●いま危険だといわれている化学物質も将来安全であることがわかるかもしれない。この典型例はサッカリンである。サッカリンはラットに膀胱癌をおこすため危険だと考えられていた。しかし,これはラット特有の反応に由来し同様の反応はヒトには存在しないことが明らかにされ,その結果,現在はヒトでは安全であることがわかっている。
【01/03/04作成】
かつて米国には連邦食品医薬品化粧品法にデラニー条項という条文があった。動物試験で発がん性が認められた農薬は一切禁止という時代遅れの法律であった。
この法律が制定された当時は,まだ癌がどのようにしてできるかという発生機序がほとんどわかっていなかった。そのため,ラットに癌をおこすのならヒトにも癌をおこすはずだとのごく単純な考えでこの条項が制定された。
しかし,その後,癌の研究は長足の進歩を遂げ,癌の発生機序もかなりわかってきた。普通の食物にも多くの発癌物質が含まれていることもわかった。その結果,たとえ実験動物で癌ができてもヒトではその発癌の機構がないために人に対する発癌物質と考えるべきではない化合物も多く見つかってきた。このような経緯からデラニー条項は1996年に廃止された。
現在では多くの癌研究機関で発癌性をいくつかに分類している。たとえば,国際がん研究機構(IARC)は発ガン性を以下の5グループに分類している。
- グループ1 ヒトに対して発ガン性がある
- グループ2A ヒトに対しておそらく発ガン性がある
- グループ2B ヒトに対して発ガン性があるかもしれない
- グループ3 ヒトに対する発ガン性については分類できない
- グループ4 ヒトに対しておそらく発ガン性がない
このうち,グループ2Bに分類されるのが,実験動物に癌をおこすがヒトでは発癌性の問題はないと考えられる化合物などである。
この事例,つまり,かつては発癌性があり危険だといわれていた化合物が科学の進歩によって安全であることがわかった有名な例はサッカリンである。サッカリンはラットに膀胱癌をおこすが,これはラット特有の反応に由来し同様の反応は存在しないヒトには全く問題がないことが明らかにされている。
では,今後どのような今は危険といわれている化合物が本当は安全であることが明らかにされるだろうか。私は催奇形性がこれに該当すると考えている。発癌性物質が分類されたように,将来,催奇形性物質もいくつかに分類され,その分類ごとに安全性が評価される可能性が高い。また,発癌モデルもさらに精緻化され化学ホルミシスも評価されるのではないかと考えている。
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