【第U章】 障害をもつ人への差別禁止と権利に関する基本事項

U−10 性

1 性に関する権利

障害をもつ人は、その種別、程度にかかわらず、障害をもたない人と同様に性を有する個人として尊重され、何人からも恋愛や性的関係を制限もしくは強制されず、妊娠、出産をする権利を有する。

2 性に関する差別禁止

障害をもつ人の性に関する差別とは、障害をもつことを理由に、前記「1 性に関する権利」を否定されたり、あるいは、以下のような扱いを受けることをいう。

(1) 障害をもつことを理由に、性的関係を制限あるいは強制されること。

(2) 障害をもつことを理由に、避妊、中絶を強要され、子どもを産む機会をとり上げられること。

(3) 障害をもつことを理由に、子宮摘出および断種などの生殖機能を奪うこと。

3 配慮義務

(1) 国および地方公共団体は、障害をもつ人への不当な子宮摘出、断種をなくすための施策を実施しなければならない。

(2) 国および地方公共団体は、障害をもつ人の妊娠、出産に必要な援助に関する施策を実施しなければならない。

(3) 事業者およびいかなる個人も、障害をもつ人の不当な子宮摘出、断種に関与してはならない。

(4) 事業者は、国および地方公共団体が定めた施策に基づき、障害をもつ人の、妊娠、出産に関する必要な援助に協力しなければならない。

 


 補足説明 

 障害をもつことを理由に、性を否定されたり、軽んじられたりされるべきではないということです。障害をもつ人は、教育においても、施設においても、また家庭においても、地域社会においても、どちらかというと性をもたないもの、すなわち中性としての扱いを受けることが多くありました。しかしその個人にとって自己の性をいかなる性として認識するかの問題とは別にして、障害をもつために、性という属性を有しないという社会の側の扱いは、その個人の人格を否定するものにほかなりません。

 障害をもつ人への性的虐待はなくなりません。障害をもっていようと、もっていなかろうと強姦は大きな犯罪です。加害者の罪の重さは、被害者が障害をもっていようともっていなかろうと差はないはずです。ですが施設や作業所など、閉鎖的な環境で性的関係を強要されてしまうこと、それを明らかにできずに泣き寝入りしてしまうことだけはあってはならないことです。

 また、一九九六年に優生保護法が改正されて母体保護法となり、障害を理由にした本人への同意なしの不妊手術を認める条項はなくなりました。ですが、「障害をもっているあなたに子どもをもつ必要はない」「生理介助は大変」などと言い続けたり、「結婚するなら生殖機能を無くしてからに」ということによって本人同意を誘導的に得て、不妊手術を行うことはなくなっていません。

 どのような障害をもつ人にも、障害をもたない人と同様、人を愛したり、子どもを産む権利はまずある、と当たり前に考えられる社会になるべきです。

 

>>障害者差別禁止法 【要綱案(第一次案)】目次へもどる
>>障害者差別禁止法 【要綱案(第二次案)】目次へもどる
>>障害者差別禁止法 【要綱案(第 三次案)】目次へもどる

「当事者がつくる障害者差別禁止法〜保護から権利へ」 現代書館 <<【要綱案(第一次案)】掲載