かぶる

目の前の壁ぶらさがる闇で
男がひとり絵筆を持ってる
皮が切れる光を放つ
そのためにだけ色を拡げて

絵の中と同じピエロの服を着て
ずっとこっちを見る訳でもなく
大っきめの帽子深めにかぶって
眉がかくれて僕をおさえる

どんな人よりもっともっと夜を知ろうと

「雨が降るからだよ、空には」
「光がないからだよ、消えるのは」
そこで座ってひざを抱えて
ちょっと持ち上げてのぞき込むように

こんなときには自分が嫌で
何かばかりがいつも足りない
からっぽの用事今でもつくって
寄ってくる人には怯えているんだ

どんな人よりもっともっと僕を知ろうと

徐々に徐々に脱いでしまおう
徐々に徐々に外して行こう
徐々に徐々に割ってしまおう
徐々に徐々にはしゃいで行こう

Copyright (c) gotoisamu All rights reserved.