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 沖縄島唄産地直送便2・新良幸人withサンデー・金城弘美
河内長野ラブリーホール 2004.3.28

 

 ラブリーホールの小会場には、6人掛けの長方形のテーブルが整然と並んでいた。白いクロスの懸かった机が規則正しく並ぶさまは、結婚式の披露宴会場を思い起こさせた。しかもそんな会場のセッティングだけでなく、席に着いた人がビールや泡盛を飲み焼きそばを食べているのだから、ますます披露宴という雰囲気であった。しかしこれから始まるのはニービチパーリーではなく、沖縄島唄のライブだ。緞帳のない丸見え状態の舞台の上にはマイクが並び、その後方に三線が二棹立てかけられていて、上手には太鼓がセットされている。会場には押さえ目のボリュームで、島唄が流れている。僕らもテーブルにつき、沖縄焼きそばを食べ、お酒をチビチビ飲みながら開演を待っていた。  
  僕らというのは、僕と店主夫婦、それに八重山会のメンバーのべちーさん、ちか姉さん、くみさんの面 々だった。一つ前の席には、昨晩朝まで一緒に遊んだ名古屋から来た熱烈な新良幸人ファーンの女性2人が、隣の席にはパイカジさんとその連れが座ったいた。200人足らずの観客に知人が10人もいるとは、僕の交友関係が広くなったのか、僕の住む世界が狭いのか、なかなか複雑な気分だ。


話題のパイカジ君Zもバサーバージョンで大活躍

 客席の明かりが落ち、舞台のライトが明るくなった。金城弘美さん、サンデーさん、新良幸人さんが舞台に表れ、演奏が始まった。ザー。ザー。という静かな波の音に、アコースティクギターを思わせる新良幸人の三線の音色が重なり、八重山の月夜浜の幻想的な雰囲気を創り出していく。三線の音をピタッと止め、マイクに正対し、一瞬の静寂を破って歌い出した。
  つくーぬ かいしゃ とかみぃかぁ みやらびかいしゃ とーななつ・・・・。ドン、ドン、と低い音で入る太鼓が、高音に歌い上っていく唄三線をしっかりと支える。僕は息を詰め、目を閉じた。周囲の存在がどんどん希薄になり、漆黒の闇の中で唄に照れされてポツンと独りいる錯覚にとらわれた。唄は変調し、てらぬ うふうがんが・・・となった。僕は月ぬ美しゃのここから後の部分はあまり好きでない。暴論を承知で書けば、それまでに作り上げた世界をぶち壊す蛇足にしか思えない。僕は目を開き、現実のステージを鑑賞した。  
 
  「かいしゃ・・・八重山の言葉で美しいという意味です。株式会社ではないです。月の美しいのは13夜、女性の綺麗なのは17歳」と新良さんは歌意を説明し、会場を見渡し少し間をおき、「ゴメンね」と、トンネルズが女子高生コントで昔よくやった様に、小首を傾げ片足をピョコと上げおどけてみせた。会場から笑い声が上がる。確かに、女性は美しいのは17歳だなんて言われると、私はどうすればいいのと思うしかない客層だった。笑いに肥えた大阪の客の心を、軽妙なMCでグッと掴む新良幸人であった。  

 2曲目の白保節は、「さーどうぞ一緒に遊びましょう、という意味の歌です」と、会場に集まったお客さんを歓迎する意で歌った。そのまま崎山ユンタに繋げたのだが、これは波照間島から西表へ強制移住させられた村人があまりの開墾の辛さを歌った唄なのだが、もしかすると新良さんの<大阪でライブはいやだ>という秘められた辛い気持ちを込めたのであろうか。本人からは何のコメントも無かったので真相は分からない。
「辛い唄も明るく歌う」というMCに、今日の大阪のステージも明るく盛り上がっていこうというメッセージを感じを取った。  
  続いて、みなとーま。これは崎山の泊(港)で網で魚を捕るという唄なのだが、実は役人が権力にものをいわせて村の若い娘を慰安目的で徴集するという裏の意(本当の意)が隠されている。正面 切って抗議することが許されなかった村人のやるせなさと怒りから生まれた唄なんだろう。さっきの崎山ユンタにしてもそうだが、八重山の民謡は背景に民衆の哀しい物語があるものが多い。  

  八重山民謡から一転して島々清しゃ。いわゆる新民謡というやつで、普久原恒勇さんの名作だ。「ラジオを聴いて初めて好きになった歌・・・。これくらいだなラジオで好きになったのは」と新良さんが語り、これまた新良さん独特のイントロを弾き始めた。金城さんが情感たっぷりに一番を歌い上げる。受けて新良さんが二番を歌う。新良さんの歌声はは、地と空の逆目にある薄い膜に軟らかくぶつかり、そこから波紋を描くように軟らかく拡がっていくようだ。島々清しゃは歌い手の技量 がはっきり出る歌だな〜、とつくづく思った。

 「サンデーは国中涼子ちゃんのファーンなんです。おいらもファーンで、共演したときにCDを渡そうと用意していて楽屋の前まで行ったのに渡すことが出来なかったです」と意外とシャイな部分を告白し、「NHKのちゅらさん、お呼びがかからないかな」とテレビに映画に大忙しのビギンを羨むような発現をし、「そのちゅらさんで堺正章がイントロだけ弾いていた曲です。ちゃんと全部弾けよ。それに変な『さー』の使い方のおかげで、変な沖縄のことばがはやてさー」とマチャアキ批判をひとくさりし、さて次に演奏する曲は何でしょうクイズみたいなMCに続き、イントロを弾きだした。
  三線なら歌持ちというべきだというお叱りも受けそうだが、新良さんの演奏はイントロという言葉のほうがしっくりる。去年の秋に小浜島を散策しながら何度も聞いたイントロが会場いっぱいに拡がっていった。小浜節が新良幸人八重山民謡の真骨頂と僕は思うのだが、皆さんはどうだろうか。天にとけ込むような声は、豊穣の喜びと腰当い(くさでぃ)とニライカナイへの感謝を表現するにはピッタリだと思う。ふと、隣の席をみるとパイカジさんが前後に揺れていた。足下のカバンには携帯電話のアンテナの様に笛が突き出ていた。ただそれだけだった。  

 続いてはユンタメドレー。安里屋ゆんた、ゆんたしょうら、コイナゆんた、猫ゆんた、がサーユイユイと続く。会場の手拍子も熱気を帯びてくる。似ていて異なり、違うようで同じ様なメロディーが繰り返されるのを聞いているとトランスしそうになる。サーユイユイという合いの手がそれに拍車をかける。思わず鍬や鋤をふるう真似をしそうになり、労働歌というユンタの虚飾のない姿に触れた気がした。  

 ミャーオー。会場に異な鳴き声が響きわたった。何だ、何だ、と思う間もなく、軽快なイントロ。与那国のまやぐわだ。突然八重山雑踊りの名手であるちか姉さーんが席を立ち、会場から出ていった。おっと、舞台に踊りに行くのかなと思ったが、何事もなく戻ってきた。皆ビールや島酒をグビグビ飲んでいるから、時々「自然に呼ばれる」ようだ。曲の合間の席を立ち、手洗いに行く人がチラホラ目に付く。新良さんはノリノリだ。どうしてあんな音が出るんだろうと溜め息が出てしまう三線の音色だ。早い・綺麗・正確の三拍子がそろい、そしてクールな味付け。最後も、七四七五工尺工五のフレーズをロックンロールの様にリピートする。水しぶきをかぶって舞台にひざまずき天に祈るように両手を大きく広げ上半身をそらす・・・そんな八重山民謡にはおよそ関係のない新良さんの姿が脳裏に浮かんだ。何度もいうようだが、クールだ。ま、三線の皮に水は大敵だからそんなことはしないとは思うが。  

 これで一部が終了。演者がはけて、会場が明るくなった。焼きそばありますよ・・・とホールスタッフが声をあげている。焼きそばは無料でお代わりできるシステムだったようだ。お酒は、一杯はライブチャージに含まれていて、あとはオリオン缶 ビール、泡盛が各300円という安さだった。焼きそばの味付けが薄すぎてしかも具が少ないのはちょっと不満だったが、これでチケット代2500円て、新良さんのギャラ大丈夫かななんて要らぬ 心配をしてしまう僕だった。  

 さて二部はどうだったかというと、浜千鳥、加那よー、天川という古典3連発。浜千鳥は登川誠仁さんや嘉手刈林昌さんも演奏しているので、広く親しまれているのだろう。浜千鳥好きな店主はすごく満足げな顔をしていた。加那よーでは時折振りらしきものを交えながらで、天川は驚くほどの早さと装飾音の多さであった。古典も十分ソロで成り立つポテンシャルを持つという持論の僕は、その証明が目の前で展開されるのを見て、嬉しかった。僕も早くあんなふうに古典を弾けるようになりたいものだ。とりあえず、加那よーぼちぼち手を着けてみようと思う。

 続いて「人間より牛が多い島」の唄、黒島節。金城さんが三板を叩きながらお囃子を入れる。帰りの列車で「あれは黒島の唄い方ですね。でもお囃子間違っているところがありました」と教えてくれたのはパイカジさんだったが、さすがその「少ない人間」の血族であられるだけのことはある。新良さんは第1部の黒づくめの衣装から真っ赤なシャツに着替えていたが、それは熱演だけでそうなったとは思えない赤い顔をカモフラージュするためだったのか。ステージの上でも島酒で喉を潤していたし、幕間の休憩に楽屋で飲んだに違いない。  

「しばらく彼女にまかせます」と新良さんとサンデーが退いた。飲むためだろうか。ソロとなった金城さんが唄ったのはデンサー節とツンダラ節。デンサー節の曲紹介で「みにいざば慎み口ぬ 外出だすなよとは・・・」と解説し始めたとたん僕のテーブルから笑い声が上がった。何でここで笑うの、きょっとんとした金城さんの顔がそう語っていた。その笑いの意味が分かっていたのは僕の仲間だけだろうが、声を上げて笑ったのは失敗だっただろう、デンサー。
  金城さんは緊張した面もちで、デンサー節、ツンダラ節を聞かせてくれた。綺麗な高い哀調のある声だった。新良さんのステージの後だけに、そのしんみりさが余計に際立った。  

 ステージ上が再び3人になり、風ゆイヤリ、ファムレウタと新良さんのオリジナル曲を2曲。これでライブは終了した。風のイヤリは新良さんが始めて作った曲だそうだ。
  しかし、アンコールの手拍子に誘われて再び3人がステージに現れた。満天の空、そして締めはやはりこの曲、とぅばらーま。金城さんと交互に唄っていく。

 ツンダーサー、ツンダーサー。
 
  僕はライブの最初にそうしたように再び目を閉じた。無の中に浮遊してるような感覚を覚え、闇の遠くから聞こえてくれとぅばらーまに心をまかせていた。  

 これで、沖縄島唄産地直送便2・新良幸人withサンデー・金城弘美はお終い。叉の来阪は心より願っております。今夜はホテルのある難波で遅くまで飲むんだろうな、新良さん。

 

 

 

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