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認知症にみられる精神症状としてよく知られている行動障害(問題行動)とされる症状。
この「問題行動」という言葉だけが先走りし、誤解と偏見を生じてしまうことから、「行動障害」と改めようという働きが始まっています。
これらの現れ方には同じような行動が見られたとしても同じ原因ではなく、その人が置かれている環境や人間関係や生活習慣など少なからず関連されているといわれる。中にはその人からのコミュニケーションの始まりであったり、サインであったりします。こういった原因やサインを理解出来れば「問題行動」と思われていた行動がその人のリズムと感じられ、介護に対しても少し気が楽になるのかも知れません。
その他、急性脳障害や身体状態の悪化によるものが原因のものもありますので、その症状の観察や判断、行動の背景の分析が的確に行われることが重要となります。
異食
異食とは、食べられる物と食べられない物とが区別できず、食べ物とはいえないような物を口にいれてしまう行動。欲求不満から起こるもの、脳障害によるものなどがある。
状況:ビニールのひも、土、便、椅子のスポンジ、畳、布団の綿、枕の中身、ティッシュ、てんか粉、たばこの吸い殻、化粧品類、薬品など身近にあるようなものなんでも異食の対象となる。
体験談
☆あるおむつ交換時、お部屋に行くとベッド柵にきれいに干されたおむつがズラリ。オムツカバー・フラット・パット・布おむつ・・・きれいにお洗濯を干しているかのように整理されている。(内心ドキッ)にこにこの良い笑顔で私は迎えられる。「あら〜いらっしゃい」なんて声をかけられながら。「これ今作ったところなの。あなた食べない?」と丁寧に差し出されたものとは・・・ティッシュの上に並べられたお団子しかもその方の口には・・・。「折角ですから私が頂いて帰っても良いですか?」と声をかけてみる。「はいはいどうぞ」と頂いて帰ることにした。
☆清拭後のタオルをつけているバケツが置いてある部屋へ迷い込んでしまっていた方を発見。そのバケツにはクレゾール液(希釈した物)が入っていたのだがゴクゴクと飲み込んでいたり・・・
☆枕元においてあったティッシュをモグモグ。
☆ベッドの上では布団のシーツ、枕カバー、カーテン、衣類などを口に含みしゃぶっている。車椅子にて起きている時には自分の靴下を脱いでは口に入れ、食事の時も食事を楽しむといった感じではなく(流動食なだけに)流しこんで食べてしまう。
対応:予防
○危険と思われる品物は片づける。目につくところに置かない。
○異食の多い人の場合は便の観察に注意する。
○食べ物を実際口にしていると、異食を妨げる事が多い。(間食になるような物を準備しておく)
こういった行動には何らかの本人の意思があり、それを叱ったり無理矢理に取り上げたりすると反発を起こす。しかし、頻度としてはそれほど多くない行為であるが、危険をともない大変重要な症状である。異食によって口の周りがただれてしまったり下痢を起こしやすい。発見したらすぐに取り除くような方法を考えてみる。無理に口に手を入れて出そうとせず、他の食べ物と交換してもらえるよう勧めてみるとうまくいく事が多い。事後の身体症状の観察(腹痛・嘔吐等)に注意する。

徘徊
徘徊には「家に帰りたい」「子供を迎えに行かないと」等目的がはっきりしている場合と、特にこれといったはっきりとした目的がないように見受けられる徘徊とがあるように思う。
帰宅願望の強い方や外出癖ののある方の中には、目的をもって徘徊することが多く、こういった場合はその方の生活歴をふまえて対応する。
昔の職業を思いだして行動にでる場合もある。例えば女性で夕方になると家事の役割を思い出し「〜しなければ」と行動に現れてくる場合もある。また夕暮れ時になると帰宅願望が強くなり不安に駆られる。これは実際、自分の家にいたとしても「帰りたい」と落ち着かなくなる事もあるようだ。「家に帰りたい」の表現の裏には自分の過去に住んでいた家であったり懐かしい思い出の場所や自分自身であったりする。急に何かが心配になったり落ち着かないまま不穏行動に出てしまうケースも多く、心配しなくても大丈夫なんだという安心感を与えることへの対応を考えてみる。ひとつのことに集中しないですむよう気分を変えるようなきっかけつくりも必要かと思う。
目的がいまひとつはっきりとしないままの徘徊は、興奮であったり焦燥や不安、衝動行為のひとつとして起こってくる反復行為等、脳障害のひとつとして考えられる場合もあるので行動のひとつひとつを柔軟に見守る姿勢で試みたい。
廊下に鏡があったケース・・・何故か鏡に突き進みそのまま動かない。「早くこっちにおいで」と誰かを探している。気がつくと廊下を歩き鏡の前に。鏡の前で手招きしたり声をかけたりよくよく見ていると鏡には反射で映っている廊下とその様子を見ている私の姿。鏡越しに私を呼んでいたのだった。鏡の場所へ行けば誰かがいる事が気になっていたのだった。鏡に布を張ってみるとその行動は不思議とおさまった。
自分の荷物を大きな風呂敷にまとめてと朝から荷造りに専念し清々しい顔つきで「お世話になりました」と帰ろうとする。「お家に帰られるのですか?」「はい。皆さんにはようしてもろて・・・」両手にはずっしりと大荷物を抱えて玄関を出て行かれる。「気をつけてお帰り下さい。またいつでもいらしてくださいね」「はぁ・・・またお願いするかも知れませんが・・・」付かず離れずの距離を職員が付いて歩く。30分程歩いただろうか・・・外にひとりで歩くといった行為は神経をつかう更には両手には大荷物。疲れが見え始めた頃、職員の腕の見せどころ。いかにも今偶然会ったかのように声をかける。「疲れたでしょ?お茶でも入れますから飲みに来ませんか?」「そうしましょうか。この重たい荷物にはほとほと困ったんよ」※玄関を出て行かれる時の満足そうな様子や歩行状態、交通状態、疲れた時などの様子観察が必要となる。
対応
○危険がないように注意しながら、なるべく制限しないという方向での対応を考える。
○生活の中に役割をもって頂くことや日課の中に散歩を組み込んでみる。
○原因の中には便秘や身体状態が影響している場合があるので、排便のコントロール等にも注意する。
○警察や地域の方々への連絡網を整えておく
○夜間に徘徊がよく見られる方には無理に寝かしつけるのではなく自由に歩いてもらいながらタイミングをみて温かい飲み物で誘ったりすると落ち着く場合もある。

妄想と幻覚
妄想
非常に多いのは「財布を盗られた」と騒いだりする「物盗られ妄想」、食べさせてくれない等といった「被害妄想」である。また誰と誰ががあやしいというような「嫉妬妄想」などなど。在宅の場合では主に介護にあたっている嫁に対しこういったケースが見られ、精神的な介護疲れの要因となっていることが多い。
対応
○正当な事でなくともすぐに否定せず、まず本人の訴えをよく聞く。
○物盗られ妄想は一緒に探し物をすると気分的に落ち着きがみられる場合がある。ただし、反対に疑われる場合もあるので要注意だが、自分のために時間を費やしてくれていると感じてもらえると効果的。
○いつも財布を盗られたと騒いでしまう方には財布を身につけてもらう等、安心感を持ってもらえるようにしてみる。
○訴えを聞きながらお茶を飲んでもらったり気分がそれだけに集中しないよう対応してみる。話を十分に聞いてもらうことで気分が落ち着きおさまることもある。
○無くなったといわれる物がいつも決まっていたりする場合は普段の行動からいつもどこにどのようにして置いているのかを把握しておくと見つかりやすい。
幻覚
外からの刺激がないのにその事物が実在すると感ずる経験。動物や亡くなった人に出会うなど、実際にないものが見える「幻覚」が多く、実際になにもないのに聞こえる「幻聴」、おかしな味がする「幻味」、おかしな臭いがする「幻臭」などがある。またせん妄にともなって現れる場合と、ともなわない場合とがある。
対応
○訴えを受け止め、本人には見えたり、聞こえたりしているその事を否定しない。
○安心させ気を紛らわせてみる
○薬物が有効な場合もある

性的問題と奇声
性的な問題は職員に向けられると、利用者同士のものとがある。性的欲求の亢進によるものと、性的欲求以外の欲求不満の現れと判断できるものがみられる。すべてを受容するというわけにもいかないが、できるだけ寛大な態度をとるよう努力することが必要とされる。
状況:性的な言葉や態度で体に触れてくる。性器を見せびらかす。触れらせたがる等。
対応
○介護する側の共通離解がもてるようにしておく。すべてを異常と受け止めない事が大切。嫌がったり叱ったりしないでさり気なくかわす。(嫌がったり叱ったりする事への反応を楽しんでいるケースもある)大騒ぎしない。
○利用者同士の場合、相互への影響や周囲への影響に配慮し注意を払う。相手が嫌がっているようならば誘導して距離をおくように援助を行ってみる。痴呆の人が意志の表示が出来ないでいる場合にはそれをどう援助するのかが大切。職員が被害者を守ることが必要なこともある。
奇声や大声
脳障害によるもの、精神的問題による興奮や欲求不満、人を呼ぶ欲求などがあるが、特別な理由が見つからない場合もある。衝動的に突然起こる場合もある。
状況:☆意味不明な言葉を時をかまわず大きな声を出しなかなかおさまらない。☆食事をしているときは安定しているが集中しているものがなくなるとまた大きな声を出す。☆夜眠らずお経のようなものを繰り返し繰り返し大声で唱えている。
対応
意味不明な言葉を大声で発したりする行動の裏にも原因がある。それがその人にとってはコミュニケーションの始まりであったりする場合もある。じっくりと受け入れていける姿勢を整えよう。
○欲求不満が背後にある場合などは、誰かが側にいることでおさまることがある。
○身体状態が影響している場合もあるので医師と相談してみる。
○他の利用者への影響を考慮し防音できる部屋の準備が出来ると好ましい。
○興奮状態にあるときは介護者は静かに対応を試みる。押さえつけるような行動(叱る等)はしない。本人がリラックス出来る状態に努める。

睡眠障害と夜間せん妄
昼夜逆転していて夜眠らない、朝方早くから起きてしまう。うたた寝して昼夜を通じて断続的にしか寝ない。昼起きていても夜眠らないなど。急性脳障害、生活習慣、内臓疾患、痛み、掻痒感、不安などが原因の場合も多い。睡眠障害は夜間不穏やせん妄などを誘発しやすい。
対応
○入眠時間や覚醒時間を無理に決めないで様子をみる。
○睡眠パターンの個別性を考慮して睡眠障害の程度や原因を見極める。
○暗闇による不安や淋しさから不眠になるような場合には、添い寝も効果がある。
○昼間の生活スタイルの見直し
○身体状態をチェックする
○実際には休まれているが、眠れないという思いこみのある方には偽薬で効果のある場合もある。
○就寝前の部分浴など
夜間せん妄
意識混濁に錯覚や幻覚、ときに錯乱をともなった状態が出現する。痴呆性老人では特に夜間に出現することが多い。これを夜間せん妄という。睡眠障害が誘因になっていることもある。急性脳障害が背景にあったり、夜間の血圧低下によるものもある。脳障害は身体不調(脱水・発熱など)に起因する事多い。また、暗くなることで感覚への刺激が不確実になることも影響している。
対応
○せん妄は急性の脳障害に起因するので、薬物治療の適用があるが、効果が見られないことがしばしばありそれが問題である。
○辺りが暗くなると情報を間違って認識してしまい、せん妄が起こりやすいので、夕方には室内を明るく、就寝時には暗くした方が落ち着いて入眠出来やすい。
○不安を除いて安心させるような話し方、接し方を心がける
○夜落ち着かない時は側にいて話をしながら落ち着かせる。
○身体状態をチェックし、原因を探す必要がある。
○日中は単純な作業や散歩等適度な運動を勧めてみる。
