|
【第W章】 障害のある人のための支援機関 1 組織体制 (1) 国は障害をもつ人の権利に関して障害をもつ人の立場に立ち、相談を受け、若しくは代理人として、任意の交渉や行政救済手続、司法手続により問題を解決する機関として、都道府県を一つの単位として障害をもつ人のための権利擁護機関(仮称「障害者権利擁護センター」)を設置する。 (2)「障害者権利擁護センター」は、公益法人とし、その理事会は、障害をもつ人、権利擁護に関する学識経験者、弁護士、福祉専門職等から構成される。 2 職務および権限 (1) 障害者権利擁護センターは、障害をもつ人、弁護士、福祉専門職、学識経験者を職員として配置し、障害をもつ人の立場に立ち、障害をもつ人および関係者の相談に応じる。 (2) 障害者権利擁護センターは、相談を受けたうえで、問題解決に必要な場合、相手方ないしは関連機関に対して、任意および職権に基づく強制調査を行う権限を有する。 (3) 調査の結果、問題解決に必要であれば、代理人として相手方との任意の交渉、行政救済手続、司法救済手続を通じた問題解決を図る。 (4) 以上の手続は、無料でなければならない。但し、問題解決により、障害をもつ人が実際に金銭的利益を得た場合、一定の基準により報酬を得ることができる。 3 国の責務 (1) 国は、障害者権利擁護センターを各都道府県に一つの割合で、その資質を有する公益法人に委託し、障害をもつ人および専門家を複数職員として配置できる予算を割り当てなければならない。 (2) 国は、同センターの理事および職員の選任、解任、同センターの運営等に関与し、その独立性を侵してはならない。
障害をもつ人が、その救済を求めて、救済機関(第三章参照)による手続きや、直接相手方と交渉する場合、自己の力でやりなさいと言ってもそれは困難です。障害をもたない人の場合であっても、多くの場合は他人の力を借りることが多くあります。 訴訟などにもちこむ時には、多くの場合、弁護士という専門家をつけることになります。しかし、障害をもつ人の場合、経済的に余裕がないことも多く、また、差別事件の場合、事件が解決したとしてもそれが経済的利益に結びつかないことも多くあります。このような事件について、弁護士としては、事件解決に向けた労力に比して金銭的な報酬の少なさに受任することを躊躇することもあります。また、障害について理解の浅い弁護士も多く、より当事者の立場に寄り添った弁護活動を期待することも、現状としては困難であるといえます。 そこで、刑事事件については、国選弁護制度があるように、障害をもつ人に対する差別事件に関しては、国家の費用をもって当事者を支援する機関を設置する必要があります。 アメリカには、このような機関として、プロテクト・アンド・アドヴォカシーという機関が存在します。このような現実の必要性から生まれた制度です。権利意識の弱い日本では、アメリカ以上にその必要性は高いのです。 ここでの問題点は、国家が十分な費用を提供することと、この組織の独自の調査権です。この点は、救済機関のところで述べたことと同様であり、証拠の多くを相手方が保持している現状では、このような調査権がなければ、実質的な権利擁護は不可能であると言えます。
>>障害者差別禁止法 |
「当事者がつくる障害者差別禁止法〜保護から権利へ」 現代書館