
国公立大学(西日本)
京都大学 大阪大学 神戸大学 名古屋大学 岡山大学 広島大学 九州大学 熊本大学 広島市立大学
大阪大学
豊中キャンパス
1931(昭和6年)に大阪帝國大學として開学。法、経済、文、人間科学、理、工、基礎工、薬、医、歯の10学部。とくに理系は日本でも五指に入るレベルの大学である。
▼文学部 人文学科1学科だが、6学科目20専修の分野がある。1年次の2学期に所属の専修を決定する。
・人文基礎学 哲学・思想文化学、倫理学、中国哲学、インド哲学
・歴史文化学 日本史学、東洋史学、西洋史学、考古学
・地域文化学 日本学、人文地理学
・言語基礎学 日本語学
・文学表現学 日本文学・国語学、比較文学、中国文学、英米文学・英語学、ドイツ文学、フランス文学
・芸術文化学 美学・文芸学、音楽学・演劇学、美術史学
▼人間科学部
昭和47年に文学部から独立して誕生した、日本初の人間科学部。行動学、社会学、人間学、教育学、ボランティア人間科学の5つの学科目がある。行動学科目は社会心理学、認知行動学、臨床死生学(人の老いや死、医療などを考える学問)、神経科学、自然人類学などの専門家が多く在籍し、理系色が濃い。人間学科目は哲学、社会思想史、文化人類学などを学ぶ。教育学科目は学問としての教育学を学ぶ分野。教育心理学、臨床心理学の教員はこちらに集まっている。まだ歴史の浅いボランティア人間学科目は国際協力論、ソーシャルサービス論の専門家で構成されている。
2年次後半からの専門教育は吹田キャンパスの学部棟で行なわれる。学部棟はかつては「人」の字の形をした校舎だったが、現在は増築でかなり変化している。「人」の字の校舎は古くて薄暗いが、増築した校舎はガラス張りのハイテクビルでギャップが激しい。文理融合を標榜し、理科系の分野も学ぶためか吹田キャンパスにあるものの、学生は学部内でまとまり、独立した雰囲気が強い。図書館は医学部の「生命科学系図書館」が一番近いが、学部図書室だけで20万冊の蔵書がある。附属の「比較行動実験施設」では研究用にニホンザルを飼育している。卒論は必修。就職活動のために、2003年から学部専用の進路支援室が設置された。大学院進学率は2割。
●臨床死生学 (参考・日本臨床死生学会)
死と老いに関する問題についての行動学的な視点から解明していく。人間の行動の臨床的研究特に死を間近にした人間の心理や行動を精神医学、心身医学の立場から研究する。さらにホスピスというターミナルケアの現場で末期患者やその家族の具体的ケアを通してそのニードを洞察し、援助の実際について臨床的研究を行う。また、高齢者の再適応に及ぼす生涯学習について多角的な研究を行う。
▼工学部
2年次後半から吹田キャンパスで学ぶ。大学院を中心とする組織となっており、大学院進学が当然で7割が進学。優秀な学生は3年次で大学院に進学できる。OBには新幹線のぞみ500系、アサヒスーパードライ、液晶ポリマー、超高活性触媒を開発した人がいる。工学部だけで毎年約2000社から求人があり(1学年の学生数の約4倍)、就職希望者は全員が就職。製造業が7割。
・応用自然科学科…入学するとまず物理学、化学、生物学の基礎を学び、2年次から応用化学、応用生物工学、精密科学、応用物理学の4つのコースに分かれる。4年次には各コースにおいて関連する専門領域の大学院の研究室に配属されて卒業研究を行ない、大半の学生がそのまま大学院に進学する。
・応用理工学科…機械工学、マテリアル応用工学、マテリアル科学、生産科学の4分野があり、原子・分子レベルでの新素材創成から、自動車・航空宇宙までの広範な領域を対象としている。機械工学はさらに機械物理工学、機械システム工学、電子制御機械工学の3コースに分かれる。
・電子情報エネルギー工学科…電気工学、電子工学、通信工学、情報システム工学、エネルギー量子工学を学ぶ。大学院進学が85%。湯川秀樹以来の伝統で核物理学に強く、半導体、超伝導、光通信、超LSI、ナノテクノロジー、原子力などに興味がある学生には、世界最高レベルの研究環境が用意されている。
・地球総合工学科…船舶海洋工学、土木工学、建築工学、環境工学の4分野。環境工学コースは日本で初めてできた。環境保全、エネルギー、資源循環などを学ぶ。
▼基礎工学部
国立大学唯一の基礎工学部。理学と工学が融合した学部で、こちらも7割が大学院に進学。3年次からの飛び級進学をする学生も多い。半導体、ナノテクなどの最先端の工学分野で多くの成果を上げている。
・電子物理科学科…エレクトロニクス、物性物理科学の2コース。エレクトロニクスコースはエレクトロニクスとフォトニクスを学ぶコースで、数学、電気・電子回路学、電磁気学、量子力学、半導体電子工学などが専門分野。アモルファス半導体太陽電池の基礎研究で世界をリードしている。ナノメートル(10億分の1メートル)サイズの半導体素子の基礎研究でも有名。物性物理科学コースはさまざまな物質の電気、磁気、光、熱、力学的な性質を物理学的に研究する。こちらもナノテク・ナノサイエンスを中心に学ぶ。
・化学応用科学科…合成化学、化学工学の2コース。前者は理学的化学、後者は工学的化学。
・システム科学科…機械科学、電子システム学、生物工学の3コース。生物工学コースは生物の持つしくみを機械に応用するバイオテクノロジーの分野。遺伝子工学、細胞生物学、コンピュータ科学、脳科学なども学ぶ。
・情報科学科…計算機科学、ソフトウェア科学、数理科学の3コース。国立大学の情報工学では最も長い歴史を誇る。
★独立大学院
情報科学研究科
生命機能研究科
「いちょう祭」見学記 2003年4月29日
大阪大学には3つの学園祭がある。春の「いちょう祭」、秋の「まちかね祭」、医学部の「中之島祭」である。今回はそのうちの春の学園祭である「いちょう祭」に足を運んだ。
いちょう祭は「創立記念日を祝し、新入生を歓迎するとともに、教職員、学生の親睦をはかる催し」という位置付けである。4月末のみどりの日という微妙な時期のため、それほど知名度は高くない。春に新入生歓迎の学園祭をやる大学はいくつかあるが、正直模擬店ぐらいしかなくて、わざわざ私が見に行くほどの価値があるとはいえない学園祭が多い。そんな中でも、わざわざ高い交通費を出して大阪まで行くということは、それだけの価値があると判断したためである。それはおいおい明かにしていこう。
大阪大学が大阪市にないことを知っている人は多いだろうか。それでも、やはり本部が吹田市というのは、旧帝大としては盛り上がりに欠ける。広島大学や琉球大学もそうだが、キャンパスが県庁所在地から離れてしまった国立大学は概して寂しいものだ。
まずはモノレールで柴原駅に降りる。いちょう祭は豊中、吹田両キャンパスで同時開催され、連絡バスも走っているので、まずは豊中キャンパスを先に見ることとした。古ぼけた校舎は徐々に改築されて綺麗になってはいるが、大学のメインとなる校舎が存在しないチャランポランな設計のキャンパスは整合性に欠け、美しいとはいえない。ゆえに、そのキャンパスを代表するビューポイントが存在しないため、いい写真が撮れない。
そんな不満を抱きつつ、教養教育の校舎群に向かうと、30件ほどの模擬店が出ていて、学生たちがにぎやかに物を売ったり、舞台では手品やカラオケなどのショーをやったりとがやがやしている。教室では文化系サークルが30ほど展示や喫茶をやっている。
が、すべて割愛。
これだけの学園祭であれば、「大阪まで来たのに、金返せ」になるところだ。もちろん、学生さんたちが新入生を歓迎するべく大いに楽しんでくれる分には結構なのだが、私は模擬店やサークルの展示はそこそこに、図書館に向かった。いちょう祭は学生が企画する普通の学園祭らしい部門のほかに、大学が主催する企画が多数ある。私の目的はそっちである。
●附属図書館
阪大生たちのあふれる知識欲を満たすべく、国立大学で2番目の規模を誇る巨大図書館。当然ながら日曜も開館している。普段は入れないこの図書館をじっくり探検しようと思ったが、警備員に急かされてさっさと6階の展示室に来てしまった。
ここには、阪大が所蔵する貴重書の数々が展示されていた。江戸時代の古文書、林子平の『海国兵談』の写し、江戸時代に作られた読み物の『御成敗式目』、ルソー『社会契約論』初版本など、さらには発掘した土器や兜など。阪大の前身の一つ「懐徳堂(1724設立の学問所)」以来の伝統の品々である。
そのお隣の部屋には湯川秀樹博士関係資料と称してパネル展示がされていた。アインシュタインと湯川秀樹の並んだ写真もある。あれ? 湯川秀樹って京大では? と思い聞いてみると、彼は京大出身だが阪大の教授時代の研究でノーベル賞を獲ったので、阪大ゆかりの人物でもあるとのこと。物理の大学院生の方が質問にこたえてくれるという力の入れようであったが、物理の質問はできないので、阪大理学部は湯川秀樹以来の伝統で今でも量子論に強いなどの話をうかがった。阪大では戦前からサイクロトロンを作ったり、昭和33年には日本で最初に核融合プラズマ実験をするなど、ハイテクの発祥の地ともいえる。
●基礎工学部の研究公開
大学による展示の数々といっても、そのほとんどは理系であり、文系学部は図書館での古文書公開だけというありさまであった。阪大だけでなく、旧帝大はほとんどが工学部を中心に構成されており、理系にやたらと力が入っている。今回のいちょう祭でも、理系は医学部、歯学部、薬学部の展示、研究公開に始まり、一番のメインは、工学部、理学部、基礎工学部の研究公開と、付属の研究施設公開であった。豊中キャンパスでは理学部、基礎工学部が研究公開をしており、基礎工学部は実に30以上もの研究公開がなされていたが、すべてを見るのは到底不可能なので、いくつか見た中のひとつを紹介する。

このロボットは大学院基礎工学研究科システム創成専攻システム数理講座複雑システムグループ潮研究室という長ったらしい名前の研究室による「ヒューマノイドロボットの実演」。このロボットは富士通オートメーション製のロボットで、C言語でプログラムを作って操作する。足を曲げたり、歩くのからスクワットの態勢に移行したり、空気イスのようにしゃがみかけでじっとしたりもできるが、お尻がないので座れない。また、長時間同じポーズをさせるとモーターで足を曲げているのでそこが熱を帯びてくる。人間が空気イスをやっているとつらいのと同じだ。ほかにも後ずさりや足踏みもする。今はもっとすごいロボットも出来ているそうだが、このロボットなんと600万円、ベンツ並だ。「恐ろしがってみんな運びたがりません」と操縦する大学院生の方がおっしゃっていた。
この研究室はロボットを作っているわけではなく、システム開発、つまりどうしたら通信速度が速くなるかなどを研究している。大事なのはロボットではなくて、そのロボットとパソコンの間の「回線」の部分らしい。親子連れや高校生などの来場者もあり、理科の知識があるとみえてなかなか鋭い質問がなされていた。
また、印象深かったのは、お話を伺った助手の方が学部は京大、院は阪大だったことだ。私たちの浅はかな考えだと「なんで学歴を下げるの?」という話になるが、「やりたい分野と教授で阪大を選んだ。大学名は関係ない」という力強い弁。理系だから言える事なのかなと思った。
●極限科学研究センター
いよいよ阪大の真髄へと迫っていく。豊中キャンパスは工学部のある吹田キャンパスに比べるとすごい施設が少ないのだが、それでもいろいろある。なかでもここは名前がいかめしい。極限の科学、存分に拝見させていただこう。
キャンパスのはずれの研究所の建物は閑散としていたが、大学院生の皆さんが準備をしていた。理系は4年次にやっとお目当ての研究室に配属になり、その後、大学院入試を経てようやく本格的に専門分野を学ぶ。理系の真髄は大学院にある。にもかかわらず、多くの文系大学生や、私立大学の4年で卒業する者が多い大学などの学生は、こうした理系の事情を知らず、「暗い、オタク」などと勝手に偏見を持ってきた、実に愚かである。はっきりいって、文系の学生より理系の学生のほうが明るい。本当にやりたいことを学んでいるという意欲に満ちている人が多いからだ。
極限科学研究センターでは、超高圧、超強磁場、超低温、超微構造(ナノメートル分析加工、ナノデバイス)、超高速分光実験室と超づくしの研究を行なっている。今回拝見したのは「超強磁場」。コイルを作って強磁場を発生させ、いろんな物質(固体)の磁性を調べている。なんでも阪大は「世界最高のパルス強磁場」だそうだ。何のことかよくわからんが、コイルを壊さずに100万ガウスを発生させるという。ちなみにピップエレキバンは1300ガウスだ。
コイルはマレージング鋼という銀色の金属で補強される。これはあまりにも強い磁場が発生し、その破壊力(膨らもうとする力)を抑えるためのもの。
「それではこれからコイルに電流を流して爆発させます」
この中で大爆発
人間がスッポリ入れそうな縦横1.5mほどの分厚い鉄の箱がある。この中に、電磁石と、爆発させるコイル状の銅を入れる。近くでは液体窒素の池に花を入れてパリパリに凍らせる実験をやっていた。でもオイルは凍りません(ネタが古いか)。このコイル状の銅に電流を流すと、外側への力が働き、コイル状の銅がこわれるという実験を見せてくれるという。コンデンサに電流をため、一瞬で流すと、パルス磁場が発生する。コイルを設置し、鉄の箱が閉められた。我々は壁を隔てたモニター室で、カメラの画像を見守る。「それでは電流を流します」といってしばらく電流を溜め、一気に流す。
ドカン!!!!!!!!
壁を隔てた隣の部屋なのに、耳をつんざくような爆音。周りの学生たちも「いつになく大きい音だった」と驚いている。テレビモニターを見るとコイル状の銅ははじけ飛んで跡形もなかった。
●300万ボルト超高圧電子顕微鏡公開
無料連絡バスで吹田キャンパスに移動。道路が空いていて20分ほどで到着した。このバスは学園祭だけでなく普段から走っていて、学生に重宝されている。吹田キャンパスは医療系学部と工学部及びその研究施設でほとんどが構成される研究型キャンパスであり、サークル活動などはほとんどないので味気ない印象だが、研究大好き人間には日本有数の環境である。ただ、ここも広大な敷地に巨大な医学部附属病院や工学部の校舎が立ち並んでいるだけで、キャンパスの中心が存在しないので趣に欠ける。どうしてキャンパス設計をきちんとやってくれなかったのか、理解に苦しむ。
いちょう祭はこの吹田キャンパスでも開催されている。こちらでは学生の模擬店などはなく、ひたすら研究所公開が中心である。
公開されている施設は遺伝子情報実験センター、ラジオアイソトープ総合センター、超伝導フォトニクス研究センター、核物理研究センターなど阪大の叡智の結晶の数々が目白押しだが、全部を見る時間は到底ない。そこで、とくに凄そうな物に絞って見学することにした。
悩んだ挙句、結局私は「超高圧電子顕微鏡センター」に足を運んだ。パンフレットには「300万ボルト超高圧電子顕微鏡公開」と書いてある。自分の頭の中では、300万ボルトというのと顕微鏡というのが合致しない。
「それ」をどう説明したらいいのだろう。3階建てぐらいの大きな建物の中にあったのは、実に13.5メートルもの高さの電子顕微鏡であった。高さ8メートルの巨大な高圧タンクを4層の通路が囲む様は、まるで手塚治虫のマンガに登場するマザーコンピューターみたいである。これが世界に一つしかない超高圧電子顕微鏡で、重さは140トン、規模、性能とも世界最高の顕微鏡である。なぜこんな凄いものが東大ではなく阪大にあるのか謎だが、何でも東大が一番だというわけでもないようだ。ところで気になるお値段ですが、なんと23億円。高いのか安いのかしらないが、他の大学に設置するような予算は国にはないそうです。
勝手が分からないので、最初にビデオを見る。LSI(高集積度回路)の構造解析実験の様子を放映しており、水素化合物の生成の様子をこの顕微鏡で見た映像であった。アルミナの結晶の成長の様子、合金の結晶のできる様などを見る、これは、ミクロ(1mの−6乗)のさらに先、ナノ(1mの−9乗)の世界の出来事だそうだ。また、超高圧電子顕微鏡によって撮影されたLSIのコンタクトホール部分の断面図を見て、どの部分が不良かがわかるのがこの顕微鏡の凄いところらしい。
ところで、300万ボルトとは何事か。これは300万ボルトに電子を加速させることができるという意味で、この平成6年に出来た新型顕微鏡は300万ボルトだが、昭和45年に作った1号機は200万ボルトまでしか出ないとのこと。でも1号機も未だ現役で、同じ建物にある。それにしてもどうしてこんなに大きな電子顕微鏡を作ったかというと、通常の電子顕微鏡では見えない世界を見たいがためである。この超高圧電子顕微鏡は通常の電子顕微鏡の15倍の厚さの試料を見ることができる。これは、日常使用されている金属の厚さで見ることができるということで、分厚い物が見える透過電子顕微鏡であるとのこと。材料の内部まで見える、高性能な顕微鏡なのだ。試料への電子照射量(単位時間、単位面積あたり)は電子加速電圧の自乗で増加する。この電子照射量が他の加速器に比べてけた違いに大きいので、高速電子と物質の相互作用を電子顕微鏡の中で効率よく、しかも、その場で観察しながら研究できるのが利点だそうだ。
試料は直径3ミリ、8メートルのタンクの地下にある試料室に設置する。この顕微鏡の地下1階部分は人間がすっぽり入れるぐらいの高さで、集束レンズ、試料室、対物レンズ、中間レンズ、投射レンズ、観察室、カメラ室が組み合わさっている。ものすごいX線を出し、人体に悪影響なので、人間はワークステーション経由で隔離されたモニター室で遠隔操作、観察を行なう。恐ろしいことに万博の頃に出来た1号機は隔離された部屋で観察や操作ができず、X線を浴びないよう鉛で遮蔽した顕微鏡内部で観察していた。
試料を乗せる1メートルほどの棒は1本1000万円(!)。試料は用途に応じて−272度(絶対零度)に冷やしたり、800〜2000度にまで上げたりもする。これを顕微鏡の試料室に設置して、観察する。
モニター室に移動し、LSIを薄く切ったものを、1万倍、5万倍、そして最大の70万倍で見てみる、もはや何が映っているのかよくわからない。70万倍のものをフィルム撮影して10倍にのばすことで、最高で700万倍に拡大した物質を見ることができるそうである。金属の変形による転移、原子の並びが乱れることで生じるひずみの様子すら見える。まるで細胞が動くように、金属の影が動いていく様は幻想的ですらあった。また、カエルのシナプス(神経樹状突起)の立体写真があり、これもこの顕微鏡で撮影されたものだという。これがナノの世界だ。さらに1mの−12乗「ピコ」という単位が存在するが、人類が見られるのは−9乗の「ナノ」までである。それでも1mの−3乗「ミリ」、−6乗「ミクロ」から見れば、ナノの世界は驚異というしかない。
世界最高にして唯一の超高圧電子顕微鏡のため、アメリカのカリフォルニア大学と高速デジタル回線でつながっていて遠隔操作もできるほか、北海道大学なども研究に使用している。
阪大の研究水準は極めて高いと言われる。だが、そういわれても実際にどこがどう凄いのか、自分で見て理解できなければ、説明もできない。私はきっとこれを見るために大阪まで来たのだ。阪大には世界最高の顕微鏡(超高圧電子顕微鏡)があり、ナノテクノロジーにおいて人類がたどり着ける最先端にいるということがわかった。
(現在は「走査型プローブ顕微鏡」という1000万倍、原子まで見られる顕微鏡がある 2004.7.3補足)
大阪大学超高圧電子顕微鏡センター
せっかく撮影許可を貰ったのに、不覚にもデジカメの操作ミスで写真の撮影に失敗したため、顕微鏡の写真は公式サイトをご覧下さい。あまりのデカさにきっと驚きます。
●レーザー核融合研究センター (2004年4月より「大阪大学レーザーエネルギー学研究センター 」)
まだまだ底知れぬ阪大の実力、最後に見に行ったのがここである。阪大はレーザー核融合の研究で世界をリードしているそうだが、「レーザーってレーザー光線?」「核融合って危険じゃないの?」ぐらいの認識の私が、はたしてどこまでついていけるのだろうか。

1983年完成の世界最大級の「激光XII号」レーザー装置。レーザー核融合研究のマイルストーンである温度1億度、超高密度(600
g/cc=太陽中心密度の4倍)を世界に先駆けて達成した。この緑色のパイプの中を光の速さでレーザーが走る。途中で増幅されながら。10億分の1秒に25キロジュールのエネルギーを出し、高調波に変換され高密度プラズマを作る。
建物の中に入るのに、靴を白いビニール袋で覆って入るように仰せつかった。なかなか厳重である。
そもそも「レーザー核融合研究センター」は何をしているのか。世界最大級のレーザー装置を駆使して、核融合によるエネルギー開発をしている。これで地球環境への負担の少ない新しいエネルギー源が生み出されるらしい。そんな高出力レーザーを開発しているのがこの研究所である。
●核融合って何?(大阪大学レーザー核融合研究センター公式ホームページより)
原子核どうしをぶつけると原子核がくっつく、つまり融合して1つになります。これが核融合です。このとき、融合した後の原子核の質量(重さ)の合計は、融合する前の原子核の質量の合計より小さくなります。これは、質量が常に一定ではなく、エネルギーに変換されることが可能だからです(相対性理論)。そのため、核融合が起こると非常に大きなエネルギーが解放されます。このエネルギーを電気に変換して利用するのが核融合発電なのです。
●核融合を起こすには
原子核は互いに反発しあうので、遅いスピードの原子核どうしが近づいても融合してくれません。核融合を起こすには、高い温度のガス(プラズマ)を作り、原子核どうしが高速でぶつかりあう状況を作ることが必要なのです。(高い温度のガス中の原子核は、速いスピードで動きます。)
さらに、エネルギーを効率よく得るためには、それだけ頻繁に核融合反応を起こさせる必要があります。核融合の燃料である原子核を、「たくさん(高密度 )」、
「長い時間」、一緒に閉じ込めておけば、核融合反応がたくさん起こり、効率よくエネルギーが取り出せます。
…だそうです。ヤバいのは「核分裂」であって「核融合」は安全らしい。
具体的には直径1ミリほどの燃料球にレーザー光を集中照射して、燃料を高温、高密度に圧縮して核融合を起こす「爆縮(ばくしゅく)」という点火方法をやっておるそうです。レーザーによって太陽と同じ核融合反応を起こそうというもの。人間の手で太陽を作る、なんだかちょっと危ない気もします、ちなみにアメリカでは同じ装置で水爆を開発していると研究員の方がおっしゃってたんですが、マジですか?
光通信、DVDなどの「低出力レーザー・光技術」に対し、こちらは「高出力レーザー」。産業技術、医療にも応用できる、環境負荷の少ないエネルギー開発を進めています。
普段はこの機械を直接眺めることは出来ず、ガラス越しにちょっとだけ覗けるにすぎないが、今回は特別に中に入れてくれるという。
まず、白衣に着替える。白い帽子をかぶり、専用の白い靴に履きかえる。そして4人ほどで箱に閉じ込められ、空気がプシュー!と出てきて殺菌された。反対側の出口を出ると、もう「激光XII号」レーザー装置が目の前にある。

長さが100メートルぐらいあるので、移動用に自転車が何台も置いてあった。天井は2階建てぐらいあり、殺菌室(?)から階段を下りて地上に立つと、緑色の、身長ぐらいの高さのパイプがどこまでも伸びている。ここをレーザーが駆け抜けるそうだ。ぐるりとまわって隣の部屋に移動すると、この緑色の管を駆け抜けたレーザーがこんどは12本のアルミみたいな管の中を通る部屋に入った。

中心に大きな機械がある。

「この中で核融合が起きます。かつて中性子の発生量で世界一を記録しました。15年以上前ですけどね」
説明をしてくださった助手の方に、「なぜ原発などと違って安全なのか」などいろいろ聞いたのだが、忘れてしまいました。さて、気になるお値段ですが…。装置が83億円、建物が210億円。合計で約300億円です。ロボットといい顕微鏡といい、お値段を教えてくれるのがなんとも大阪らしくて良い。ちなみに装置と建物はそれぞれが別個の耐震建築で、神戸の地震でも微動だにしなかったそうです。ただ、この装置ももう30年選手で、古くてなってきているとのこと。それにしてもこれだけの巨大設備を作れるとは、阪大の伝統と実績のなせる技か。
●まとめ
はっきりいって最後のレーザー核融合研究センターは難しくてよくわからなかったが、300万ボルト超高圧電子顕微鏡や極限科学研究センター、そして図書館、基礎工学部の研究公開、とにかく凄かった! なんだかんだ言っても旧帝大は惜しげもなく設備投資がされていると思った。また、何度も言うように国立大学は理系が中核であり、その研究水準の高さは世界最高を目指している。また、今回は時間の都合で泣く泣く割愛したが、吹田キャンパスのベンチャー・ビジネス・ラボラトリーにも様々な実験装置の公開がなされており、文系でベンチャーと言っている人たちにはぜひ見てもらいたいものだと思った。
キャンパスやサークル活動を見ているだけだと阪大は地味な大学で、「大阪でキャンパスライフを楽しむなら関西大学だろ」などとうかつにもいってしまいそうになるが、百聞は一見にしかず、阪大のいちょう祭でその高度な研究をじっくり見てから大学選びをしても決して遅くはない。むしろ見ろ。とくに理系。
また、不思議なことに、こうした科学技術の粋を見ていると、核エネルギーは一歩間違えば大変危険だなあとか、科学技術と人間との関係について、いろいろ思いをめぐらせてしまう。東工大が人文社会科学教育に力を入れているのはその辺も関係しているのだろうか。科学と哲学、数学と文学などは、実はすぐ隣にいるんじゃないか…と思ってみたりして。
神戸大学

★学園祭
11月に六甲祭。経済、経営、法学部のある六甲台のキャンパスだけで行なわれる。ステージではバンドの演奏やダンスなどが一日中行なわれていて、その周囲は模擬店が100ぐらいあってにぎやか。なかでも、ヤギにさわれるふれあい動物園が子どもたちに人気。
教室の展示は少なく、地味な文化系サークルが細々とやっているだけ。後夜祭ではみんなで学歌、応援歌などを応援団とともに熱唱するらしいが、一般客はそこまで付き合わないので、やはり昼間見た印象としてはやや盛り上がりに欠ける感じ。神戸大学はあまりサークル活動が活発でないという話だが、それを裏付けるような学園祭である。
名古屋大学
豊田講堂
岡山大学
西門の正面に時計台のある図書館
★設備・立地
よく広島大学と引き合いに出されるが、旧制六高以来の伝統ある市街地のキャンパスで、交通の便がよく、周囲には学生向けの店もある点ではややこちらに分がある。理系の校舎はどんどん新築が進んでいる。サークル棟は大学の規模の割に小さい。
文学部
●人間学科…哲学、現代思想、倫理学、芸術学・比較文化学の4コース。哲学を基礎にかなり幅広く人文学を学べる。
●行動科学科…心理学、社会学・文化人類学、地理学
●歴史文化学科…日本史、東洋史、西洋史、考古学
●言語文化学科…日本語日本文学、中国、英語、ドイツ、フランスなど
教育学部…教員養成学部。学校教育教員養成課程(小学校、中学校、障害児教育、幼児教育)、養護教諭養成課程と、ゼロ免の総合教育課程(生涯教育、情報教育、教育臨床)がある。
法学部…法学科のみ。二部がある。
経済学部…経済学科に3コース(現代経済分析、国際比較経済、経営・会計)。二部がある。
理学部…数学、物理、化学、生物、地球科学の5学科。分野を横断して学ぶ総合理学コースがある。
工学部…機械工、物質応用化、電気電子工、情報工、生物機能工、システム工、通信ネットワーク工の7学科。
環境理工学部…教養部をなんと理系に改組。環境数理(数理、統計)、環境デザイン工(土木)、環境管理工(地理・生態学、農業工学)、環境物質工(応用化学)の4学科。
農学部…総合農業科学科のみ。内部で動物、植物、バイオ、林業などの分野に細分化している。
医学部…キャンパスが離れている。医学科と保健学科(看護、放射線技術科学、検査技術科学)。
歯学部…医学部と一緒。
薬学部…総合薬学科。キャンパスは本部。
広島大学

自動車の通る事を目的とした実に味気ない正門である。キャンパスは日本一広い。教育学部はつとに有名。東広島のキャンパスは、交通の不便さといい、まさに「西の筑波」である。
総合科学部…文系と理系が溶け合った元祖学際系学部。昭和49年設立。環境共生科学、地域科学、人間科学、言語文化科学、情報行動科学、創造科学の6プログラムがある。
文学部…人文学科のみ。哲学・思想文化学、歴史学、地理学・考古学・文化財学、日本・中国文学語学、欧米文学語学・言語学の5コース制。
教育学部…定員500人以上の巨大な学部で、「教育の広大」「西の筑波」とも言われる教育界の重鎮。平成12年まで「教育学部」「学校教育学部」の2学部という、全国唯一の異常な組み合わせだった。「学校教育学部」は教員養成系で、広島師範学校、広島大学教育学部東雲分校を経て昭和53年に学校教育学部となった。ほかにも広島高等師範学校、広島女子高等師範学校、広島青年師範学校、広島文理科大学などたくさんの先祖がいる。
●第一類(学校教育系)…初等教育教員養成、障害児教育教員養成
●第二類(科学文化教育系)…自然、数理、技術・情報、社会
●第三類(言語文化教育系)…国語文化、英語文化、日本語教育
●第四類(生涯活動教育系)…健康スポーツ、人間生活、音楽文化、造形芸術
●第五類(人間形成基礎系)…教育学、心理学
法学部…法学科のみ。法科大学院と夜間主コースは広島市内の千田キャンパス。
経済学部…経済学科のみ。夜間主コースは広島市内の千田キャンパス。
理学部…数学、物理科学、化学、生物科学、地球惑星システムの5学科。
工学部…第一類(機械系)、第二類(電気系)、第三類(化学系)、第四類(建設系)の4分野。
生物生産学部…前身は水畜産学部という変り種。海洋生物生産学、生物圏機能学、畜産科学、食料情報管理学、分子細胞機能学、食資源機能学の6コース。あちこちに実験施設がある。
医学部…広島市内の霞キャンパス。医学科、総合薬学科、保健学科の3つ。長年薬学部を作りたがってる。
歯学部…歯学科。霞キャンパス。
▼学生宿舎…筑波と同じように、何もないキャンパスの周辺に学生寮群がある。
▼学生活動…サークルは多いが部室は狭く少ない、しかもキャンパスのはじっこに冷遇されている。
九州大学
正門
九州を代表する大学だが、移転のため既存のキャンパスはボロボロ。敷地のおいしいところをほとんど工学部が占め、文系はおざなり扱いである。写真は2年次後半からの箱崎キャンパス。箱崎のサークル棟は部屋を借りる方式で最悪。箱崎キャンパスは福岡市街地にあり、比較的便利だが、周囲は寂れ気味。飛行機の離着陸の経路にあるため、爆音が響き渡り、飛行機の翼の文字まで読める。かつては飛行機が落ちてきたこともある。
文学部…人文学科のみ。哲学、歴史学、文学、人間科学の4コースに分かれる。インド哲学、イスラム文明、比較宗教学、朝鮮史学などのユニークな分野も学べる。大学院進学率は1割で、就職は半数。
教育学部…教員養成ではなく、純粋に教育学を追及する。教育学系と教育心理学系に分かれ、とくに心理学分野は発達心理学、教育心理学、臨床心理学などが充実している。1学年50人のミニ学部で、少人数教育では定評。卒業後は進学、就職、その他がそれぞれ3割。
法学部…学部図書室だけで30万冊の蔵書を持つ。毎年10名強が司法試験に受かる。卒業者の3割が進路未決定なのは司法浪人か。
経済学部…経済・経営と経済工の2学科。経済工学科は全国唯一で、数理的分野を重視。
理学部…6割が大学院に進学する。
工学部…工学のほとんどの分野をカバーする巨大な6学科が設置されている。校舎はボロボロ。75%が大学院進学。
農学部…存在感がないが確かに存在する。
21世紀プログラム…20名ほどをAO入試で集め、所属学部を決めず幅広く学び、学位は「学術」という学際プログラム。4年間教養教育を中心に学ぶコースで、大学院で専門を学ぶ。2001年からスタートした。「広い視野を持つ専門性の高いゼネラリスト」の養成が目的。六本松キャンパスには専用校舎「21世紀交流プラザ」が建てられ、日夜学生が勉強に励んでいる。「自主性があり、自己主張の強い人が多い」「一人一人のやりたい分野が違うのでバラバラな面もあるが、同級生同士は仲が良い」
試験は10月〜11月に実施される。1次選抜では講義を聴いてレポートを書き、2次選抜ではそれを発表、討論する。面接、小論文もある。「AO入試とはいえ高い自己表現が求められ、難易度は高い」。入学後は学生3〜4人に1人の教授がチューターとして指導にあたる。「専門は文系でも理系でもどちらの授業も受けられる。でも、箱崎に行くと居場所が無いので六本松時代より冷遇される印象」
入学後も専門分野を決めず、自分のやりたい学問を追究できるが、一応大学の方針としては「情報」「環境・生命」「国際」「市民社会」をキーワードとしている。
・語学教育に力を入れている。
・教職免許は取得できない。
・医学部・歯学部以外はどの分野にも進める。
・試験方式のせいか、関心のせいか、女子学生比率が高い。
医学部・歯学部・薬学部…病院地区とよばれる独自のキャンパスに隔離されている。移転の対象にはならない。
芸術工学部…2003年10月に九州芸術工科大学を統合。
★学生活動
福岡市が都会なので遊べるが、大学でのサークル活動は、サークル部室があり、2年次前半までをすごす六本松キャンパスに限定されがち。
★就職
旧帝大無敵神話は理系のみに当てはまる。文系は以外に就職率が悪い。とはいえ資質は高いので個人の努力で成功は出来るだろう。移転で不便になるのは残念だ。
熊本大学
旧制第五高等学校、熊本医科大学などを統合し、1949(昭和24)年に開学。法、文、教育、理、工、薬、医の7学部。
重要文化財の五高記念館。左の木は旧制高校ができる前からここに生えている
これほど美しい国立大学のキャンパスを、私は知らない。明治20(1887)年、九州唯一のナンバースクール=旧制高校(のちに鹿児島に七高ができる)を、当時人口4万人の九州最大の都市であり、明治維新に幾多の人材を輩出した熊本が、福岡を下して獲得した。夏目漱石、ラフカディオハーンなどの歴史的人物が教鞭を執り、寺田寅彦、佐藤栄作、池田勇人、大川周明が学んだのがこの旧制高校の校舎であり、写真の本館は当時のまま残されている。ちなみに旧制高校はキャンパス内に寮がある全寮制だったので、この校舎にはトイレが無い。
内部の展示室には、五高の歴史を紹介した展示物や、著名教授陣、卒業生の業績の紹介が展示されており、夏目漱石の直筆の書や、五高着任の辞令の本物などを見ることが出来る。また、夏目漱石に心酔した寺田寅彦が、夏目漱石の家に住ませてくれと懇願したが断られ、やむなく敷地内の納屋に住んだなどのエピソードが多数紹介され(市内に建物が残っている)、古き良き旧制高校の栄華を偲ぶことが出来る。夏目漱石の声を骨格から再現した音声テープも聴ける。夏目金之助先生が着任した当時、英語の教師は外人が当然で,彼らは日本語が下手なことから学生たちは否応なしに英語で会話する必要に迫られており、夏目漱石が英語教員であったのは極めて珍しかった。松山は夏目漱石で売り出しているが、実際にはかの地には1年余り居たにすぎず、熊本の4年間のほうが夏目漱石にとって実り多かったであろうことは、夏目漱石の歌碑の実に3分の2が熊本にあることからも明らかである。また、「草枕」は熊本での日々を土台に執筆されたといわれる。
全寮制やネイティヴによる英語授業など、旧制高校は現在の大学をしのぐ先進性があり、戦前の学制から私たちが学ぶべきことは多い。自由闊達で気迫のあるエネルギッシュな旧五高生たちの写真やさまざまな展示を見るにつけ、時代背景はともかく、教育環境としてのこの時代には素晴らしいものが多かったのだと感じた。少なくとも当時の彼らは、今の大学生以上に勉強し、知識欲にあふれ、活発であり、また魅力的な人物が多かったことは想像に難くない。
五高の本館は100年以上の風雪に耐えた頑丈な建築であり、月日が経つほどその美しさと魅力は増すばかりである。コンクリート校舎よりもよっぽど強く、しかも年月による劣化を感じさせない。設計者の水準には頭が下がるばかりだ。
復元された教室。置かれている机とイスは当時使用された本物
しかし、九州はおろか日本を代表する名門校だった五高も、戦後の学制改革によって伝説となり、後継者の熊本大学が(五高に比べれば)冴えない地方大に成り果てたのは、痛恨の極みである。九州大学は、熊本にこそ作るべきであった。今もキャンパス随所に五高の建造物が残り、残影をとどめている。旧制五高の校舎、戦後のコンクリート校舎、最近のハイテク校舎がみごとに溶け合った緑あふれるキャンパスは、日本中の国立大学のなかで、最も美しい。だが、嘆かわしいことに、現役熊大生の中には、五高のことも知らず、土日しか開かない記念館には入ったことすらない学生が多いという。熊本大学のキャンパスが五高の建物を大切に保存しているのは、結局は五高の中身を受け継ぐことができなかった熊大の、せめてもの罪滅ぼしなのかもしれない。
ちなみにナンバースクールは、一高(東京)、二高(仙台)、三高(京都)、四高(金沢)、五高(熊本)、六高(岡山)、七高(鹿児島)、八高(名古屋)の順。旧帝大になれなかった熊本、金沢、鹿児島は戦後の凋落ぶりが気の毒で見ていられないが、大学のキャンパス内に旧制高校の建造物をきちんと残し、記念館で展示まで行っているのは唯一熊本のみであり、これは高く評価できる。
広島市立大学
奇抜な校舎
1994年に開学した新設公立大学。広島県は県立大学が3つ(2005年統合)、公立大学が2つもあり、異常に多い。また、1993年に開学した岡山県立大学にもデザイン学部、情報工学部があり、キャラが被っている。
★設備・立地
以前は広島市街地から1時間はかかる超不便キャンパスだったが、西風新都線というトンネルが開通して、市内から20分以内でこれるようになり、バスも大学までくるようになった。バスの本数は平日は毎時5本と多く便利になったが、ほとんどのバスが大学前ではなく徒歩5分の大学口までしか来ず、そこから坂道を登る。周囲は農村風景と民家だけでコンビニすらない。キャンパスは芸術、国際、情報科学の3学部の校舎が放射状に広がっており、奇抜な建築が圧巻(写真)。学生寮がちゃんと近くにあるのは良い。
芸術学部…美術、デザイン工芸の2学科。日本画、油絵、彫刻、金属造形、テキスタイル、空間造形、ビジュアルデザインなどの分野を専門にしている。広島県には芸術系大学がなかったのでできたのだろうが、芸大がなかったのは需要もなかったからと考えれる。有名人を輩出できるかどうか。
国際学部…文化、政治、経済の3分野に分かれる。平和都市広島が世界平和に役立つ有為な人材を輩出する(?)。
情報科学部…情報数理、情報工、知能情報システム工、情報機械システム工の4学科。情報という皮を被った実質的には工学部。どの学科もコンピューターを積極的に活用している。3学部のなかではもっとも校舎が大きい。
★学生生活
学食を内包した学生会館には、画材店もあり、文化系サークル部室もきちんと完備されていて、文系学生がヒマでも時間を過ごせるようになっている。サークル活動は新しい大学ながらぼちぼち活発で、映画、陶芸、美術、版画といった芸術系サークルも存在する。
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