●環境ホルモン濫訴事件(番外) 非イオン界面活性剤オクチルフェノールとその分解物ノニルフェノールは環境ホルモンである。

【05/11/20作成】

環境ホルモン濫訴事件に関連して,「環境ホルモン濫訴事件:中西応援団」のリンク集にあった「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議のニュースレター第33号の松井三郎氏による記事」を読んでみた。京都大学松井三郎教授の環境ホルモンに対する時代錯誤ともいうべき考え方には呆れさせられたが,突っ込みどころ満載で楽しく読ませていただいた。

中でも最も笑えたのは「それらのうち指摘されている環境ホルモン物質は、(中略)非イオン界面活性剤のオクチルフェノール等とそれが下水処理場で分解されてできるノニルフェノール、」である。オクチルフェノールを非イオン界面活性剤と書いていることは,トリトンX-100の化学構造を知らないどころの話ではない。オクチルフェノールとノニルフェノールの化学構造さえ知らないことになる。オクチルが炭素数8で,ノニルが炭素数9のアルキル基であることぐらいは気の利いた高校生なら知っている。オクチルフェノールがノニルフェノールになるなら炭素が1つ増えているから分解ではなく合成になってしまう。

もちろん,正解は「非イオン界面活性剤のポリ(オキシエチレン)=オクチルフェニルエーテル等(poly(oxyethylene) octylphenyl ether;日本語では英語のスペースを「=」で表すが,明確なら略すことができる)とそれが下水処理場で分解されてできるオクチルフェノール等、」である。もちろん,これらはヒトに対して内分泌撹乱作用を有するわけではなく,魚に対する毒性で,しかも,ポリ(オキシエチレン)=オクチルフェニルエーテルそのものには問題はない。

私は,松井教授は環境ホルモン分野は素人だが,下水道は得意分野だと認識していた。しかし,その期待は見事に裏切られた。非イオン界面活性剤は1つの分子中に脂溶性部分と水溶性部分の存在する化合物であり,この例では,オクチルフェニル(オクチルは直鎖に限らない)部分が脂溶性で,ポリ(オキシエチレン)部分が水溶性である。下水処理過程で界面活性剤の分解は重要で,主要な界面活性剤の化学構造ぐらい下水処理の専門家なら熟知しているはずである。

この件を含め,松井教授には物質を原子で構成された分子として捉えてその挙動を考えるという研究者としての基本姿勢に欠けているように思えてならない。第7回内分泌撹乱化学物質問題に関する国際シンポジウムでの講演でも,単に概念だけを弄(もてあそ)んで東洋哲学に逃げつつ自分に都合の良い結論に導く,そんな姿勢が見て取れる。松井教授は「環境ホルモンとして疑われている物質約70種類」のうち,いくつの物質の化学構造式を正しく書くことができるだろうか。

つぎに笑えたのは,「人工化学物質に加えて、植物ホルモンも問題となっていること」である。ここでいう「植物ホルモン」とは,オーキシンやジベレリンやエチレンといった本物の植物ホルモンではない。植物に含まれ,女性ホルモン活性等を有する天然物をいっている。極めて興味深い主張である。どうやら,松井教授も日本子孫基金の小若順一氏と同類の御仁と見受けられる。

 

著者注)ポリ(オキシエチレン)=オクチルフェニルエーテルは下水処理場でオクチルフェノールに分解すると解釈したが,活性汚泥で処理すればかなりの割合のオクチルフェノールがさらに酸化的分解を受けると考えられる。もしそれを確認すれば,上記の記載を訂正する予定である。

 

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