| ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ @ナミの場合。 「ウソップ!」 太陽は中天を過ぎ頃。 雲行きの怪しくなってきた空を、見張り台で睨んでいたウソップに、下から声が掛けられ た。 覗き込むと、航海士が口のところに、手で筒を作っている。 それまで眺めていた今のところ一番の宝物をかばんに仕舞って、ウソップは手を振って 見せた。 「さっき言い忘れたんだけどー! 誕生日プレゼントと一万ベリー、どっちが良い?」 要領を得ない問いに、首を傾げるウソップ。 「何が?」 「さっき上げた手紙!」 ウソップは目を剥いて、宝物を仕舞い込んだかばんに手をやった。 「金取るのか?!」 「当たり前でしょー!! 新聞取ってるのは私なんだから!!」 「それとこれとは違うだろ?!」 「じゃ、それが私からのプレゼントって事で」 じゃね〜と手を振って、ナミは足取りも軽くラウンジへ入ってしまった。 突然の事にしばし呆然としていたウソップは、数瞬の後、誰も居ない甲板に向かって呟 く。 「ありゃカヤからのプレゼントだろうが」 声が風に攫われた。 Aルフィの場合。 「ウソップ! 交代だ!!」 ツッコミを入れた体勢で固まっていたウソップの前に、ルフィの顔が現れた。 次いでガン!と言う硬い音。 頭と両手を見張り台の淵に掛けて、体を後から引っ張り上げたらしい。 張り付いた格好から見張り台の中によじ登って来た。 「まだ時間じゃねェんじゃねぇか?」 「良いから良いから!」 にしし、と笑いながら手を振ってみせるルフィに、ウソップは訝しそうな視線を向ける。 「なんかあるのか?」 「なんもねェって! 今日、お前の誕生日だろ? だから交代だ!」 しししし。 あからさまに顔がたるみ切っているのだが、ウソップの事を思っての笑顔ではない事は、 これまでの付き合いで分かっている。 ウソップは小さく肩を竦めると、取り合えずその好意に甘える事にした。 「じゃ、頼むか」 「おう! 任せとけ!!」 笑顔で手を振るルフィに見張りをバトンダッチして、ウソップはマストを下りる事にした。 Bゾロの場合。 「おう、どした、ゾロ」 マストを下りたところに、ゾロと鉢合わせた。 どうやら倉庫から出てきたところらしい。両腕には小振りの木箱が抱えられている。 ゾロは片眉を上げて口角に笑みを刷く。 「人使いの荒い連中のお手伝いさ」 「片方持つか?」 後ろ足に倉庫の扉を閉めたゾロに、ウソップが手を出す。 「平気だ。それより見張り台はどうした?」 ウソップは肩を竦めて上を見上げた。 「ルフィが代わるってさ。なんか良い事でもあったのかね?」 それを聞いて、ゾロはばーか、とウソップを見る。 「テメェの誕生日だろうが」 「そりゃおれにとっては良い事だけど」 「今晩はご馳走だろ?」 おお。 ウソップはぽむっと手を打った。 「そうでもなけりゃあいつが見張り役を代わるはずがねェ」 その通りである。 すなわち、ウソップの誕生日だからご馳走をたらふく食える、と言う下心から、その功労 者?のウソップを評して見張り役を代わったと言う事だ。 「…………まぁ、あいつらしいわな」 「そーいうこった」 ウソップの言葉にゾロが頷く。 そしてウソップに向かって口角を上げてみせた。 「隠しといた極上品、開けてやんよ」 「テメェが全部飲んじまうだろうが」 「最初の一口位飲ませてやるって」 やっぱりほとんど一人で飲む気だろうが!と右手でツッコミを入れつつ、ウソップはゾロと 同じ笑みを浮かべた。 Cビビの場合。 「あ、ウソップさん!」 女部屋から上がってきたビビが笑顔で手を振る。 もう片方の手には、小さなバスケットがあった。 そこはかとなく漂う香ばしい匂いに、ウソップは長い鼻をひくつかせる。 「何の匂いだ?」 「この中に香辛料が沢山入ってるんです!」 にこにこと言うビビ。 「アラバスタは砂漠の国だから」 「ああ、熱い場所では食い物が痛みやすいしな」 「強い匂いの方が食欲も湧くし……」 そんな事より!とビビがウソップに詰め寄った。 そしてこそこそと声を潜める。 「これ使って新しい星、作りませんか?!」 「星って……タバスコ星とかの事言ってるのか?」 頷くビビにウソップは首を傾げる。 するとビビは小さく舌を出して白状した。 「小さな星をどうやって作ってるのか見てみたくて」 ウソップはニヤリと笑うと、盛大にため息を付いてみせた。 「しょうがねェなァ! 本来なら関係者以外立ち入り禁止のトップシークレットなんだが…… 今回は特別だ!」 キラリと目を光らせたウソップ。 ビビは表情を輝かせてその場にしゃがみ込んだ。 そして持って来たバスケットを開け、足元に瓶を次々と並べて行く。 「これがカラシ、これがタイム、こっちはシナモン、ブラックペパー、パプリカ、コリアンダー、 オールスパイス、ガラムマサラ、ウコン、カルダモン、ナツメグ……」 「す……すげェ量だな……」 「私のお勧めはこの粉ワサビ! 匂いを嗅ぐだけで涙出ますよ!!」 言いながらビビはその瓶の蓋を開けようとする。 「いや、何も開けなくても……代わるか?」 「あら、開かない……最近使ってなかった……から……かしら……うんっ」 ビビが力んだ瞬間、瓶の蓋が外れた。 「「あ」」 勢い余ったビビの手を飛び出した瓶は宙を舞う。もちろん中身も、だ。 あんぐりと口を開けた二人は、次の瞬間顔中に粉ワサビの洗礼を受けたのだった。 Dチョッパーの場合。 「丁度良いところに来たな!」 まだ自分がワサビ臭い気がして、着替えようと男部屋へ入ったところでチョッパーに声を 掛けられた。 薄汚れたソファに腰掛けた船医の目の前、ローテーブルには所狭しと物が並んでいた。 どうやらかばんの整理をしていたらしい。小さなかばんに入っていたとは思えない程の物 が溢れ返っていた。脇にある木箱には、ドラム島を出てから買い入れた物品が詰まってい る。 「そこに座っててくれるか?」 顎から垂れる水滴を脱いだ服で拭い、新しいシャツに袖を通しながらウソップはチョッパ ーを見た。 「構わねェけど……なんだ?」 「雛型作らせて欲しいんだ」 言いながらチョッパーは、バケツに入れた白い物体を捏ね回している。 「なんの?」 「ウソップの鼻の」 着替え終わったウソップはがばりと身を翻し、ソファの影に隠れた。 「何をする気だ?!」 「逃げるなよ!」 「逃げてるんじゃねェ! 隠れてるんだ!!」 くわッと目を見開き、チョッパーを威嚇するウソップ。 チョッパーは石膏を捏ねていた手を止め、首を傾げてウソップを見た。 「はっはーん、さてはお前もこの素敵っ鼻の魅力が判ったんだな?!」 「ウソップの鼻って、結構曲がり易いだろ。あんまり変な風に癖がついても嫌かと思って」 「よって雛型を取り、おれの鼻の模型を作って自分の鼻に付ける気だろう!!」 「誰がそんな事するかー!!」 瞬時に大きくなったチョッパーが石膏まみれの両手でウソップの肩を掴み上げた。 万力のような力に、ウソップは絶叫を上げる。 じたばたと暴れるウソップを見、慌てて小さくなるチョッパー。その拍子に、ウソップは盛 大に尻餅を付いて床に落ちた。 「いってー!!」 「ギプスで型に嵌めておけば治りが早くなると思ったんだ!」 涙を流して尻をさするウソップに、やはり涙目になってチョッパーが怒鳴った。 「チョッパー……」 「なんだよ!」 「……ケツ割れた……」 「な! 何ー!!」 「バーカ。ケツは最初から割れてるよーだ」 ウソップとチョッパーの奇声が上がったのは、その直後だった。 Eサンジの場合。 「よし出来た、と」 デコレーションに使ったチョコレートを指にすくって舐めながら、サンジが言った。 横で見ていたナミが小さく拍手を贈る。 テーブルには、白いクリームにウソップの似顔絵がチョコレートで描かれた星型のケーキ があった。 「スペシャル・ケーキ星ってか」 「すげェだろ」 グラスを並べながら口笛を吹いたゾロの言葉に、サンジはニヤリと笑った。 「確かに、ケーキにマッシュルーム使うってのはすげェな」 「要は食わせりゃ良いのさ」 サンジが咥えた煙草に火を点けて、ケーキの出来映えを見る。 「キノコの格好したお肉ってのも凄いわよね」 「笠はあぶった肉、軸は茹でたアスパラとニンジン。ネギの白身で笠の裏と軸を覆ってみま した」 ナミはくすりと笑い、ゾロとサンジを見た。 三人の目がキラリと光り、口角が上がる。 「バースディパーティと洒落込みましょうか」 「今日こそは食わせてやるぜ」 「出来たら『嫌いな物攻略パーティ』に早代わりだな」 さあ、パーティの始まりだ。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |
終わり。