●厚労省の「食品衛生規制の見直しについて」【暫定版】
【02/11/17作成】
先週(11月11日),厚労省のHPに「食品衛生規制の見直しについて」なる記事が掲載された。見直しはBSE問題や偽装表示問題など食品衛生規制全般に及ぶが,農薬について重要な部分は以下の通りである。
(1) 残留農薬等のポジティブリスト制の導入
(考え方)
近年の輸入食品の増加等も踏まえ、食品衛生法に基づく残留基準が設定されていない農薬等(動物用医薬品、飼料添加物を含む。)について、当該農薬等が残留する食品の流通等を原則として禁止する措置(いわゆるポジティブリスト制)を、一定の準備期間経過後に導入する。
(改正内容)
残留基準が設定されていない農薬等を含む食品の流通等を原則として禁止する旨を規定する。(第7条関連)
なお、残留基準が未設定の農薬等については、ポジティブリスト制導入に伴う経過措置として、農薬等の国内での使用状況や国際的な規格・基準等を踏まえた基準を定めることができることとする。(附則関連)
そのほか、農薬の登録等と同時に残留基準が設定される仕組みの導入及び残留基準が変更された場合に農薬の使用基準等も改正される仕組みの強化について、関係法の改正を含め検討を進める。ポジティブリスト制の導入は当然である。しかし,この制度は必然的にインポートトレランスの設定に結びつく。海外でのみ使われる農薬についても,本邦での農薬登録に必要な5〜10m(長さでいうのも変だが)の書類の大部分(眼刺激性,皮膚感作性などの使用者関連の安全性試験と土壌移行性など環境化学試験は除かれる)を審査する必要が生じる。厚労省の役人は全ての農薬に「国際的な規格・基準」があると考えているようだが,1つの国で登録が得られてから国際的な基準が設定されるまでにはかなりの時間を要する。この書類の審査が,農薬検査所を窓口としてなされるのなら問題は少ないが,制度上それは難しい。
次に,輸入作物と国内生産作物での残留基準のダブルスタンダードの問題がある。たとえば,プリクトランやナフサクのように,日本での農薬登録は失効したにもかかわらず海外ではいまだに使われている農薬の残留基準をどのように設定するかの問題である。共通の残留基準であれば,日本での農薬登録が失効しても残留農薬基準は削除されず,たとえ日本で使用しても回収等の必要はないという不思議な状況が生まれる。逆に,国際的な基準は存在しているが日本では儲からないために失効した農薬の残留基準を削除すると非関税障壁になりかねない。輸入作物と国内作物とで残留基準を変えることでしか,この問題を回避できない。いままでこのダブルスタンダードの問題を有耶無耶にしてこれたのは,ネガティブリスト制の「成果」である。
「農薬の登録等と同時に残留基準が設定される仕組みの導入」と「残留基準が変更された場合に農薬の使用基準等も改正される仕組みの強化」については,現在の農薬登録制度の根幹に係る部分の変更である。おそらく,厚労省の役人はあまり深く考えずにこのように記載したのであろうが,この記載は農薬の登録を農水省の管轄から厚労省の管轄に移すと一方的に宣言しているのに等しい。この制度が実現した場合には,登録時に農薬会社が登録保留基準ではなく残留農薬基準を設定することになる。これにより農薬会社は登録作物等の設定戦略を大幅に変更する必要がある。制度上はともかく,実際に残留基準を設定するのは農薬会社である。これを書いた厚労省の役人は農薬会社などからのADIなどの情報で自分らが残留農薬基準を設定できると考えているようだが,素人考えも甚だしい。
私は残留農薬基準を廃止して登録保留基準に統一し,登録保留基準を拡張充実させるべきだと考えている。その理由はすでに「クロルピリホスのホウレンソウでの残留基準値0.01 ppmは適当か。」などに示した。「自動車の運転の出来ない者」に交通規則を作らせると現実離れした奇妙な規制になる。「自動車を見たこともない」厚労省が残留農薬基準を定めていることの問題点は大きい。
とにかく,この2つの規制変更はマイナー作物の問題などがある現在の農薬登録制度をさらに混乱させる結果を招く。私も「食品衛生規制の見直しに関する御意見募集」に意見を送付することになるかもしれない。
【付記】急いで書いたため,まとまっていない。近日中にまとめる予定である。
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