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NHK-BS1(2007年6月23日)など,
BSドキュメンタリー「草の根貿易が大地を守る〜バングラデシュ発最先端ファッション〜」

2007年6月23日NHK-BS1にて,BSドキュメンタリー「草の根貿易が大地を守る〜バングラデシュ発最先端ファッション〜」なる番組が放送された。内容はインド系イギリス人サフィア・ミニー氏が,バングラデシュにおいてオーガニックコットンの委託栽培に奮闘し,日本ではその商品化に尽力する話である。この番組には無農薬を礼賛するNHKらしい欺瞞が満載されているが,その典型が,肥料用尿素粒を撒いていた農夫の指が爪水虫でボロボロになっていたのを,危険な化学物質を使っていたために奇病に罹ったのだと誤解させる巧みな演出である。

【09/10/10】

2007年6月23日NHK-BS1にて,BSドキュメンタリー「草の根貿易が大地を守る〜バングラデシュ発最先端ファッション〜」なる番組が放送された。内容はインド系イギリス人サフィア・ミニー氏(女性;43歳)が,バングラデシュにおいてオーガニックコットンの委託栽培に奮闘し,日本ではその商品化に尽力する話である。

はじめに,私はオーガニックコットンそのものを否定しているわけではないことを明記しておく。それは,有機栽培の野菜を否定していないのと同じである。フェアトレードという考え方にはむしろ共感している。私が批判したいのは「大地を守る」などという題名を平気で付けるNHKである。NHKは「日本の大地は有機栽培によって守られている。」とでも思っているのだろうか。

番組の冒頭,バングラデシュで棉の種に牛糞をつけて土に撒く場面が放送され,「牛の糞を塗(まぶ)したコットンの種,この種から育つオーガニックコットンが最先端のファッションに生まれ変わります。」とのナレーションのあと,日本でのファッションショーの場面となり,サフィア・ミニー氏が紹介される。同氏が11年前,インドでオーガニックコットンの仕組みを作ったという。

まず,棉の種に牛糞をつける場面は完全に「やらせ」であろう。完熟堆肥ならともかく,種に牛糞をつけて撒くことなど考えられない。牛糞が腐る際に大量の酸素が必要となり,発芽に必要な酸素が不足する。雑菌の問題もある。確かに,鳥や動物に食べられて運ばれる植物の種子なら,これも考えられるが,棉はそのような植物ではない。

冒頭から10分,バングラデシュで委託栽培の引き受け先を探すミニー氏の話となる。まず,「バングラデシュでは作物の種類を問わず大量の農薬が使われてきました。」との前振りのあと,農夫が田に何か白色粒状の剤を撒いている場面となり,ミニー氏が「何をまいてますか?(字幕sic;原文のまま)」と質問する。農夫は「ユーリア(化学肥料の一種)だよ。(字幕sic)」と答える。ミニー氏はその農夫と握手したが,その指の爪はボロボロであり,ミニー氏はその原因を問う。農夫は「わからない」と答える。その場面から,緑の革命とIRRI(国際稲研究所)米,そして,農薬,肥料の多投の話が挿入されたのち,他の村民を集めてオーガニックコットンの素晴らしさが説明される。

普通の視聴者は,ユーリアという化学物質が原因で農夫の指の爪が奇病に冒されたと感じただろう。そう誤解されるような構成になっていた。まず,農夫の爪がボロボロになっていた原因は,明らかに爪水虫(経口抗真菌薬のパルス療法が有効)であり,「ユーリア」なる化学物質が原因ではありえない。ユーリアとは尿素(普通は,ウレアまたはユリア)であり,皮膚病の治療用軟膏にも使われる。確かに,英語の発音は「ユリア」より「ユーリア」に近いが,日本語訳は「尿素(肥料用尿素粒の方がよいが)」とすべきである。NHKが,危険な化学物質が使われていると誤解させるよう「ユーリア」としたことは,話の流れからも明白である。ついでにいえば,下手に未熟な堆肥を使うより,尿素粒を使う方がはるかに環境に優しい。

次に,委託栽培先としてガンジス川に近い中洲の土地をようやく見つける話になり,農民をインドに研修に行かせることになる。日本に戻ったミニー氏はインドに国際電話をかける。冒頭から36分,その電話の中で,「バングラデシュに戻ったら,すぐに有機肥料を作れるように準備をしておきたいのよ。(字幕sic)」と話す。しかし,言った英語は「organic fertilizer and organic pesticide」である。オーガニック農薬(有機農薬と訳すとややこしくなる。)を意図して訳していない。NHKは冒頭に「オーガニックコットンには農薬や化学肥料は使わない。」言い切っており,正しく訳すと都合が悪いのだろう。

日本オーガニックコットン協会のHPには,「オーガニック・コットン(有機栽培綿)とは、3年間農薬や化学肥料を使わないで栽培された農地で、農薬や化学肥料を使わないで生産された綿花のことです。」とある。しかし,その直後に続く文章が興味深い。「栽培に使われる農薬・肥料については厳格な基準が設けられており、認証機関が実地検査を行っています。」である。肥料はともかく,農薬については明らかに矛盾している。このような場合,使ってもよい農薬(organic pesticideと彼らが称しているもの)のリストがHP上にあるのが普通である。大抵は,有機合成農薬よりはるかに危険な「農薬もどき」なのだが,不思議なことにいくら探しても,そのリストが見当たらない。organic pesticideとは,公表すると余程不都合なものなのだろう。サフィア・ミニー氏は日本オーガニックコットン協会とは無関係かもしれないが,規格は同じだろう。

冒頭にいったように,私はオーガニックコットンそのものを否定はしない。この番組が,日本オーガニックコットン協会が民放に作らせた宣伝番組なら問題は少ない。しかし,「ユーリア」の欺瞞工作に代表されるこのNHKの放送には,「それで公共放送に携わる者といえるのか」という怒りを禁じえない。

付記)2年以上前に放送された番組だが,録画を見ていてNHKに対する怒りが修まらなくなり,この小文を作成した。突っ込みたくなる点は他にも多くあったが,放送から時間が経過しているため割愛した。

 

 

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