NHK総合(10月17日19時35分)など,
クローズアップ現代「なぜ広がった?違法農薬」10月17日にNHKクローズアップ現代で「なぜ広がった?違法農薬」なる放送があり,ダイホルタンとプリクトランに代表される「違法農薬」の問題が議論された。しかし,登場した茨城大学中島紀一教授と神山美智子弁護士は農薬の登録制度が根本的に理解できていなかった。特に,神山弁護士が農薬の失効と有効成分の失効の区別が付かず,登録失効農薬と無登録農薬とを混同させる報道をしたのが最大の問題であった。
【02/10/18】
10月17日にNHKクローズアップ現代で「なぜ広がった?違法農薬」なる放送があり,ダイホルタンとプリクトランに代表される「違法農薬」の問題が議論された。無登録農薬の問題は奥が深いが,この番組では「合法農薬」の適用外使用や非農耕地用農薬の農耕地への転用などの問題は取り扱われなかった。そのため,論点はかなり限定されたが,それだけにNHKが農薬の登録制度を全く理解していないことがよくわかった。登場した茨城大学中島紀一教授は完全な素人であり,「農薬問題に詳しい」と称する神山美智子弁護士も農薬の法規制を理解できていないただのおばさんであった。
この問題の本質が農薬取締法の不備にあることはいうまでもない。農薬取締法は戦後の混乱期に農薬の品質を高めることを通して農家を援助し食糧生産に寄与するために生まれた法律である。いわば,「効果のない農薬」を「いい農薬ですよ」とだまして農家に売るのを防ぐための法律で,「効果の優れた農薬」を「農薬ではない」といって売る者の存在は想定されていない。今回の問題は,弥縫策を講ずるだけででこの法律の抜本的改訂を怠った農水省にその責の大半がある。
番組では農家がダイホルタンなどを使った理由や規制当局の対応の問題について言及されたが,これらには特にコメントしない。月並みな政府批判ならNHKにも出来るというほかない。これらの議論のあと,「農家と農薬に詳しい」と紹介された中島教授が「農薬取締法は農薬の製造,販売を規制するが,使用については規制や罰則がない」といいだしたのには驚いた。
現在,農薬取締法は農薬の製造を規制してはいない。工場において農薬原体を製造することも,その原体を使って農薬製剤を製造することも農薬取締法は規制していない。製造業者の義務は容器の表示などに限られる。たとえば新規農薬の場合,登録がおりる時期を最終的な事務手続きを経て官報に告示される前に推測できることが多く,登録取得前に生産を開始するのが普通である。ただし,今回の国会で農薬取締法が改正されると農薬の製造も規制されると聞いている。
農薬取締法が農薬の使用を規制していないというのも素人のたわごととしか思えない。農薬取締法の中に「使用者が遵守すべき基準」がいくつか書かれている。「遵守することが望ましい基準」もある。問題は罰則がないことにある。これも,今回の農薬取締法改正により解決されるであろう。「無登録農薬」最大の問題は「合法農薬の違法使用」にあるが,「使用については規制がない」という中島教授はこの問題の存在すら認識できないのだろう。
次に,農薬登録についての話になり,農薬検査所が登場した。農薬の登録制度において農薬検査所の果たす役割は大きいが,画面では農薬検査所を「農薬検査場」と表示し,アナウンサーもそう発言していた。これだけでNHKは農薬登録制度を全く理解していないことがわかるが,NHKはバスを使って農薬検査所にいったのだろうか。なぜか最寄りのバス停は「農薬検査場」なのである。
有効成分の3年ごとの登録更新(実際には代表する農薬製剤なのだが)の議論の中で「毎年200個の農薬が失効している。」と放送されたのには驚いた。NHKはいまだに農薬とその有効成分の関係が理解できていないようだ。失効する農薬の有効成分は年に5個程度,最大でも10個程度だろう。
次に神山弁護士が登場し「農薬が失効しているかどうか使用者にわからないのが問題だ。失効理由も公表されない。使ってはいけないというルールもない。」といいだす。「農薬に詳しい」と画面に表示された神山弁護士は農薬の登録制度をほとんど理解していないようだ。「失効農薬」と「無登録農薬」と「違法農薬」の関係がまるでわかっていない。
神山弁護士は「合法農薬」であっても保管している間に失効すれば使えなくなると考えているようだ。そのため「農薬が失効しているかどうか」を重視しているのであろう。しかし,問題は「使えるかどうか」である。失効農薬は販売は出来ないが農家が在庫を使うことには何の問題もない。ただし,例外がある。残留農薬基準が「検出されないこと」とされた場合は使用できない。
たとえば,ダイホルタンは平成元年12月25日に失効し,平成8年9月2日に残留基準値が「全作物で検出不可」に変更され,その旨告示された。つまり,平成元年に購入したダイホルタンは平成8年まで使えたことになる。なお,NHKは番組の中で「13年前に発癌性が指摘され使えなくなりました。」といっていたが,これは誤りである。発癌性が指摘されたのは失効の8年後,つまり6年前である。
神山弁護士とNHKは「合法農薬」が失効した場合と失効した有効成分を使って製造した無登録農薬の問題も混同しているようだ。それゆえに,神山弁護士の登場のあとナフサクの話になり,画面に「失効農薬が使われた」のテロップが表示されたのであろう。両者の区別は容易で,農水省登録番号が箱や容器に書かれていないものはすべて違法農薬である。たとえ有効成分が失効していなくとも,農薬登録を取得しなければその有効成分を含む製剤は違法な無登録農薬である。違法農薬を使ってはいけないのは当然のルールであろう。
種々問題点を指摘したが,最大の問題は「無登録農薬」と「登録失効農薬」を混同させる報道をした点にある。これにより風評被害が生じれば全ての責任はNHKにある。
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