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人生が競馬の比喩なのだ!

〜『競馬』という名のインナースペース〜


 Vol.9 桜花賞配当に関する考察
〜 「偏見」に「常識」が勝った! 〜


 今年で60回を迎えた桜花賞は、6番人気のチアズグレイスが直線鮮やかに抜け出し快勝。2着にも7人気のマヤノメイビーが突っ込み、「波乱」の結末となった。
 もっとも、私にとってみれば、「ミ&ル」のおかげをもちまして(笑)、馬連8010円の好配当をものにすることができたので、波乱でもなんでもなかったのだが…。
 ただ、「ミ&ル」にケチをつけるとすれば、運が味方した、と思わざるを得ない面が多々あることか。
 例えば、シルクプリマドンナの取捨。
 馬体減はうまく持ち直していたわけだし、「4牝特別2着馬が一度も連対したことがない」というデータだけで完全に印を落すのは、根拠が薄い。結果としてマヤノメイビーの頭差3着だったからよかったものの、もし交わしていたらと思うと…。ま、どっちにしろメイビー流しだったから外れだけど。
 エアトゥーレ(11着)を買った理由も、「武豊だから」というだけのようだった気がする。よくよく考えれば一勝馬。マスコミ報道と桜花賞4勝という騎手の実績を買いかぶりすぎた感は否めない。反省、反省…。
 それから、展開予想ではマヤノメイビーが後方待機でぶっこ抜く、ということを想定していた。それで、差し・追い込み馬の台頭を重視したのだが、フタを開けてみればマヤノも好位からレースを運んだ。後ろからの馬は一頭も届かず。
 こうしてみると、マジで危険な予想だったなあ。

 しかし、この配当はちょっと付き過ぎ、と思うのは、取った人間の傲りだろうか?
 よく考えてほしい。チアズグレイスはチューリップ賞1人気だったわけだし、マヤノメイビーも阪神3歳牝馬Sでは2人気。それがいきなり6人気・7人気に落ちるのは、少し極端すぎやしないか。
 もちろん理由はある。
 チアズはそのチューリップ賞、不良馬場と重め残り(これは桜花賞ではっきりと判明した)が祟って10着に終わったこと。
 メイビーは、エルフィンSの前にソエが出て回避したため、ぶっつけ本番だったこと。
 そして、無敗で4牝特別を勝ったサイコーキララがいたこと…。
 全て「根拠」らしきものは存在している。
 が、直前人気は果たして「常識」に基づいたものだったのだろうか??
 マスコミ、そして我々が勝手に捏ね上げた「偏見」が咲かせた徒花だったのではなかろうか。

 チアズグレイスの評価は「大物感がない」というのが一般的だったように思う。
 確かに、7戦して重賞未勝利。オープンを2戦(紅梅賞・エルフィンS)してともにサイコーキララに破れている。極め付けは、レベルの低い(とされていた)チューリップ賞での惨敗
 それから、あの頭の高い走法が、ファンの琴線に触れなかったのではないか。なんというか、サラブレッドに持って備わっているスピード感に欠けているように見えるのだ。
 函館デビューだったことも、彼女に纏わりつく偏見を助長しているように思える。
 「函館開催の新馬戦の勝ち馬=超早熟」という傾向を「偏見」と断ずるわけにはいかない。実際に当てはまる馬も多いわけだし、何よりも早熟でなければ3歳6月にレースを使えない。
 が、去年のオークスを制したウメノファイバーも函館組だし、あのナリタブライアンもまた然り。「函館デビューはクラシックに繋がらない」わけではないのだ。
 さらに、阪神3歳牝馬S好走がまったく無視されていた。3ヶ月の休み明けで、しかも2角で不利を受けたにもかかわらず4着に食い込んだのに、である。私の知るかぎり、誰もこのことを触れられていなかったように見受けられた。
 そして「サンデーサイレンス産駒が桜花賞で勝てない説」
 今となっては笑うしかないが、結構本気で信じた人が多かったのでは? フューチャーサンデー(15着)も2戦2勝なのに5人気だったし。特に血統を重視する人が陥りやすい説ではあるだと思うが…。駄目だよ、リーディングサイヤーに逆らっちゃ(笑)。その前の週にSS産駒が6勝(その上フジキセキの子も2勝)したくらいなんだから。
 結局、グレイスに単勝15.9倍という評価にした中身は、数々の「偏見」の為せる業だったということになる。

 マヤノメイビーの7人気という評価は、一見極めて妥当なもののように思える。
 前述した通り、トライアルを全休。なんとかレースに使えるメドがたった、という状態で迎えたクラシック戦線本番、というのが陣営の正直なところだったのではないか。
 「休み明け」が嫌われた伏線には、去年の桜花賞にあるのは言うまでもないだろう。
 あのスティンガーの出遅れ。あれにトラウマもっちゃった人が多いのだろうなあ(そういえば、今年も安田記念直行するらしいが、どんな人気になるのだろう?)。私が「メイビー本命」と言うと、皆が皆「去年スティンガー来なかった」と判で押したように返してきてたから、「スティンガー・ショック」は相当なものだったと推察される。
 しかし、私はこの「休み明け来ない説」は幻想だと、かなり前から思っていた。
 なにしろ、サンプルが少ない。詳しく調べていないけれど、去年のスティンガーしか例がないんじゃないの?
 そのスティンガーだって、本当にぶっつけが原因で出遅れたのかどうか。要するに、たまたまなんじゃないか、と私は思っている(笑)。確かに、入れ込んでいたけど。それよりも、藤沢&岡部ブランドに目を眩まされた面の方が強いのではないだろうか。
 それを踏まえた上で、スティンガーとメイビーの戦績を見比べてみると…。
 前者が一ヶ月足らずの間にG1馬に上り詰めたのに対し、メイビーは新馬戦から500万下特別まで一ヶ月、そこから阪神三歳牝馬Sまで二ヶ月の間隔で使われている。同じ3戦でも中身はかなり違っていたわけだ。
 おまけに、メイビーはもともと出遅れ癖のある馬。「別に遅れてもいいや」というふうにゆったりとスタートを見ることが出来た。結局、遅れたのは別の馬(エアトゥーレ)だったけど(笑)。
 つまり、彼女たちに共通しているのは、天才少女だということ。それだけである。
 と、なると、メイビー自身の能力の問題となる。これは、折り紙付きだった。阪神3歳牝馬Sの末脚は忘れられなかったし、唯一上がり34秒台を記録しているというデータも印象を裏付けている。チューリップ賞が道悪だったこともあるが、阪神マイルの走破タイムもメンバー随一だった。
 3歳牝馬Sは決してレベルの高いレースとは思っていないが、年明けデビュー組はそれを越えるだけのパフォーマンスを見せられなかったことになる。
 この点にはたと気付いて、私はトライアルの好走馬は全て危険なのでは、と思ったわけである。


 サイコーキララについては、「ミ&ル」が詳しく語ってくれたので多くは述べない。
 しかし、キララが勝たねばならないという「雰囲気」を無理矢理作ろうとしていたマスコミの報道には、なんだかな〜と感じてしまう。
 素人の私…おっと、「ミ&ル」でさえあれだけの死角を見つけだしたのだ。分かっていて記事にしなかったとしか思えない。某血統評論家も節を曲げてサイコーキララに◎打っていたものなあ(笑)。
 あと、石山繁騎手についても一言。四牝特別をキララで制した時点で、リーディング十傑を争う騎手みたいな扱いだったが、騎乗技術が飛躍的に向上したようには見えなかったし、精神面が急に成長するわけでもないだろう。
 手のひらを返したような報道ぶりは、明らかに行き過ぎだったと思う。誰もが武豊ではないのだ。フィジカルもメンタルも、徐々に進歩していくものなはず。
 浜田調教師がオークスでも石山騎手を引き続けて乗せるようだが、距離延長で難易度が増す東京二四〇〇で彼とキララがどう立ち回るか。桜花賞の体験を経験に昇華出来るか。真価が問われるのは次の舞台だ。

 今年の桜花賞の教訓は、

「人は急には変わらない、馬もまた然り」

―というところだろうか。
 変わったとすれば、それは周囲の視線の色合いが変わったのだ。
 結局、3歳G1の上位馬たちが連に絡み、桜花賞優勝経験がある松永幹夫騎手に栄冠が渡った。競馬の枠組みの中でしか通用しない常識は「偏見」でしかなく、普遍の常識が後に残った。チアズグレイスとマヤノメイビーは、ストレイトな見方をする大切さを、私たちに教えてくれたように思う。



(Apl.16.2000)


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