誤解編小ネタ集(農薬についてよく聞く誤り)
代謝・残留●毒劇物取締法で劇物に指定されている猛毒の農薬が検出された。
●農薬を使えば,その農薬は必ず作物に残留する。
●人体はDDTを分解できない。
●毒劇物取締法で劇物に指定されている猛毒の農薬が検出された。【00/03/05作成】
まず,「劇物に指定されている猛毒」とはほとんど「罰金を科せられるような凶悪犯罪」といっているようなものである。毒劇物取締法(毒物及び劇物取締法)では,普通物より毒性が高ければ劇物,さらに高ければ毒物,もっと高ければ特定毒物に分類される。猛毒といえるのは特定毒物で,劇物は普通物よりは毒性が高いだけである。もちろん,ここでいう毒性とは急性経口毒性,経皮毒性,吸入毒性に限られる。また,製剤(正しい意味での農薬)が普通物でも農薬原体が劇物に指定されていることもある。
もし,あなたが学校や研究所等に勤めており近くに試薬棚があるなら,試薬のラベルを見てみるとよい。試薬名が赤字で書いてあれば医薬用外劇物で,黒字なら普通物である。小中学校の理科室にさえ劇物などごく普通に並んでいる。
ダイオキシンを猛毒と表現してある本は,ただの恐怖本とみなせることはよく知られている。ダイオキシンについては急性毒性が問題となることはない。ダイオキシンを「猛毒だから怖いぞ」といえば,その人物は毒性についての最低限の常識も有していない素人といえる。同様に,残留農薬についても急性毒性が問題となることは通常はない。農薬の急性毒性は散布時等に問題となるのである。「猛毒の農薬が残留しているから危険だ」も毒物学の知識の低さを示す指標の1つと考えればよい。「DDTは急性毒性が低いから残留していても大丈夫だ」と同じ発想だからだ。
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「リンゴの栽培には多くの農薬が必要だから,果実にはいろんな農薬が残留している。」というお話をよく聞く。ときには,ご丁寧にリンゴの洗い方まで書かれたHPまである。ところが,これらが全て的はずれなのである。木になっているリンゴに農薬が散布された状況を想像してみるとよい。果実の上のくぼみに農薬がたまり,果実の側面に付着した農薬は簡単に流れ落ちる。リンゴで残留の圧倒的に多いのは,上のくぼみの部分(果梗基部)である。リンゴではこのくぼみにたまった農薬が果実内にも移行しやすいため,芯にも残留のあることが多い。
さて,よくある農薬の残留の議論が現実とはほど遠いことを理解いただけたろうか。本物の残留分析や移行性試験の報告書に基づくものなど皆無で,素人の単なる憶測に尾ひれが付いて流布されているものがほとんどなのである。
そもそも,「農薬を使えば,その農薬は作物に必ず残留する。」という基本的な誤解をしている御仁があまりにも多い。リンゴであれば,春に新梢に発生したダニを防除するためにまいた殺ダニ剤が,そのあと葉が茂り,花が咲き,実が生り,収穫時期を迎えた果実に残留するだろうか。夏に下草の防除のために使った除草剤がリンゴの実に残留するだろうか。問題となるのは結実後に散布する農薬だけだということぐらい少し考えれば理解できるだろう。
日本では「無農薬だから安全」が恰も「真理」であるかのように信じられている。これは裏を返せば「農薬を使えば安全ではない」ことになる。そこから「如何なる使い方であっても農薬は必ず作物に残留する。」という「新たな真理」が派生する。
かくして,たとえ収穫の直前に農薬を散布しようとも,散布回数の総数さえ少なければ「減農薬栽培の安全なリンゴ」になるのである。
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