●農薬の分類(3);登録保留基準と残留農薬基準に着目した農薬有効成分の分類農薬の有効成分を作物残留に係る登録保留基準と残留農薬基準の有無に着目して分類し,各項目に該当する農薬数を考察した。
【03/01/13作成】
農薬の有効成分(以下,単に農薬)を作物残留に係る登録保留基準(以下,登録保留基準)と残留農薬基準に着目して分類すると以下の表になる。なお,残留基準はADI(1日許容摂取量)をもとに設定されており,石鹸(オレイン酸ナトリウム)や重曹(炭酸水素ナトリウム)やイオウなどのようにADIの設定されない成分に基準は設定されないので留意されたい。
本邦で農薬登録のある農薬
●食用作物(飼料作物を含む)に適用がある農薬
●天敵などの生物農薬(寄生蜂等)
●ADIの設定が不要とされる農薬(石鹸,重曹,イオウ等)
●ADIが設定されている農薬
●登録保留基準が定められている農薬
●登録保留基準のみが定められている農薬
●登録保留基準と残留農薬基準が同時に定められている農薬
●残留農薬基準に移行したため登録保留基準が削除された農薬
●非食用作物だけに適用がある農薬本邦で農薬登録のない農薬(失効を含む)
●残留農薬基準が定められている農薬(DDT等)
●残留農薬基準が定められていない農薬NHK総合2002年10月19日のNHKスペシャル「どうする食の安全」の中で「農作物に使われる350の農薬の中で残留農薬基準のない農薬はいくつか。」という詐欺のような設問があった。答えは168であったが,私にはこの350という数値が理解できなかった。食用作物(飼料作物を含む)に適用がある農薬としては少なすぎ,食用作物に適用がありADIが設定されている農薬としては多すぎると思ったためである。そこで,上述の表の各項目に該当する農薬の個数を調べようと試みたのだが,明確な数値を見つけることは出来なかった。このような個数は農薬検査所のHPに定期的に掲載して欲しいものである。
まず,本邦で農薬登録のある農薬(天敵を含む)だが, 5年ほど前に530であったと記憶している。おそらく,現在でも500〜550程度と思われる。農薬製剤の数はこの10倍程度になる。
NHKは昨年10月の時点で食用作物に適用がある農薬が350あるといった。これは,食用作物に適用がある農薬のうちで天敵等を除いた数と解釈される。この数は,ほぼ化学農薬の数に等しく,おそらく,石鹸,重曹,イオウなどのADIの設定が不要とされる農薬もこれに含まれているだろう。したがって,設問としては「ADIが設定されている農薬の中で」でなければ無意味だが,ではその具体的な数はいくつだろうか。環境省の登録保留基準に関するウェッブページを見ると,現在までに365の残留分析試験法が設定されていることがわかる。登録保留基準が設定されれば,必ず残留分析試験法(公定法)が公表されるため,この数はいままでに登録された有効成分の総数に近い数となる。しかし,公定法では複数の有効成分が1つの残留分析試験法にまとめられている場合もあるため,登録された有効成分の総数はこれより若干多い。このウェッブページには農薬別履歴管理表もあるが,このリストに記載されている有効成分から,農薬検査所のHPにある失効農薬のリストを除いたのが,ADIがあり現在登録されている農薬になる。
一方,環境省のウェッブページで調べると現時点での登録保留基準は224であり,登録保留基準のある有効成分はこれより若干多い数となる。この数はADIのある登録農薬数よりはるかに少ないが,これは残留農薬基準は登録保留基準の上位規定であり,登録保留基準のあるすべての作物で残留農薬基準が設定されると登録保留基準は取り消されることによる。なお,残留農薬基準には本邦で一度も登録されたことのない農薬も,本邦で失効した農薬も規定されている。
NHKなどの低俗なマスコミに,ADIの設定されている農薬すべてに残留農薬基準を設定すべきだとの論調があるが,これは誤りである。たとえば,水田で田植えの前後に使われる除草剤(初期・初中期一発処理剤の成分)に残留農薬基準を設定すべきではない。これら除草剤の登録保留基準は分析機器の検出限界に設定された極めて便宜的なものに過ぎない。田植えの時期に土壌に処理されるこれらの除草剤が,秋に収穫される玄米に残留することはないためである。これらの除草剤に残留農薬基準を設定すると,公的規格が達成されていることを証明するために無意味な測定が必要になり,重要かつ有意義な残留分析が出来なくなる。
残留農薬基準はその基準を設定しても何の問題も生じないような基準,つまり無意味なものから設定される。上述の除草剤がその典型であり,ほとんど全ての除草剤が登録保留基準から残留農薬基準に移行している。その一方で,本当に重要な残留農薬基準は後回しにされる。なぜか。無能なマスコミには基準の個数しか理解できないためである。意味のある基準を設定するためにはガット通報や異議対応などに多大の労力を要するが,意味のない基準ならどこからの反対もなく簡単に設定できる。たとえ無意味な基準でも数さえ増やせば「皆様のNHK」に褒めてもらえる。では,中国産ホウレンソウで問題とされたクロルピリホスになぜ残留農薬基準が設定されていたのか。単に厚労省が問題の存在を見落としていただけである。
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