
●遺伝子組換えイネは存在しうるか。グリホサート耐性のイネやBt遺伝子を組み込んだイネが今後販売される可能性はない。それは実際の作物がどのように栽培され,どのような害虫がその作物を食害するかを考えれば容易に推測できる。「除草剤耐性の」とか「害虫に強い」といった概念だけでは「自然」は語れない。
【00/12/30作成,02/03/10最終訂正】
遺伝子組換えで除草剤耐性にしたイネや害虫に強いイネが将来販売される可能性はあるだろうか。もちろん,現在でも技術的には作出可能だろう。しかし,グリホサート耐性のイネやBt遺伝子を組み込んだイネについては今後販売される可能性はないと思われる。
グリホサート耐性のダイズがなぜ成功したのか。最大の理由はダイズでは生長すると葉が地面をほぼ完全に覆い地表部が暗くなる点にある。ある程度ダイズが生長した時点で非選択性除草剤であるグリホサートをまけば,その時点でダイズと成長を競っていた雑草は草種を問わず全て殲滅できる。次の競争相手はたとえ発芽しても十分な日光は得られず枯れてしまう。そのため1回の薬剤散布で十分な効果が得られる。
イネではこうはいかない。株元に日が射さない状況は考えられず,雑草は常に競争相手となる。グリホサートは茎葉部に直接かからなければ枯れない種類の除草剤である。そのため,オモダカ,クログアイといった水中に塊茎を作る多年生雑草の防除は困難である。しかも,水系への流亡の問題もある。
グリホサートは土壌に落ちれば徐々に無害なりん酸などに分解するという優れた性質を有している。しかし,水に落ちればこうはいかない。多くの除草剤が水に溶けにくく土壌に吸着されるのに対して,グリホサートは水に極めて溶けやすく土壌には吸着されにくい。田面にまけばかなりの部分が水田排水として流出し,排水路等の生態系に深刻な影響を与えるのみならず,その分解物であるアミノメタンホスホン酸とともに河川を汚染する。
害虫に強いトウモロコシでは殺虫活性のある蛋白質を作るBt遺伝子が導入されている。害虫は茎葉部を食害する際にこの蛋白質も食べて死に至る。では,同様の遺伝子組換えイネを作出すればイネの害虫を防除できるだろうか。確かに,葉を食害するイネドロオイムシや茎部に食入するイネツトムシや根部などを食害するイネミズゾウムシには有効だろう。しかし,イネの主要な害虫であるセジロウンカ,トビイロウンカ,ヒメトビウンカ,ツマグロヨコバイといったウンカ,ヨコバイ類に有効とは思えない。これらは半翅目,つまりセミの仲間でありイネの茎に口吻を差し込んで中の汁を吸う吸汁害虫である。調べた訳ではないが,汁液にこの蛋白毒が存在するとは思えない。
「除草剤で枯れない」とか「虫に食べられない」といった机上の議論からは,同じような遺伝子組換えイネも将来販売されるだろうとの考えも生まれる。しかし,それは所詮「本当の作物」や「生きている害虫」を知らない御仁が頭で考えただけの浅薄な思考に過ぎない。遺伝子組換えは「自然」ではないと主張する御仁の「自然」とはいったいどこにあるのだろう。
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