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●有機農業は自然を守る。

農業は本質的に自然を破壊する行為である。しかし,農業の環境保全機能については否定すべきではない。自然にとって多様性は重要であり,人の存在によって存在しうる自然もある。私も農業の環境保全機能を高めるような有機農業であれば肯定するに吝かではないが,ラベルだけが重視される「机上の有機栽培」には否定的である。

【00/10/09作成】

ウォルトディズニーのマンガ映画に「バンビ」があり,その中で子鹿のバンビが山火事に遭って逃げまどう可哀想な場面がでてくる。その影響で米国では鹿を守るため一時山火事を懸命に消すようになり,おかげで鹿の数が激減したという。山火事がないため樹木がすべて大きくなり鹿の届く範囲に若枝はなくなって食糧不足に陥ったのである。極相林だけが自然ではなく,山火事も多様な自然を守っているのである。ビーバーもダムを造り,自分に都合の良い環境を創りだす。

今年の夏,久しぶりに祖母の郷里を訪れた。西日本の,とある山の南斜面の中腹にあり眼下に大きな川が見下ろせる。さらに登ると菩提寺がある。その途中の景色が少年の頃とは大きく様変わりしてしまった。木が茂り川が見えなくなっていたのである。下草を刈り落ち葉を集めて田畑の肥料にする者も,下枝を風呂の燃料にする者もいなくなり雑木林が荒れたためである。昔は,枯れ枝の取りあいでいざこざまであった。これは本来の自然に戻りつつあるともいえるが,小学生の夏休みに虫を追いかけた身近な自然が破壊されたともいえる。

私は,農業は基本的に自然破壊であると考えている。しかし,農業の環境保全機能を完全に否定するものではない。自然にとって多様性は重要であり,人の存在によって存在しうる自然もある。人が手を加えなければ成立しない雑木林も自然なのである。棚田もある程度は守るべきであり,雑木林に隣接した水田で有機栽培を行うことにはそれなりの意味はある。しかし,耕して天に至るような棚田は自然破壊以外の何物でもなく,水田地帯の真ん中で有機栽培を行うことが自然環境保全に繋がるとは思わない。

10月3日のNHKクローズアップ現代「有機の野菜・米が消える〜新表示の波紋〜」に,水田地帯の真ん中で有機農法のキュウリを栽培している農家に有機栽培の認証が得られなかった事例が紹介されていて興味深かった。周囲の水田で使われる農薬の空中散布時のドリフトのためだという。確かに,ここなら農薬を使わなくとも有機栽培が可能だろう。周りで農薬を使った通常の栽培が行われているために病害虫の飛び込みは極端に少なくなる。しかし,周囲で農薬が散布されていることによって成立する有機栽培にどれだけの意味があるのだろう。少なくとも,NHKに登場したキュウリ農家が多様な自然の涵養に貢献するような農業を行っていないことは確かである。

私は農業の自然保全機能を高めるような有機農業であれば肯定するに吝かではない。しかし,ラベルだけが重視される「机上の有機栽培」には「宗教的な意義」しか見いだせない。NHKクローズアップ現代の表題である「有機の野菜・米が消える〜新表示の波紋〜」は「有機バブルついに崩壊〜“有機”は混迷の時代へ〜」が相応しい。

 

【著者補注】この文章は「有機農業は自然を破壊する。」の続編であり補遺である。

 

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