
誤解編小ネタ集(農薬についてよく聞く誤り)
農薬一般
●良い減農薬,悪い減農薬,普通の減農薬(1);減農薬は環境にやさしい。
●良い減農薬,悪い減農薬,普通の減農薬(2);減農薬栽培の安全なリンゴ
●良い減農薬,悪い減農薬,普通の減農薬(3);普通の減農薬,それは農薬会社の使命である!
●木酢液は安全な天然資材である。
●有機農業は農薬の売上げに貢献する!
●農薬を使えば害虫も抵抗性を身につけるからどんどん強い農薬が必要になってくる。
●農薬は大量にまくため安価でないといけない。
●農薬の散布はいわば人体実験である。(1)
●ピレスロイド殺虫剤は良い農薬,有機塩素系殺虫剤は悪い農薬である。
●良い減農薬,悪い減農薬,普通の減農薬(1);減農薬は環境にやさしい。【00/06/04作成】
DDTはかつて理想の殺虫剤であった。どんな虫にも効き,しかも長期間残効があった。しかし,30年ほど前から理想の殺虫剤のイメージは変わった。現在は,害虫以外の虫はできるだけ殺さず,自然界では比較的速やかに分解する殺虫剤が理想とされている。環境に対する影響を重視するためである。最近,これに逆行しDDTのようなどんな虫にも効き,しかも環境中に長期間残る殺虫剤を理想と考える風潮が瀰漫しつつある。その風潮とは「減農薬栽培」である。
問題は,減農薬の「減」とは何を減らすのかという点にある。減農薬を謳って商売をするためには,わかりやすい「スペック」でこれを表現しなければならない。最もわかりやすいラベルは「1種類の農薬を1回だけ使いました」だろう。つまり,農薬の種類と散布回数を減らすのが素人にはもっともわかりやすい。
散布回数を減らすなら,できるだけ環境中で分解しにくい農薬を一度に大量に使えばよい。しかも,散布する農薬の数も減らさねばならないから,その殺虫剤にとって最も不得意な虫にも効くようにまかなければならなくなり,散布量はさらに増える。このように,何にでも効き生態系に悪影響をもたらしやすい殺虫剤を大量に散布することを「悪い減農薬」という。この「悪い減農薬」の風潮は水稲の初期初中期一発処理剤にも現れている。
最近,「無農薬には眉唾物が多いが,減農薬は良いことだ」との考えが無批判に受け入れられている。しかし,このように環境に悪影響をもたらす「悪い減農薬」も結構多い。
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●良い減農薬,悪い減農薬,普通の減農薬(2);減農薬栽培の安全なリンゴ【01/04/29作成】
「減農薬栽培の安全なリンゴ」という不思議な言葉をよく耳にする。「不思議な」とは,減農薬とは農薬の使用を減らすことであり,残留量を減らすことではないからである。農薬の使用回数などを減らしても残留が減るとは限らず,むしろ増える事例もある。「減農薬栽培で危険になったリンゴ」も多いのである。もちろん,どんな農薬が残留するかで安全性は異なり,残留が増えただけで危険だとはいえない。
農薬には予防的に使う剤と病害虫が発生したあとにやむを得ず使う剤がある。減農薬栽培によって予防的に使う剤を省略し,病害虫が発生したあとで農薬をまけば使用回数は減って減農薬になるかもしれない。しかし,これでは収穫時期に農薬を散布することになり残留量は圧倒的に増える。
イネを考えた場合,田植えの時期に土壌や苗に処理するのと,穂孕み期や登熟期に稲体に散布するのでは玄米への残留を考えれば全く異なる。田植えの時期に処理された農薬は実質的に残らないが,穂についた農薬ならある程度は玄米にも移行する。
素人は,「減農薬だから農薬の残留も少ないはずだ。残留が少なければ安全だ。」と単純に考えるかもしれない。しかし,農薬はどのような時期にどのような病害虫が発生するかを把握しつつ体系的に使用されるものである。農薬の処理を先送りすれば,かえって大量の農薬が必要な事態に陥る。私には最近の奇妙な減農薬の風潮が栽培の体系を狂わし,農薬の残留を増やしている気がしてならない。
【補足】
「農薬を使えば,その農薬は必ず作物に残留する。」も参照して下さい
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●良い減農薬,悪い減農薬,普通の減農薬(3);普通の減農薬,それは農薬会社の使命である!【02/01/13作成】
正しい減農薬とは何か。それは,農薬が自然環境に与える負荷を減らし,残留による消費者への危険性を減らし,使用者に対する安全性を向上させることである。そう考えると,農薬会社が普段行っている新規農薬の開発こそ「減農薬」に他ならないことに気付く。既存の農薬より安全性の劣る化合物は,たとえ殺虫活性などが優れていても農薬として登録できない。
普通に農薬を使って農作物を生産する行為を慣行農法という。一般に「慣行農法」は減農薬や無農薬との対比で用いられるが,現在の慣行農法は20年前,40年前に比べればはるかに「減農薬」になっている。たとえば,昭和30年代に主流であった水稲用除草剤2,4-Dは水田10アール当たり50グラム程度を雑草に散布する必要があったが,現在の一発処理剤の主剤であるスルホニルウレアなら1〜5グラムを土壌に処理するだけで発生する雑草を長期間防除できる。新しい除草剤は有効成分の散布量が少なくてすむだけでなく,種々の毒性も飛躍的に低減化されており,これによって大幅な「減農薬」が実現できている。
減農薬を農薬が自然環境と人に与える負荷を減らす行為と考えた場合,その最大の功労者は農薬会社である。農業生産全体を考えれば,個々の減農薬農家の寄与など取るに足りない。
インデックス 目次 要約 トップ 【00/09/24作成】
癌研究に関しもっとも権威のある国際機関IARC(国際がん研究機構)は,化学物質などの発癌性を5グループに分類している。その中で最も厳しいグループ1(ヒトに対して発癌性がある)に分類されている物質はごく少ないが,その中に鋸屑(のこくず)がある。鋸屑はヒトに癌を生じさせることが確認されている。もちろん,本当の発癌物質は鋸屑に含まれる揮発性成分であることはいうまでもない。
一方,ラットやマウスを飼育するのに敷材として鋸屑は欠かせない。しかし,毒性試験に使う鋸屑に発癌性があったのでは試験が成立しない。そのため,試験には専門の業者が特別に調製した「血統書付き」の鋸屑を使う。毒性試験では飼料と同じくらい鋸屑に気を付ける必要があるのだが,それでも発癌性試験では敷材を用いず金属製のケージを使う。
毒性試験用の鋸屑には天然林のwhite pineがよく使われ,樹皮等を除いたのち800℃程度に加熱して水分と同時に樹脂や揮発性物質を除く。その際に生成した揮発成分を冷却すると除かれた発癌物質などが凝縮し発癌物質の固まりとも言うべき水溶液が得られる。これが木酢液である。
このような知識がなくとも,多少の化学知識があれば木酢液に強い発癌性のあることなど常識といえる。おそらく,エームス試験のようなごく初歩的な変異原性試験でも確実に陽性となるだろう。小核試験でも陽性となりそうだ。しかし,なぜこのような危険な化学物質が「安全な無農薬栽培」に使われているのだろう。NHKなどの報道機関の偉大な実力に敬意を表するしかない。
インデックス 目次 要約 トップ 【01/04/29作成】
私は農薬関連会社に勤めるものとして有機農業が普及することを願ってやまない。有機農業は農薬の売上げに貢献するからである。
新潟平野などの大水田地帯と山間の小さな棚田ではどちらが農薬の使用量が多いか。もちろん,山間の自然の中の水田の方が圧倒的に多い。農薬の使用量は病害虫や雑草がどの程度田に入り込むかで決める。水田地帯ならみんなが農薬を使うことによって全体の使用量は減る。これは,水田雑草を考えれば分かりやすいだろう。みんなが雑草を防除すれば,翌年発芽する雑草の種の密度は低下する。そのため,翌年はあまり除草剤を使わなくても済む。
私の願いは大水田地帯の中で虫食い状態のように有機農業が普及し,そこで病害虫や雑草の種を増やして周囲にばらまいてもらうことである。これで,農薬の売上げが増えることは間違いない。
もともと,有機農業は農薬の存在なしには成り立たない。有機農業は周囲で慣行農業が行われ普通に農薬がまかれて病害虫の密度が低下しているから成立する。大規模に有機農業を行えば北朝鮮のようになる。仮に,有機農業が1割程度普及してもその周囲の農薬の使用量は1割以上増えるから,全体の農薬の売上げはむしろ増えるだろう。
世の中には農薬会社は有機農業の普及を妨害していると考える幼稚な御仁もいる。少し考えれば,反農薬の運動さえ農薬会社の経営に貢献していることに気付くであろうに。
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●農薬を使えば害虫も抵抗性を身につけるからどんどん強い農薬が必要になってくる。【01/05/13作成】
ここでいう「強い農薬」とは害虫には強い効果があるが人や環境にとっても危険な農薬とのイメージだろう。おそらく,抗生物質のバンコマイシンなどの話からの類推と思われる。
しかし,これは素人の妄想に過ぎない。具体的に「強い農薬」には何が該当するのか考えればわかるだろう。といっても,素人はいままでどのような殺虫剤が使われてきたか,その毒性はどうかなど知らないだろう。それゆえに,「強い農薬が必要になる」などと机上の空論を繰り広げているのである。実際には新しい農薬ほど人や環境には安全になっている。
確かに1つの殺虫剤だけを使い続ければ害虫は抵抗性を発達させる。DDTを体中に付けて元気に飛び回っているハエもいる。しかし,これはDDTに強くなっただけで,農薬に強くなったわけではない。カーバメート系殺虫剤などの他の種類の殺虫剤に対する感受性はほとんど変わらない。もちろん,抵抗性発達の機構によっては他の種類の殺虫剤にも強くなる「交差抵抗性」もある。しかし,殺虫剤の種類の増加は抵抗性の発達より早い。抵抗性の問題となりやすい殺ダニ剤では農薬の世代交代も激しい。
細菌は単純な生物であるため,抗生物質の種類は限定される。それゆえ,「どんどん強い抗生物質が必要になってくる。」という議論もある程度は正しい。しかし,虫は高等生物である。細菌では細胞そのものにダメージを与える手段しかないが,昆虫は神経伝達を阻害したり,成長ホルモンを攪乱したり,脱皮を阻害したりといった様々な方法で防除できる。性フェロモンを使ってオスがメスを探せなくするといった高等手段まである。
結局,たとえ害虫が抵抗性を身につけても,「強い農薬」ではなく「別の種類の農薬」が必要になるだけなのである。
インデックス 目次 要約 トップ 【01/12/09作成】
農家は農薬という「物質」を買っているように見える。しかし,本当に買っているのは「活性」である。10アール当たり農薬1本分を1000倍に薄めて散布すれば,1か月間害虫を防除してくれるという活性に価値を見いだして買っている。その1本分に含まれる有効成分が40%であっても,5%であっても農家には関係はない。仮に,前者の有効成分にキロ当たり3000円の価値があるなら,後者には24000円の価値がある。キロ24000円ならかなり複雑な化合物も合成できる。実際に合成ピレスロイドの複雑な分子構造式をみればこれが理解できるだろう。
以前,「農薬は大量に散布するため安価でないといけない。だから,毒性などを減らすために分子の構造を複雑にすることはできないのだ。」といった素人がいた。元横浜国立大学教授の加藤龍夫氏である。彼はゴルフ場の農薬が問題になった頃に,芝生を貼る前の造成中のゴルフ場の排水が泥で濁っているのを指さして「これが農薬汚染の典型です。」といっていた。
インデックス 目次 要約 トップ 【02/05/19作成】
水俣病やイタイイタイ病を例に化学物質の危険性をあげ,普通に農薬が使われている状況を人体実験だという御仁がいる。しかし,これらと農薬とは決定的に異なる。農薬はラットなどを用いた高度で精緻な動物試験によってヒトに影響のない量を求め,それを根拠に登録され使われている。一方,水俣病などではこれが逆である。人の症状から原因を推定して動物実験によってこれを確認している。そう考えると十分な安全性の根拠のもとで使用される農薬を人体実験という愚かさが理解できよう。
それでも,動物実験では一部の農薬のヒトへの影響が見過ごされるのではないかとの疑問もあるかもしれない。確かに,事故や自殺目的で農薬を大量に摂取した場合の対応は動物試験では不十分である。しかし,これらの誤った使用法は想定されている安全性の範囲外である。
私には「農薬の散布はいわば人体実験である。」と主張する御仁の意図が全くわからない。その「人体実験」がけしからんというなら,一体どのような対応をとれというのだろう。農薬はすべて禁止すべきだとの主張とも思えない。とにかく「農薬の使用を人体実験でなくす手法」を明示できなければ,無意味な机上の空論として一笑に付すべきであろう。
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●ピレスロイド殺虫剤は良い農薬,有機塩素系殺虫剤は悪い農薬である。【準備中】