刻から何かいやな胸騒ぎがする― 途中、商人から売ってもらった頭に被った傘から滴り落ちる水滴が、 ひっきりなしに足元に落ちています ―さあ、先を急ぐか― と、歩き出しだアサシン先輩を遥か後から呼びとめるものがいました 「・・・・おー・・い・・・お待ちったら!おーい!!」 「なんだお前か。何か用か?」とアサシン先輩は言いました。 そこには、全力疾走をして、ぜいぜいと息を切らしている あのプロンテラの淫乱プリがいました。 「なんか用って、ずいぶんと冷たい事をいうのね」 淫乱プリは少し恨めしそうにアサシン先輩を見上げました 「私だって一応は神に仕える身ですからね」 と、むくれながら言うと 「困ってる人は助けたいと思っているのよ」と言いました。 ―誰のせいでこんなことになっていると思っているんだ!― とちょっと腹が立った先輩でしたが、 淫乱プリの姿を見ると、服は濡れ、足元はどろどろになり 化粧崩れをして情けない格好になっていました。 その姿をみて、文句を言うのを思いとどまった先輩は 自分の腰に手をやり、ふぅっと溜め息をつくと、 自分の傘を脱ぎ、淫乱プリにかぶせてやりました 「ついてくるのは勝手だが、足手まといにはなるなよ!」 「あいよっ!まかしといてさ!」 ―あと、あんたがちょっとカッコ良かったからね― 淫乱プリは傘の紐を結ぶと、先輩に速度増加をかけました 「そうだ、それと顔の化粧もなおしておけよ!」 「え?あ、ちょっと置いていかないでってば!」
(それからしばらく経過・・・) ふいに、入り口のドアを叩く音がしてWIZぽんは目を覚ましました。 ―お姉さんが帰ってきたのかなぁ?― しかし、それっきり音のする気配はありません。 今家のなかにいるのは騎士子たんとWIZぽんだけ 騎士子たんはWIZぽんの話しを聞き疲れて、ベットの中で眠っています。 WIZぽんは騎士子たんの寝ている部屋のドアを閉めると 手にアークワンドを握り締め、注意深く入り口の扉に近づきました。 「どなたですかー?」 「お姉さん、戻ってきたんですか??」 しかし、返事はありません。WIZぽんは思いきってドアを開けてみました ―誰も居ないや― 前の道にも、人影は無く、雨の音が全ての気配を打ち消しています 「気のせいだったみたいだね」 ほっとして、WIZぽんがドアを閉めようとしたその瞬間に、、 ひゅっと空気を切る音がしました、 と同時に、WIZぽんは腕に焼けるような痛みを感じました 「ああっ」 とっさの事に叫ぶことも出来ずにうずくまってしまったWIZぽん 見ると、腕には1本の矢が深深とささっていました 「ふんっ。なんだ。小僧一人か」 WIZぽんの頭の上で声がします。 「うぅ」 痛みをこらえて顔を上げると,そこには、 WIZぽんを見下ろす、はんたぽんがいました。
―騎士子たん!!― 反射的に騎士子たんの眠ってる部屋を見るWIZぽん はんたぽんの鋭い目線はそれを見逃しません。 「そうか、奴の婚約者ってのはあそこにいるのか」 「お前には悪いが返してもらうぞ」 何を言ってるんだろう?この人?? WIZぽんには今の状況が突然すぎて、さっぱりわかりませんが、 騎士子たんが危なっいてことは理解できました。 ―痛い。矢が抜けないよ。深く刺さってるんだ― 痛みをこらえ、腕をおさえてよろよろと立ちあがると、 WIZぽんは手にした杖を構えました ―だけど― ―騎士子たんは僕が守るんだ!― 「無駄なことはやめて置けよ。俺は弱いものいじめが嫌いなんだよ」 背後で身構えるWIZぽんの気配を察知して、はんたぽんはそう言いました。 「騎士子たんに近づくな!」 と叫ぼうとして、初めてWIZぽんは自分の舌が上手く回らなくなっていることに 気がつきました。 「あぅ?、あぁあぅあうああぁ!」 と同時に、足元がぐるぐると揺れはじめ視界がぼやけはじめました はんたぽんは立っているのもままならないWIZぽんを見ると、ふんっと小さく笑い 「その矢(鏃)にはな、神経を麻痺させる毒がぬってあるんだ」 と言いました。 「もっとも、お前が魔力を使おうとしたところで、 魔法を唱え終えるまでに貴様ののどを潰してやるがな」 「この俺のスピードには誰もついてこれないのさ」
騎士子たんのいる部屋に向かって歩きはじめるはんたぽんに WIZぽんも必死に食い下がります ―騎士子たんのところには、行かせないぞ― 夢中で足にしがみついてくるWIZぽん これにははんたぽんも少し困りました ―殺るか・・・・― そんな考えがちらりとはんたぽんの脳裏をよぎりました。 しかし、戦闘できないような状態の相手を殺すことは はんたぽんのポリシーに反します。 「もう楽になれよ」 はんたぽんはすがってくるWIZぽんを振りほどき、 部屋の隅に突き飛ばすとそう言いました。 壁に叩きつけられて、そのまま崩れ落ちるWIZぽん ―騎士子たんのところへ・・・― 毒のためにふらふらとする頭で一生懸命に動こうとするWIZぽん でも、WIZぽんの手足はまるで糸の切れた操り人形の様に ピクリとも動きませんでした。 ―騎士子たん、ごめんね― 完全に体の自由を失ったWIZぽんは泣く事すらも出来ずに はんたぽんが騎士子たんの部屋のドアに手をかけるのを ただ見守る事しか出来ませんでした 突然、ドアの鍵を破ろうとしていたはんたぽんが横に飛びのきました 次の瞬間、はんたぽんのいた空間に高速で回転する槍が飛んできました。 槍はドアノブを吹き飛ばすと、部屋の壁際を1周し、 そこにあった家具と絵を壊すと、入り口にいる 持ち主の元へと戻っていきました。 「ちょっとあんた、人の家で何をしているの!」 ―あの声は、お姉さんだ― そこには、槍を手に持ち険しい表情をして身構えているお姉さんがいました。 「WIZぽん、しっかして。返事しなさい!大丈夫なの??」 ぐったりと壁によりかかりへたり込んでいるWIZぽんに、 はんたぽんから視線をそらさないまま、お姉さんが声をかけました。
「うぅ」 全身の力をふりしぼり、WIZぽんは少しだけ声を出す事に成功しました ―大丈夫、まだ生きてるみたいね― ちょっとだけ安心するお姉さん WIZぽんの足元にはさっきのスピアブーメランで2つに切り裂かれた 壁に飾ってあった花の絵が落ちていました 切り裂かれた絵は、大きい切れ端には満開の綺麗なケシの花束が、 小さい方にはその花束から切り離されて ぽつんとつぼみが一つだけ描かれていました。 ―二つに分かれた絵だ― WIZぽんは、ぼーっとする頭で考えていました ―そうだ、これは昨日見た写真だ― 昨夜、お姉さんに見せてもらったあの写真。 ふと、WIZぽんの頭の中に今までわからなかった あの写真を見たときの違和感の答えがひらめきました。 先輩の写真と同じだけれどもどこか違うと感じた写真 そのどこが違うのか、WIZぽんには、今はっきりとわかりました ―先輩の写真にいた、あのみんなから少し離れて写っていたハンターさん。 でも、お姉さんの写真からハンターさんは切り離されていたんだ!― と同時にもう一つの事実。 WIZぽんはさっき見上げたときのはんたぽんの顔を思い出しました。 昔の写真に比べると、今は頬もこけて目つきも鋭くなっているが、 今ここにいるはんたぽんは、まちがいなく、 あのみんなと一緒に笑っていた、あのハンターだと。
お姉さんは、はんたぽんの方を向き、用心深く身構えています はんたぽんはお姉さんの方をゆっくりとみると、 「久しぶりだな」とだけ言いました 最初ははんたぽんが誰だか気が付かないお姉さん でも、すぐに気がつくと、驚きとショックの表情を浮かべました 「なんで?なんであなたがここにいるの!?」 「ふん。昔の仲間の顔も忘れているとはな」 ちょっと皮肉な笑みを浮かべてはんたぽんは言いました 「まあ、仲間を見放すような奴が、仲間の顔を覚えているわけはないか」 「うるさい!質問に答えなさい!ここで何をしているの?」 「悪い魔法使いに催眠術をかけられた女の子を助けに来たのさ」 表情を変えずに、はんたぽんはそう答えました。 「そんな子はここにはいない!ここは私の家なの!早く出て行きなさい!」 お姉さんとはんたぽんのにらみ合いがしばらく続きました。 はんたぽんは表情を変えないまま何かを考えている様でしたが、 やがてにやりと笑うとこう言いました 「嫌なら力ずくで止めてみるんだな。まあ、お前が俺に勝てる訳は無いがな」 緊張した空気の張り詰める中で、雨の降るザーっという音だけが聞えてきます。 WIZぽんは,何も出来ないでいる自分を呪いました。 ―お願いします、神様。騎士子たんとお姉さんを護ってあげてください― お姉さんは、はんたぽんとにらみ合いながら、呼吸を整えました 目の前のはんたぽんは身動き一つせず、無表情でお姉さんを見つめています。 ―雨だれの音・・・・・・1・・・・2・・・・3・・・・― かすかな床の軋み音を残して、お姉さんが前に出ました はんたぽんはわずかに身をよじり、それをかわしました。 お姉さんはかわすはんたぽんにさらに追撃を加えます 次々と繰り出される槍に対して、最小限の動きでかわしていくはんたぽん それはまるで、蒸気か煙を相手に戦っているようでもありました。
「くっ!」 お姉さんが、大きく槍を横に薙いだ瞬間、はんたぽんは後ろへ飛びのきました 槍は空を切り、テーブルの上にあった花瓶を叩き割りました 「相変わらず無駄な動きが多いな」 はんたぽんは矢を取り出すと静かにそう言いました 「うるさい!」 ―あの技は、虎を倒した技だ― 槍を構えてモーションに入るお姉さんを見て、WIZぽんはそう思いました 繰り出される強烈な槍の一撃の下をかいくぐり、 はんたぽんは手にした矢をぎりぎりまで引き絞って押し出す様に放ちました。 強烈な勢いの矢は、お姉さんの鎧に直撃して、 お姉さんの体を浮きあがらせて、数メートル突き飛ばしました。 「うぅ」 床に叩きつけられたお姉さんは、よろよろと立ち上がりました。 「せっかくの速さも、それを活かす正確さが無いと意味が無いと、昔教えたよな?」 と、はんたぽんは静かに言いました。 お姉さんは再び槍を構えると、前に出て斬りかかりました 「私の妹を、勝手に連れていかせたりしない!」 はんたぽんはやれやれといった表情を浮かべると、後ろへと後退しました それを追撃しようと前に出るお姉さんでしたが、 何かに足を取られて転んでしまいました。 足元を見ると、鉄製のトラバサミが、お姉さんの足をしっかりと捕らえていました。
―しまった!― お姉さんは足もとの罠を解除しようと、懸命に試みましたが、 頑丈な罠を壊して抜けるには相当な時間がかかりそうでした。 「そこで大人しくしていろよ」 騎士子たんの部屋に行こうとするはんたぽん。 お姉さんはそのはんたぽんに向かって槍を投げつけました 槍は、はんたぽんを逸れて壁に突き刺さりました。 「やめて!私の妹も、あの子のように殺すつもりなの!?」 「やめて!私の妹も、あの子のように殺すつもりなの!?」 その言葉を聞くと、はんたぽんの表情に変化が現れました。 「なんだと??どういう意味だ!」 いままで冷静だったはんたぽんの表情は崩れ、 変わりに激しい怒りの表情に変わりました 「あの子を殺したのはあなたなのよ!私はあなたを許さない!」 「だまれ!お前に何がわかるっていうんだ!」 弓矢を構えながら、つかつかとお姉さんに歩み寄るはんたぽん 「もう一度いってみろ!この裏切り者!」 お姉さんの顔に矢を向けると、はんたぽんは怒鳴りました 「私はあなたを許さないわ!あなたこそあの子の苦しみも知らないで!」 「!」 はんたぽんの顔から血の気が引いていくのがわかりました 毒でふらふらのWIZぽんにも、はんたぽんの殺気を感じ取る事が出来ました。 ―お姉さん!逃げてください!・・・誰か助けて!― 絶体絶命と思われたその時、はんたぽんの弓を構える手に、 どこからか飛んできた石が当たりました。 矢は逸れてお姉さんの耳元をかすり、床に突き刺さりました。 「誰だ??」 幾分冷静さを取り戻したかのように見えるはんたぽんは、 入り口の方に目をやりました。
(時間を少し戻して) 「あの峠を超えれば、もうフェイヨンだ」 アサシン先輩は後ろの淫乱プリに話しかけました 「あら、意外と早く着けそうね」 「ああ、お前のお蔭だよ。ありがとう」 「ふふふ、お礼なら、そこの宿屋で今晩・・・・あいたっ」 ぽかりと頭を小突かれる淫乱プリ 「調子に乗るな。それとだな・・・・その・・・・」 口篭もる先輩と、頭をさすりながらそれを不思議そうに見つめる淫乱プリ。 「これから向かう先で、さっきみたいな事は冗談でも言うなよ」 「さっきみたいなことって、宿屋で今晩ってことかしら?」 「そうだ」 ―ははーん。女だな― ピーンと来た淫乱プリは、にやりとわらって 「わかったわよ。任せておきなさい」 と、嬉しそうに言いました 「さあ、行きましょう。目的地はもうすぐそこよ!」 元気になった淫乱プリは、アサシン先輩の前に立つと 早歩きで歩き出しました ―恋は障害があればあるほど燃えるものなのよ― そんな淫乱プリを見て、先輩は、 ・・・・・・・・・・・・・不安だ・・・・・・・・・・・・・・
やがて、町に入りお姉さんの家の前に着いたアサシン先輩は、 家の中の様子がおかしい事に気がつきました 「ねえ、ここなの?」 様子をうかがうアサシン先輩に、淫乱プリが声をかけました 「ずいぶんと無用心ね。ドアが開きっぱなしよ」 アサシン先輩は、さっきまで感じていた嫌な胸騒ぎを再び思い出していた。 「ちょっと様子がおかしいな。俺が見てくるからお前はここにいろ」 淫乱プリはこくりとうなずきました 雨の音がうるさく、家の中の物音は聞えませんでした アサシン先輩は音も無く家のドアの前まで歩いてきて、 そっと中を覗きました。 先輩の目に初めに飛び込んできたのはWIZぽんでした 右腕に矢を受けてぐったりと壁にもたれかかっている ―WIZぽん!大丈夫か??― 駆け寄ろうとした先輩でしたが、 奥で誰かが話しているのが聞えたのでそちらの方をに目を向けました 立っている誰かが座っている誰かにむかって矢をつがえている 立っている方の顔は角度でこちらからは見ることが出来なかったが、 座っている方が誰なのかは、アサシン先輩には一瞬でわかりました。 アサシン先輩はとっさに石を拾うと、はんたぽんの手元めがけて石を投げました。
「誰だ??」 こちらを振り向いたはんたぽんを見て、アサシン先輩は「あっ」と声を上げました 「あなたはリーダー?」 「お前は・・・シーフたんか!」 ―リーダーって?― WIZぽんは心の中で首を傾げました ― 一体先輩達の過去になにがあったんだろう?― 「どうしてリーダーがこんなところにいるんです?」 警戒態勢を崩さないまま、アサシン先輩はそう尋ねました 「それはこっちのセリフだが・・・お前も俺の邪魔をするのか?」 はんたぽんは不敵に笑いながらいいました ―取り敢えず感動の再会とは程遠いな― 足を押さえてうずくまっているお姉さんと ぐったりとしているWIZぽんを見て、 アサシン先輩ははんたぽんをきっと睨みました やがて、お姉さんも足元に絡まっている罠をようやくはずし、立ちあがりました。 アサシン先輩とはんたぽんは、依然睨み合ったままです この様子を家の裏手からそっと覗いていた淫徒プリは、 今や修羅場と化したこの現場を見て、深い溜め息をつきました。 ―確かに注意を引き付けてくれとは頼んだが、何て大げさな事をしてくれるんだ― あの時・・・はんたぽんに助けられた時に、はんたぽんを利用する事を思いつき、 自分の婚約者がさらわれたので、取り返すのを手伝って欲しいと、 嘘をついてはんたぽんを味方に引き込むことに成功した淫徒プリでしたが、 はんたぽんの性格までは計算外でした。 ―こうなったら、はんたぽんはこの場に残して、騎士子と自分だけ逃げるか― 淫徒プリはそう判断すると、そっと騎士子たんの部屋の窓の下に忍び寄りました 騎士子たんはすやすやとベットの上で眠っていました 「よし、これなら仕事もしやすいな」 端正な顔ににやりと嫌らしい笑みを浮かべて、淫徒プリは窓の鍵を開けにかかりました
(修羅場に戻り・・・) 「先輩、大丈夫ですか?その傷はリーダーに?」 はんたぽんを睨みつけたまま、アサシン先輩がお姉さんに尋ねました 「ええ」 よろよろと立ちあがりながら、お姉さんは答えました 「何でこんな事をしたんですか?リーダー?」 アサシン先輩がはんたぽんに静かにいいました 「人から頼まれてね」 はんたぽんが答えました 「まさかお前達がいるとは思っても見なかった」 「どうせ、また騙されているんだわ!」 お姉さんの言葉は無視して、はんたぽんは続けました 「とにかく、奥にいるお前の妹とやらは渡してもらうぞ」 「嫌よ!」と、お姉さんは叫びました。 「もしも誤解だった時は俺がきちんと返してやる。別に問題はないだろ?」 と、はんたぽんはお姉さんに言いました。 「だめよ!行かせない!」 お姉さんは腰の剣を抜くと、再びはんたぽんに切りかかりました お姉さんの攻撃をかわして、再び弓を構えるはんたぽん。 「くそっ!」 アサシン先輩もはんたぽんに向かっていきました。
3人の戦いをただ見守る事しか出来ないWIZぽんの前に、 転がってる椅子を盾にして、四つん這いになりながら こそこそと部屋に入ってくる人影が姿を表しました。 「うふふ、お久しぶりね」 それは、あのプロンテラの淫乱プリでした 「あらあら。こんなになっちゃって。今、私が治してあげるわね」 WIZぽんのおでこに軽くちゅっとキスをして、毒消しの魔法を唱える淫乱プリ。 暖かい光と共に、WIZぽんは体が軽くなっていきました。 「あ、ありがとうございます・・・」 こんな時だというのに、あの日のことを思い出して赤くなってしまうWIZぽん 「ところで、これってどう言う状況なの?」 淫乱プリがWIZぽんに尋ねました 部屋の反対側では、必死の形相で切りかかるお姉さんとアサシン先輩 そして、2人の猛攻を悠然とあしらうはんたぽんがいました。 「僕にもわからないんです。人が来たみたいなのでドアを開けたら  いきなりあの人が入ってきて・・・・それでやられちゃって・・・」 「ようするにあの半ズボンが敵って事ね・・・・アイツなかなかいい男じゃない」 転がっている椅子をバリケードにして、その陰から様子をうかがいつつ WIZぽんは淫乱プリに話しをしました。 「それで、あの人が騎士子たんを連れていくんだって・・・頼まれたんだって」
ふいに、淫乱プリがWIZぽんの耳元に口を近づけてきました 淫乱プリの吐息が、耳元から首筋にやさしくかかります まるで柔らかい鳥の羽毛でなぞられたかのような感触と、 女性の甘い臭いを感じて、WIZぽんは体を固くしました。 「ねえ、あの奥の部屋、様子がおかしく感じない?」 淫乱プリが椅子の陰から指差す先には、騎士子たんの部屋がありました そして、その部屋の扉の隙間からは、まぶしい光が漏れていました 「騎士子たん!」 WIZぽんは、声を上げて椅子の陰から飛び出しました。 「あ、危ないよ。でちゃだめ!」 淫乱プリの手を振りほどき、騎士子たんの部屋の扉に体当たりするWIZぽん。 ドアノブが壊れていた扉は、あっけなく開き、 WIZぽんは部屋のなかに倒れこみました。 部屋の中には、光の柱が立ち上り、その中には勝ち誇るかのように、 いやらしい笑いを浮かべながら、淫徒プリが立っていました 淫徒プリの両腕には、気を失ってぐったりとしている騎士子たんが! 「騎士子たんを離せよ!」 WIZぽんは淫徒プリに飛びかかりましたが、 淫徒プリは光の柱と共にすぅっと消えていきました
一方、騎士子たんの部屋の異変など気付かず、3人は戦っていました。 アサシン先輩の2本の短剣の攻撃を、かわすはんたぽん と、はんたぽんの背中に壁が当たりました。 後ろに逃げられなくなったはんたぽんに、お姉さんが切りかかりました はんたぽんは床に手をつき、姿勢を低くして斬撃をかわすと、 そのまま手を軸にしてお姉さんのお腹を下から蹴り上げました 「くそっ!」 仰向けに倒れこむお姉さんを見て、アサシン先輩は、 短剣の変わりにカタールを手に取りました。 はんたぽんは起き上がり、横に体を引こうとしましたが、 運悪く肩の三角形が壁の出っ張りに引っかってしまいました ―しまった!― とっさに弓を持った左手を前にやると同時に、右手に矢を掴みました。 カタールの剣筋が、はんたぽんの左腕と交差しました 腕を負傷しながら、はんたぽんは右手に掴んだ矢を、 アサシン先輩の肩に突き立てると、入り口の方へと身を引きました 双方共に傷をおい、再びにらみ合いが始まりました。 「なかなかやるな」 はんたぽんは、アサシン先輩の血がついている右手に弓を持ち替えました 弓は、アサシン先輩の血を吸うと、怪しい光を放ち 見る間に左腕の傷を治していきました。 ―矢を抜くと出血が激しくなるな― アサシン先輩は冷静に現状を分析しながら、カタールを腕の前で交差して身構えました ―リーダーは前よりもずっと強くなっている・・・・勝てるか?―
と、WIZぽんが騎士子たんの寝ている部屋から飛び出してきました 「騎士子たんが・・騎士子たんがさらわれちゃったよぅ」 これだけ言うと、WIZぽんはその場にへたり込んでしまいました 一同が驚く中、はんたぽんは入り口の方に素早く動くと、 「ふん。どうやら上手くやった様だな」と言いました。 お姉さんはきっとはんたぽんの方を向くと、 「妹を返して!」と叫びました。 「ああ、お前達に間違えが無ければ返してやるよ」 こう言い残すと、はんたぽんは表へと出てしまいました 「待ちなさい!」 お姉さんははんたぽんの後を追いかけて、庭に出ました。 「危ないです!先輩!」 はんたぽんを追いかけて庭に出たお姉さんの腕をぐいっと掴むと、 アサシン先輩はバックステップをしました と、アサシン先輩とお姉さんの目の前の地面が、轟音と共に吹き飛びました。 「うぅ・・・妹が・・・」 アサシン先輩にもたれかかって、嗚咽をもらすお姉さん WIZぽんも涙ぐんだまま、へたり込んでいます。 「あのー、もう出てきてもいいかしら?」 椅子の陰から首だけだして、淫乱プリが言いました 周囲が安全なのを確かめると、ひょこっと出てきて 打ちひしがれているWIZぽんの頭をなで、 アサシン先輩と泣きじゃくっているお姉さんの方を見て、こう言いました。 「さあ、傷の手当てをしましょうね」
淫乱プリは、静かにみんなの手当てをしていきました。 「ちょっと痛むけど、我慢なさい」 WIZぽんの矢の刺さった腕の部分に手を当てると、なにかを唱えながら、 矢を引きぬきました。「痛いっ」思わずWIZぽんは声を上げてしまいました。 「これでよしっと」 最後に傷口に手を当てると、白い光が発せられて、 みるみる傷口が塞がっていきました。 「ありがとうございます」 WIZぽんは淫乱プリにお礼を言いました。 淫乱プリはにこりと笑って何かを言おうとしましたが, 先にアサシン先輩にぽかっと頭を叩かれてしまいました。 「いたたた・・・何をするんだわよ」 「何を言おうとしてるのか分かっちまったからな。約束、忘れたのか?」 すると淫乱プリは、お姉さんの方をちらっと見て、意味ありげに笑うと 「んふふふっ、二人だけの約束だったわね」といいました。 きっ、とアサシン先輩に鋭い視線を送るお姉さん。 アサシン先輩はあわてて 「ば、ば、ばか、何て事を言うんだ!」 と口走ってしまいました。 「あ、いや、違うんですよ、その誤解です。先輩」 しどろもどろになるアサシン先輩を無視して 「何か飲み物取って来るね!」とキッチンへ行ってしまうお姉さん しゅんとしてしまったアサシン先輩でしたが、 くっくっくっと笑いをこらえている淫乱プリを見ると、 「こいつ!」と腕を振り上げて見せました。 「きゃっ、かわいー」とだけ言うと,淫乱プリはお姉さんの後を追って、 キッチンへ行ってしまいました。
「そういえば、アサシン先輩に聞きたい事があったんです」 WIZぽんいいました 「さっきの、ハンターのことか?」 「はい」 WIZぽんは、フェイヨンに来てお姉さんにアルバムを見せてもらった事や 昔話を聞いた事を話しました。 そして、お姉さんが、アサシン先輩の持っていたものと同じ写真を持っていた事、 お姉さんの写真からは、はんたぽんが切り取られていたこと、 その切り取られたハンターがさっきのはんたぽんに間違えない事なども話しました。 「アサシン先輩達の過去の事を教えてください」 「私が話してあげるわ」 後ろから、両手に暖かいココアを持ったお姉さんがWIZぽんに言いました お姉さんは、WIZぽんにココアを渡すと、床に散らばっている 本や紙の中から昨日のアルバムを見つけて拾い上げ、椅子に腰掛けました。 「ほら、気を落とさないで」 お姉さんの後から付いて来た淫乱プリも、 アサシン先輩に飲み物を渡すと、椅子に腰掛けました。 「すまないな」 アサシン先輩は受け取ると、窓の外を見やりました 雨が降っているので、いつもよりも薄暗い空は、もう日が落ちかけていました。 「そう、どこから話そうかしらね」 お姉さんは、アルバムをめくりながら語り始めました。 アサシン先輩は、時折お姉さんの話しに相槌をうったり、うなずいたりしていました そんなアサシン先輩を、こっそりと横目でみながら、 淫乱プリも神妙な顔で、話を聞いていました お姉さんの話によると、4人の最初の出会いは、狩場だったそうです きっかけは、はんたぽん、プリさんの2人組みに、 当時、まだのびすだったアサシン先輩が、 お姉さんからはぐれたところを助けられた、というものでした。
やがて、いつからか、4人は一緒に行動するようになり、 気がついたらパーティーを組んでいたそうです。 リーダーには、正義感と責任感が強く、 そして何よりも強くて優しかったはんたぽんが選ばれました。 お姉さんとプリさんは、女の子同士と言う事もあって、 自然と仲良くなり、時には色々な悩み事や相談もする仲になりました。 4人は毎日の様に、色んな冒険をしたそうです。 「あの人が・・・優しかったんですか??」 WIZぽんは、さっきの恐ろしいはんたぽんを思い出し、 少し驚いて、お姉さんに聞き返しました。 こくりとうなずいて、代わりにアサシン先輩が答えました 「ああ、昔、俺が狩場で持ってきた食べ物が尽きて、ふらふらになった時、 リーダーが「食べろ」と俺にニンジンをくれた事があってね」 「でも、しばらくしたら、逆にリーダーがふらふらになってぶっ倒れちまった」 「自分の事より、人の世話ばかり焼いている。そんな人だったよ」 WIZぽんは、怖いと思っていた はんたぽんの意外な一面を知って驚きました。 「そう、そんなリーダーの人柄もあって、私達のパーティーには 自然と人が集ってきたのよ」 お姉さんは続けます だんだんと人が集って、パーティーがギルドになり、 アサシン先輩がアサシンへと転職した頃に、事件は起こりました 魔物たちの勢力に押され始めた時の国王のトリスタンVが、 領地の安全管理を放棄し、代わりにそれを行うものにその土地を与える、 とのおふれを出したのです この事により、名のある冒険者が数多く名乗りを上げ、 群雄割拠の時代へと変わっていったのです。
「私達も、最初は興味本位で参加したのよ」 はんたぽんのギルドは、人数も多く、精鋭ぞろいの強いギルドであったので、 最初の頃は、連戦連勝、まさに無敵だったそうです。 しかし、強く有名になるということは、いい事だけではありませんでした。 美味い汁を吸おうと集ってくるもの、倒して名を上げようと狙ってくるならず者。 次第に、ギルド内でも派閥争いや、見にくい足の引っ張り合いがはじまりました。 「私は、そんな雰囲気に嫌気がさして、一人、ギルドを飛び出ることにしたの」 ギルドを抜ける時、はんたぽんは、お姉さんに何も言わなかったそうです。 「きっと、私の事を、ギルドを見捨てていった裏切り者だって感じてたのね」 お姉さんは少し疲れたように言いました。 「アサシン先輩は、その時は何をしていたんですか?」 WIZぽんはふと気になって、尋ねました。 「おれは、その頃自分の修行だけで手一杯だったんだよ」 と、アサシン先輩は、少し申し訳なさそうに、言いました 「どうしても、早く強くなりたくって、周りの人間に気を配る事を忘れていたんだ」 と言うと、手にしたココアを一口飲んで、下に目線をそらしました。 「でも、他のメンバーや私が抜けていく中で、あのプリたんだけが、 はんたぽんの側に残っていたの」 と、お姉さんは言いました。 信頼出来るメンバーが次々に抜けていく中で、はんたぽんとあのプリたんに、 ギルドの全てがのしかかってきました。 プリたんは、一人ではんたぽんとギルドを支えていきました。 低レベルメンバーには、自分のチェインを貸してあげたり、 不公平な条件での狩りで、支援をしてあげたりしました。 「半年くらい経ってかな・・・偶然あの子と会った時、やつれていてびっくりしたわ」 「でも、その事を本人に聞いても、自分は今が楽しい、はんたぽんと一緒に、 大きなギルドを作るのが夢だって言って、嬉しそうに話していたの」 と、お姉さんは言いました。 「はんたぽんとプリたんは恋人同士だったんですか?」 WIZぽんは聞きました。 お姉さんは首を振ると 「そんなんじゃないけど・・・・ただ、お互いの気持ちを伝えていなかっただけだと思う」 と言いました。 「少なくとも、あの子ははんたぽんの事が好きだったのよ」 ふぅっとお姉さんは大きな溜め息をつきました 「そう、あんな事が起きる前はね」
「あんな事ってなんですか?」 WIZぽんは尋ねました 「仲間の裏切りよ」と、お姉さんは答えました。 首謀者はお座り商人だったそうです。 彼は、はんたぽんの留守に仲間と共にプリたんを監禁し、 そして、プリたんの名前ではんたぽんの砦を占領しました 最初は、プリたんの裏切りなど信じる事など無かったはんたぽんでしたが、 プリたんの名前が翻る砦の旗を見ると、さすがに穏やかではいられませんでした やがて、はんたぽんが砦の前まで行くと、中から 「はんたぽんを殺せ!」という声と共に矢と魔法が飛んできました 砦の中では、プリたんの名前を叫んでいるものもいました 次々と周りの仲間達が倒れていく中で、はんたぽんの目に、 お座り商人達に囲まれて、バルコニーからこちらを見ているプリたんが映りました。 周りで見ていた人の話しによると、プリたんと視線の合ったはんたぽんは、 黙って矢をつがえ、弓を引き絞り、プリたんに向けて撃ったそうです。 矢はプリたんの胸に命中して、プリたんはそのままその場に崩れ落ちました。 はんたぽんは、しばらく戦場の真中でたたずんでいましたが、やがて、 人知れずどこかへと去っていってしまったそうです。 「俺も、その話を聞きつけて、すぐにリーダーの元に向かったが、 結局間に合わずに、着いた時にはリーダーも居なくて、 お座り商人達も行方をくらましていたんだ」 アサシン先輩は言いました 「私が知っている話はここまでなの。その後彼は行方知れずになったわ」 そういって、お姉さんは手元にあるアルバムをパタンと閉めました。 そうして、厳しい眼差しで窓の外に目線をそらすとこういいました 「はんたぽんは、ギルドもプリたんも守ろうとして、結局どちらも守れなかったのよ。 そのくせ、責任すら取らないでのうのうと生きているあの人を私は許せない!」
「結局手がかりはゼロね」 やれやれと言った表情で上を向くと、淫乱プリは椅子の背もたれによたれかかりました WIZぽんも、がっかりした表情でうつむいてしまいました。 「WIZぽんが見たって言う、あやしぃプリーストは、 多分私にプロンテラで声をかけてきたあいつね」 淫乱プリは言いました 「でも、なんであいつが、あんたらの昔のお仲間とつるんでいるのか謎だわね」 「多分、リーダーは利用されているんだ」 腕を組んでいたアサシン先輩は"間違えが無ければ返す" そう言っていたはんたぽんのセリフを思い出して言いました 「冗談じゃありません!」 WIZぽんは叫んで立ちあがりました 「騎士子たんは、やっと僕の事も思い出してくれていたんだ! やっと笑ってくれたんだ!それを・・・それを・・・!」 言葉に詰まると、WIZぽんは立ちあがって騎士子たんを探し出しに行こうとしました WIZぽんの勢いに驚いて、アサシン先輩はWIZぽんの手首を掴みました 「離して下さい!騎士子たんを探しに行かなきゃ!」 「まずは落ちつくんだ」アサシン先輩は静かに言いました 「今からじゃ、もう夜だ。手がかりを掴む事すら難しい。 明日の朝まで休息を取って、そこから探した方がいい。 それに、リーダーならば騎士子たんの身に危害を加える事は無いだろう」 すると、WIZぽんはまた、めそめそと泣き出してしまいました 「わたしもWIZぽんに賛成だわ」お姉さんが言いました 「自分を愛する人のことを平気で撃つような人なんか信頼できないわ!」 淫乱プリはお姉さんとWIZぽんを見ると、 「・・・・・お腹減ったわね」と言いました。
(アルベルタの宿屋の一室) 淫徒プリは騎士子たんのまぶしいフトモモを見ながら、爪を噛んでいました ポータルでまんまと騎士子たんを連れ去った淫徒プリでしたが,、 そのポータルのなかに、はんたぽんのファルコンまで一緒についてきているとは 思いも寄りませんでした。 「この糞鳥め!!」 ファルコンは淫徒プリの後を離れずに、部屋の中までついてきました そして、淫徒プリが騎士子たんに触ろうとすると、鋭い嘴で威嚇をしてきます ―くそ、どうにかしてこのいまいましい鳥をどかさないと!― 淫徒プリはあせりました。お姉さんの家で催眠術をかけ直したとは言え、 ここはもう一度、より強力な呪術をかけておかねば安心が出来ない。 そう思っていたからです。淫徒プリはファルコンを無視して術を始めました。 騎士子たんの足の先から、淫徒プリは指をなぞらせていきました。 ナメクジが粘液をつけながら移動する様に、ゆっくりとなぞっていきます それに伴い、怪しげな紋様が騎士子たんの首筋に浮かび上がりました 膝、腰、胸の辺りまで進んだところで、傍らで威嚇をしていたファルコンが、 鋭い嘴で淫徒プリの指先をついばみました。 「ひぃ」 指先を押さえて,無様な声を上げる淫徒プリ。 騎士子たんの首筋の怪しい文字も、すうっと消えました すると、誰かが部屋の前で淫徒プリを呼びました。 「いるんだろ??ここを開けろ」その声ははんたぽんでした。
―厄介な奴が来たな― 淫徒プリは、心の中で舌打ちをすると、名残惜しそうに 騎士子たんのほうをみて、ドアの鍵を開けました。 「心配していらしたのです。ご無事でしたか?」 淫徒プリは、がらっと表情を替えると、いたわる様にこう言いました。 はんたぽんは淫徒プリの質問には答えずに、ファルコンに向かって 「監視ご苦労だったな」といいました ファルコンは主人が帰ってきたので、嬉しそうに羽ばたくと、 はんたぽんの肩の三角形に止まりました。 「監視」という言葉を聞いて、ドキッとした淫徒プリ ―まさか、こいつに嘘がばれてるのか?― しかし、もしもばれているのならば、今ここでこうして自分が 無事いられるわけがない。そう淫徒プリは思いました。 ―ここは様子を見たほうがいいな― はんたぽんは、時折何かを考えているようでしたが、 その表情から淫徒プリは何も読み取る事が出来ませんでした。 しばらく沈黙が続いた後,、はんたぽんは淫徒プリに言いました 「おいお前、約束通り俺の仲間になるんだぞ」 「ええ、ええ、それはもう、あなたは私達の恩人です」 にこにこと笑いながら、淫徒プリは答えました 「それと、この子には俺の許しがあるまで触るな もしも約束を破ったら、殺されても文句を言うなよ」 「はい、わかりました」 満面の笑みを浮かべながら、淫徒プリは激しい殺気を覚えました 「では、俺達のアジトヘこれから移動する。付いて来い」
騎士子たんを背負ったはんたぽんと淫徒プリは、イズルード行きの船に乗りこみました。 船室につくと、はんたぽんは騎士子たんをベットに寝かせて、淫徒プリに色々質問をしました 「あのWIZの少年が、この子に呪いをかけているというんだな?」 「はい、その通りです」淫徒プリは悲しげに顔を振っていいました ―こういった時に、やさおとこと言われる自分の容姿は武器になる― 淫徒プリは、今までの経験からこのことを良く知っていました。 淫徒プリの話を聞いたはんたぽんは、しばらく考えると、 「呪いや魔術の類ならば、プリ―ストのお前になら簡単に解けるんじゃないか?」 と言いました。 「いえ、この呪いは強力なので、私の力では解く事が出来ないのです。 それほどまでに、あの小僧の邪まな欲望は、恐るべき力なのです! 私の愛する人の呪いは、あの小僧を殺さない限り解けないんです!」 ここぞとばかりに淫徒プリは熱を込めて語りました。 「呪いを払う方法は、教会が一番詳しいはずだ。アジトに着いたら、 まずは教会にその子を見てもらうことにする」 はんたぽんは、騎士子たんの顔を見ると、落ちついた声で淫徒プリにそう告げました
(場面は変わり・・・) 昔の話を終えたお姉さんは、乱雑とした部屋を片付けはじめました アサシン先輩も、お姉さんを手伝って、床に散らばる本や壊れた家具を拾っていました 「お腹が減ったね」といっていた淫乱プリは、台所でみんなの夕食を作っています WIZぽんは一人、真っ暗な騎士子たんの寝ていた部屋で、 騎士子たんの寝ていたベットの上に座りながらめそめそしていました。 しばらくすると、「WIZぽん、入るぞ」と言って、アサシン先輩が部屋に入ってきました。 WIZぽんは、アサシン先輩が横に座っても無言でしたが、しばらくすると わっと泣き出して、アサシン先輩に抱きつきました 「僕は!僕は何も出来ないんだ!」 アサシン先輩は、WIZぽんの肩を抱くとひとしきり泣き止むまで、 そのままにしておきました。やがて、大きく肩を振るわせながら、 WIZぽんが泣き止むと、アサシン先輩はこう言いました 「WIZぽん、一人で何でも出来ると思うんじゃない。 一人で全部抱え込もうと思うんじゃない」 WIZぽんは、目をこすりながらアサシン先輩の話を聞きます 「今は、WIZぽんだけじゃなく、騎士子たんやお姉さん、 俺や淫乱プリまで一生懸命に戦ってるんだ。」 「だから、仲間を信じて今は休め。騎士子たんはきっと助かる」
WIZぽんは、先輩のお蔭で、話が出来るまで気分が落ち着いたのを感じました。 「でも、僕は何も出来なかったんです。騎士子たんがいなくなるまでは、 ずっと騎士子たんが側にいてくれるんだと思っていた」 「でも、騎士子たんがいなくなって、騎士子たんが大事な人だって気がついて・・・」 そこまで言うと、WIZぽんは苦痛に顔を歪めながら言いました 「僕は、騎士子たんを守る力が欲しい!今すぐにでも強くなりたい!」 アサシン先輩は、しばらく黙っていましたが、 「そうか」 とだけいい、WIZぽんの頭をくしゃっと押さえました 「明日は早い。夕食を食べ終えたらすぐに寝るんだぞ」 アサシン先輩はWIZぽんにそう言うと、部屋を後にしました。 ―騎士子たん、待っててね。必ず助けてあげる― WIZぽんは誓いました ―僕は強くなる。騎士子たんや、皆を守れる様に― ―誰にも負けないくらいに強くなるんだ― ふと、WIZぽんは、さっき聞いたお姉さんの話しを思い出しました ―「ギルドもプリたんも守ろうとして、結局どちらも守れなかったのよ」― 愛する人を、自分の手で撃った時に感じたであろう、 はんたぽんのやり場の無い気持ちが、なんとなく、いまのWIZぽんには分かる気がしました。 ―あんなに強いのに、はんたぽんは何一つ守れなかった― WIZぽんは、少し憂鬱になりました。 「WIZぽーん。ご飯が出来たわよー」 淫乱プリが向こうの部屋で呼んでいます。 WIZぽんは涙を拭うと、騎士子たんのベットから立ちあがり、ドアを開けました。
(場面は変わり・・・) イズルードの港についたはんたぽんは、騎士子たんを背負うと、 町の入り口近くにあるアジトへと淫徒プリを案内しました アジトのドアを開けると、中には一人の男がいて、部屋の隅でなにか作業をしていました どうやら、武器を造っているようでした 「おい、すみやん。今帰ったぞ」 とはんたぽんはその男に声をかけました。 「ぼちぼちでんな」 振り帰らずに、その男は言いました 「こいつは、新しくうちのギルドに入った淫徒プリだ。 なかなかの珍速詠唱の頼りになる奴だ。よろしく頼むぞ」 「よろしくおねがいします」 しかし、その男は、武器を造るのに没頭していて全然気がつきません 「おい、すみやん、挨拶ぐらいしろ!」 はんたぽんが声を荒げると、その男はしぶしぶ溶接マスクをはずし、 怪しい大阪弁で、淫徒プリに挨拶しました。 「わいはぶらっくすみやんや。せいぞうのうではとっぷくらす。よろしくな」 「よろしくおねがいします」 注意されて、ふてくされている、すみやんの表情を観察しながら、淫徒プリは挨拶しました 「よし、いいだろう。後は2人いるのだが、まだ帰ってきていないようだな」 「あーあのふたりならさっきおーくだんじょんいくとゆうてました」 と、すみやんが答えました。
「せなかのおんなはだれや?」 騎士子たんに気付いたすみやんが、はんたぽんに聞きました。 「事情があって俺が預かっている子だ。俺はこれからプロンテラの教会へ行ってくる。 この子は、奥の部屋に寝かせておくから様子を見ていてくれよ」 というと、はんたぽんは騎士子たんを抱えて奥の部屋へと入りました。 はんたぽんが奥の部屋へ入ると入れ替わりに、入り口から体格のがっしりとした男と、 少し猫背で痩せ気味の2人組みが入ってきました。 がっしりした男は、筋肉質で背も高く、顔にはエラとケインをつけていて、 そこから覗く目でぎょろりと淫徒プリを睨みつけました。 猫背気味の男は、くたびれたとんがり帽子を被り、 にやにやと下から眺めるような目つきで淫徒プリを舐める様に見ていました。 「おい、こいつは誰だ?」 エラケインはそういって棚から酒の入った瓶を取り出すと、 椅子にどっかと腰をかけながら、すみやんに聞きました 「今日はんたぽんが連れてきた新人や」 すみやんはそう言うと、再び武器を造りはじめました 「あら、プリさんの新入りなんて珍しい。私はWiiizって言うの。よろしくね」 猫背の男が答えました 「そうか。まあ、何かわからないことがあったらおれに何でも言ってこい」 エラケインは酒を飲みながら、ふんぞり返ってこう言いました。 「はい、よろしく願いします」 淫徒プリは、愛想良くそう答えると、エラケインとWiiizの事を注意深く観察しました 「俺達についてくれば、美味しい思いさせてやるからさ」 エラケインはテーブルの上に置いてある肉の干物をかじりながら、淫徒プリに言いました。 「今日もオークダンジョンでWiiizと組んで荒稼ぎしてきて所なんだぞ。 あそこにいるゼノ―クってモンスターの習性を上手く利用すれば、 お前が今までに経験したことの無いような思いをさせてやるよ」 ―ああ、撒き餌の事か― 別に珍しい事では有りませんでしたが、淫徒プリは驚いたような顔をして見せました。 「たまにうるさい事言ってくる奴もいるが、そんな奴らは、モンスターで轢き殺せば 大抵いちころだ。気分がいいぞ」 と、そこまで話して、エラケインははんたぽんが奥の部屋の入り口に立って、 こっちを睨んでいる事に気がつきました。
「おい、エラケイン。お前、今言った事は本気か?」 はんたぽんはエラケインに詰め寄りました 「う、うるせえよ!だったらどうだって言うんだ!」 エラケインは動揺しながら、こう答えました 「あれほどつまらない真似はするなと言ったはずだぞ?2度目は無いともな」 「だったらどうだって言うんだ!いちいち指図するんじゃねぇ!」 「指図じゃない。これは命令だ」 「うぬ!」 かっとなったエラケインは、腰に有る剣を抜こうとしました。 しかし、エラケインよりも早く、はんたぽんはエラケインの剣を引きぬくと、 エラケインの首筋にぴたりと当てました しばらく、重苦しい沈黙が続きました。そんな中、すみやんは、一人武器を造り続けていました。 「ま、まあまあ落ちついて、エラケインも、きっと新入りの子の前でカッコつけたかっただけなのよ」 Wiiizがおろおろとはんたぽんをなだめる様に言いました。 「あたしは今日一緒だったけれども、エラケインは一度も人を轢き殺したりなんかしてないわ」 「そ、そうだよはんたぽん。俺が悪かったよ。反省している。 ちょっとカッコつけたかっただけなんだ。ほんとだ。信じてくれ」 エラケインも額に汗をかきながら、必死に言いました。 はんたぽんは、しばらく黙っていましたが、エラケインの首筋から剣を外すと、 腰の鞘へと戻しました 「お前はナイトなんだ。名に恥じる真似はするんじゃない」 そう言うと、はんたぽんはファルコンを騎士子たんの部屋に残して、プロンテラへ向かいました。 プロンテラへ向かうはんたぽんの後姿を、凄い表情で睨みつけているエラケインを、 淫徒プリはずるがしこい目つきで何か考えながら、じっと観察していました。
半日して、はんたぽんはプロンテラにつきました 首都に着いたはんたぽんは、まっすぐに大聖堂に向かいました。 教会の中に入ると、大聖堂の前で神父が祈りを捧げていました 「ちょっとすまない」はんたぽんが、神父に声をかけると、 神父ははんたぽんの方をに振り向きました。 「お前は、はんたぽんじゃないか!」 「そうだ」 すると神父は、 「帰れ!ここには立ち入る事は禁じていたはず!人に見られたらどうするんだ?」 と、はんたぽんに言いました 「助けて欲しい人がいるんだ。頼む」 はんたぽんは神父に言いました しばらく考えていた神父は、やれやれといった表情で首を振ると、こう言いました 「わかったよ、はんたぽん。だが、人に見られない様に気をつけてくれ。 お前はここには出入り禁止なんだからな」 「ああ、わかっている。だが、急ぎなんだ」 はんたぽんは言いました 「とにかく、ここにいちゃ人目に付く。後でこっそりと行くから場所を教えなさい」 はんたぽんは神父にアジトの場所を教えると、 「すまない。頼む」 とだけ言い残し、教会を去りました。 ―相変わらず不器用な奴だな― 神父は、残っていた仕事を片付けると、外出する準備をはじめました
―これであの子の異常の理由はハッキリする― 帰り道、はんたぽんは考えていました すると、道端で花を売っている女の子が、声をかけてきました 「おじさん、お花はいかがですか?」 「よし、一束もらおうか」 はんたぽんは、おじさんと言われた事に少し苦笑いしながら、 女の子にお金を渡しました。 「ありがとう」 そういって、嬉しそうに女の子ははんたぽんに花束を渡しました。 ―意識は無いけれども、あの子の寝ている部屋に飾ってあげよう― はんたぽんはそう思いながら、アジトへの帰路を急ぎました アジトに着いた時、周りはすっかり暗くなっていました。 町には外灯がともり、家の窓からは明るい光が漏れています アジトの部屋の見えるところまで来た時に、はんたぽんは異変に気がつきました ―おかしい、部屋が真っ暗だ― はんたぽんは手にした花束を投げ捨てると、反射的に駆け出しました。 花はバラバラになりながら、無残にも道に散らばりました。
音を立てないように、扉の前にしゃがみこむと、 はんたぽんはそっとドアを開けました。 真っ暗なアジトの部屋に、光が一筋差し込みました。 外から真っ暗なアジトの部屋を見た時に、何が起きたかは想像できていましたが、 長年に渡って身についた癖で、はんたぽんは用心深く中を観察しました 部屋の中は静まり返っていて、人の気配はしませんでした。 ―奴のことを甘くみすぎていた。それと、あの子のことが心配だ― 暗闇に目が慣れるのを待ち、はんたぽんは中へと入っていきました ふと、騎士子たんを寝かしていた部屋の方で、 がさがさと何かが動く音がしました。 はんたぽんは、緊張しながら騎士子たんの部屋のドアを開けました すると、中からファルコンが飛び出してきて、はんたぽんに覆い被さりました 「落ちつけ!俺だ」 はんたぽんの声を聞くと、ファルコンは大人しくなり、 ちょこんとはんたぽんの三角形に飛び乗りました。 その様子は、どこか申し訳なさそうに見えました。 騎士子たんの部屋には、ファルコンの他に、 ぐるぐる巻きに縛られたすみやんが閉じ込められていました 騎士子たんが寝ていたソファーは荒されていて、 上にかかっていた毛布は、ぐちゃぐちゃになって床に落ちていました。 はんたぽんは、すみやんの縄をほどき、明りをつけました 「怪我は無いか?」 はんたぽんは、すみやんに尋ねました 「だいじょぶですわ」 すみやんは答えました。 「あの子はどうしたんだ?何があったのか説明するんだ」
すみやんは、はんたぽんに一部始終を説明しました 「はんたぽんがでかけたあと、あのしんいりは、エラケインとWiizをよびだし、 なんか、ろうかで、そうだんをしはじめたんや」 すみやんの話しによれば、しばらく何かを話していた3人は、やがて部屋の中に入ると、 すみやんを後ろから襲ってぐるぐる巻きにし、騎士子たんを守っていたファルコンには、 毛布をかけて押さえこむと、その隙に騎士子たんを担ぎ出して 外へと出ていってしまったとの事でした。 「みなとへいくから、ペコ車をまわせとゆうてました。そこまでしか、わからんわ」 すみやんはこう言うと、縛られて痣になっている両腕をさすりました。 はんたぽんは、ファルコンを見ました。 しかし、ファルコンははんたぽんから目を逸らしてしまいました。 ―こいつはずっと騎士子たんの部屋にいたのだから、全て見ている訳はないか― すみやんの話しは、はんたぽんが想像していたことと大体一致していました 「よし、俺はこれからあの子を助けに行く。すみやんはここで何かに備えて待機しててくれ」 はんたぽんは、そう指示すると、騎士子たんを探しに行く準備をし始めました。 はんたぽんが出かけようとしたちょうどその時に、神父がアジトにやってきました 「はんたぽん、遅くなってすまんな。ところで一体どこへ行くのだ?」 神父は、フル装備のはんたぽんを見て、驚いてそう聞きました 「実は・・・・」 はんたぽんは、これまでの経緯を手短に説明しました 神父は、説明を最後まで聞くと、こう言いました。 「はんたぽん。私からの忠告だが、もう昔のことは忘れろ。 お前が砦にこだわる理由も、死んだプリたんへの罪滅ぼしのつもりだろうが、 お前のその執着は、お前や周りの人間を不幸にするだけだ」
はんたぽんは、神父の話しを聞くと、 視線を自分の足元に落としましたが、すぐに顔を上げると 「今は、話しをしている時ではないので、帰るまでどうか待っていてください」 といって、外へ飛び出していきました。 「あ、まてはんたぽん。話しは途中だ・・・・」 神父の声を後ろに聞きながら、はんたぽんは前の道に飛び出していきました。 ―やれやれ・・・相変わらずだな― 神父は、はんたぽんの後姿を見送ると、アジトの部屋ではんたぽんの帰りを待つことにしました 「ちょっとはんたぽんが帰るまで、ここで待たしてもらいますよ」 神父がすみやんに話しかけると 「かってにしろや」 と、武器を造りながらぶっきらぼうに答えました ―長い夜になりそうだ― 神父は椅子に腰を下ろすと、ふーっと大きく溜め息をつきました 前の道に出たはんたぽんは、まず建物の裏手に廻りました ―ペコ車を廻すとしたら、あそこに置くしかないからな― 夜に入り、暗くなっているので、肩のファルコンは捜索に使えそうにありませんでした。 道に屈みながら、注意深く探すと、抜け落ちたペコペコの羽毛と 地面についた車輪の跡を発見しました ―大体3人乗りだとこの位の深さの跡がつくな・・・問題は方向だが・・・― はんたぽんは、すみやんの「港へ向かった」との言葉を思い出していましたが、 あの賢い淫徒プリが行き先を教えてしまうような、そんなミスを犯すとは思えませんでした。 ―港へ向かうならこっちの方向だが、裏付けが欲しいな― はんたぽんは、車輪の軌跡上に埋まっている石を探しました やがて、ペコ車に弾き出された石ころの埋まっていた穴を発見しました ―この穴の出来方は、ペコ車は間違い無く港方面へ向かっている― はんたぽんは、他にも2・3のぐらついている石や石の穴を見て、そう判断しました。 ―間違い無い、向かった先は港だ― はんたぽんは、車輪の跡を追って港方面へと歩き出しました。
車輪の跡を追ってはんたぽんは歩き続けました 途中、沢山の人の足跡で跡がかき消されたりしている所もありましたが,、 方角を推測し、再び車輪の跡を見つけ出しは追跡を続けました。 ―くそ、時間がかかりすぎる!― わずかな地面のくぼみを追い続けるには、大変な集中力と洞察力が必要であり、 そのために、追跡をする速度はとてもゆっくりとしたものでした。 やがて、車輪の跡は人通りの多い道から外れ、 人気の無い倉庫の並ぶ区画へと続きました 余計な足跡や車輪の跡がなくなり、はんたぽんの追跡速度も、次第に早くなりました はんたぽんは東の空がうっすらと明るくなっている事に気がつきました ―もう朝か― やがて、はんたぽんは無人の倉庫の後ろに、 荷台を引いたペコペコが繋いであるのを見つけました。 はんたぽんは、ペコの側に近寄ると、地面を観察しました そこは何人かの足跡で地面がかき乱されていて、その足跡は、 倉庫の入り口へと続いていました。 ―間違い無い、ここだ!― はんたぽんは、音も無く入り口へと近づくと、そっとドアノブを廻してみました 鍵のかかっていると思われたドアノブは、あっけなく音を立てずに廻りました ―誘っているな― はんたぽんは、そのままゆっくりとドアを開けると、そのまま体を部屋の中へ滑り込ませました。 中に入ると、そこはがらんとした倉庫でした そして、右手と奥のほうに小さな部屋があり、奥の部屋からは、 わずかに灯かりが漏れていました はんたぽんが奥の部屋の入り口の前に立つと、中から 「遅かったじゃないか」と、淫徒プリの声がしました
はんたぽんは、弓を構えると、ドアを開けて中に入りました 「お前、どう言うつもりだ。その子に何をした?」 はんたぽんは淫徒プリにきつい口調で言いました 淫徒プリは、前のはだけたシャツ一枚の格好で部屋の中央の長椅子に座り、 シーツを身に巻きつけただけの騎士子たんの体を、後ろから抱きかかえていました。 騎士子たんは無表情で、ぐったりとした体を淫徒プリに任せています 「野暮なことを聞くなよ」 淫徒プリは、ふふっんと鼻で笑って答えました 「恋人同士が愛を交わしていたんだ。見てわからないのか?なぁ?」 そういいながら、淫徒プリが騎士子たんの、シーツからすらっと伸びた 白い両足のフトモモをなでると、騎士子たんも 淫徒プリの顔を両手で抱えて自分の胸に押しつけました。
「正体をあらわせ。この外道め」 はんたぽんは、そう言うと弓を引き絞り、淫徒プリの額に弓矢の狙いを定めました 「その子の首筋にある紋様は一体何なんだ?」 淫徒プリは、ニヤリと口を歪めて笑いました やさおとこの顔が崩れ、変わりにいやらしい、陰険な男の顔が現れました 「ふふふ、何だと思う?」淫徒プリは言いました 「この模様はね、私の下僕の証しなんだよ。騎士子はもう、私の言う事しか聞かない」 勝ち誇った様に淫徒プリは笑いました 「では、その子がおかしくなったのは、WIZの少年ではなく全部貴様の仕業か!」 はんたぽんは、はらわたが煮えくり返る思いでそう叫びました 「外道め!命が惜しければ、はやくその子を元に戻すんだな!」 「おっと、私を殺すと騎士子は一生このままだよ?気をつけたまえ」 淫徒プリは、今にも淫徒プリを八つ裂きにしそうな表情をしている はんたぽんを見ると、落ちついてそう言いました。 「あと、一つ勘違いしているよ」 淫徒プリは、はんたぽんににやにやと笑いながら言いました 「もう騎士子は意識を取り戻しているのさ」 「なに?」 淫徒プリは、そのまま続けます 「そう、ここで今起きていること、全て騎士子は記憶しているんだよ。 ただ、自分の意思で動くか、私の意思で動くかの違いだがね」 くっくっくと低い声で笑うと、淫徒プリは騎士子たんの腰をなでながら 耳元に口を当てて、はんたぽんにも聞える様にこうつぶやきました 「もっとも、色々と君が私にしてくれたことや、私が君にしてあげたことは、 私もずっと憶えているだろうがね」 この言葉を聞いた騎士子たんの顔は、表情は凍りついたままなのに、 見る見るうちに顔が紅潮し、そのシーツの下の胸の動きも、大きく激しくなりました そして、目の奥のきらきらとした光からは、尋常ではない感情の爆発が感じられました。 「貴様・・・・」 はんたぽんは、怒りで口の中がからからに乾き、軽い眩暈を感じました 「おっと、それ以上動くなよ。大事なこの子が死んでしまうからな」 淫徒プリはにやりと笑うと付け足しました 「もっとも、私もそれは避けたいのでね」
と、はんたぽんの背後に足音を殺して忍び寄る影が2つありました。 両手剣を手にしたエラケインとその陰に隠れているWiiizでした ―そうだ、そのまま気付かれずに殺るんだ!― 淫徒プリは、心の中で舌なめずりしながら、 はんたぽんの方をにやにやと見つめていました 後一歩と言う所までエラケインが近づくと、はんたぽんはくるりと振り向き、 目に見えない早さで矢を射ました 「ぐあ!!」 放たれた4発の矢は、3本はエラケインの装甲の隙間を確実に射抜いて エラケインの巨体を突き飛ばし、残りの1本はWiizの足に当たりました。 もんどりうって倒れこむ2人を見ると、はんたぽんは淫徒プリの方を向き 「次ぎは貴様の番だ」と言いました ―役立たずの雑魚どもめ― 淫徒プリは心の中で舌打をしましたが、表面上はまったく態度を崩さずに、 はんたぽんの方を睨みつけました。 「貴様は俺が貴様を殺せないとたかをくくっているが、 殺さずに苦しませる方法などいくらでもあるのだぞ?」 と、はんたぽんは淫徒プリに言いました ふふん、と淫徒プリは笑うと、「おい、入り口にペコ車を廻しておけ」 と、地面にはいつくばっている2人に命令しました エラケインとWiiizは、そそくさとその場を立ち去りました 「私も、あなたとまともに戦って勝てるとは思っていませんよ」 淫徒プリははんたぽんに言いました。 「だから、こうしようと思いましてね」 と淫徒プリが言うと、淫徒プリの腕の中にいた騎士子たんが無言で立ちあがりました
シーツ一枚をまとった格好の騎士子たんは、 淫徒プリとはんたぽんの間に立ちふさがる格好になりました はんたぽんに少し近づくと、無表情のまま、騎士子たんは するりとシーツを取りました。 その体は、すらりとして鍛えられており、長い間寝ていたこともあって、 その外気から隔離されていた肌は、透き通る様にきれいな白でした。 そして、その手には剣が握られていました。 はんたぽんは、騎士子たんの美しい体を見て少し動揺をしましたが、 同時に、乳房や股の内側についた噛み跡や鬱血を見ると、思わず目をそむけました 「むごいことを・・・」 しかし、すぐに気を取りなおすと、淫徒プリに言いました 「何の真似だ?お前、こんな小細工で俺が倒せるとでも思っているのか?」 それを聞いた淫徒プリは、小馬鹿にしたようにいいました 「そんなことは思っていませんよ。だからこうするんですよ!」 はんたぽんは、「あっ」と声を上げると、騎士子たんに飛びつきました 騎士子たんが手に持った剣で、自分で自分を突こうとしたからです はんたぽんが手を押さえると、今度は凄い力ではんたぽんに抱きつきました 「くそっ」 はんたぽんは、無表情なままの騎士子たんを振りほどこうとしました。 騎士子たんの少し小さい柔らかな胸が、はんたぽんの胸に押しつけられます はんたぽんは、騎士子たんの鼓動が早く大きくなっていることに気がつきました 「ふふふ、やっぱりそう動きましたね」 淫徒プリは、予想通りといった表情で、服を着ると出口に向かって歩き出しました 「もう十分に楽しんだのでね。しばらく騎士子は返してあげますよ」 ―無理に動くと、この子を傷つけてしまう― はんたぽんは、あせりましたが、騎士子たんに怪我を負わせないで 振りほどくことは、到底無理に思えました。 「いずれまた、騎士子は頂きにあがりますよ」 部屋を出る時に、そういって淫徒プリははんたぽんのほうを向きました と同時に、淫徒プリにファルコンが襲いかかりました。
「ひぃ!この鳥め!」 淫徒プリは、ファルコンを振りほどこうと、必死に手を振り回しました もがく淫徒プリの袖から、何か丸いものが転げ落ちて、部屋の隅へと 転がっていきました。 ―あれはなんだ?― ファルコンを振りほどいた淫徒プリは、部屋の扉を閉めて、 「追って来いはんたぽん!そうすれば殺してやるぞ!」 といい残し、去っていきました。 ファルコンは、狂った様に扉にむかって爪を立てていますが、 頑丈な扉は破れそうにありませんでした。 突然に、騎士子たんの手に込めている力が抜けて、 はんたぽんは、体の自由を取り戻しました。 「待て!」 はんたぽんは、手早く騎士子たんの体をシーツで隠すと、 淫徒プリの後を追いましたが、淫徒プリ達はすでに逃げ去った後でした。 はんたぽんは淫徒プリ達の去った方向をじっと睨んでいましたが、 やがて部屋へと戻っていきました。 部屋に戻ると、はんたぽんはさっき淫徒プリが落としていったものを、拾い上げました。 それは、古代文字が書かれた小さな鏡でした はんたぽんはそれを背中の三角形に入れると、続いて、騎士子たんの様子を見ました 「大丈夫か??しっかりしろ!」 騎士子たんの顔色は真っ白で、時折ひゅーひゅーと音を立てて呼吸をしていました ―いけない、過呼吸を起こしている― はんたぽんは、騎士子たんを落ち着かせようと、騎士子たんの顔を覗きこみました そして、騎士子たんの目を見たはんたぽんは、その場で凍りつきました。
騎士子たんの目は、希望や生きる力、そういった輝きは一切失われていて、 かわりに絶望に満たされた闇を見ている目でした。 その光を失った瞳・・・・まるで死んだ蛙の卵の様に見えるそれは、 はんたぽんがかつて撃ったあのプリたんと同じ瞳でした ―お願いだから、殺して。はんたぽん― はんたぽんは、押し寄せる過去のいまいましい記憶に押し流されそうになりました いっそ、この場でこの子と自分を殺してしまえば楽になるに違いない! それでも、はんたぽんはパニックと必死に戦いました。 ―この子をあいつの様に殺してしまっていいのか?− はんたぽんは必死に自分を落ちつかせると、騎士子たんを抱きしめながら、 「大丈夫!落ちついてゆっくりと呼吸をするんだ!」と言いました。 「いいか、ここにはもう君を傷つける奴は居ない。もう居ないんだ」 騎士子たんの呼吸が落ちついてくると、はんたぽんは少しほっとしました しかし、依然として瞳には生気がありません。 ―どうすればいいのか― はんたぽんは、抱きしめていた騎士子たんの体を少し離すと、 地面に跪きましたそして騎士子たんの手を取ると厳かに、 騎士子たんに聞える様に誓いを立てました 「俺は、必ず君を守る。そして、君のお姉さんやあのWIZの少年と 一緒に笑える日が来る様に、命を尽くす」 「だから、君も生きてくれ」 WIZぽんの名前を聞いた騎士子たんの目に、少し光が戻りました はんたぽんは、それを確認すると、少し心が軽くなったのを感じました 「さあ、帰ろう」 はんたぽんは、シーツをまとった騎士子たんを背中におぶって歩き出しました ファルコンは、恨めしそうにあの扉を見ていましたが、 はんたぽんの後を追うために大きくはばたきました。
はんたぽんは、騎士子たんを連れてアジトへと戻りました 神父は、はんたぽんにおんぶされた騎士子たんを見て、一目で訳ありだと感じました はんたぽんは、騎士子たんを奥の部屋に寝かせ、またファルコンを見張りにつかせると、 疲れた様に椅子に座り込みました やがて、騎士子たんの様子を見た神父が、奥の部屋から出てきました 「何かわかったか?」 はんたぽんが尋ねました 「ああ、あの子の首の紋様を見たろ?あれは、傀儡の術の一種を使った時に現れる紋様だな」 神父は答えました 「しかも強力な奴だ。無理に術を解こうとすると、あの子の心も壊れてしまうだろう」 そういうと、神父は悲しそうに首を振りました。 「何か解きかたはあるのか?」 はんたぽんは神父に尋ねました 「ただ一つだけある」 「それは、どんな方法だ?」 はんたぽんは身を乗り出しました 神父は、ちょっと考え込むと重い口を開きました 「この術はな、何かのものを媒体とする事が多いんだ。だから、 その媒体を壊せばいいんだが、ただ壊してはいかん。術をかけた本人が壊さんで、 他人が壊してしまえば、永遠にこの子の心は帰ってこなくなる」 「その媒体って言うのは何か分かるか?」 はんたぽんは、重ねて聞きました 「さあ、術をかけた本人以外見当もつかんよ」 神父は答えました 「人形や鏡などが使われる事が多いが、魔力の宿っているものなら何でも使えるからな」
―鏡??― はんたぽんは、ふとさっき淫徒プリが落としたあの鏡を思い出して、 三角形の中から取り出しました 「神父、もしかして、これがそうじゃないのか?」 はんたぽんは、これを手に入れた経緯や淫徒プリの事を話しました 神父は、その鏡を手に取ると、じっと眺めていましたが、 やがてはんたぽんの手を取ると、 「こっちへ来い!」と、騎士子たんの部屋に引っ張っていきました 神父は、騎士子たんの首筋とその鏡に書いてある文字を見比べると, 「間違い無い、この鏡だ!良くやったなはんたぽん」 と嬉しそうに言いました 「これでこの娘さんを救えるぞ!」 ―希望が見えてきた!― はんたぽんは、心の中でそう叫びました そして、神父の手を取ると「ありがとう」と言いい、声を詰まらせました 「だがな、はんたぽん、時間は無いぞ」と神父はいいました 「このままの状態では、この子はあと1週間持つかどうかもわからん・・・」 「とにかく、その淫徒プリとやらを捕まえて、この鏡を叩き割らせるんじゃ」 はんたぽんは神父を見つめると、大きくうなずきました
(時間は遡りお姉さんの家) はんたぽんと淫徒プリが、船でイズルードへ移動していた頃、 アサシン先輩は、一人寝つけずにいました お姉さんと淫乱プリの寝ている部屋からは物音一つ聞えません 隣に寝ているWIZぽんは、さっきまで泣きじゃくっていたのが嘘の様に ぐっすりと眠っていました。 アサシン先輩は、WIZぽんを起こさないようにして、一人静かに庭へ出ました 庭に出ると、雨上がりのひんやりとした空気が流れ、 草の陰ではたくさんの虫が鳴いていました アサシン先輩は、庭の石に腰を下ろすと空に出ている月を見ながら、 騎士子たんのことを考えていました ―WIZぽんに、心配するなとは言ったが― アサシン先輩は考えました ―現実としてあまりにも手がかりが少ない― 何とか手がかりを見つけ出そうと一人考えていると、 誰かに突然に後ろから声をかけられました 「こんな時間に何をしているの?」 後ろには、お姉さんが立っていました 「そんな格好だと風邪ひいちゃいますよ」 アサシン先輩はパジャマ姿のお姉さんを見て、そう言いました お姉さんはちょっと笑うと、アサシン先輩の横に移動しました
アサシン先輩は座り位置を少しずらし、お姉さんが座れるスペースを作りました お姉さんが座ると、2人の体がふれあい、少し暖かく感じました 「ねえ、助けに来てくれてありがとう」 お姉さんはアサシン先輩の方に首を向けると言いました 「いえ、こっちこそ先輩を面倒な事に巻き込んでしまって」 アサシン先輩がそう言うと、お姉さんは首を振りました 「ううん。私の妹の事だもの・・・それに、来てくれた時は嬉しかったわ」 アサシン先輩は、聞いているのかいないのか、目の前の月をじーっと眺めています 「今日は、一日で色んな事が起きて疲れちゃった・・・。色んな・・・そう、 昔の嫌な事や楽しかった事まで思い出して、それで妹までさらわれてしまって」 そう言うと、お姉さんはアサシン先輩の肩に、おでこをこつんとぶつけました アサシン先輩は、お姉さんの肩に手を廻すと、こう言いました 「大丈夫ですよ。きっと騎士子たんは帰って来ます」 「でも、手がかりも何も無いのよ」 そういって顔を上げると、お姉さんは疲れた表情をして、アサシン先輩の横顔を見ました アサシン先輩は、ゆっくりとお姉さんの方を向くと、笑顔を見せてこう言いました 「相手がリーダーなら、お互い手のうちは知っています 手がかりがゼロって訳じゃないですよ。それに、あの人は、 多分今でも昔のリーダーのままです。騎士子たんを、むやみに傷つけたりは、きっとしません」 「あの時のままならね」 お姉さんは答えました 「でも、人は変わってしまうものよ。一つ新しい事を覚えて行くたびに、 一つ昔の事を忘れてしまうわ」 アサシン先輩はすっと立ちあがり、薄着のお姉さんに上着をかけてあげると 「さあ、明日は早いです。先輩もぐっすりと休んでください」 と言いました 「ねえ、アサ君は昔の事をまだ覚えているの?」 腰をあげるとお姉さんはアサシン先輩にそう聞きました 「ええ、もちろん覚えていますよ」 アサシン先輩は答えました 「まだ、アサ君がシーフだった頃の約束も覚えてる?」 「ん」 今度はそれだけ言うと、アサシン先輩は黙ってしまいました 「それじゃあ、おやすみなさい」 お姉さんはそう言うと、家の中へと戻りました 「おやすみなさい」 アサシン先輩は、再び石に座りこみ、また一人考えはじめました 石にはまだわずかにお姉さんの体温が残っていました
翌日の朝、WIZぽんはまだ薄暗いうちに目を覚ましました まだみんな眠っていたので、一人身支度を整えると、何か手がかりは無いかと 庭に出てみました。入り口からでた所には、昨日の地雷でえぐられた地面が 大きな窪みになって水溜りを作っていました ―だめだ、昨日の雨で全部足跡が消えちゃってるや― WIZぽんは、他にも何か手掛かりが残って無いか、草の茂みの中を調べてみました と、突然、茂みの中から何かが飛び出してきて、WIZぽんの頭にのっかりました 「うわぁ!」 WIZぽんはびっくりして水溜りにしりもちをついてしまいました 「うぅ・・・びしょびしょだ」 WIZぽんの頭には大きな蛙が1匹ちょこんと座っていました 「何をやってるんだよ。WIZぽん」 笑いをこらえながら、アサシン先輩が家の中から出てきました 「なにか手掛かりが無いか調べていたんです」 半べそをかきながら、WIZぽんは答えました 「んーそうだな」 くしゅん!とくしゃみをしたWIZぽんを見て、アサシン先輩は言いました 「まずは着替えてこないとな。そのままだと風邪を引くぞ」
着替えをすましたWIZぽんは、部屋の中でアサシン先輩と 騎士子たんの手掛かりについて話しはじめました。 やがて、お姉さんと、低血圧でぼーっとしている淫乱プリが部屋から出てきました 「おはよー」 「おふぁよぅ」 「おはようございます」 アサシン先輩と、今後の事について話していたWIZぽんは、 淫乱プリとお姉さんに挨拶して、またアサシン先輩と話し始めました 「じゃあ、先輩ははんたぽんがアルベルタに行ったって考えてるんですか?」 「そうだ」 アサシン先輩は答えました 「これは俺の推測だが、間違ってはいないと思う。まず、リーダーは淫徒プリが ワープポタ―ルで消えても別段驚かなかった。これは、事前に集合場所を決めていたからだろう。となると、淫徒プリの方は追跡不可能でもリーダーを追えば、やがて淫徒プリにたどり着ける」 アサシン先輩は続けます 「徒歩のリーダーが取るだろう行動は、いくつか考えられるが、ほぼ間違い無く、 アルベルタの港から移動をすると思う。なぜなら、ポタ―ルを頼むのでは、 人の記憶に残ってしまうし、西のジャングル経由では、モロクに出るにしろ、 時間がかかりすぎる。あとは・・・この近くに隠れている可能性もあるが、 騎士子たんを連れていては、ここフェイヨンでは余りに目立ちすぎるからな だから、アルベルタって答えを導き出したんだ」
「この近くで落ち合った後に、直接ポタールで飛んでしまった可能性は無いですか? それだと、アルベルタへ出て船を使わなくても、この地方から脱出できますよ?」 WIZぽんが尋ねました 「ワープポタ―ルは、一度現地へ行かないと開けないんだよ。そして、俺が知る限り、 淫徒プリはモロクの時点ではリーダーと接触していない。だから、淫徒プリがリーダーと 接触したのはモロクからフェイヨンに移動する途中だと思う。そうなると、淫徒プリが、 今回の為にポタメモをしに行く時間は無かったと思うな」 アサシン先輩は言いました 「最後に、淫徒プリが、リーダーを出しぬき、自分だけどこかに消え去った可能性だが、 俺の知っているリーダーなら、常に警戒を怠らないはず。恐らく何かの手は打ってあるだろう。 それに、淫徒プリがリーダーを引きこんだのは、騎士子たんを攫う目的以上に、 騎士子たんを攫った後に不安を感じての事だと思っている」 ここまで言うと、今までの推理が正しかったのかを確認する様に、しばらく沈黙し そして又、話し始めました 「だから、リーダーと淫徒プリがあの後合流の約束をしている事は間違い無いと思う」 「アルベルタへ行けば、騎士子たんの手掛かりがあるんですね!」 WIZぽんは興奮して叫びました 「まあ、落ちつけ、WIZぽん」 アサシン先輩は、苦笑しながらWIZぽんをなだめました 「これはあくまで俺の想像なのだし、理論としても不十分だ。 それに何の証拠もあるわけじゃない」 WIZぽんは、アサシン先輩にこう言われてしょんぼりとしてしまいました ―なんだ、結局アサシン先輩も、自信が無いんじゃないか― 「だがな、WIZぽん」 しょんぼりとしたWIZぽんを見て、アサシン先輩はこう言いました 「俺にはこの推理が合っている自信があるんだ。あの人のことは、良く知っているつもりだ だから、俺には頭で考えた推理以上に、この俺の直感は正しいと感じるんだよ」
やがて、朝食を作り終えたお姉さんと淫乱プリが、 なにやら口喧嘩をしながらキッチンから出てきました。 「まったく人使いが荒いんだから!この粗忽騎士は。そんなだから男も寄り付かないのよ」 朝早くから起こされた淫乱プリは、少々不機嫌です 「勝手に人の家に上がりこんで何言うのよ。ずうずうしいおばさんね」 「なんですって〜」 おばさんと言われてカチンと来た淫乱プリは、 お皿で両手が塞がっているお姉さんの前に廻ると、ミニスカートの裾を 半分くらいまで捲り上げました。 「や、ちょっと何考えてんのよ!」 慌てているお姉さんを見て、淫乱プリはけらけらと笑いました WIZぽんと先輩は、お姉さんの方(主に露出したふともも)を ボーっと見ていましたが、お姉さんに睨まれると、 ささっと目線を逸らして話を続けました。 お姉さんは、テーブルに両手のお皿を置くと、めくれたスカートの裾を直して 「待ちなさい!」といいながら、 速度増加で笑いながら逃げる淫乱プリを追いかけて行きました。 「あれ、どうしましょうか?」 ネズミを追いかける猫の様に外へ飛び出してしまった お姉さんと淫乱プリを見て、WIZぽんはアサシン先輩に言いました 「放っておこう。それより飯を食うぞ。終わったらすぐに出発だ」 「はい!」 WIZぽんは元気良く答えました やがて、お姉さんと淫乱プリが外から仲良く話をしながら戻ってきました ―女の人って良くわかんないな― さっきまで喧嘩していたのに仲良く話しをしている2人を見て、 WIZぽんはそう思いました ―僕も、騎士子たんのことをわかっているつもりで判ってなかったんだな― あの晩、「・・・ごめんなさい」とだけ言って飛び出してしまった 騎士子たんのことを思い出して、ちょっぴり胸が痛くなりました
「朝食を食べ終わったら、捜索に行くのはアルベルタなの?」 テーブルにつくと、お姉さんはアサシン先輩に尋ねました 「ええ、そのつもりです」 アサシン先輩は答えました 「なら、食べ終わったらすぐに用意しちゃうから待っていてね」 すると、アサシン先輩はお姉さんに言いました 「いや、行くのは俺とWIZぽんだけです。 お姉さんと淫乱プリにはここに残っていてもらいたいのです」 その事を聞くと、お姉さんはちょっと意外な顔をしてこう言いました 「わたしじゃ足手まといだって言うの?」 「いや、もしもリーダーが騎士子たんを返しに来たときに 誰かがここにいてくれないと困るのです」 「冗談じゃないわよ!妹を返しに来るなんて、そんな事あるわけないじゃない!」 いきり立つお姉さんを見ながら、淫乱プリが口を挟みました 「あら、あのハンターいい奴じゃない?あんたらと戦ってた時も  手加減してくれたみたいだし、顔も結構渋くて好みだわ〜」 「手加減って・・・」 「戦っていた本人が一番気がついてるんじゃない?あたしは見てただけだからね」 「でも、だからって約束を守るって事にはならないわよ」 お姉さんがこう言うと、アサシン先輩がなだめる様に言いました 「でも、約束を守る可能性もあります。だから、お姉さんは騎士子たんが いつ帰ってきても大丈夫な様にここを守っていてもらいたいんです」 「わかったわ」 しばらくの沈黙の後、お姉さんはこう言いました 「でも、妹を必ず助けてあげてね」 やがて、食事も終わるとWIZぽんとアサシン先輩はアルベルタへと向かいました 潮の香りが漂う港町の空気は清々しく、WIZぽんは思わず大きく伸びをしました 「まずは、聞きこみをするぞ。ニ手にわかれて船着場の船員に リーダーのことを聞いていくんだ」 「わかりました」 WIZぽんとアサシン先輩は、港へ続く道を右と左に別れて歩いていきました。 お昼になるまで、WIZぽんは色々な人に はんたぽんと騎士子たんの行方を聞いて廻りました しかし、誰一人として知っている人はいません 「もうだめだ、見つからないよ」 WIZぽんは、道の端に座りこむと、頭を抱え込んでしまいました
「何してんのよ?あんた?」 WIZぽんが上を向くと、そこには淫乱プリが腰に手を当てて あきれた様にWIZぽんを見ていました 「あれ?なんでここに??」 家に残っているはずの淫乱プリがここにいるので、不思議そうにWIZぽんが尋ねました 「だって、あの家で女同士でいるなんてつまらないしぃ。 こっちなら2対1だしその場の雰囲気で・・・」 むっふっふっふと笑う淫乱プリを見て、WIZぽんは怯えました 「さあ、立って探すわよ!」 そう言うと、淫乱プリはWIZぽんの手を掴んで歩き出しました 淫乱プリに引きずられながら、聞きこみを再会したWIZぽん でも、なかなか有力な証言は出てきません 「なかなか見つからないものねぇ。ちょっと疲れたからあそこで休まない?」 淫乱プリが目を輝かせながら目の前の建物の2階を指差しました 「い、いえ、大丈夫です」 WIZぽんは、慌ててそう答えるとまた歩き出しました
「WIZぽん。リーダーらしき人を見たって人が見つかったぞ!」 聞きこみを再開したWIZぽんを見つけて、アサシン先輩が駆け寄ってきました 「本当ですか!?」 WIZぽんは、今までの疲れも忘れてその場で飛びあがって喜びました 「ああ。イズルード行きの船に乗った3人組みを見たって人がいたんだ。 背中に女の騎士を背負ったハンターとプリ―ストの3人組みだったそうだ」 ―間違いない、騎士子たんとはんたぽんだ!― 「先輩、早くイズルードへ向かいましょう」 「ああ、すぐに出発だ」 「よかったじゃない〜」 と、喜ぶWIZぽんに淫乱プリが抱きつきました 「なんだお前か。何しに来た?大人しく家で待っているんだ」 淫乱プリを見つけたアサシン先輩がそう言うと、 淫乱プリはぷっと膨れてこう言いました 「私は勝手についてきてるんだから指図しないでよ!  イヤだって言っても勝手に付いて行きますからね」 ―まったく― アサシン先輩は首を振ると 「わかった。勝手に付いて来い」 とだけいい、歩き出しました 「おい、WIZぽん、早くしないとイズルード行きの船がもうすぐ出るぞ」
船着場に着き、3人は船に乗りこみました 「あー気持ちいいわー」 甲板に出ると、淫乱ぷりは船の手すりから身を乗り出して海を覗き込みました 「おい、危ないし子供みたいな真似は止めろよ」 周囲の視線を感じてアサシン先輩は淫乱プリをなだめました 「別に平気ですよー。お構いなく」 淫乱ぷりは気にせずに身を乗り出して海を眺めています 「さっきだってWIZぽんがサボってるのを注意しましたしね。 あたしの方がしっかりしてるんだから」 「サボってなんかないですよ」 不意に話しを振られたWIZぽんは、ちょっと戸惑ってそう答えました 「あら、頭を抱えてしゃがみこんでたじゃないのさ。 あたしはてっきり探すの諦めたかと思ったわよ」 「それは・・・」 答えに詰まるWIZぽんをみて、アサシン先輩がこう言いました 「WIZぽん、すぐに諦めてしまうのはよくないぞ。それは悪い癖だ」 「でも、僕はそんなに強くないし、アサシン先輩みたいに大人じゃないし・・・」 「なら、諦めないで強くなるんだ」 アサシン先輩が言いました 「WIZぽん、昨日俺に強くなりたいって言ったよな? WIZぽんは強いってどんな事だと思ってるんだ?」 少し考えたWIZぽんはこう答えました 「それは、強力な魔力を持っていたり、すごい力があったり・・・」 アサシン先輩はうなずきます 「そうだな。それも「強い」ってことになる。でもな、もっと大事なことがあるんだ」 と、目の前に船のネズミを退治するために乗っている猫が1匹 積荷の陰から出てきました 「そうだな、WIZぽんはあの猫を捕まえられる事が出来るか?」
「え、あの猫をですか?」 WIZぽんは、アサシン先輩の言っていることが理解できずにそう尋ねました 「そうだ、あの猫を捕まえる。それだけだよ」 アサシン先輩はうなずきました 「うーん、やってみます」 そういうと、姿勢を低くしながら、WIZぽんは猫の背後へと回りこみました ―よし、まだ気がついてないぞ― 毛繕いをはじめた猫を見て、WIZぽんはそう思いました 「えいっ」 背後から飛びつくWIZぽん でも、寸前の所で猫はひらりと身をかわすと、荷物の上に上ってしまいました 「アサシン先輩、人間じゃあ猫を捕まえるのは無理ですよ」 WIZぽんは膝の埃をはらいながらそう言いました すると、アサシン先輩はニヤリと笑い、懐から1Z硬貨をだすとそれを糸に結び付けました 「無理かどうかやってみないとわからんぞ」 そう言うと、アサシン先輩は糸で結んだ硬貨を猫の足元に投げました
毛繕いをしていた猫は、足元に投げられた1Zに一瞬ビクッとしましたが、 奇妙な動きをする硬貨に興味を持ち、やがてじゃれ始めました 上手くじらしていくうちに、硬貨を追いかけて猫は箱の上から床へ飛び降り やがてアサシン先輩の足元へとやってきました 足元へと来た猫を造作も無くひょいと抱き上げると、 「どうだ、人間でも無理じゃなかったろ?」 と、WIZぽんにむかって微笑みました 「僕もそんな方法を知っていたら・・・」 と言いかけるWIZぽんに、アサシン先輩はこう言いました 「いいか、WIZぽん。経験もあるだろうが、何よりも戦いで一番大事なのは 自分の力を上手く使う事だ。今の方法も、WIZぽんが持っている道具でできただろ?」 そう言われると、WIZぽんは何も言い返せなくなってしまいました 「まず、自分の力で何が出来るか?どうすれば自分の力を最大限使いこなせるか? それを考えるんだ。魔力や腕力も力だが、それらは使いこなしてこそ初めて力に成るんだ そして一番大事なのが決して諦めない事だ。諦めるって言うのは、自分の持っている力を 見放す事だ。自分の能力を活かそうともせずに諦めてる奴は、どんな素晴らしい 力を持っていても、決して強くはなれない。俺も昔そう教わったのさ」 そう言うと、アサシン先輩は猫をトンっと足元に置きました 猫は素早く逃げると、箱の隙間に入りこみ見えなくなってしまいました ―自分の力を上手く使うこと、諦めない事― WIZぽんは、もう一度アサシン先輩の言葉を噛締めました 「夕方にはイズルードへ着くはずだ。それまではゆっくりしてよう」 そういうと、アサシン先輩は船酔いで甲板に転がっている淫乱プリのところへと歩いていきました
日が傾く頃に、船はイズルードの港へと到着しました 「うぅ・・・あたしはもうダメ。後は任せたわ」 淫乱プリはアサシン先輩に担ぎ出されて船から下りると 船酔いの青い顔をしてこう言いました。 「すまないが、まずどこかこいつを休ませるところを探そう」 アサシン先輩は閉口した顔をして、WIZぽんに言いました 宿を探し、へたばっている淫乱プリを寝かせてしまうと、すっかり夜になってしまいました アサシン先輩とWIZぽんは、町へと聞きこみに出かけました 「もう夜だが、俺は港とポタコさんにリーダーの行き先を聞きこんでくる WIZぽんは町の出入り口の守衛を当たってくれ」 「はい、絶対に手掛かりを見つけましょう!」 そう言うとWIZぽんとアサシン先輩は二手に分かれました 町の入り口へと歩いていく途中、WIZぽんは道の真中に なにか白いものが散らばっているのを見つけました ―あれはなんだろう?― WIZぽんは近づいてみました。それは、バラバラに散らばった花束でした 踏まれた花の一つを手に取り、WIZぽんは不意に胸騒ぎを感じました ―早く手掛かりを掴まないと― すくっと立ちあがったWIZぽんでしたが、いきなり立ちあがったので 前から歩いてきた一人の神父とぶつかってしまいました 「ご、ごめんなさい」 WIZぽんは謝りながら、神父の荷物を拾い集めました 「いや、お気になさらずに。こちらも前方不注意でしたので」 神父は膝の埃を払いながらそういいました 「すいませんでした」 WIZぽんはそう言うと、拾った荷物を神父に渡しました 「こんな時間から、町の外にでるのかね?」 WIZぽんから荷物を渡された神父はそう尋ねました 「はい、探している人がいるんです」 「そうですか、見つかるといいですね」 2人は挨拶を交わすと、それぞれの方向へと別れていきました
町の入り口に到着したWIZぽんは、入り口の守衛に話しかけました 守衛は椅子にもたれかかって、数人の男とトランプの賭けをやっていました 「すいません、人を探しているのですが、見かけませんでしたか?」 WIZぽんが尋ねると、守衛の男は振り向きもせずに 「ああ、みてないね」 とだけ答えて賭けに興じています その守衛の態度に少々腹を立てたWIZぽんは、少し強い口調で 「こっちは真剣なんです!ちゃんと見てください!」 と守衛にはんたぽんの写真を突き付けました 仕方なく、しぶしぶと面倒くさそうに写真をみた守衛は 「うーん。悪いが見ていないな」 といいました 「午前中は別の係りが詰めている。もしかしたらそいつが知っているかもな。 悪いが、明日の朝また出直してきてくれ」 とだけ言って、またトランプに没頭し始めました 「じゃあ、その午前中の係りの人のお家を教えてください」 WIZぽんは、粘ってみましたが結局相手にしてもらえませんでした ―仕方が無いや、また明日来るしかない― WIZぽんはしょんぼりとして宿へと帰りました
宿に戻ると、すっかり元気になった淫乱プリがWIZぽんを出迎えました 淫乱プリは、ちょっと申し訳なさそうに 「ごめんなさいね。迷惑かけちゃって。何か手掛かりは見つかった?」と尋ねました 「いえ、有力な手掛かりは何も」 WIZぽんは残念そうに首を振りました 「そ、そう。でも、アサシン先輩がまだいるじゃない。WIZぽんより全然 頼りになるし、きっと騎士子たんの手掛かりを見つけてくるわよ」 「そうですね」 淫乱プリの毒舌も気にならない様子でWIZぽんは答えました ―ちょっと、その反応だとこっちが困るわよ!― 拍子を外されてしまった淫乱プリでしたが、落ち込んでるWIZぽんを見て ―今はあたしには何も出来ないわね― そう思うとアサシン先輩が帰ってくるまで、静かにしている事にしました やがてアサシン先輩も宿に戻ってきましたが、手掛かりは掴めていませんでした 「港とポタを使って移動した形跡は無いな」 アサシン先輩が言いました 「でも、WIZぽんが話しを聞いた守衛は、頼りにならなそうだな」 WIZぽんからトランプに夢中だった門番の話を聞き、少し呆れ顔でそう答えました 「本当にひどかったですよ。あれじゃあ誰が通っているかなんか覚えていないだろうなぁ」 「ふむ・・・明日は午前中の当番の守衛の話しを聞くことと イズルードの宿屋をしらみつぶしに当たってみよう。一つずつ潰していくんだ」 アサシン先輩の話しにWIZぽんはうなずきました ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 12歳以上→このまま進む 12歳以下→3レス飛ばす
ご飯を食べた後、WIZぽんはなぜか落ちつかずに 宿のベランダから、外の町並みを眺めていました きらきらと瞬く家々の灯かりの向こう側には暗い海が広がり 微かではではありますが波の音が聞えてきました 「何してるの〜?WIZぽん」 隣の部屋から淫乱プリが出てきました 「寝つけないので、外の空気に当たっているんです」 WIZぽんは答えました 「ふーん。そうなんだ。あたしも少し夜風に当たろうかしら」 淫乱プリはそう言うとWIZぽんの横にやってきました 「んー海の風が気持ちいいわね」 そう言うぐっと胸を逸らして背伸びをしました 昼には上着で隠れているふくよかな胸の膨らみがつんと WIZぽんの目の前に現れました ―お、おおきいや― WIZぽんはドギマギしながら目を逸らしました 淫乱プリはそんなWIZぽんに気がつくとなにやら悪戯っぽく笑いました 「そ、そう言えばなんで淫乱ぷりさんは僕らに付いてきてくれるんですか?」 とWIZぽんが聞くと、淫乱プリはWIZぽんの肩に手を回し体を寄せてきました WIZぽんの顔をくすぐるブロンドの髪からは、 風呂上りの石鹸の香りがしました 「どうしてだと思う?」 淫乱プリはそう言いながら、WIZぽんの顔を下から覗きこみ WIZぽんの目を熱っぽいキラキラとする目でじーっと見つめました 「ふふふ、それはね、WIZぽんのことが気になったからなのよ」 そういうと、WIZぽんの首に白くて華奢な両腕をつたの様に絡ませ 顔を近づけると、赤いさくらんぼうのようなぷるんとした唇を耳元で動かしました 「ねぇWIZぽん、こっちの部屋に来ない?」 WIZぽんの肌に、固くつんとした淫乱プリの胸の突起が当たります その感触を楽しむ様に淫乱プリはWIZぽんの体をつうっとなぞっていきます WIZぽんは背中に心地よい寒気を感じました
「だ、だめですぷりさん」 震える声でWIZぽんは拒絶しました 「あら、でもこっちは違うみたいよ」 指先でなぶるように淫乱プリは下の方に手を伸ばしました。そして優しく撫でながら 「WIZぽんのお口とこれ、どっちの事を信じればいいのかしら?」 と言いながら、さらに愛撫の手を早めていきます 「ふっ?ふぁぁっ?く!」 WIZぽんの脳裏にあの日の快感が蘇りました 「さあ、どっちなの?」 淫乱プリが獲物を絡め取る蜘蛛の様に、WIZぽんの体に覆い被ろうとした時、 WIZぽんと淫乱プリはアサシン先輩にぽかりと頭を叩かれました 「まったく、お前達はこの非常時に」 アサシン先輩はあきれた様に腰に手を当てて、頭をさすっている淫乱プリと ぽかんとしているWIZぽんを交互に眺めて言いました 「お前はWIZぽんをからかうなとあれほど・・・ WIZぽんも2度も油断するなよ。まったく情けない」 WIZぽんはしばらくぽかんとしていましたが、正気に戻って真っ赤になると 「あ、ありがとうございました」とアサシン先輩に言って急いで部屋に戻りました 「あいつは免疫がないんだから、あんまり悪ふざけはするなよ」 WIZぽんが部屋に戻ると、アサシン先輩は淫乱プリに言いました 「あら、やきもちかしらん」 「ばか!真面目に話しを聞けよ」 アサシン先輩が怒鳴ると、淫乱プリはぷいっとそっぽを向いてしまいました 「いつもいつもWIZぽんって、たまにはあたしの事も気にかけたらどうよ!」 そう言う淫乱プリの目にはうっすらと涙が溜まっていました 「あんたの目にはあたしのことなんかどうでもいい位にしか映ってないんでしょ!」 そういうと、淫乱プリはアサシン先輩の事をきっと睨み、部屋に戻ってしまいました 「あ、おい」 バタンと閉まった扉を見て、アサシン先輩は深い溜め息をつき 最後に自分を睨んでいった淫乱ぷりの顔を思い出していました 赤く上気した頬に赤が印象的な唇。キラキラと輝く鋭い潤んだ瞳からは一筋の涙が流れていました それは、いつものとぼけた淫乱プリとは違う魅力的な大人の女性の顔でした ―まいったな― アサシン先輩は空に出ている月を眺めました 月は、あのフェイヨンでお姉さんと見たときと同じように輝いていました
次ぎの日の朝、WIZぽんは寝苦しさと胸騒ぎで早くに目を覚ましました ―騎士子たんに何か悪い事が起こっているんだろうか― 窓の外を見ると、表はまだ真っ暗でした 日が昇るのを待ち、WIZぽんは一人町の守衛のいる詰所にいきました WIZぽんが到着すると、ちょうど昨晩のトランプ守衛と午前中の担当らしき人が 交替をするところでした 「すいません、人をさがしているのですが」 WIZぽんは2人にはんたぽんの写真を見せました 「ああ、こいつなら確か昨日の朝にイズルードから出ていくのを見かけたよ」 午前中の守衛はそう答えました 「ほんとうですか??で、どちらの方に行ったかわかりますか?」 「プロンテラ方面に行ったと思うよ。まだ通行人が少ない時間だったし良く覚えてる。間違い無いね」 「ありがとうございます!」 WIZぽんはそうお礼を言うと、宿へと急いで戻りました
―トントントン― 誰かがノックをする音に、さっき寝ついたばかりの神父は起こされました ―今日は用事もないし、誰が来たのだろう?― 「今行きますよ。少し待ってておくれ」 神父はそういうとベットから身を起こしました 関節がまるで油切れを起こしているかのように動かすのが重苦しく感じました 昨晩はイズルードでずっとはんたぽんと騎士子たんの帰りを待っていて プロンテラの教会に戻ったのが昼、横になって体を休めたのが昼過ぎの事でした ―さすがにこの歳になると徹夜は堪える― 自分の年齢が改めて思い出され、神父は苦笑しました 簡単に身支度を整えてドアを開けると、そこには3人の男女が立っていました 「お久しぶりです、神父さん。お変わりないですね」 アサシン先輩は挨拶をしました 「おお、お前はあのノビたんか!いやぁ、見違えたよ。立派になったもんだ!」 一瞬誰だか分からなかった神父ですが、アサシン先輩に気がつくと懐かしそうにそう言いました 「最近古い友人が良く訪ねてくるものだ。ところで、後ろの2人は?」 アサシン先輩は神父にWIZぽんと淫乱プリを紹介しました 「君は昨日荷物を拾ってくれた子か。あの時はすまなかったのう」 「いえ、こちらこそぶつかってしまって・・・」 「ちょっとぉ〜、あたしだって転職の時にお目にかかっているのよ〜 女の顔と名前を忘れるなんて最低よ」 「そうか、皆すまないすまない。歳を取ると思い出すのに時間がかかってしまうんじゃ」 神父は少し申し訳なさそうに言いました 「さあ、何もないところだが、入ってゆっくりとくつろいで行ってくれ」
神父の部屋は質素でこじんまりとしていました WIZぽん達が部屋に中に入ると、神父は奥の部屋から飲み物を持ってきました 「狭い所だがゆっくりとして行ってくれ」 3人に飲み物を渡すと、神父はそう言いました 「いえ、それが余りゆっくりともしていられないのですよ」 アサシン先輩が言います 「率直に尋ねますが、リーダーがここに来ませんでしたか?」 神父はその言葉を聞くと一瞬警戒したような表情を見せましたが、すぐに平静を装うと 「はんたぽんは来とらんよ。あいつは出入り禁止だ」と言いました 「出入り禁止ってどういう事ですか?」WIZぽんは尋ねました 神父はしばらく考えていましたが、アサシン先輩の方を見ると 「お前の仲間なら話しても平気だろう」 と言い、はんたぽんの事を話しはじめました 「まあ、良くある話しなんだが、臨時での仲間を組んだ時に、問題のある 行動を起こすメンバーがたまにまじることがあるんじゃよ」 神父の話によるとプリたんの事件の後、はんたぽんが組んだ臨時のパーティーの中に 支援をもたつく上に無謀な行動でパーティーを危機に陥れる姫プリがいたそうです はんたぽんがいくら注意しても聞かないので、強制的にパーティーから追放しましたが 運が悪い事に彼女は教会トップの権力者の娘でした そのため、はんたぽんは狩場で姫を放置して危険に晒したと教会から訴えられてしまい 争った結果、臨時広場と教会への出入りを禁止されてしまったそうです 「一言謝れば、ここまで厳しい罰を受けなくても良かったのに 結局奴は自分の主張をして受け入れられないと分かったら そのまま処罰を受け入れて、姿を消してしまったんじゃ」 とここまで話すと、神父は手元にある飲み物を一口、口にしました 「そういや、あたしも昔そんな話し聞いたことあるわね」 淫乱プリが言いました 「へぇーそうなんですか」 「そうよ。意外とこの業界狭いからねぇ。まあ、顔とかまでは詳しくは知らなかったけど 要注意人物って事で私の所にも教会から連絡が来たんだから」 ちょっと偉そうにWIZぽんに話す淫乱プリ 「俺達の前から姿を消している間に、リーダーにそんな事があったのか」 腕を組みながら神父の話しを聞いていたアサシン先輩が言いました 「ああ、ギルドの事があってから一時奴は姿を消したが、しばらくしてまた戻ってきたんだよ またもう一度ギルドを作ってやるんだって言ってな。結局教会から訴えられた事がもとで その夢もかなえる事は難しくなったんだが・・・・」 神父は言いました 「そうだ、久々に来たのだし、裏にあるプリたんのお墓にお参りしていってやりなさい」
神父は、外に出たWIZぽん達をプリたんのお墓の前に案内していきました それは、余り人も来ない墓地の片隅にありました 墓石の横には色とりどりの花が咲き乱れ、その上には蝶が飛んでいます アサシン先輩はプリたんのお墓を見つめると、悲しそうで懐かしそうな複雑な表情を浮かべて 胸の前で十字を切るとしばらく黙祷をささげました WIZぽんも真似をしてお墓の前に立つと胸の前で十字を切り祈りを捧げました 三人がお墓参りを済ませると、アサシン先輩は神父に言いました 「さっきの話しですが、リーダーはここに来ていますね?」 「いや、奴は出入り禁止だ。わしは奴とは会っとらんぞ」 頑なに否定する神父に、アサシン先輩は今までの経緯を話しました 神父は黙ってアサシン先輩の説明を聞いていましたが やがて重い口を開くとこう言いました 「わかった。そう言う事情なら本当の事を話そう」 神父は、はんたぽんが昨日来た事、そして今朝までに起きた事を 自分が知っている範囲で必要な所だけかいつまんで説明していきました 「はんたぽんは、あのお嬢さんを家に返しにいくと言っていた わしが知っているのはそこまでだが、わしが教会へ戻る前にもう仲間と共に出発したよ」 「へぇ〜今朝の話しだし、入れ違いだったのね。今から追えば追付くんじゃない?」 淫乱プリが言いました 「ええ、怪しい術をかけられたって言うし、騎士子たんが心配です」 WIZぽんはいても立ってもいられないといった感じで言いました 「すぐにフェイヨンに戻りましょう」 アサシン先輩がうなずきます 「ああ、一刻も早く帰ろう!」 いつのまにかあたりは薄暗くなり、太陽は最後の輝きに照らされて空は赤く染まっていました その上にはもういくつかの星が輝きはじめています ―騎士子たんは近くに居たんだ― 昨日感じた胸騒ぎを思い出し、WIZぽんは自分の鈍さを責めました 「ちょっと待ちなさい!」 立ち去ろうとしていたWIZぽん達に神父が声をかけました 「わしも一緒に行こう。少し待っておれ」
(一方その頃フェイヨン・・・) お姉さんはひんやりとした空気を感じてふっと目を覚ましました ―あ、いつのまにか寝ちゃったのね― つい先日までWIZぽんや騎士子たんがいた家の中はがらんとして静まり返っています 窓の外から射し込む日差しは弱くなり、家の中は薄暗くなっていました お姉さんは窓に近づいて外を見ました。太陽はもうフェイヨンの山に隠れてしまっています 空は徐々に闇に支配され、庭では虫が数匹、澄んだ声で鳴いていました お姉さんはふいに心細さを感じました ―今まで一人でも不安になった事なんて無かったのに!― お姉さんは窓に映った自分の顔に向かって厳しい表情をしました すると、今までの気弱な表情に変わり きりっとしたお姉さんが窓ガラスに映ってお姉さんを睨み返しました ―これで良し― と、お姉さんが窓から離れようとした時、騎士子たんの居た部屋からかすかな物音がしました 「誰!?」 お姉さんはふっと我に帰り、騎士子たんの部屋の扉を開けて中に入りました 部屋の窓は半分だけ開いていてカーテンが風に吹かれてかすかに揺れています そして、ベットの上には静かに眠っている騎士子たんがいました お姉さんは眠っている騎士子たんに近寄るとそっと頬に触れてみました ひんやりとした手触りと、そしてかすかな呼吸を手のひらに感じました 「あの人だわ」 お姉さんはつぶやくと「あの人」、はんたぽんを追って家を飛び出しました
はんたぽんはアルベルタへの山道を下っていました ―もうこんな時間か― もう日も落ちてから大分経ちます。眼下には、広がるアルベルタの町の灯かりが ゆらゆらと輝いていました ふいに、はんたぽんは歩くのを止めて立ち止まりました 「待ちなさい!」 はんたぽんの後ろには、ペコペコに乗ったお姉さんが追い付いていました 声をかけられたはんたぽんは静かに後ろを振り返ります そして、お姉さんの目をしっかりと見つめました 「どうして、どうして何も言わずに行くの?」 お姉さんはまだ肩で息をしながらはんたぽんに尋ねました 「何も言わなければ何も分からないじゃないの!何か言いなさいよ!」 しばらく二人の間には沈黙が流れました 「すまなかった」 やがてはんたぽんが口を開きました 「お前達の言っていた事は正しかった。あの子には俺のせいで辛い目に逢わせてしまった だから、俺は自分の落とし前をつけてくる。あの子が元に戻る様に全力を尽くす」 「ふざけないでよ!」 お姉さんが叫びました 「あなたはそうやっていつでも一人で勝手に決めて勝手に抱え込んで! 付き合わされるこっちは迷惑なのよ!」 はんたぽんは何も言わずにじっと黙っています そんなはんたぽんを見て、お姉さんは一層いらつきました 「あなたにばかり任せておけるわけないじゃない!私も一緒に行くわ!」
はんたぽんはお姉さんの表情を見つめていました お姉さんの表情は怒ったように見えましたが、その目はかすかに潤んでいました やがて、はんたぽんは首を振ると、静かにお姉さんに話しました 「悪いが連れていけない。お前がいなくなったらあの子はどうなる?あの家には誰も居ないのだろ?」 「それは・・・」 お姉さんは言葉に詰まりました はんたぽんは一瞬下を向き苦痛な顔を見せると今度は優しくお姉さんに言いました 「あの子は今傷ついている。だから、姉であるお前には側に居てやって欲しい そして、あの子の心を救ってやってくれ。俺は、もう己の不甲斐無さで不幸になる人を 見たくないんだ。だから、俺は・・・俺のなすべきことをしてくる」 と、お姉さんの表情が崩れ、目からは涙が溢れました 「あなたは馬鹿よ。妹はあのぷりたんじゃないのよ・・・いくら自分を責めても どんな償いをしても、もうあの子は生き返らないのよ」 はんたぽんは目を逸らすと、お姉さんの話しを黙って聞きました 「そんな風にいつまでも囚われているから、ずっと前に進めないんだわ」 やがてはんたぽんは顔を上げると、少し哀しい表情をしてお姉さんに言いました 「それが俺の罰なんだ」
「おーい」 山の麓の道の方から声がします 話しをしていたはんたぽんとお姉さんは声の方を見ました 「エラケインたちをみたってやつをみつけたぞ」 やってきたのはすみやんでした 「ふねでファロスとうだいへむかったそうや」 すみやんはそう報告すると肩で大きな息をつきました 「そうか、ファロスだな・・・よし、出発するぞ」 「まかしときいや」 すみやんが歩き出すと、はんたぽんは振り帰ってお姉さんに言いました 「お前達の説教は、帰ってきてからゆっくり聴くことにする」 「そう・・・」 「俺は、あの子を助ければまた前に進めるようになるのかもな・・・」 そういって、はんたぽんは少し前を行くすみやんの後を追って歩き出しました 「馬鹿・・・」 お姉さんははんたぽんの背中に向かってそうつぶやくと、今度は大きな声で叫びました 「必ず妹を助けて戻ってきなさい!帰ってきたらぶん殴ってやるんだから!」 しばらく2人の後姿を見ていたお姉さんでしたが、やがて 姿が見えなくなるとフェイヨンへと戻っていきました 「あのおんなないてたやん。こいびとか?」 追い付いたはんたぽんにすみやんが言いました 「いや、昔の古い友人だ」 はんたぽんはそう言うと、アルベルタへの道を急ぎました
お姉さんが家へ帰ると、家の中は真っ暗でした ―遅くなっちゃった。妹の分もご飯作らないとね― ペコペコを小屋に繋ぐと、お姉さんは家の中に入ろうとしました と、不意に庭に光の柱が立ち上りました お姉さんはとっさに距離を取ると、油断なく手にしたトライデントを構えました と、空間からドサドサと何人かの人間が固まって落ちてきました 「いった〜い。ちょっと何処触ってるのよ!エロじじー」 「う、うるさいお前さんのポタが下手糞だからじゃ!」 「な、なんですって〜しつれいしちゃう」 「お前ら!早く降りてくれ俺の上で喧嘩をするな!」 それは、プロンテラから戻ってきたWIZぽん達でした 「お姉さん、帰りました!騎士子たん来てませんか?」 最後にワープポタ―ルから現れたWIZぽんは、後ろの人間ピラミッドを踏んずけると お姉さんの前にとんっと降りて開口一番尋ねました お姉さんはしばらくあっけに取られていましたが、やがて面白そうにお腹を抱えて笑いはじめました 「ちょっと!WIZぽん蹴ったわね!後そこの粗忽騎士!笑ってるくらいなら助けなさいよ〜」 淫乱プリが恨めしそうに言います やがてお姉さんは笑うのを止めるとにっこりと笑顔を見せてこう言いました 「皆お帰りなさい、そしてお疲れ様。妹は帰ってきたわよ」
WIZぽんは家に入ると真っ先に騎士子たんの寝ている部屋へと入りました ―騎士子たん・・・― WIZぽんはベットで寝ている騎士子たんの手をそっと握りました 騎士子たんの表情は穏やかでシーツのかかっている胸はゆっくりと上下しています WIZぽんは騎士子たんの手をぎゅっとしました。その手は痩せていて少し冷たく感じました。 騎士子たんの手の感触を感じ、WIZぽんは騎士子たんの置かれている状況を理解しました 「遅くなってごめんね」 WIZぽんはそう言うと、騎士子たんの手を自分の頬に押し当てて 嗚咽を漏らしながら静かに涙を流しました 「今は二人きりにしてやろう」 アサシン先輩は部屋の外から様子を伺っている淫乱プリに向かって言いました 淫乱プリはちょっと心残りの表情を浮かべましたが、そっと扉を閉めると真面目な顔をして 「純愛もいいものね」としみじみと言いました。 「そうね。自分のことを大切に思ってくれる人がいる事はとても幸せだわ」 一人ぼっちの時に感じた不安を思い出しながら、お姉さんが答えました 「そうじゃな。人の幸福とは誰かに必要とされた時に感じれる物だ」神父が言います 「昔、良くそういったお説教のお話をしてくれましたね」 アサシン先輩が苦笑いを浮かべながら言いました 「おっとすまん。ついついお前さんがたを前にして昔のくせがのう」 神父も苦笑いを浮かべます。場に和やかな空気が流れました
やがて、WIZぽんが騎士子たんの部屋から出てきました 「妹の容態はどうだった?」 お姉さんが優しく尋ねました 「とても穏やかに眠っていましたよ」 お姉さんに答えるWIZぽんの表情は微笑を浮かべた穏やかな顔でした。しかし、その目には 何か決意のような物が見て取れました ―いい表情だ― WIZぽんの目を見てアサシン先輩はそう思いました 「騎士子たんは、このままだと助かりませんね?」 WIZぽんは静かに神父に尋ねます WIZぽんの言葉を聞いて、神父は黙ってこくりと頷きました 「今はただ眠っているだけに見えるが、このままだと決して目覚める事はない 食事も出来ずにやがて衰弱して死んでしまうじゃろう」 「そんなことって!!」 お姉さんがショックを受けた表情をして言葉を詰まらせました 「でも、治す方法がある。だから僕達に付いて来た。そうですよね?」 WIZぽんは淡々と質問を続けます 「そうじゃ。あの子の異変の原因はわかっておるからな。 今ははんたぽんがあの子を治すために動いておる」 神父は今までの経緯や騎士子たんにかけられた呪の事、解き方など全て説明しました やがて神父の説明が終わると、WIZぽんはしっかりと話しはじめました 「僕は、これから淫徒プリを追いかけようと思います。僕の意思で」
「はんたぽんならファロス灯台に向かったわ。さっき聞いたもの それと、私も行くの。もう待つのは嫌だわ」 お姉さんが言いました 「リーダーにはこの前の借りを返さないといけないな」 手のひらの中で短剣をくるりと回しながら、アサシン先輩が言います その様子を見ていた淫乱プリは 「ちょっと〜なんか面白そうじゃない。私も混ぜなさいよ」 と言いながらWIZぽんにまとわりつきました 「神父さん、騎士子たんのことお願いしてもいいですか?」 WIZぽんは神父に聞きました 「ああ、行っておいで。じゃが、早く戻ってくるんだぞ」 「はい、元気な騎士子たんを取り戻してきます」 WIZぽんは皆の顔を見まわすと、力強く頷きました 朝一番の船でファロスへ向かう為、夜明けまでの短い時間、出発に向け各自用意を始めました WIZぽんは騎士子たんの寝ている部屋で装備と持ち物を揃えると ふぅっと溜め息をつき目を閉じました まぶたの裏ではポタールの中でニヤニヤと笑っていた淫徒プリの顔が浮かんできました ―あんな奴のせいで騎士子たんが!絶対に許さないぞ!― 再び目を開けると、ベットに眠っている騎士子たんに話しかけました 「待っていてね騎士子たん。必ず元のように元気にしてあげるよ。そうしたら・・・」 ここで言葉を止めると眠っている騎士子たんの唇に軽くキスをしました やがて顔を上げると、騎士子たんの手を握りそっとつぶやきました 「夜が明けるまで、僕は隣にいるよ」 心なしか騎士子たんの鼓動が少し激しくなったような気がしました 部屋にはベットに眠る騎士子たんと守る様に寄り添っているWIZぽんしかいません 騎士子たんの息遣いを聞きながらやがてWIZぽんも眠りへと落ちていきました
(場面は変わりファロス灯台) ―もうすぐ夜明けか― 薄明るい水平線を見ながらはんたぽんは視線を足元へと移しました 足もとには砂浜が広がり、そこには点々と足跡が残っていました 足跡は砂丘をずうっと上ってそのまま彼方に見える密林へと続いています 「おい、平気か?」 はんたぽんは後ろを振り向くとカートが砂に埋まって悪戦苦闘しているすみやんに声をかけました 「べつにへいきや」 すみやんは真っ赤な顔をして力任せにカートを押しています はんたぽんはカートのふたを空けると入れてある荷物を両手に持ちました 「よけいなおせわや」 少し軽くなったカートを二人で押すと、砂の中に埋まった車輪がわずかずつ動き やがてカートは砂の中から無事に脱出しました。砂丘の上まで登ると、二人は大きく肩で息をつきました 「見ろ、夜明けだぞ」 砂丘の上から見下ろす海の水平線から顔を出そうとしている太陽に照らされて 遥か彼方の雲がピンク色に輝いています 二人はしばらくの間夜明けの空が変化していく様子を黙って見ていました 「・・・厄介なことに巻きこんで済まないな」 空を見つめながらはんたぽんは小さくつぶやきました すみやんは驚いた様な表情をしてはんたぽんを見ましたが、同時に足元から 「―なかまやん、きにするな―」という声がしました 「なんにもいってないぞ」 ちょっと困惑気味のすみやんをはんたぽんはにやにやと見ています 「いつも、そう素直に答えておけば誤解を受けることも無いぞ」 「さてはとーきーか!」 ちょっとむくれながらすみやんが答えます 「がんこなのははおたがいさまや」 しばしの間、二人は楽しそうに笑いました 「こんかいのやまがかたづいたら、どうするん?」 すみやんの質問にはんたぽんはちょっと考えた後、こう答えました 「そうだな・・・旅に出ようと思う。もう一度、自分が何をするのか まだ出来る事があるのか・・・それを考え直したいんだ」 「そうか」 すみやんは、水平線に視線を移し顔を出した太陽のまぶしい光に目を細めました
(フェイヨン同時刻) ―まぶしいな― 山の隙間から差し込む朝日にアサシン先輩は目を細めました 足もとの草の葉には朝露が光っています 「おはよう、ずいぶんと早いのね」 後ろを振り返ると、装備を整えたお姉さんが立っていました 「いつ出発しても大丈夫ですね。他の二人はもう起きましたか?」 「ううん。まだ寝ているわ」 お姉さんは答えました 「ねえ、ちょっとだけ・・・久しぶりに手合わせをしてみない?」 アサシン先輩はちょっと考えていましたが 「いいですね。でも、お手柔らかに頼みますよ」 といってにこりと笑いました 「じゃあ、いくわね」 二人は互いに間合いを取ります。そして、アサシン先輩は短剣を、お姉さんは槍と盾を それぞれ構えました しばらくの静寂の後、前に出たのはアサシン先輩でした お姉さんは両手に握られた二本の短剣を盾でいなしながら身をかわしました しばらくは武器の空を切る音とぶつかり合う音が辺りに響いていました 「大分強くなったわね。でも・・・」 お姉さんは槍を握る手に力をこめてバッシュを撃ちました 「くっ・・・!」 一瞬体がしびれたアサシン先輩が視界を取り戻した時には 目の前で槍を突き付けながら微笑んでいるお姉さんが居ました 「まだまだね」 「ええ、まだまだですね」 お姉さんは槍をすっと納めるとアサシン先輩に手を差し出しました アサシン先輩は膝の埃を払いながらお姉さんの手を握って立ち上がりました 「さあ、そろそろ二人を起こして出発しましょうか」 アサシン先輩はそう言うと家の方へと向かって歩き出しました 「ねえ、待ってよ」 家の方へと向かって歩き出すアサシン先輩にお姉さんは声をかけます 「前に・・・一緒に月を見たときに聞いた質問、まだ答えをもらっていないわ」 アサシン先輩は足を止めてお姉さんの方を見ました 「ええと、なんでしたっけ?」 「昔の約束、おぼえてる?」 お姉さんの姿は朝日の中に溶け込み、その表情はアサシン先輩からは見えませんでした
―昔の約束、俺は忘れた事はありませんよ・・・でも、まだ今の俺じゃ・・・― 「・・・ええ、覚えてますよ」 しばらく考えた後に、アサシン先輩は答えました 「でも・・・」 と、アサシン先輩の言葉をさえぎって お姉さんの唇がアサシン先輩の口をふさぎました ―長い―と感じられる時間が過ぎました やがて唇を離すと、お姉さんは悪戯っぽくふふふっと笑い 「これは敢闘賞よ」 と言いました 「今度戦う時は、カタールを使いなさい」 「まいったな。やっぱりばれてましたか」 アサシン先輩は頭をかきながらお姉さんに笑顔を返しました 「妹を治して・・・全てが元に戻ったら、帰ってきてまた続きをやりましょう」 「ええ」 「次はちゃんと私に勝ちなさい」
窓から差し込む朝日でWIZぽんは目を覚ましました 部屋の隅には昨日用意した荷物が置いてあります。WIZぽんは静かに起きると 着替えを手早く済ませて部屋を出ました 外へ出て顔を洗おうとすると出口の扉の前に淫乱プリが立っていて外の様子を何やら見ているようでした 「おはようございます」 WIZぽんが後ろから声をかけるとびくっとした様子で 「あ、あらWIZぽんじゃない、おはよう。びっくりしたじゃないの」 と言いました 「・・・外に何かあるんですか?」 いつもと様子の違う淫乱プリの態度に不審に思ったWIZぽんは、外を覗こうとしました 「あ、こっちは見ちゃだめ。WIZぽんは何しに来たのよ」 「いえ、外へ顔を洗いにこうかと思って・・・」 「そう。なら、裏口から行きましょうよ。あたしもいくからさ!」 不審がるWIZぽんの腕を強引に掴んで淫乱プリは裏口へとWIZぽんを引きずって行きました ―なんかおかしいけど・・・まあいいか― 二人が顔を洗い身支度を整えて戻ると、 部屋にはすでに身支度を終えたアサシン先輩とお姉さんが二人を待っていました 「さあ、出発するぞ。今から出れば朝のうちに船に乗ることが出来る」 アサシン先輩の言葉に一同は頷きます 「リーダーは夜の最終の船で出ているはずだから、これから急げば今日の夕方には追いつけるはずだ」 「そうですね。神父さん・・・まだ寝てるけど、僕達は時間を大切にして直に出発しましょう」 WIZぽんが言いました 「時間が経つと、どんどん後を追うのも難しくなってしまいます。でも今ならまだ間に合う!」 今度は、WIZぽんの言葉に皆が頷きました
しばらくして神父が目を覚ました時には、お姉さんの家には騎士子たん以外は誰も居ませんでした ―なんじゃ・・・みんなどこへいったんじゃろう?― 家の廻りを一周してきた神父はキッチンのテーブルの上に一枚の紙が置いてあるのを見つけました そこには、簡単なメモが書いてありました >神父さん、時間が無いので先に出発をします。騎士子たんの事をよろしくおねがいします。  必ず騎士子たんの事を治して来ますので騎士子たんが辛い思いをしない様に守ってください >まだ御休みの様でしたので、声を掛けずに出ます。失礼をお許し下さい。  リーダーの事、この事が片ついたらまたゆっくりと話をしましょう >神父さん、ごめんね。気持ち良さそうに寝てるから起こさないで黙って出るわね  食べ物は入り口の横の箱に大体揃っているから使って下さいね。  後、庭の花壇に水を上げておいてくれると助かるわ。それでは妹の事、お願いします >若い娘と一緒だからって悪いことしちゃだめよー。こいつらの面倒はあたしが見るから  安心してまってるといいわ。それじゃあ、行ってくるわね 神父は読み終わるとふうっと溜め息をつき、南の空を見やりながらつぶやきました 「まったく・・待っとるから早く帰ってくるんじゃぞ。帰って来たらわしの溜まった分の仕事を手伝わせるからな」
(その遠い南の空の下・・・) 「くそっ」 目の前の虫を追い払いながらエラケインは舌打ちをしました 「おい!いったい何時までこんな所に居る気だ??」 「本当よ!こんなじめじめした所は本当にうんざりだわ!」 エラケインに同意する様にWiiizもヒステリックな声をあげます 「なあ、淫徒プリさんよぅ、早いとこ先を急ごうぜ。このままだと追いつかれちまうよ」 エラケインがいらいらした声で淫徒プリに話しかけます 淫徒プリ達は昨日の晩からずっとこの密林の中から動かずに居ました ―全くうるさい雑魚どもだ― 淫徒プリはうんざりしながらエラケイン達の方を振り返りました 「そんなに嫌なら降りてもいいんだぞ?ばらばらになった方が はんたぽんも仕事をしやすくなるだろうしな」 淫徒プリが軽く脅しをかけると、二人の表情は不満から不安へと変わっていきました 「あれだけの事をしたんだ。当然お前らにはそれなりの覚悟があったんだろ? それとも、私の首を土産にして今から謝りにいくか?」 淫徒プリは二人向かって機械的な調子で話しました その無機質な話し方は、エラケイン達の不安感を一掃煽ります 「お前たちは裏切り者なんだ。帰るところなんてもう無いんだよ」 淫徒プリは断言する